僕と君と償う過去と   作:近衛龍一

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ヤキモチ

「映画感動したね」

「うん。何だかあの先生明君みたいだった」

「やっぱり千春もそう思ったんだ」

 

映画が終わり、帰り道が違う僕らは雄二達と別れて家に帰っている。

道中、映画の話をしながら千春も僕と同じこと考えたんだなって実感。

もしかすると雄二達も似たような話をしてるかもしれない。

 

「もう絶対にどこにも行かないでね……? 次明君がどこかに行ったら……」

「言わなくていいよ。絶対に行かないから」

「絶対…? 他の女の子のところにも……?」

「行かないよ。っていうかもう完全にヤキモチ妬きの女の子だね」

「うっ……。明君はそういうの鬱陶しいかな……?」

「そういうの普通は女の子の前で素直に言わないよ?」

「あぅ……。じゃあ鬱陶しいんだ……」

「ふふっ。そんなわけないじゃん。だってーー」

 

握っていた手を離し、正面からキュッと千春を抱きしめる。

当然ここは天下の往来。

人も沢山通っていて、人目がこちらに集まってくる。

 

「あああ、明君!?」

「僕は人前でもこうやって千春を抱きしめることができる。だって千春のことが大好きだから。恥ずかしくなんてないよ。だから千春が嫉妬してくれるのは嬉しい」

「わ、分かったら離そ!? 皆見てるよ‼」

「千春はあんまり見られたくない?」

「そ、そういうわけじゃないけど……」

「冗談。ちょっとからかってみただけだよ。千春が僕を信じてくれてなかったみたいだからね」

 

ゆっくりと千春から離れると千春は『信じていなかった』という言葉に何も言えず目を伏せてしまう。

でもこういう姿まで可愛いって思ってしまう僕はバカなのかもしれないな。

頭に手を置きそっと撫で、反対の手を頬に添えて顔を上げる。

 

「今日秀吉に言われたんだ。姫路さんや美波が今朝あんな態度を取ったのは僕のことが好きだから、って。それで秀吉に僕は鈍感だからもっと注意しておかないとと千春が悲しむだってさ。そりゃあ千春も信用できないよ」

「秀君そんなこと言ったんだ…」

「二人の気持ちを勝手に言うのは気が引けるけどこれ以上千春が心配するところは見たくないのじゃって言ってたよ。ゴメンね。まさかそんな状況にいたとは知らずに。僕だって明らかに千春に好意がある人達と千春があまりにも仲良くしてたら嫉妬し不安にもなる。だから落ち込まないで」

 

出来るだけ意識して優しく微笑む。

添えた手が少し熱く感じて、見るだけで千春の頬が火照っているのが分かる。

 

「よしっ。じゃあ行こっ。遅くなると千春の家族も心配するし」

「う、うん。そうだね」

 

僕は再び千春の手を取り街灯が照らす夜の道を千春と共に歩き進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千春宅前

 

さっきの言葉でだいぶ元気を取り戻した千春と色々学校のことを話しながら帰っていた。

Aクラスの人も面白いってこと。

それでもFクラスの方が素がバカな分面白いってこと。

高橋先生は案外抜けてるところがあるってこと。

鉄人が暑苦しいってこと。

互いが互いのクラスのことを話して、気がつけばもう千春の家の前だった。

名残り惜しそうに離れる手を見る千春に僕は一つ提案を出した。

 

「明日の朝からは迎えにくるよ。今日みたいに遅刻しないよう早めにね」

「うんっ! じゃあまた明日ね」

 

「あぁ、やっぱり千春だったのね。何だか声がすると思ったら。あら! 吉井君じゃないの! 久しぶりね。大きくなったわぁ〜。それにカッコよくなって」

 

僕も早く帰ろうと足を反対に向けた時、千春の家から出て来たのは千春のお母さんだ。

 

「ど、どうも! 久しぶりです!」

 

慌てて頭を下げて挨拶。

昨日千春の家に来た時には誰もいなかったから千春が置き手紙だけを残して済ませていた。

だから本当に千春のお母さんと会うのは何年か振りだ。

 

「昨日千春の置き手紙を見た時はおばさん本当に嬉しかったわ。また吉井君が千春のところに帰ってきてくれたんだって。千春は吉井君なしじゃ生きていけないものねぇ」

「お、お母さんやめてよ!」

 

お母さんとはいえ見た目は子持ちとは思えないほど若い。

そんな二人のやり取りは少し年の離れた姉妹の喧嘩のようだ。

 

「本当に申し訳ありませんでした。僕が勝手に千春から離れて……あの日以来…その……」

「いいのよ。もう気にしないで。でも出来れば一つだけ約束してほしいわ」

「約束……ですか…?」

「ええ。千春の側にいてあげて。大変かもしれないし、吉井君を縛るようで嫌だけど、それだけお願いしてもいいかしら」

「もちろんですよ。そう千春にも言ってますから。絶対に側にいるって」

「あら。千春ったらもうそこまで進んでたのね? かっこいいイケメンを捕まえて、あなたもやり手ね。お母さんの心配なんていらないじゃない」

「お母さん!」

「ふふっ。それじゃあ吉井君。うちの千春をよろしくお願いします」

「はい。本当にありがとうございます」

 

最後にそうお礼を述べ、文句をお母さんに言いながら家の中へと消えていった千春を見送り、僕は家へと帰った。

 

本当に千春の側に戻れて良かった。

 

 

 

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