ヒロアカ オールマイト引退RTA   作:らっきー(16代目)

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日間ランキングに乗ったので初投稿です。


おまけ2

 好きな人と同じ学校に行きたい。そんな不純と言われても仕方の無い動機で雄英高校を目指したのだけれど、喜ぶべきことに、或いは驚くべきことに合格という結果が待っていた。

 

 喜んでくれたのは八木君だけだったけれど、その逆よりは何倍も嬉しいから問題は無いだろう。

 

 ただ雄英高校の生徒の質に関しては、期待以下だったというのが正直な感想だ。

 国民の拠り所になるために平和の象徴という柱になりたい、なんて信念を持った人を常に近くで見てきたせいもあるのだろうけど、それにしたって個性を思いっきり使えるのが楽しそうだとか、そんな理由でヒーローを目指してるなんて言われたのには正直嫌悪感が──いや、これは八つ当たりのようなものか。

 そもそも、大してヒーローに興味が無い私に何も言う権利はないだろう。

 

 そんな私にとって楽しいと思えたのは八木君との自主特訓ぐらいだった。

 ヒーローとしてストイックに鍛え続ける彼と一緒にいるのは居心地が良かった。それに、彼は面倒見も良いのだ。雄英に入学できるほど身体能力が上がったのは、彼がトレーニングのメニューを考えて指導してくれたというのも大いにあるだろう。

 

 そんな単調で愛すべき日常にちょっとした変化が起きた。

 

 授業が終わって、放課後。いつもの様にいつもの所へ向かうと、いつもとは違う人が居た。

 

 志村菜奈と名乗ったその女性への第一印象は、八木君と似ている、なんてものだった。

 不純物をまるで感じない、太陽のように明るい人──個性のせいで人の悪意に敏感な私がそう感じるということは、彼女も八木君と同じで、何と言うか……良い人なのだろうと、そう思った。

 

 そしてその直感は当たっていたと言って良いだろう。彼女とは共通の話題があったからか、すぐに打ち解けることが出来た。

 学校での八木君の事を話した。たわいもない日常の風景の話でしか無かったけれど、彼女は楽しそうに聞いてくれた。

 

 八木君との出会いの話や訓練中の出来事などを聞いた。私の知らない八木君を知っている事に少し嫉妬もしたけれど、八木君の事を誇らしく思っているのが伝わってきて嬉しかった。

 

 ヒーローへの思いを聞かれた。

 

「私は……正直ヒーローに成りたいとは思えません。私の顔の火傷は昔個性で付けられたものです」

 

「ヒーローに成りたいと言ったその口で、人を傷付けて嗤っていたその人は、私にとっては世界の縮図です」

 

「ヒーローも敵も……個性を人に使って自分の思いを押し付けるのは一緒です」

 

 だったら、どうして雄英に? 当然の疑問を投げかけられた。

 

「好きな人と一緒にいたかったから……じゃダメですか? 好きな人の役に立てるように成りたいって思うのは……そこまで笑わなくてもいいじゃないですか」

 

 少しだけ不貞腐れて言うと、悪かったと謝って、真面目な顔になって言葉を続けた。

 

 そうやって誰かを好きになれる──愛してやれるのは素晴らしいことだ。お前はヒーローと敵は同じだと言うけれど、大きく違うのはそこだ。その気持ちを忘れなければ立派なヒーローになれるさ。

 

「や、だから私は別にヒーローに成りたい訳じゃ……子供扱いは止めてください……」

 

 反論は頭を撫でられて潰された。

 

 

 

 ある日、彼女の雰囲気がいつもと違うことに気がついた。強い覚悟、それに悔恨。最後に少しの恐怖。何かあったんですか、そう尋ねる前に彼女の方から口を開いた。

 

 凶悪な敵と戦わなくてはならなくなった、もしもの事があったら八木を──オールマイトを頼む。アイツは次代に残さなくちゃならない柱だから。

 ……お前がヒーローになるところを見れないのが、残念だ。

 

「……なんですか、それ。止めてくださいよ……いつもみたいに笑って……それで」

 

 言葉を続けられなかった。彼女から感じる思いの強さに、ただの子供でしかない自分が口を挟むなんて許されないと思って。でもぐちゃぐちゃになった思いはとめられなくて。

 

「やだ……死なないでください……敵だかなんだか……全部ほっておけばいいじゃないですか……」

 

 そんな駄々をこねるしか出来なくなった私を、彼女は困ったような笑顔で抱きしめて。

 

 ごめんね。と最後に残して。

 

 それが彼女との別れだった。

 

 

 

 それからは酷いものだった。彼女がどうなったかなんて八木君を見ればすぐに分かった。彼はあの日から鍛錬という名の自分への虐めを続けている。

 以前は個性の不正使用は禁止されているからと言って常識的な範囲でのトレーニングを行なっていたが、箍が外れたとでも言うのだろうか、トレーニング中にも個性を全開で使い始めた。限界を超えると言って彼が最終的に辿り着いたのは自分の全力を込めた拳で自分自身を打ち抜くというものだった。

 傍から見れば間抜けにも見えるその光景だが、一撃でクレーターを作るような拳を人の体に打ち込むなど最早狂気と言うしかないだろう。

 

 そんな彼を見ていてふと思う。

 自分の個性を使えば彼の狂気を止められるのでは? 

 

 少しだけ魅力的に思えたその考えは、しかしすぐに打ち消すことになった。他人の心を操るなんて、最低の行為だ。なんて、上辺を取り繕う。

 本音はこうだ。私は個性を上手く使えない。もしそれで、彼に嫌われるような事があったら、きっと私は耐えられない。

 

 

 

 悲しんでいても、笑っていても、或いは何も感じていなくても。時間というのはこちらの都合とは無関係に過ぎ去っていくもので。つまり、卒業の日がやってきた。

 

 卒業というものは多かれ少なかれ誰にとっても別れをもたらすものであるのだろうけれど、私にとっては八木君との別れを示す物だった。

 日本より個性犯罪の規模が大きいアメリカへ行き武者修行をする。

 そんな彼に無理を……いや、ワガママを言って少しだけ時間を作ってもらった。さて、このような場合にはどんな言葉が相応しいのだろうか? 頑張ってね? ありきたりすぎるか。たまには連絡してね? 親か何かか。

 そんな思考をぐるぐると頭の中で回して、出てきた言葉は思いもよらないものだった。

 

「……好き」

 

 自分でも意味が分からなかった。ほら、八木君も戸惑った顔をしている。でも、溢れ出た言葉はもう取り返しがつかなかった。

 

「待って、違うの……こんな、こんな困らせるつもりじゃ……迷惑……だよ、ね」

 

 自己嫌悪で涙が出てくる。そんな泣きじゃくる私の頭に暖かな掌がのせられた。

 

「困ってなどいないさ。君に好かれることが、迷惑などであるものか」

 

「だが……すまない。私はオールマイトなんだ。今更、1人の人間としての幸せを掴むことは……出来ない」

 

 ……分かっていたことだけど、聞くのは辛かった。だから言いたくなかったのに、自分は何をしているのだろうか。

 

「うん……知ってる。ごめんね、変な事言って」

 

「……じゃあ、オールマイト1つ……いや、2つ約束して」

 

「もし……もしも、ヒーローを続けてて、もう無理だってなったら私の所に来て一緒に逃げちゃおう? 全部から。あと1つは……死なないで。それだけ」

 

 八木君の顔を見るのが怖くて、目線を下に向けながらそんな事を伝える。

 

「……ああ、胸に刻むよ」

 

 その言葉で会話を終え、オールマイトの出発を見送った。

 

「……久しぶりに、1人になっちゃったなぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ワンフォーオールの7代目継承者と8代目継承者、それと何とかというヒーロー3人を同時に相手取ってしかし僕の心は冷めてきていた。

 

 ワンフォーオールは力をストックし、別の人間に譲渡するという関係上後に受け取る者の方が強くなっていくのだが、その肝心の8代目継承者がまだ学生ではこうもなるか。

 

 向こうも力の差は実感し始めたのか、7代目──志村菜奈が露骨に残りの2人を庇い始める。

 残り火しか残っていない志村菜奈を犠牲にして希望の種火を繋いでいこうという考えなのだろう。潰すのは容易だが……敢えて、見逃してやることにする。志村菜奈をここで確実に殺しておきたいというのが1つ。もう1つは……気分の問題だ。レベル1の勇者を狙って倒すなんていうのは魔王に相応しくないだろう? 

 

 攻撃の手を少し緩めてやると、案の定と言うべきか、2人を逃がして志村菜奈が立ちはだかる。ヒーローと言うのは行動が読みやすくて助かるね。

 

 3対1ですら勝てなかったというのに1人でどうなるか分からないのだろうか。

 

「空気を押し出す」「筋骨発条化」「瞬発力×4」「膂力増強×3」僕のお気に入りの個性の組み合わせだ。

 

 簡単に言うなら人間空気砲だろうか。それで数発殴るだけでもう志村菜奈は死に体だ。

 

「弱い。弱すぎるねぇ志村菜奈。聞かせて欲しいのだけれど、決死の覚悟で挑んだ戦いで手も足も出ないというのはどんな気分なんだい? 生憎僕にはそんな経験なくってね」

 

「おいおい、あまり睨まないでくれよ、怖いなぁ。ほぉらヒーローは笑顔だろう? 笑わないと」

 

 やれやれ、これだけ話しかけても黙りとは。嫌われたものだ。

 

「僕と話す気は無いかい? 悲しいねぇ。じゃあさっさと息の根を止めさせてもらおうか……何か、最後に言い残すことはあるかい? そのぐらい教えてくれてもいいだろう?」

 

「────―」

 

「ん? 聞こえないなぁ」

 

「正義は負けないって言ったんだよ、悪党」

 

「詰まらない辞世の言葉だねぇ……それじゃあ、さようなら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前に迫るオールフォーワンの一撃を感じながら、想いが走馬燈のように駆け巡る。

 

 弧太朗。ごめんね。ずっとずっと大好きだよ。これから幸せに暮らせるように、空から見守っているからね。

 

 俊典、私達の因縁を引き継がせてごめんね。でも俊典なら絶対に負けないって信じてる。

 

 それから……思い浮かんだのは最近仲良くなったあの少女。あの子が俊典と結婚して子供を作って、幸せに老いていけるような、そんな世界にしたかった──そんな思いを最後に、志村菜奈の意識は永遠に絶たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「個性「サイコメトリー」……ふぅん、これが君の未練か」

 

「心操、周……さて、どうやって遊ぼうかな?」

 

 おもちゃは多いほど楽しいものだ。

 

 

 

 その女を見つけ出すのは容易い事だった──とは言えない。雄英卒業生の大半は駆け出しヒーローとして実績より話題作りに夢中になる。

 黙っていてもそういう連中の情報は入ってくるのだけれど、まさかそもそもヒーローになっていないとは思わなかった。

 

 彼女を見つけたのは半分偶然だ。かつて戦ったヒーロー、グラントリノは今頃何をしているのかとふと気まぐれに探ってみて──まさかそこで事務員などやっているとはね。

 

 接触して、最初は警戒されたが志村菜奈の名前を出すと露骨に警戒が薄まった。

 

「どんな関係かって? そうだな……ライバル、とでも言っておこうか」

 

「いいや? 私はヒーローではないよ? そうだな……個性に悩む人が最近多いだろう? そんな人達を導いてあげるのが仕事さ。カウンセリングみたいなものだね」

 

「名前か……死柄木……いや、君にこの名前を呼ばれるのは少し違う気がするなぁ……そうだな、親しい人からは先生と呼ばれる事が多い。是非ともそう呼んでくれ」

 

 

 

 人と話す時に定番の話題といえばなんだろうか? 昔は天気の話や休日の過ごし方というのがテンプレートだった。そんな話題で不機嫌になる人はそうそういないからね。当たり障りの無い話ってやつだ。

 

 だが最近では個性の話が定番のネタらしい。個性なんてその人の人格に強く影響する繊細な話題だと思うのだが、社会の変化に驚くのは僕も老いたという事かもしれないな。

 

 何が言いたいのかと言うと、彼女の方から個性の相談を持ちかけてきたということだ。ある程度の信頼は勝ち取れたと思っていいのか、カウンセリングをしていると最初に会った時に言ったのを覚えていたのか、案外意味なんて無くて話題の1つでしかないのか。「読心」の個性を使えばすぐに分かることだろうけど、それはしない。僕は推理小説の犯人が分かってしまったら楽しめないタイプなんだ。

 

「あの……恥ずかしい話なんですけど、私、未だに個性が上手く使えなくて。昔失敗したのがトラウマになってるのかな……制御が、上手く出来ないんですよね」

 

「個性は「感情操作」……だそうです。個性が分かるって評判のお医者さんが言ってたので多分合ってるんだと思います」

 

「どこまで操れるのかは……正直分かりません。雄英でも、人に使う気にはなれなかったので」

 

 僕は正直この時彼女の個性を軽視していた。見くびっていたと言い換えてもいい。僕の持っている個性の中には人の心に作用するものも多くあるが「ヘイト」──他人からの恨みを買いやすくなる個性──や「サバイバー」──闘争本能を刺激する個性──といったパッとしない物が多かったからだ。それらの個性も組み合わせ次第で面白い道具になるのだけれど、進んで集めようとは思わなかった。

 

 だから彼女に個性を使って見せてくれと頼んだのもただの会話の流れでしかなく、何の期待もしていなかったのだけれど。

 

「先生に……? 上手くいかなくても許してくださいね……?」

 

 その言葉と共に、感情が爆発的に湧き上がってきた。

 

 悔恨、自己嫌悪、怒り、衝動性。

 

 端的に言えば自殺しようとした──この僕が! 

 

 ありとあらゆる自制心と「好調」「平静」「不干渉」……とにかく個性を総動員して耐え──嘘の様に消え去った。

 

「あの……どうでしたか? ちょっと悲しくなるようにしたつもりなんですけど……」

 

 耳を疑ったね。ちょっと悲しく? じゃあ全力で指向性を持たせたらどうなると言うのだろうか。

 正直、欲しいと思った。単純に能力が魅力的だし、何より本人が悩んでいるというのが理想的だ。僕なら簡単に口車に乗せて個性を奪う事が出来ただろう。

 

 そうしなかったのは、もっと面白い事を思いついたからだ。その為には彼女自身に個性を持たせておかなくては。

 それに加えて、彼女から信頼される事。これは問題無い。僕はやろうと思えば、いくらでも魅力的な人間になれるからね。

 

 

 

 ワンフォーオール8代目継承者……オールマイト。君の嫌がる顔が、今から楽しみだ。

 

 




ノリで書いてたら本編とちょっと内容が違うような…んにゃぴ…よく分からなくなってきた…
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