ノー『  』・ノーライフ   作:偽帝

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番外編2・たこ焼き食べたいからたこ採りに行きました。

 

 

「お兄様、たこ焼きって知ってます?」

 

 

「え?」

 

 

時折吹く夏の涼しい風にあたりながらぐたーっとしているシェイナをステフは真上から覗き込んだ。

 

 

「たこ焼きって・・・アレだろ?たこが入ってる丸いアレだろ?突然どしたんだ、ステフ」

 

 

「あの・・・何というか突然食べたくなって・・・」

 

 

シェイナは体を起こして、改めてソファに座る。ステフはシェイナの隣に座って少しモジモジしている。

 

 

エルキアでは「たこ焼き」というのはあまり見かけることは無い食べ物だが、二人は小さい時に何度か食べたことがある。

 

 

実際、二人が食べたのは子供のときの話なので曖昧な記憶しかない。

 

 

「作れないの?」

 

 

「最近タコはあまり市場に出回っていないらしくて・・・」

 

 

ステフはそう言うと立って窓の方へと歩いた。

 

 

同時に少し強い風が部屋の中に入ってきて、二人の髪がユラユラ揺れる。

 

 

「どうしても食べたいんです!たこ焼きを食べたら・・・何というか叔父様とお兄様と三人で居た時の気持ちが思い出せそうで・・・」

 

 

ステフは風に揺れる自分の髪を手で撫でながら、振り返ってシェイナの方向を見た。

 

 

(別にたこ焼きじゃなくても良いと思うんだけどなあ・・・。ま、ステフがそこまで言うなら・・・)

 

 

シェイナは立って窓側に居るステフの近くまで歩くと、そこから少しだけ見える海をぼーっと見た。

 

 

「採ってくるか、タコ」

 

 

「え!?」

 

 

ステフは驚いて、景色を見ているシェイナの顔を覗きこんだ。

 

 

「ここ暑いから海水浴って名目でついでにたこ採ってこようぜ。涼めるしお前の食べたいたこ焼きも作れるだろうし・・・な」

 

 

「お兄様・・・!」

 

 

喜びの笑顔のステフの頭を軽く撫でたシェイナは向きを変えて、テーブルに置いていた本を棚に戻した。

 

 

「準備するぞ、ステフ」

 

 

「はい!!」

 

 

ステフはトコトコ歩きながら、自室へと向かった。

 

 

 

 

 

一時間半後(くらい)

 

 

 

 

 

「着きましたわ、お兄様!」

 

 

「・・・だな」

 

 

 

王室から暫く歩いたところにある海岸。

 

 

一面に砂浜と青い海が広がっているが、この海の向こうは違う種族なので、意外と安心できない。

 

 

潮風に混じる海の匂いが、二人の心を落ち着かせた。

 

 

「お爺様も、この海のように心の広い人でしたね・・・」

 

 

「そうだな。正直何でも許してくれる人だった」

 

 

「ええ・・・」

 

 

ステフはゆっくりとシェイナの肩に頭を寄せると、目を瞑って三人で過ごしていた昔のことを思い出していた。

 

 

「さ、たこ採るか」

 

 

「はい!」

 

 

二人は砂浜をゆっくりと進みながら、近づいてくる海に心を躍らせた。

 

 

 

 

 

「どうですか、お兄様!」

 

 

 

海パンで砂の上にぐったりしながら、足を波に浸からせているシェイナの横にステフは座って問いかけた。

 

 

「似合ってるよステフ。良いと思う」

 

 

ステフは髪の色と同じ赤のビキニを着けていた。

 

 

華奢な体に大きな胸、こんな娘が自分の妹という事実にシェイナは少し信じがたい気持ちになってしまう。

 

 

それでもシェイナの言葉を聞いて「うれしいですっ!」っと子供の頃と変わらないステフの笑顔を見ると、改めて自分の妹なんだと実感する。

 

 

「あの・・・」

 

 

ステフはシェイナを立ち上がらせると手をとって自分の右のほうの頭に近づけた。

 

 

その先にはそれぞれの宝石が入った小さな髪飾りが付いていた。

 

 

「それ・・・懐かしいなぁ」

 

 

「お兄様が行く前に私にくれた物ですもの。五年間お兄様だと思ってずっと大切にしてきましたわ!」

 

 

「そっか。ありがとな」

 

 

シェイナは髪飾りに一瞬だけ触れると、直ぐにステフの手を取って海へと歩いた。

 

 

「涼しいですわね!」

 

 

「ああ。最高だわ」

 

 

最初に肩まで浸かって体に海の温度を慣れさせた後、シェイナは一瞬潜って水中を確認した。

 

 

砂浜だからここにはいないなと思っていたが、魚や、他の生き物も泳いでいるのを見て、ここにもいるかもしれないと感じた。

 

 

それをステフに言うために上に上がろうとすると目の前にステフの胸が現れ、シェイナは驚いて空気を吐いてしまうが、構わず上がった。

 

 

「どうでした?」

 

 

「多分いる・・・かな。まだわからない」

 

 

ステフは下から見えてくるシェイナには気づいていたようだが、自分の胸を一瞬ガン見されたことまでは気づいていない。

 

 

「・・・もっかい潜るわ。出来ればそれで採りたい」

 

 

「私も行きますわ!」

 

 

ステフはシェイナに近づいて、手を握り、上目で見た。

 

 

「しっかりついてこいよ、ステフ」

 

 

「はい!」

 

 

シェイナが潜るとステフも直ぐに潜って、前を泳ぐシェイナに続く。

 

 

直ぐに足を着くか着かないかくらい深い所に来て、そこを二人で手分けして探す。

 

 

「・・・!」

 

 

反対の方向を探していたステフがこちらに対しジェスチャーで指を向ける。

 

 

どうやら指差す方向にたこがいるようだ。

 

 

シェイナはステフが案内してくれる方向に続いて泳ぐ。

 

 

周りには小さい魚が沢山泳いでいて、ここの魚たちは人に慣れているのか手を近づけても逃げないどころか逆に寄って来る。

 

 

色とりどりな魚を見ながら泳いでいると、ステフの指差した場所にたどり着く。

 

 

だが肝心のステフが見当たらなかったので周辺を見ると、息継ぎの為に一旦上にいた。

 

 

 

(ワレ・・・・メ?)

 

 

 

下から見ているとうっすらとそんなようなものがシェイナには見えた気がしたが、見なかったことにしておこうと直ぐに下を向いた。

 

 

 

ステフの指差した場所を見ていると、いつの間にか息継ぎを終えたステフが隣にいた。

 

 

シェイナの腕を掴んで、一見何も無い砂を指差す。

 

 

「・・・?」

 

 

「あそこ?」というジェスチャーをシェイナがすると直ぐにステフが「はい!」と片手でオッケーを作る。

 

 

それを見たシェイナはあそこにたこがいるのかと半信半疑になりながらもそっと息を潜めて近くで砂の動きを確認した。

 

 

すると確かに砂の中からうっすらと目のようなものが周りの魚を見ていた。

 

 

それを見てたこだと確信したシェイナはゆっくりと腕を伸ばして砂を掴んだ。

 

 

すれと直ぐに砂に紛れていたたこが逃げようとあがくが、ガッシリと掴んでいるシェイナの手からはもがくことしか出来なかった。

 

 

片手にたこを絡ませているシェイナをみたステフはシェイナの片手を掴んで一緒に海上へと泳いだ。

 

 

 

 

 

 

「やったな、ステフ」

 

 

「はい!ありがとうございます、お兄様!」

 

 

お互いに笑顔で見詰め合っていると、シェイナはステフの髪留めが無いことに気づく。

 

 

「ステフ、髪留め無いぞ」

 

 

「え・・・!あ!!本当ですわ・・・!」

 

 

ステフは海の上であたふたしているが、シェイナはそれを静止させて、言った。

 

 

「今、一瞬光ったものが見えたから多分上がってくるときに落ちたんだろ。取ってくるからちょっとたこを・・・」

 

 

「わかりましたわ、気をつけて・・・」

 

 

シェイナはステフにたこを渡すと、すばやく潜って髪飾りを探した。

 

 

 

 

(あった・・・!)

 

 

 

髪飾りは砂の上で海のそこから見える陽の光を受けて、七色に輝いていた。

 

 

シェイナはそれを取ると直ぐに足を使って方向を変え、海上目掛けて一直線に泳ぐ。

 

 

 

(・・・・え?)

 

 

海上まで3、4mくらいのところだろうか、泳いでいたシェイナの視界に赤い何かが見えた。

 

 

ゆっくりと下に沈んでいくそれをシェイナはよーく見る。

 

 

するとそれはステフが着けていた赤いビキニだった。

 

 

(え!?なんでステフのが・・・)

 

 

シェイナはとりあえずそれをキャッチするとさっきよりも速めのスピードで泳いだ。

 

 

 

「ステフ!お前、どうし・・・」

 

 

とりあえず拾ったステフのビキニを渡すためにそれをステフに向けたが、ステフはそれどころじゃない格好をしていた。

 

 

「お兄様、助けて・・・」

 

 

「え・・・」

 

 

ビキニが落ちてきたのでステフがノーブラというのは大体予想できたが、胸にはその代わりにたこがくっついていた。

 

 

「んっ、お兄様ぁ。このたこを・・・」

 

 

「あ、ああ・・・。でもここ深いし・・・」

 

 

シェイナが躊躇っている間にもたこはステフの胸に強く吸い付いていく。

 

 

「あァッ!そこ・・・はァッ・・・!!」

 

 

ステフはたこの頭を掴んでいるが、なかなかそれを掴めずさっきから少し卑猥な声を漏らしている。

 

 

(たこ、何処に吸い付いてるんだよ・・・)

 

 

シェイナはステフの胸に吸い付いているたこをじーっと見ながらとりあえず今は砂浜に戻るほうが先だと考えステフの手を握った。

 

 

 

「ステフ、出来ればたこを逃がさないように片手で抑えてくれないか?」

 

 

「わっ・・・かりました。アンッ!ふああッ!!」

 

 

シェイナはステフの手を握りながらゆっくりと砂浜の方へ進んでいく。

 

 

太陽が思いっきり照っているので少し海がぬるく感じた。

 

 

 

 

 

 

「よし。そのまま立ってろよ、ステフ」

 

 

シェイナはゆっくりとたこの頭を掴むとそっと力を入れて吸盤がステフから離れるように引っ張る。

 

 

「んっ・・・もう少しですっ、お兄様ッ・・・」

 

 

たこもずっとくっついていて疲れたのか、案外簡単に吸盤が離れていく。

 

 

「何だここ・・・力強いなッ・・・」

 

 

ようやく頭の部分に来たがたこは指先よりも近くに力を入れていたようでなかなかとれない。

 

 

そしてそれぞれの足が不規則な動きをしているおかげでシェイナからは奇跡的にステフのアレは見えない。

 

 

「おらァッ!!」

 

 

足に力を入れてシェイナは思いっきり引っ張ると、たこはステフから離れてシェイナの腕に絡みついた。

 

 

「よし、とれたって・・・おっと!?」

 

 

とった時の反動でシェイナはバランスを崩しそうになり、両手で傾きを押さえようとするが片手にたこ、もう片手には髪飾りと手が空いていなかったので砂浜に躓いてしまう。

 

 

 

「うあっ!?」

 

 

「キャッ!」

 

 

 

目の前にいたステフを押し倒すようにシェイナは倒れた。

 

 

その時に唇にやわらかいものが触れた。

 

 

 

「お兄様・・・」

 

 

 

お互いに向かい合って倒れている二人は間の前にある顔を見つめ合う。

 

 

 

ステフの唇にもやわらかい感触があったのか、頬を赤らめて目を逸らしている。

 

 

(俺・・・今、ステフと・・・)

 

 

シェイナもその事に気づいて目を逸らすが、自分の体とステフの体が重なっているこの状況で目の逸らす場所が無かった。

 

 

あせあせ色んな所に視線を向けているシェイナに耳打ちするようにステフが言った。

 

 

 

「お兄様・・・私、お兄様となら禁断の関係になっても・・・」

 

 

 

「いやいやいや!さっきのは・・・その、不可抗力だからさ、ね?」

 

 

結構本気で受け止めているステフの誤解を解こうとシェイナは必死に言うが、ステフはどうも何か心に決めたような表情をしている。

 

 

「その・・・兄妹で結婚もエルキアでは出来なくも無いので・・・」

 

 

「ちょっ・・・」

 

 

 

(これはたこ焼きどころじゃないな・・・)

 

 

 

そんなこんなでひたすら砂浜でフリーズ状態の兄妹のとある夏の一日は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

この後三日くらいかけて、シェイナはステフを説得したがステフは兄妹婚をまだ狙ってるとか狙ってないとか・・・。

 

 

 

 

 

 

 

ちなみにこんな感じ↓

 

 

 

       シェイナ            │

       ステフ             │海

       砂浜              │

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