僕と君と償う過去と   作:近衛龍一

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予想以上の感想数に驚きました……。
これからもよろしくお願いします。


苦労人秀吉

 

「い〜や〜だ〜〜!! もう充分働いたでしょ!? 早くAクラスに行かせてよ!」

 

「俺もだ! これ以上何の不満があるってんだよ!」

 

「不満ありありじゃ。約束したじゃろうが。わしより売り上げを出せばその時はAクラスに行ってよいと」

 

「そんなの無理に決まってんじゃん!? 秀吉より売り上げ出すなんて不可能だ!」

 

「そうだぞ! 今や店外でもここに『美少女執事』がいるって話題で持ちきりなんて報告もある! 俺たち野郎が美少女に勝てるか!」

 

「勝てるかーー!!」

 

「お主ら……わしを美少女扱いなんぞ喧嘩を売っておるのじゃな…?」

 

 

通常の教室よりも少し整った設備のFクラス教室。

 

いつも通り騒がしい教室だが、その騒がしさもいつもと少しばかり違った。

 

 

「戯言を言っておる暇があればさっさと仕事に戻るのじゃ。おっと、お帰りなさいませお嬢様」

 

 

『キャーー!』

 

 

清涼祭。

 

文月学園で行われる学園祭の名称だ。

 

全国的にも注目試験校なだけあって多くの来場者が訪れる。

 

その中でFクラスが出店しているのは執事喫茶。

 

クラスのほとんどを男子が占めるFクラスは皆執事服を着用している。

 

特に秀吉はかなりの人気を占めており、指名制も取り入れている店内では秀吉の指名が教室内を飛び交っているほどだ。

 

さて、その中で雄二と明久が何故先ほどから吠えているのかというと……

 

 

「だいたい、雄二のせいだぞ!? 執事喫茶なら勝てるとか言ってさ! 全くじゃないか!」

 

「しゃーねーだろうが! いずれにせよ秀吉に勝てねぇと駄目なんだぞ!? こんなに似合うなんざ思ってなかったし、もう何やっても結果は同じだろうが!」

 

「素直に店で働くという選択肢はないのかの……?」

 

「「ないっ!!」」

 

「………アホ」

 

 

二人は秀吉と勝負していた。

 

内容は清松祭の売り上げ勝負。

 

一時間毎の売り上げで勝負をつけ、明久達が勝てばそのまま休憩に入ることができるというものだ。

 

そして何故そんな勝負をしているのか。

 

それは自分達の隣、Aクラスにに理由があった。

 

 

「だってAクラスはメイド喫茶だよ!? 千春がメイド服着てるんだよ!?」

 

「あの翔子もだぞ! 見ないでたまるか! 俺が見てねぇってのに他の男共が見てるなんて許せねぇんだよ!」

 

「落ち着くのじゃ。お主らは千春と霧島のメイド服を一番最初に見たじゃろうが」

 

「それとこれとは別だ!」

 

「そうだそうだ!」

 

 

当然、秀吉に勝てるはずもない2人は、こうして猛抗議を繰り返しているというわけだ。

 

「文句を言うでない。元々お主らに休憩なんぞないんじゃ。譲歩しとるほうなんじゃぞ?」

 

「勝たせる気もないくせに!」

 

「当たり前じゃ。わしも本気でやっておるからのう。売り上げのためじゃ」

 

「鬼! 鬼畜!」

 

「何とでも言うがいいのじゃ。千春や霧島には許可を取っておるし、姉上にもしっかり稼がせろとの通達じゃ」

 

「なんで優子から!?しかも千春達からの許可まで!」

 

「理由を説明しやがれ!」

 

「こういうときにデート代を稼げという意味じゃ。今度如月グランドパークがオープンするであろう。料金は高いらしいがあぁいうところに連れていくのも彼氏の役目じゃ」

 

「………つまり、ここで稼いで連れていけということ」

 

「そういうことじゃ」

 

「はははっ! 笑わせてくれるな秀吉!」

 

「そうだよ!如月グランドパークなら既にチェック済みさ。それに行く算段だってついてるよ」

 

「ほぅ?」

 

 

ふふんと鼻を鳴らす余裕な態度の2人に秀吉も意外そうな声を出す。

 

世界一のジェットコースターや専用の一流ホテルがある巨大レジャーパークとして話題性抜群の場所なだけに2人で行くとなると万は超える。

 

そんな額を極々普通の高校生がパッと用意できるわけもないのだが……。

 

 

「いいか秀吉。俺達は今回試召戦争トーナメントに参加している」

 

「そうじゃな」

 

「そしてなんと! その優勝商品は如月グランドパークのプレミアムチケットなのさ!」

 

「…………」

 

「え? 驚かないの…?」

 

「いや、むしろ今の説明で驚く方が大変なんじゃが……」

 

 

それくらいのことは秀吉だって知っている。

 

なにせあの話題レジャーパークのプレミアムチケットーー先行オープン招待券が景品となれば受験生である3年すらその情報が行き渡っているというのに。

 

 

「お主ら、本気で優勝するつもりかの……?」

 

「当たり前だよ!このチャンスを逃してたまるもんか!」

 

「なんだ秀吉。俺達が勝てないとでも思ってるのか?」

 

「当然じゃ…。これには3年Aクラスの面々も出るのじゃぞ? 経験も学力も格上の相手にどうやって勝つつもりなのじゃ……」

 

「そんなもん問題ねぇよ。ちゃんと作戦だって考えてるんだからな」

 

「はぁ……。却下じゃ。優勝せんと話にならんような策に賭けなぞせんで大人しく働くのじゃ」

 

「「それは嫌だ! 」」

 

「本当にお主らは……」

 

 

深いため息を吐いた後、秀吉はチラリと壁に掛かっている時計を見た。

 

 

「1時30分……。仕方ないのじゃ…。ちと休憩にするかの……」

 

「マジか!よっしゃ行くぜ!」

 

「おー!Aクラスに直行だ!」

 

「あ、お主ら! せめて制服に着替え直すくらい……! って、もう見えん……」

 

「………2人ともただのアホ」

 

「ムッツリーニよ…。30分で戻るように努力する。その間よろしく頼むのじゃ……」

 

「………任せておけ」

 

着替えるために半分開けた執事服のボタンを再び付け直し、秀吉は走り去った2人を追いかけた。

 

 

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