「ほんと、成宮は可愛いよなぁ?」
「………」
ここは体育倉庫。
大勢で囲み、マットの上に座らされた千春の顎を掴んで顔を凝視する神楽。
そんな神楽から、千春は出来るだけ目を背けようとする。
「んなことしても無駄だっての」
「っ!?」
手にグッと力を入れ顔を固定し、神楽は何の前触れなく千春と唇を重ねる。
そのまま無理矢理舌を侵入させようとするが、しっかりと歯を閉じてその侵入を拒んだ。
神楽は、もう一つの手で千春の胸に手をやると千春の体の力が一瞬抜け、その間に神楽は舌を千春の口内の侵入に成功させた。
「……っ……っ!」
涙目で神楽に訴えるが、神楽は気にした様子もない。
神楽が舌を出すと、千春と神楽の間には銀色の糸が繋がっていた。
「どうだ? 好きでもない、ましてや一度振った男にこんなことをされる気持ちは…?」
「最っっ低……!」
「だろうな。まぁいい。木下達の意識がいつ戻るかも分からないし、さっさと始めるか」
そういいながら、両方の手を千春の胸に近づけた、その時だった。
バァーン!
大きく鳴る扉。
その場にいた者全員が、一斉に扉に目をやった。
そしてそこに立っていたのは……
「あ、明君!!」
「千春!」
吉井明久だった。
明久は千春に近づこうとするが、その前に他の生徒が立ちはだかる。
神楽は一度立ち上がり、明久を見据えた。
「これこれは、誰かと思えば吉井じゃねぇか」
「神楽君! 今すぐ千春を解放しろ!」
「はい分かりました。なんて言うと思うのか? 解放してみたけりゃ自力でやればいいだろうが」
「っ!」
「やれ! お前ら!」
神楽の合図で明久に皆が襲いかさる。
一瞬怯んだ明久だったが、すぐに身を引き締めた明久。
飛んでくる拳を巧みに避け、襲いかかる敵のボディーにフックを決める。
敵を掴み、投げ、蹴り…
しかし、相手の数は十数人。
順調だった明久に隙が見えた。
「食らえやぁ!」
「グッ!?」
鉄パイプで腹部に一発。
倒れた明久は一気に袋叩きに遭った。
「テメェみたいなツラが成宮なんかと付き合うなんて調子に乗ってんだよ!」
「俺らがたっぷり可愛がってやるから安心しな!」
「……ガハッ! ……ゴハッ!?」
「あ、明君っ!!」
目の前でボロボロになっていく明久を見て、千春は思わず叫んだ。
「もうやめてっ! 私だけでいいでしょ!? だからもう明君に攻撃するのはやめてよっ!」
「仕方ないな。その代わり、最後まで付き合ってもらうぜ? 愛しい彼氏さんの代わりによぉ!」
下劣な笑い声を上げる神楽を、ボロボロになった明久が睨む。
「…やめろ…! 千春に……手を……出すな……!」
「黙れ。お前はそこで俺がこいつのバージン奪うところを黙ってみてりゃいいんだよ!」
パイプで殴られ、血が至る所から流れている明久に、もう立ち上がるだけの力は残っていなかった。
「……ごめん……千春……っ! 僕が……不甲斐ないから……! でも……もう少しだけ我慢して……? 今すぐに……助ける……よ……!」
「おい、もう一発殴って気絶させろ」
「グフッ!?」
最後に腹部にもう一発パイプで殴られたところで、明久の意識は途切れた。
「明君っ!!」
その日、千春は薄暗く、埃だらけの体育倉庫で、そして最愛の人の前で、最低最悪で、辛く痛い『初めて』を神楽に奪われた。