単純な好奇心か、あるいはセレンディピティ?
今回爆死した横スクロールのゲーム、『横スク水』の続編の製作が決定した。
公開は…半年後らしい。前回が7か月での製作だったらしいが…。
売上は出せなかったが、幸いにも人気は出た。これを利用しない手はないとの事。
非営利目的での二次創作活動には寛容的な姿勢を見せ、二次創作のガイドラインも作った。
人間の里に裁判所などがないから揉めない様に広めるのはかなり大変そうだ。
グラフィック、BGM、システムなど評価の声は様々だが特に人間の里では見ないデザインの主人公キャラの『ヒトリちゃん』が大変受けている。人間の里での流行りの面から心配だったがこれは予想外だった。
キャラ萌えの路線は次作でも強化すべきだと話し合っている。
サウンドノベルでの製作の話が持ち上がった。
月の民ネットで販売されているサウンドノベル用のロイヤリティフリー素材を購入すれば予算も抑えられるのではないかとの案だ。
しかし、回転率の悪さや繰り返し遊んでもらえない難点、内容が知れ渡ればわざわざプレイしに来る人も多くないのではないかという意見も出た。製作費を削減できても儲けも小さいんじゃ仕方がない。敢え無く没になった。
…という話を、前回の会議に参加していなかった私に射命丸が伝えに来たのだった。
「レミリア嬢は正当な続編はやっぱり横スクロールでやるべきって言ってるみたいですよ」
「私も同意見だわ。製作期間も前より短いんだし使える素材は流用した方がいい」
射命丸は腕を組んで考える。
「でも手抜きって批判されたりしないですかね?」
「ファンを待たせるよりいい。渾身作より最新作。儲けが出れば3の製作の時に大きく作り直せばいいでしょ」
BGMは開発部の作曲にアレンジ曲を入れつつ新たな曲を入れ、コンパチブルキャラを増やしたりも提案した。
ゲーセンに置いたアンケート情報の結果から想像以上に多くのプレイヤーがこのゲームをクリアしている。
ヌルゲーにはできないし、理不尽なむりげーにもさせられない。絶妙な難易度にしなければ…。
「ふうむ…分かりました。ではまた」
射命丸はメモを終えると飛び去って行った。
記者としての仕事もあるだろうに、彼女も大変だな。
妹紅は石を買って来て岩の上に向けて投げる。
石は岩の上を跳ねて落ちてしまう。
彼女は声を低く唸らせてまた買いに行っては石を投げる。
私は隣でケタケタ笑う。
「妹紅は何をやらせても不器用だなぁ」
「言うなよ…地味に傷つくだろ」
あの岩の上に上手に石を乗せられたら願いが叶うという噂らしい。
それで私達も挑戦していた訳だ。300円で3つ石をもらえる。
私は3回中2回上に乗っける事が出来た。
「私が妹紅の願いを込めて投げようか?」
「こういうのは自分で達成しないと意味ないんだよ」
そゆもんなの?
今日の所は諦めて一緒に他を回る。
途中にあった珍しい饅頭を買って食べていた。
餅の中にチーズとはまた面妖な…。
的屋の中に魔理沙がいるのを確認した。驚いた、彼女が普通に店をやってるだなんて。
魔法具店と書いてある。ショーケースもなく何を売っているのか分からない。
「よお、やってるか?」
妹紅が魔理沙に尋ねる。
「まあ見ての通りだな」
パッと見はただ魔理沙が座ってるだけなので、どんなものを販売しているのかは分からない。
一体何を売っているのか尋ねると、彼女は手元のクーラーボックスを開いて見せた。
主な販売品は薬品の様だ。使用期限が近くなってる、用途のなくなった物らしい。
さすがに危険物は置いてない。主に子供の悪戯の様な物ばかりだ。
「盗品は売ってないのか?」
冗談めかしく聞く妹紅を小突いた。
「んーこの辺りじゃそういう物の取り扱いは厳しいからな。本気なら魔法の森の本店に来てくれ。買取もやってるぞ」
悪びれる様子もなく…。
ここで売ってる物は舌の色が変わる物とか、声が高くなったり低くなったりするもの、肌に擦り付けると煙が出るものとか様々だ。元々どんな目的で作ったか分からないものばかり。
あまり目ぼしいものはなかった。蓋を開けると小さな星が出て消える魔法の瓶だけ買った。
「なあ、これなんだ?」
妹紅がピンク色の瓶を取った。
「ん?ああ、それは媚薬だ」
妹紅はサッと戻した。
「よく聞く代物だけど、どれも眉唾よね」
「信じる信じないは勝手だ。でも効果は値段相応だと思ってくれ」
値段は800円。大変胡散臭いが、値段もお手頃で興味はある。
妹紅が他の屋台に目移りする頃に私はそれを購入した。
自分で売っておいて普通に驚かれた。
「誰に試すつもりなんだ?…悪い事は言わん、霊夢に試すのはやめておけ」
さては試したな。
大方、自分で飲む羽目になって苦労したとかそんなだろう。
「ううん…。じゃあ魔理沙に試そうかな」
「はは…お前から出された飲み物はしばらく飲まないように気を付けるよ」
私は媚薬を袂の中に入れておいた。
やがて日も暮れて、歩き疲れて足も痛くなって来た。
2人で迷いの竹林に向かって帰る。
デート…みたいにラブラブな雰囲気じゃなかったが、やっぱり楽しかった。
不器用だけど、何事にも一生懸命な妹紅は見てて可愛い。
一言で拗ねたり、照れたり。
今日の事を思いだすだけで何度も思い出し笑いをした。
「さっきから1人で何を笑ってるんだ?」
「昼は妹紅の頭に花を乗せてたのに気づかなかったなって」
「やけに視線を感じると思った」
そろそろ永遠亭に着く。彼女は思い出したようにポーチから何かを取り出した。
表紙に文字がなく青緑色一色の本だ。なんだこれ。
「慧音にこれを渡されてな。面白いからって聞いたんだが私にはイマイチ合わなくて…。今度会う時に感想を聞かせて欲しいって言われたんだ。参考にしたいから良かったら読んでくれないか?」
「いいけど…」
「それじゃ、ここまでだな。また近いうちに遊ぼうな」
そう言って妹紅は迷いの竹林の中に消えて行った。
…この本、何だろう。中身は小説の様だが…。
とにかく帰ってから目を通してみよう。
「帰ったよ~」
永琳の「おかえり」が聞きたくて「ただいま」を繰り返していたが姿が見当たらない。
探してみると、薬室の隅の机の上で用紙に付箋を付けている所で眠ってしまっているのを見かけた。
揺さぶっても起きないので、私は彼女を抱えて部屋に送り届ける。
途中で鈴仙に会った。
「あれ、師匠どうかしたんですか?」
「薬室で寝ちゃっててね。悪いけど部屋に行って布団を敷いてくれるかな」
「分かりました」
鈴仙は部屋で布団を敷いてくれた。そこに永琳を寝かせる。
鈴仙は掛布団を被せた。私は寝ている彼女に「いつもありがとう」と伝えた。
気のせいか、少し笑った気がした。
部屋を後にして、永琳の残した仕事を鈴仙と一緒にやる。
残ってる作業が手に負える範囲で良かった。
「それで、妹紅さんとは付き合うんですか?」
「え?」
「ここ最近は良く一緒に会ってるじゃないですか。もう、恋人も同然なのでは?」
んー…まあ傍から見れば確かにそうにしか見えないかも。
私はやっぱり妹紅を友達のように感じる。
妹紅はそれでも私を恋愛対象として意識している…。
恋人か…あまり悩まず取り敢えずOKしてみてもいいのかもしれない。
「姫様は妹紅をどう思うんです?」
「やっぱり恋人って言うより友達の方が近い」
「ううん…」
鈴仙は私に妹紅と恋人になって欲しいのだろうか。あるいは、いわゆる恋バナが好きなんだろうか。
そうだな…割とそういう話なら彼女の方が熟知してるかもしれない。
逆に鈴仙に好きな人はいないのか尋ねてみると彼女も腕を組んで考える。
「いますよ」
「誰?凄く気になる」
「いや答えませんけど」
ケチ。
聞くにちっこいけど凛々しくて、真面目だけどどこか抜けてる子らしい。
未熟な所を背伸びしてるその姿を応援したくなるんだとか。
私はふと思いついて袂から媚薬を取り出した。
「媚薬あるよ」
「…い、いりませんよ!」
一瞬だけ間があったあたり迷ったな。
…それにしても、好きになるというのは肉体的な面に惹かれる物も少なからずあるらしい。
この媚薬、むしろ私が飲めば恋が何なのかと言う答えに近づくのでは…。
ソーメン食べたい