「「…………」」
Aクラス戦翌日。
普通よりも少し豪華なFクラス教室にて、二人の男子生徒が椅子があるにも関わらず正座で床に座っていた。
その男子生徒の前には、共に美少女部類に入るAクラスの才女の姿。
腕を組んでそれぞれが一冊の本を片手に目の前の男子を飽きれた目で見ている。
一方で座っている男二人は二人で、相手方に立っている女子の手に握られた本を見て、鼻で笑う。
「「お前もか……」」
哀愁漂わせる二人の男の後ろでは秀吉とムッツリーニがため息。
「お主らはバカかの……?」
「……朝っぱらから…」
やれやれと言わんばかりに首を振る秀吉達を見て、その男達ーー明久と雄二が反論。
「だって…千春が家に来るってだけで浮かれてたから忘れてたんだよ……」
「俺も右に同じくだ……」
何を忘れたのか。
それは少女達の手に握られた本に水着の女の子達が載っているのをみれば一目瞭然だろう。
「明君がこういうのに興味があるのは分かるけど……もうやめてよね?」
「はい……」
「……雄二も。今回は付き合い始めた初日だったから善処する。だけど次からはダメ」
「分かった……」
大人しく頷く情けない明久達を見て、秀吉とムッツリーニは『この二人に亭主関白は無理だな……』などと思っていた。
と、その時だった。
「おはようございます皆さん」
「おはよ〜」
元気に登校してきたのはピンク髪と高校生にしては育ちすぎているくらいの実りを胸に持った少女、姫路瑞希と、それとは対象的に高校生としてはすこし貧相な胸回りであるポニーテールがトレードマークの少女、島田美波。
共に皆に挨拶したのだか、正座させられている明久を見て驚く。
「ど、どうしたんですか明久君…?」
「それに霧島さんや成宮さん……何かアキ達に用でもあったの?」
「こやつら、自分らの彼女にエロ本を見つけられて正座で説教中なのじゃ」
霧島達の代わりにそう答えた秀吉。
その返答に島田達も頷いた。
「あぁ、そういうことだったのね」
「いけませんよ? 彼女さん失礼じゃないですか」
秀吉と同じく呆れ顔で言う島田とにこやかに言う姫路。
だがその直後、二人の顔が固まった。
今の言葉の意味を全て理解したのだ。
「「かかか、彼女(ですか)!?」」
慌てて明久に駆けよりその胸ぐらを掴んで揺する。
「どういうことよアキ! 説明しなさい!」
「そうです! そんなの裏切りです!」
ガクガクと揺さぶられる明久の首。
鬼神迫る勢いで明久を問い詰める二人を、雄二や秀吉が止めた。
「お前らやめろ! 一旦離せ!」
「そうじゃ! 取り敢えず落ち着くのじゃ!」
後ろから二人を羽交い締めにし取り押さえる。
首を解放された明久はゲホゲホと咳き込み、心配した千春が明久の背中を摩る。
「これが落ち着いていられる!? アキ! 一体どういうことよ!」
「いや、そのままの意味なんだけど……。僕は千春の彼氏ってことだよ」
「な…っ…な…っ…な…っ…!」
ワナワナと身体を震わせる島田と姫路を見兼ねた秀吉はフォローを入れる。
「誤解するでないぞい? 元々から明久と千春は付き合っておったのじゃ」
「「……え……ええっ!?」」
衝撃の事実。
まぁ明久から千春を避けていたために気がつかないといえば気がつかないのだが、確かに明久は千春と別れてはいなかった。
というより、明久が一方的に離れていただけなので当然なのだが。
今の反応を見て分かる通り、二人は明久のことが好きである。
ただ、今の事実からすると、二人は彼女持ちの男を好きだったということになる。
まるで付き合っていた彼氏が自分と不倫していたかのようなアクションを取る島田と姫路に目を点にする明久。
そしてその衝撃から教室を出ていく姫路と島田。
そんな様子に、またも秀吉がため息を吐いた。
「明久よ……お主、将来誰かに後ろから刺されぬように気をつけるのじゃぞ……」
「???」
女たらし明久の行く末が不安になる秀吉であった。
キーンコーンカーンコーン
島田達が教室を出た後すぐに、HR開始10分前のチャイムが鳴った。
「あ、チャイムが鳴ったから教室に戻るね。またお昼に来るから」
「……雄二、私も」
「「あ、あの〜……本の方はどうなるんでしょうか……?」」
「「(……)処分します♪(する)」」
「「で、ですよね〜」」
あははと渇いた笑いを漏らす明久と雄二。
資源ごみとなるであろうその本に最後の別れすら告げることなく、二人は自分達の教室に帰っていく美少女を見送った。
そして……
「…坂本、吉井。話がある」
美少女二人が見えなくなった直後、明久と雄二を囲む黒い覆面達。
どうやらこの二人に休息の二文字はないようだ……。