「「自分を漢にしてほしいから舎弟にしてくれ……?」」
黒い覆面の男たちは、その覆面を剥ぎ取ると静かに座った。
その覆面の下から出てきたのは明久と雄二も知っての通りのクラスメイト。
そんな彼らは、明久と雄二に開口一番、舎弟にしてほしいと頼んだ。
「そうだ…。今回の試召戦争で坂本と霧島のやり取りみてて、何というか……こんな真剣な恋もあるんだなって……」
「そんなやつの邪魔なんてしてたらそりゃあ当然モテねぇよ……」
「もちろん俺たちのこの容姿、ステータスならモテないのは分かってる」
「でも、お前達でもあんな2人が彼女なんだ……!」
「お前達みたいな行動が出来るようになれば……!」
口々に思い思いの気持ちを伝えていくクラスメイトに、明久と雄二も困惑する。
結果モテたいという不純な動機ではあるが、改心しようとはしている。
一度過ちを侵した明久と雄二にとって、見捨てるに見捨てれない状況だ。
ただ……
「「そんなこと言われても(なぁ)……」」
意識してやっていたことではない。
どちらかと言えば、二人とも離れてもらおうとしていたくらいである。
「大体モテようとするからいけないんだと俺は思うぞ?」
「それには納得かも…」
「むむむ……い、いきなり難問だな……」
「だがそれは心を一旦清らかにしてという意味だな……!」
「さ、流石吉井に坂本だ…!」
「「いや、そんなこと言ってないけど(が)……」」
勝手な解釈で更に信仰心を高めていく皆を見て、ふと雄二が前に出た。
「よしっ! じゃあ俺と明久でお前達を舎弟にしてやるっ! ついてこい!」
「「「へい兄貴っ!!」」」
「ちょ、雄二!? 何を勝手なこと言ってるのさ!!」
打って変わってこの態度。
先程までは戸惑っていたにも関わらず、それをなかったかのように指揮を取りはじめた。
……何故か明久を巻き込んで、だが。
「なに明久。今のこいつらを上手く扱うだけだ。これを機に勉強させればいいし、クラスの為に戦う根性叩き込めば中身にも磨きがかかって自然とモテるだろ」
なんという恐ろしさ。
この男はクラスメイトの妙なやる気を利用し、クラスの向上を目論んでいた。
しかも本人達の目的をその向上の副産物扱いである。
「いいか。まずはモテたいという意識を改めろ。中身を磨けば結果はいずれついてくる!」
「「「了解です!!」」」
テンションやる気共にMAX。
昨日まで女子と話そうものならば襲い掛かってきた集団に、どれだけと影響を与えたのかは分からないが、ただ一つだけ。
この学園に『革命』を起こすといえば、後にも先にもこのFクラスになるのではないだろうか。
☆★☆★☆★
「………舎弟…?」
「あぁ、翔子達が帰った後に突然頼まれてな」
「それは大変だね」
「全くだよ……。雄二が勝手に引き受けるしさ……」
昼休み。
宣言通りFクラス教室にやってきた霧島と千春。
机を向かい合わせにすると雄二の正面に明久。
その雄二の隣に霧島、明久の隣に千春といったように座っている。
因みに、千春はまだ男性恐怖症が残っているため、雄二との直接的な会話はしていない。
「いいじゃねぇかよ。さっきも言ったがこれはチャンスだ。この設備だって、他のクラスの禁止期間が終わればすぐに狙われる。それまでに戦力の強化は考えないといけなかったからな」
話ながらパクパクと弁当を食べる雄二を、霧島が嬉しそうに眺める。
戦力強化。
確かにこれはFクラスの目下の課題だ。
下位クラスが自分達よりもいい設備にいれば当然狙ってくるのは目に見えている。
これからはAクラスを目標に戦うこともないだろうから、明久と秀吉も戦いには参加していく。
だが、姫路、ムッツリーニの奇襲作戦は使用済み。
明久の召喚獣の扱いをもってすれば奇襲出来そうには見えるものの、その実力は既に周りに漏れてしまっている。
例え元神童である雄二でも、そんな圧倒的不利な状況から勝利の法定式を組み立てる方法を無限に考えられるわけではない。
少なからず、もっと幅広い作戦を立てれるようにするために全体の学力強化は必要充分なものであった。
「あいつらも本気だ。あいつらならやってくれるだろうと俺は信じている」
面白い。
どう転ぶのか分からないけれど、Fクラスの命運を別けるかもしれないこの機会。
こうなれば自分も全力を尽くして協力するか、と。
明久の頬が自然と綻んだ瞬間だった。