ヒロアカ オールマイト引退RTA   作:らっきー(16代目)

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初投稿です。


おまけ1

 

私は、自分の個性が上手く使えない。

 

 

 

 君の個性は泣いてる人や怒ってる人を笑顔に出来る、そんな素敵な個性だよ──私の個性を調べるために診てもらったお医者さんは、私の個性についてそんな事を言っていたけれど、見当違いも良いところだ。

 

 私が初めて個性を使った……いや、使ってしまったのは、両親の喧嘩を初めて目にした時だ。

 

 きっとそれは些細な口喧嘩でしかなくて、放っておけばすぐに仲直りして、後から思い返して笑い合うような、そんな小さな日常の1つだったのだろうけれど、私は普段と違う両親の姿が怖くて。

 

 ただいつもの優しい2人に戻って欲しいと思って、そんな思いに反応したのか無意識に発動した私の個性は、確かに私の両親の喧嘩を止めてくれた。

 

 それで終わればめでたしめでたしだったのだけれど、そうはならなかった。

 

 最初は違和感がある程度だった。なんとなくイライラしている姿を見かける事が多くなったとか、その程度。

 

 それが段々とはっきりとした苛立ちになり、明確な悪意へと変わった。

 

 お前の存在が気に入らない──なんて、安っぽいくだらない言葉だったけれど、それを実の親から言われるのは辛くて、私は逃げ出した。

 

 後から思えば、私はそこで自分の個性と向き合っておくべきだったのだろうけど、親から否定された子供に、そんな冷静な判断が出来るはずもなかった。

 

 もはや私の居場所ではなくなった家から逃げ出して、私の個性の結果から、家族から逃げ出した。

 

 駅前で派手に喧嘩している人を見た。──酔っ払って喧嘩する人など個性が生まれる前からあったことだ。

 

 個性で人を脅して金を巻き上げる人を見た。──今の時代、個性の悪用などありふれたものだ。

 

 コンビニで万引きする人を見た。──誰にだって、魔が差すことはあるはずだ。

 

 本当は薄々気づいていた。──悪いのは私だ。

 

 私の個性は人を不幸にする個性だと気がついて、しかし幼い私は最低な解決法を考えた。個性が上手く使えないなら、上手く使えるまで練習すればいい。

 

 実際にそれはある程度上手くいったと言っていいだろう。少なくとも両親から面と向かって罵倒されることはなくなったし、小学校の6年間で……少なくとも、犯罪行為は起きなかった。

 

 そんな環境に転機が訪れたのは中学生に上がって、1人の少年と出会ってからだ。

 

 ヒーロー志望だというその男の子は、意識しているのかしていないのか、普段の言動からしてヒーローといった感じだった。

 誰とでも分け隔てなく接し、文武両道を体現し、周りの雰囲気を明るくするようなムードメーカーでもある。

 

 もしこの世界がコミックスで、主人公がいるなら彼なのではないか。そう思わせるような人だった。

 

 そんな彼は……いや、そんな彼だからこそか、何かと私に話しかけてくれたり、仕事を手伝ってくれたり──有り体に言って、優しくしてくれた。

 

 周りに馴染めずにクラスから浮いていた私に気を使ってくれたのだろうが、正直そんなことはどうでもよかった。

 

 家族ともクラスメイトともマトモな交友関係を築けなかった私は、人間関係に飢えていたのだ。

 

 それを自覚しつつも、結局私は彼の優しさに甘えてしまった。向こうから関わってくれるから接しやすかったというのもあるが、大きかったのは彼から悪意を一切感じなかったことだ。

 

 今までも私のそばに近寄ってきた人はいたが、大半はすぐに私への興味を無くしたし、残った人達も私に悪意を向けてくる始末だった。

 

 個性の関係か、私は人の感情をなんとなく察することが出来てしまって。だからこそ、私と関わって悪意に染まっていくような人達と一緒にいるのは苦痛でしかなくて、人を遠ざけていた。

 

 その反動だろうか。私と普通に話してくれ、普通に気にかけてくれる彼のことをだいぶ好ましく思うようになり、気付けば彼とだけは普通に接することが出来るようになっていた。

 

 

 

 

「ねぇアンタ、最近ずいぶんと楽しそうじゃない」

 

 ある日、今まで話したこともなかったような人からそんな事を言われた。なんとなく見覚えのあるような気もするし、初めて見たような気もする。あるいは、彼女から感じる悪意が既視感を覚えさせているだけなのかもしれない。

 

「……そうかもね。それだけ?」

 

 こういう類の相手は最初からこちらの返答を求めている訳では無いと、そのぐらいの事は分かっていたからさっさとその場を離れる。

 

 背後から聞こえてくる舌打ちの音が、やけに耳に残った。

 

 それから少しだけ学校の居心地が悪くなった──とは言っても、元からほとんど人と関わっていなかった私にとって、無視されようとどうでもいい事だったし、ハブろうにも元からどこのグループにも所属していない私には無理な話だった。つまり、大した変化はなかった。しばらくの間は、だけれど。

 

 間接的に何かしても大した効果は無いと学んだのか、段々と直接的な嫌がらせをされるようになってきた。

 

 ふと、物が失くなりやすいことに気がついた。シャーペン、消しゴム。別に大したものじゃないけれど、色々な持ち物が消えていることに気がついて。それらがゴミ箱から出てきた時は、少し悲しくなった。

 授業を受けようとして取り出した教科書が切り刻まれていて、思わず涙が出た。

 

 果たして、どう対応するのが正解だったのだろうか。1つだけ言えるとしたら、私がとった無視という行為は全くの逆効果だったということだけだ。

 

 ある日、階段から突き落とされた。

 

 痛くて、惨めで、何より怖かった。私の物を哂いながら壊した人達が、私自身を壊すことに躊躇いを持つのだろうか? 

 

 誰かに相談しようと考えて──一体誰に? 

 

 両親は無理だ。10数年同じ屋根の下で暮らしてマトモに会話出来ない相手なんて赤の他人以下だろう。

 

 教師に言う? 先生から虐めはやめましょうとでも言ってもらうのか? それで何かが解決するとは思えない。

 

 ヒーロー志望の少年の顔が思い浮かんで──打ち消した。彼に虐められているなんて知られるのは恥ずかしいし、彼に人間の汚い姿を見せるのは何となく嫌だった。

 

 

 

「ねぇ、放課後空き教室まで来てよ。……来なかったらどうなるか、言わなくても分かるよね?」

 

 そこで行かない、なんて選択肢を取れるほど私は豪胆では無かった。言葉通りにしたからといって何かが好転するわけでもなかったけれど。

 

 言われた言葉に従って、放課後に空き教室に入れば、既にそこには数人の男女が集まっていた。

 

「ああ、遅かったじゃない。まぁその辺にでも座ってよ」

 

 その言葉に従って歩き出して、数歩進んだところで地面に這いつくばらせられる。

 

「どうしたの〜? いきなり床とそんなに仲良くしちゃって。……なんてね、個性「サイコキネシス」どう? 指1本動かないでしょ」

 

「なん……で」

 

 なんでこんな事するの。そう言いたかったけれど個性で押さえつけられた口からは上手く言葉が出てこなかった。

 けれど何が言いたいかはしっかりと伝わったようで。

 

「理由? うーん、いい子ちゃんぶってるのがムカつくとか? 八木君に色目使ってるのが気持ち悪いとか? 明日までに考えてメールしといてやるよ」

 

「正直に言えよ! 自分より美人で羨ましいってさ!」

 

「てめぇコロスぞ!」

 

 そんな事を言ってゲラゲラと笑い合う。おぞましい光景が目の前に広がっていた。

 

「ねぇー、私にも個性使わせてよー」

 

「あーはいはい、好きにやっちゃってよ。どうせコイツ、逃げられやしないんだからさ」

 

 そんな会話をしながら笑顔で近づいてきた1人が、私の目の辺りに手を当てて。

 

「ッ──────―!」

 

 悲鳴をあげたつもりだった。暴れたつもりだった。けれど個性で押さえつけられた身体は全く思い通りに動かなくて。

 

「あー、アレだねこの匂い。ヤキニクだ。アンタの個性なんだっけ? 熱がどうこうみたいなヤツだよね?」

 

「うん、「発熱」ここまで温度を上げたのも、人に使ってみるのも初めてだけど。こうなるんだねぇ」

 

「おいおい顔はやめろって。萎えるだろ」

 

「じゃあさっさとヤッちゃえば? これからもっと酷くなるだろうしね」

 

「おいおいまだやる気かよ……女って怖いねぇ……ちょっとヤリやすく動かしてくれよ」

 

 はいはいとその声に答えるかのように身体を仰向けにさせられ、足を開かされ──ナニをされるのか、察してしまった。

 

「ッ──────―! 嫌! 嫌ぁぁあ!」

 

 無駄だと分かっているけれど、それでも無理やり体を動かして──すぐにまた個性で押さえつけられる。

 

 下卑た笑みと、悍ましいモノがゆっくりと近づいてきて。

 

 突然、教室の扉が、文字通りに吹き飛んだ。

 

「……遅くなってすまない。だが、もう大丈夫。僕が来た」

 

 その言葉への、声への安心感からか、私の意識はそこで途切れた。

 

 

 

 危ない所をヒーローが助けてくれてめでたしめでたし──とはならないのが現実だ。

 

 あの一件の後、私達は教師と警察と……とにかく大人を巻き込んだが、反応は芳しくなかった。

 

 教師は露骨に大事にしたくないという態度を滲ませ、警察からは未成年の起こした問題への介入の難しさを説かれ……結局は何もしてくれなかった。

 

 正直に言って落ち込んだ私に、彼がもう1つの行動を提案してくれた。

 

「その……もし君さえ良ければなんだが、僕と一緒にトレーニングをしてみないか? より長く君の事を守れるようになるし、君が護身出来るように色々と教えてあげることも出来る」

 

 渡りに船、というのだろうか。彼と一緒にいる間に手を出してくるような人は……今回の事件を起こした連中が一蹴されたと噂が立っている今、そうはいないだろうし、そうでなくとも、彼と過ごせる時間が少しでも長くなるのは嬉しかった。

 

 これも依存と呼ぶのだろうか? 恐怖から逃げる為に彼の事を利用しているだけなのかもしれない。彼の優しさにつけ込んで。

 

 ……依存と言われようと構わない。優しさにつけ込んでいる? 好きに言えばいい。

 

 恋は、いつだって自分勝手なものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クラスの中に、なんとなく浮いている少女がいた。心操というその少女は、しかし話してみると普通の女の子という印象を受けた。

 

 顔はかなり整っていると言って良いだろう。今までの学校生活から、成績も悪くないと何となく分かる。だからきっときっかけでもあれば友達も出来てクラスに馴染めていくんじゃないか。そう思ってなるべく彼女に関わるようにした。

 

 愚かな自分は、それだけで何かを解決出来たようなつもりになっていた。時間と共に大きくなるのは悪意も同じなのに。

 

 

 

 その日は朝から違和感があった。いつものように彼女に話しかけようとすると別の人が話しかけてきたり、クラスの外に呼び出されるような用事が多かったり、とにかく彼女から引き離されているような、そんな一日だった。

 

「今頃どうなってるんだろうなぁ。俺も行けば良かった。個性思いっきり使ってみてえよ」

 

「やめとけやめとけ、あんなヤツら、どっちに関わってもロクなことにならねぇよ」

 

 放課後、そんな会話を耳にした。会話の内容は理解出来なかったが、嫌な予感が全身を駆け巡った。

 

「その話、詳しく聞かせて貰えないかな?」

 

 

 

 走る、走る、走る。

 

『別に大したことじゃねぇよ。個性を思いっきり使ってみたいってヤツらが集まるってだけ。どうやって? あぁ、心操をサンドバッグにするんだってよ。ウケるよな』

 

 聞いた瞬間相手を怒鳴りつけたくなったが、それを堪えて駆け出した。

 

 個性を? 人に、思いっきり? 無個性な自分でも、いや、無個性だからこそ、それがどんな結果を齎すかを分かってしまう。

 

 間に合ってくれと祈りながら空き教室まで辿り着いて、ドアを開ける僅かな手間すらも惜しんで思いっきり蹴り飛ばす。衝動に任せたその行為を一瞬後悔して、すぐにそれどころではなくなった。

 

 衣服の乱れた少女と、それにのしかかるような下卑た笑みを浮かべた男子。

 周りを囲みニヤニヤと嗤っている数人の生徒。

 

 咄嗟にのしかかっている男子を引き剥がして、少女を守るように立つ。

 

 間に合った──とはとても言えないだろう。彼女が味わった恐怖はどれほどか。

 

 だが、それでも。彼女に少しでも安心して欲しいから。無理矢理にでも胸を張って言うのだ。

 

 もう大丈夫。僕が来た。

 

 

 

「何シラケることしてくれてんの? ノリ悪いヤツだなぁ」

 

 何を言っているのか、理解出来なかった。

 

「もしかして混ざりたかった? 先にヤリたいなら言えよなぁ」

 

 何を言っているのか、理解出来なかった。

 

「……君達、どうしてこんな事を?」

 

 理由を尋ねたのは、理解出来ない悍ましさから目を背けるためだったのかもしれない。

 

「はぁ? どうしても何も……ソイツ顔だけは良いからさ、ずっと犯してみたいって狙ってたんだよね。男なら分かるだろ?」

 

「いやウチらわかんねーし! ウチは……ほらアレだよ。キレーなガラスを割りたくなるみたいな、真っ白な雪に足跡つけたくなるみたいな、そんな感じ?」

 

「お前個性使いたかっただけだろ!」

 

 聞かない方がマシだったかもしれない。分かったのは、理解出来ないという事だけだ。

 

「……君達は、人の痛みを知る必要があるみたいだ」

 

 生まれて初めて、感情のままに──或いは、感情から目を背けるために。

 

 人を殴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「八木」

 

 師匠の言葉を思い出した。

 

「いつだって笑ってる奴が、1番強いんだ」

 

 あの醜悪な笑顔を思い出した。

 

 心のどこかに、ヒビが入ったような気がした。

 

 

 

 




小説の書き方は…んにゃぴ、よく分からないです…
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