僕と君と償う過去と   作:近衛龍一

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第一章 第一次試召戦争編 再会とやり直し
プロローグ


弥生中学校の体育倉庫ーー

 

『い、いやぁ! やめて! やめて!』

『へっ! お前が俺の告白を断るからいけないんだよ!』

『お前ら……やめ……ろ……っ!』

『おい、吉井のやつ、まだ動いてるぜ?』

『もう何発か発殴っとけ』

『そうだな』

『ガハッ!?』

『あ、明君っ!!』

『今…助けるから……ね……ち…は……る……』

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

ガバッ!

 

「はぁ…はぁ……ゆ、夢か……」

 

とあるマンションの一室。

茶髪で人の良さそうな雰囲気を持った少年は、ベットの上で汗びっしょりで飛び起きた。

 

「またあの夢……か……」

 

起きたばかりだと言うのにどこか遠い目をした少年は、ゆっくりとベットから離れた。

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

「おはようなのじゃ明久」

「おはよう秀吉。桜が綺麗だね」

「そうじゃな」

 

桜満開のこの季節。

学生服を着た学生らしき2人が、桜並木の登り坂を歩いていた。

『明久』と呼ばれた方はどこか穏やかで優しそうな雰囲気を持った人物で、『秀吉』と呼ばれた方はみれば男が振り向くような可憐な容姿の持ち主だった。

まぁ、何の間違いなのか秀吉の方は男子の制服を着ているのだが。

特に大したことを話すわけでもなく、2人はゆっくりと歩いていく。

 

 

しばらくし、不意に秀吉がその小さな口を開いた。

 

「明久。もうあれから一年じゃのぅ……」

「うん…そうだね……」

 

ポツリと呟くような発言に、2人は舞い散る桜を哀愁の目で眺めながら会話を続けた。

 

「どうじゃ? 『キャラ』の方は大分慣れたかの?」

「うん、まあね。流石に一年間やってきたし。『観察処分者』になったことで少し印象付けるのが楽になったしね」

「あれは偶然の産物じゃったからのぅ」

 

これを第三者が聞いていれば何のことかさっぱり分からないだろうが、今の2人には充分な言葉数だ。

 

「して、明久」

「ん? 何?」

「お主は寂しくないのかの?」

「……どういうこと?」

「あの事件は明久のせいじゃないのじゃ。じゃが、あれが原因で明久が『千春』から離れようとしたのじゃ。それはお主にとって辛いことのはずじゃ」

「辛い……か。ううん。あの時の千春の苦しみに比べたら、僕なんて……。それに、やっぱりあれはあの時守れなかった僕のせいなんだ。千春から離れるなんて独りよがりな罰だってことは分かってるけど、これくらいしか……ね」

「お主が側にいてやることもまた、千春を助けることになると思うぞい?」

「ううん。だって千春は男の子が嫌いになったじゃん? なのに元凶である僕がやすやすと近づくなんてやっぱりできないよ……」

「状況を変えるつもりはないということじゃな」

「うん。でも、秀吉だけでも千春のところに言っても良かったんだよ?」

「何の冗談を。明久がその罪を背負おうとするのなら、わしもついていくのじゃ。千春の方は姉上がついておるし、大丈夫じゃよ。何だかんだで、わしも責任を感じておるのじゃ……」

「そっか……」

 

朝早くのまだ誰も人が通らないこの時間帯。

たった2人が歩くもの寂しさはまるで今の2人の心境を表しているようだった。

 

「おはよう。吉井に木下弟。弟の方はともかく、吉井が早く来るなんて珍しいな。何かいいことでもあったのか?」

 

学校らしきところの校門前。

明久と秀吉に声をかけたのは非常にゴツイ筋肉質の怪物…もとい、男だった。

 

「おはようございます西村先生。たまにはこういう日があってもいいでしょ?」

「おはようなのじゃ。明久よ。それじゃとほとんど遅刻しておることになるぞい」

「………否定はしないよ」

「………そうじゃったの…」

「まあいい。それよりこれを受け取れ」

「何ですかこの封筒は? 食堂の食券?」

 

どうやらこの学校の教師らしい男より受け取った茶封筒を明久は珍しそうに手にとり、透かしてみせる。

 

「そんなわけないだろうが。この間の振り分け試験の結果だ」

「あぁ。それでしたか。そんなのだったら、どこかに大きく掲示したらいいじゃないですか。一々こんなふうに配ってる方が大変でしょ?」

「これも学園長の指示でな。面倒でもこうするしかないんだ」

「先生も大変ですね」

 

話半分、明久と秀吉は自身の封筒の封を切ろうと封筒上辺を破る。

 

「いまだから言うがな。去年1年間を通してもしかすると、『吉井は相当なバカじゃないのだろうか』と思っていたんだ」

「そんなわけないじゃないですかそんなこと思ってると、筋肉ムキムキだけが取り柄の節穴鉄人って言われちゃいますよ?」

「そうかもな。だが、今回の結果でお前への疑いは晴れた」

「それは良かった」

 

そういい終わると同時に、明久と秀吉は封筒から一枚の紙を抜いた。

そして鉄人から一言物申された後、明久と秀吉は校門をくぐった。

 

 

 

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 

「しかし明久よ。お主はよくもあんな対応が出来るのう」

「これも1年間バカをやってきたお陰だよ。どう? バカっぽかったでしょ?」

「じゃな。わしもお主もほとんど問題に答えておらんのじゃし、こうなることは分かっておったというのに」

「それでもああいう風にするのがバカなんだよ」

「バカ過ぎんかの……?」

「ううん。これくらいしとかないと……」

「千春と離れる口実が出来ない、かの?」

「…….うん。そうだね」

 

図星を突かれた明久は秀吉に苦笑いを浮かべた。

 

 

『吉井明久 Fクラス』

『木下秀吉 Fクラス』

 

 

 

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