僕と君と償う過去と   作:近衛龍一

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交渉条件

「……雄二っ!!」

「やっときたか翔子」

 

千春拉致場所。

優子は端的に霧島に事情を話し、急いで雄二の元へと戻ってきた。

霧島も千春のことはよく知っている為、慌ててやってきたのだ。

 

「……雄二! その子を離してあげて!」

「いいだろう。ただし条件がある」

「……条件……何?」

「Aクラスの降伏だ」

「……降伏…!?」

 

いつも表情が分からないと言われる彼女だが、この時ばかりは目を丸くして驚いた。

 

「そうだ。降伏だ」

「………」

 

苦虫を潰したような顔で迷う霧島。

今すぐにでも千春を助けたかった霧島だったが、その条件を飲めばAクラスの負け。

それはクラスの設備が下がること、しいてはAクラスの設備を手に入れるためにした努力を無駄にすると言う事だ。

 

「……雄二、他に方法はないの…?」

 

霧島は流石にそんな決断をすることが出来ず、雄二に別の提案を求める。

 

「別の提案……か。あるぞ」

「……本当!?」

 

教えてと言わんばかりに声を出す霧島に、雄二は真顔でこう告げた。

 

「もう二度と俺に話しかけんじゃねぇ。翔子」

「……え………?」

「さ、坂本…?」

 

霧島は何を言っているのか分からないといったように。

Fクラスの面々は何だその提案はと言いた気に坂本を見る。

 

「うぜぇんだよ。いい加減。邪魔なんだ翔子。お前の存在が」

「……雄……二……?」

 

突然の飛び火に、霧島の目に涙が浮かんだ。

周りの生徒は学年最高クラスと最低クラスの代表の間で行われている会話の意味が全く分からなかった。

 

「お前はいつも俺の側にいやがる。お前がいるとロクに他の女子すら好きになれねぇんだよ。そろそろ気がつけよ。俺はお前に興味なんてないんだ」

「……そん……な…」

 

面倒くさそうに説明する雄二を見て、翔子の目に溜まった涙が零れた。

 

「泣くのか? ふんっ。勝手に泣いてろ。もうお前に構うのは疲れた」

「お、おい坂本。いくらなんでもそれは…」

「黙れ。お前に俺の気持ちが分かるのか? あぁ?」

「その……す、すまん……」

 

いつもなら女子と話しているだけで男を処刑しているFFF団でさえも、その雄二の冷酷さに怒るのを忘れ、そして怯えた。

 

「で、どうするんだ? 成宮を俺たちに預けたままにするか、Aクラスの負けを認めるか、お前が俺に近づかないか」

 

涙を流す霧島にも雄二は全く動じずに、話を進める。

霧島はその涙を制服の裾で拭うと雄二の方をしっかりと見た。

 

「………分かった。 私が雄二から離れる。だからその子をーー」

「雄二ぃぃーー!!」

「なっ!? あ、明久!?」

 

突如としてFクラス側から怒りを露わに現れたのは明久と秀吉だった。

明久は雄二の前に立つとフルフルと体を震わせながら静かに言い放った。

 

「雄二。一度しか言わない。今すぐに千春を離せぇ!」

「断る。今更なんだ? 戦争には参加しないで要求だけ飲めってか?」

「…….そうだね。雄二の言うとおりだよ。だから一つだけ言い換えるよ。僕は戦争に参加しないと言った。だけどーー」

 

 

どうやら僕は雄二を倒すために戦争に参加しないといけないみたいだ

 

 

「な……っ!?」

 

そう、言い放った明久の言葉に動揺する雄二。

明久は一緒に連れてきた先生に告げた。

 

「Fクラス吉井明久! Fクラス代表坂本雄二に数学で挑みます! 試獣召喚《サモン》っ!!」

「く……っ! 最後の最後で邪魔しやがって! 試獣召喚(サモン)っ!」

 

数学

Fクラス 吉井明久 41点

VS

Fクラス 坂本雄二 453点

 

「お、おい何だあの点数は!?」

「ったく…。念のために補充試験で本気出しておいてよかったぜ……」

「雄二……」

「そうだよ明久。俺はバカじゃない。ただ……Fクラス並の点数を取る必要があったんだ」

 

ざわつく周囲。

当然かもしれない。

まさかFクラスの代表であろう者が450点オーバーの人間離れした点数を取るとは思ってもみない。

 

「俺はよ。お前がもしかすると本当は頭のいいやつなのかもしれないと思っていたが……その点数だとそうでもないようだな」

 

それは当たり前であろう。

なぜなら明久は今回の戦争に参加しておらず、補充試験も受けていない。

本気の実力を出すための試験を受けていないのだから。

 

「また随分と買い被ったね。でもさ、いくら点数が負けてても僕は勝負に負けないよ?」

「おいおい、それは正気か?」

 

明久の言葉を雄二が鼻で笑うのも無理はない。

明久と雄二の点数差は実に11倍。

どう考えても勝てる可能性はないように見える。

 

「正気さ。雄二、これはRPGじゃないんだよ? これはーー」

 

試獣を使った戦争なんだ

 

刹那、一種にして雄二の召喚獣の懐に入った明久の召喚獣は、その乏しい武器である木刀を雄二の召喚獣の心臓部に突き刺した。

 

「しまった!」

 

雄二が叫ぶかもう遅い。

召喚獣は光の粒子となり、(そら)に消えた。

 

「ま、マジかよ……」

 

誰が言ったのかは分からない。

ただ、明久は素っ気なく雄二に勝ったのだ。

11倍のも点数差を物ともせずに。

 

「しょ、勝者Aクラス……?」

「んな……バカな……」

 

ガックリと膝から崩れ落ちる雄二。

 

「さて雄二。事情をしっかりと聞かせてもらおうか?」

「……っ! くそぉっ!」

 

床をドンッと殴った雄二は立ち上がり、明久についてFクラス教室へと戻って行った。

 

 

 

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