「Fクラス須川亮いきます!
とうとう幕を開けたAクラス対Fクラスの試召戦争。
小さな試獣達が主の代わりに戦い合い、飛び交う。
そんな戦争をただ黙って見届けることしか出来ない明久と秀吉。
その中で、とある一角。
Aクラスに勝てる策を持つ雄二の策が今動こうとしていた。
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「思ったより厳しい戦いだね…」
「そうね。まさかBクラスよりも苦戦することになるとは思いもよらなかったわ……」
そう漏らすのは秀吉が女子制服を着たような女子生徒と、ポニーテールで背が少し小さめの、男が100人居たならば95人が構いたくなるような可愛らしい女子生徒だった。
会話の内容からして2人はAクラスの生徒らしい。
「確か、明久と秀吉はFクラスって言ってたけど、さっきの前線には出てきてなかったみたいだから後衛なのかしら?」
「でもさ……何で2人はFクラスに行ったのかな……? 2人の学力ならAかBクラスには入れそうなのに……」
「理由は分からないけど……Fクラスにいることは厄介ね。教科によってはあたしたちでも負ける教科があるから……」
明久と秀吉のことを共に知っている女子生徒。
本当の学力まで理解している2人の名は木下優子と成宮千春。
木下優子はその名と容姿から分かるように秀吉の双子の姉。
成宮千春は明久と秀吉が心配しながらも若干味避けている人物だ。
「ま、もしかすると2人は戦争に参加してないって可能性もあるけど……」
「それだと助かるね。私もあの2人とは戦いたくないから……」
不安気な表情で廊下を歩く千春。
2人が戦争から少し離れて行動しているのは理由がある。
彼女ーー千春は、学年でも有名な男性恐怖症。
男とは話すことは疎か、近づくことすらままならない。
点数は高いものの、そんな状態での戦争参加は彼女にとっては酷なので、Aクラス代表である霧島翔子からFクラスの要である姫路、並びに数学の点数が高い島田を優子と倒すように指示され人知れず戦争から抜けているのだ。
「代表の予測だと、姫路さんは後半の突撃部隊に入ってくるって言ってたから、まずはFクラス付近まで行って姫路さんを見つけないとね……」
「うん。でも、何で後半の部隊なのかな? 敵だけど前半から活躍させて点数が減ってから補充させた方がいいと思うのに……」
「そこは代表の計算らしいわよ。Fクラスの代表はAクラスが最初から姫路さんを潰しにかかるだろうと考えて、最初にFクラスの召喚獣の扱いの上手いメンバーでAクラスの上位メンバーの点数を減らし、弱ったところを姫路さん含む後半メンバーで確実に潰しにかかってくるだろうからって」
「でもそれってAクラスの上位メンバーを出さないと向こうは姫路さんを出すよね?」
「だからこっちもワザと状態メンバーを前線に出して向こうを油断させてる間にあたし達が姫路さんを倒すってわけ」
「うわぁ……代表凄いね……」
霧島の組み込まれた作戦に思わず感嘆する千春。
説明した優子自身も、作戦の完成度の高さに改めて代表の凄さを知る。
「確かに。代表曰く、『雄二の考えはお見通し』なんだって」
「雄二? 知り合いなのかな?」
「幼馴染らしいわよ。AクラスとFクラスの人が知り合いだなんて珍しい……とは言いたいところだけど、あたし達もいるしね」
そんな話をしている、その時だった。
「……動くな」
「ひっ!?」
突如現れたムッツリーニ。
ムッツリーニは天井から千春の後ろに飛び降り、千春を羽交い締めにした。
「や、やめて! イヤ! 離して! 」
一瞬にして千春の身の毛がよだつ。
男性恐怖症の発作だ。
涙目になりながらも優子から遠ざけられる千春に、優子が叫んだ。
「土屋君やめなさい! この子が男性恐怖症だって知ってるでしょ!?」
「知ってるさ。だからこうしてるんだろ?」
そう答えのはムッツリーニではなかった。
「さ、坂本君!?」
通路の陰から出てきたのはFクラス代表坂本雄二。
その後ろにはFクラスの生徒であろう男子生徒面々がいた。
「知ってるなら離しなさいよ!」
「断る。そんな二つ返事で人質を開放できると思うか?」
「ひ、人質ですって!?」
「ああ。こいつは今からFクラスの人質だ」
ニヤッと妖しく笑う雄二に、優子は鋭く睨んだ。
「人質ならこのあたしにしてよ! だからその子は離して!」
「だから無理だ。こいつは男性恐怖症。それを分かって人質に取るんだよ。男子ばっかりのFクラスにな」
「あんたねぇ……!」
千春は『イヤ……イヤ……』と虚ろな目で呟いている。
悪魔のような雄二の言葉は、そんな千春を更に追い詰めるのには充分すぎるものだった。
「あんたそれでも人間!? 人の弱みに漬け込んで人質を選ぶなんて最低よ!」
「なんとでも言え。これは戦争だ。俺はこの戦争に勝つためには手段を選ばないつもりだ」
「ほんっとに最低ね……っ!」
「んじゃ、罵倒はそこまでにしてもらって、本題に入ろうか。お前らのクラスの代表、つまりは翔子をここに連れてこい」
「……どうするつもりよ…!」
「どうだっていいだろ? そんなことより、早くしないと成宮がドンドン追い詰められるぜ?」
「……っ! あんた覚えてなさい……!」
優子は千春の身を最優先に取り、霧島の元へと走った。
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その頃明久と秀吉は黙ってちゃぶ台の前に座っていた。
「大丈夫かな……」
「大丈夫……じゃろ。きっとAクラスが勝つのじゃ…」
もう何度と交わした会話は、到底自分がFクラスに所属しているものとは思えない。
すると、教室の外からクラスメイトの会話が聞こえていた。
『もう俺たちの勝ちも同然だな』
『ああ。成宮を人質にAクラス代表を誘き出してこっちの優位な状態で戦うだなんて、流石は坂本だぜ』
その言葉に明久と秀吉は同時に立ち上がり、教室を出た。
「それどういうこと!? 人質ってなに!?」
「教えるのじゃ! 今雄二は何をしておるのじゃ!」
殴りかかるほどの勢いで、2人は会話していたクラスメイトの胸倉を掴む。
「だ、だから男子恐怖症の成宮を人質に取ることで絶対に向こうの代表が出てくるはずだって……」
「さ、坂本は今成宮を人質に霧島と話してるはずだ…」
「それどこで!?」
「さ、3階の運動場側の渡り廊下だ……」
それを聞くと2人は掴んでいた手を離し、床を大きく蹴って走った。