ぐーやんでござるよ   作:ヤングコーン

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zzz…


16話 逆襲の小傘

私は輝夜から本を返してもらった。

さすがに数日経ってる事もあり慧音から感想を聞かれたりしてたので少し安心した。

 

早速と作品の感想について尋ねる。

 

「エロ、グロ、宗教、猟奇の描写とか心象表現は目を張るものがあったけど、物語全体的には微妙だったかな。読者の期待を煽るのは上手だけど肩透かしが多い。多分ライブ感で書いてると思うんだけど、読み物としては作り込みが足りない」

 

「辛辣だな」

 

「ラストが読者の想像に丸投げだったしね」

 

まあ主人公の2人がその後どうなったかを示唆する様な伏線は作中に散りばめられてはいるものの、いずれも推測の域を出ずやっぱりもやっとした感覚がぬぐい切れない。

 

「いずれも1冊で1つの話が終わってるが、他の本に他の物語に関するエピソードが挟まれたりしてるらしい。この本のラストらしいエピソードが他の本に載ってるって聞いた」

 

「他の作品に他の作品の大事な情報が小出しにされたって仕方ないし、『想像にお任せします』って読者にエンドを投げやっておいて後から『実はこうでした』ってそれはあんまりじゃない?だったら猶更、作中で明記して完結させるべきじゃない」

 

まあ…それは、うん。

 

個人的に分かりづらかった所とか、回収されなかった伏線についてとか話し合った。

歴史や文学小説に関する小ネタが随所にあるようで、意外な発見もそこそこあった。

 

彼女の意見は否定的な物が多かったが、興味関心が全くないわけじゃない様だ。

 

「著者は誰なの?」

 

「さあ。慧音に聞くしかないな」

 

輝夜は著者に会いたがっていたが、今日は寺子屋も休みで慧音も部屋に篭って書き物をしていて忙しい。この時の慧音は私でも迂闊に邪魔をすれば頭突きされる。

 

明日の朝か昼になら聞けると答えた。

 

まあもし気に行ったなら良かった。

 

今日は2人でにとり雑貨店に出かけた。前に聞いたデジタルゲームをプレイさせたいらしい。

幸いにも席はそこそこ空いていて、周囲の客が待っていなければ連コインしていいようだ。

 

私はあまり上手い方じゃなくて、100円を溶かし続けた。

お代は輝夜が自ら進んで出してくれたが…デートの事もあるしまた短期バイトでもしようかな。

 

輝夜は散々「下手だ下手だ」と笑っていたが、進め方は私にも分かるように丁寧に教えてくれた。

こういう過ごし方も悪くないかもしれない。

 

 

 

 

昼頃、輝夜は永遠亭で用事が入ったらしく家に戻って行った。

私は人間の里を少しぶらついてデートの場所の下見をしていた。

 

行方が分からなくなった猫を探したり、なくなった玩具を探したり、腰を痛めた高齢者の方を自宅に送って農作業の手伝いをしたりしているとあっという間に暗くなってきた。

 

断ったが、どうしてもというので農作物やらお饅頭やら色々もらった。

 

見ない間に色々な建物が増えたもので、レンタルキッチンなんてものがあった。

荷物を軽くする事も兼ねてそこでちょっとした料理を作って空腹を癒した。

 

家に戻る時間帯には雨が降って来た。

 

風邪をひくとまた輝夜が何か言うかもしれない。

雨風をしのぐ…とまでは行かないが簡単な家は作っておいたのでそこに戻ろう。

 

そう思っていると、とある家の屋根下で紅い目を光らせる何者かがいるのに気が付いた。

 

ただならぬ気配だ。

 

「お前は?」

 

話しかけるが、紅い目はやや怯えたように私に目を向けるばかりだ。

 

暗さに視界が慣れてくると、そいつの全容が見えてくる。

あの姿は…前に紅魔館の催し事で見かけた事がある。

 

確か城主の妹だ。

 

吸血鬼…雨…。そう言う事か。

 

「大人しくしているなら助けないでもないが」

 

吸血鬼はしばらく返事を躊躇ったがうなずいた。

 

この場を離れ、ある妖怪を探す。

命蓮寺から少し離れた足湯にいた。

 

「おい、ちょっと力を貸してくれないか」

 

「ひゃん!!!」

 

驚いた拍子で振り向きながら立ち上がり、足を滑らせて転んで足湯に漬かってしまった。

 

あー…。私は手を差し伸べて彼女の体を起こした。

 

「びっくりさせないでよ!心臓が止まるかと思った!」

 

そう…彼女は多々良小傘。色々とツッコミたい事は我慢して彼女に傘の貸し出しをお願いする。断られるかも、と思ったが彼女は目を輝かせた。

 

どうやら使ってくれる事が大変うれしいらしい。

 

うおう、貸してもらってなんだが色んな意味で凄いデザインだ…。

 

お礼を言って例の吸血鬼の元に戻る。ついでに彼女もついてくる。

着替えた方がいいんじゃないか聞いたが、一張羅は脱げないと言っていた。

 

…この辺でバイトしてるらしいし金は持ってるはずじゃ…。

 

足元に迫る水たまりを不安げに眺める吸血鬼の元に戻ると、傘を渡した。

 

「…他にマシなデザインの傘なかった……?」

 

「ふぐう!」

 

古傷を抉ったらしくその一言で気を失った。私は倒れそうになる彼女を何とか支える。

 

私は吸血鬼に傘を渡し、背負った。

それから小傘を抱きかかえる。

 

「人間の割に力持ちなんだね」

 

吸血鬼がのんきに言った。

 

「鍛えてますから」

 

適当な返しをする。

 

レンタルキッチンで手荷物を減らしてて正解だったな。

 

それから紅魔館へ向かっていると途中の分かれ道で曲がるように頼まれた。

もう遅いから帰った方がいいんじゃないかと聞くが、その必要はないと言って聞かない。

 

霧の湖沿いにしばらく歩くとぽつんと家がいくつか見えてきた。

 

指示された家に向かってノックすると、妖精が出てきた。

妖精って木の上で寝泊まりしてるイメージだったが。

 

「あんた誰」

 

「こんばんは」

 

妖精の言葉に吸血鬼が返事をした。

その姿に驚いて、とにかく中に入るように言ってくれた。

 

2人は知り合いらしい。

 

中で吸血鬼を下ろすと、用事もないので帰ると言ったが雨が止むまでゆっくりしていく様に言われたので私は好意に甘える事にした。

 

 

 

傘の妖怪なので水にぬれて風邪をひく…なんてことはないと思うが濡れた服でベッドに寝かせられないのでやむを得ず上着だけ脱がせてベッドに寝かせた。

 

その後も話に花を咲かせていたが、妖精…チルノの方はやがて眠気に逆らえず眠ってしまった。

 

吸血鬼は夜行性のはずだが、彼女に合わせて一緒に眠った。

私は近くに投げっぱなしになってたひざ掛けを2人にかぶせた。

 

私はと言うと、何故か彼女の家にあったゲームの筐体のゲームにハマってしまって寝付けないでいた。料金もかからないのでコンテニューできる回数も無制限だ。

 

これがもしコンテニューの度に100円払っていたなら何百円分ぐらい溶かしていただろう。

 

しかも進めば進むほどステージや敵の殺意も凄まじいものになり、ボス戦に行くのも一苦労だ。

 

「コンテニュー位置はステージの開始地点でも良かったけどな」

 

その場でコンテニューできるので、正しい攻略法とか出す前に倒せてしまう。

かといって1面からやり直すのも…。

 

チルノの家の電気は支払われた『カッパコイン』というコインの分だけしか供給されないらしい。彼女が寝る前に行っていた時間から計算するに…後20分ぐらいで停電してしまう。それ以内にクリアするにはもう勝ち方に拘っていられない。

 

迎えた最終ステージ。ステージのギミック、敵の多さ、弾幕の厚さはこれまでの比ではなかったが活路が全く見いだせなかった訳ではなかった。殺し殺され、死体の山を築いた分だけ慣れてきたこの腕が、指が主人公をエンディングに導く。

 

ラスボスを撃破し、エンディングが流れる。

正直、ラスボスよりそのステージの方が難しかった。

 

それはとても簡素なもので、すぐにタイトルに戻ってしまう。

 

こんなに難しいゲームをクリアできても、見られるエンディングはこんなものなのか…。

 

いや…、ここまでしっかり戦略を組み有限の残機の中でクリアできた人にのみこの画面が非常に嬉しいものへと変わるんだろう。

 

「またいつかプレイしたいな」

 

そう考えているうちにプツッ…と電気が落ちた。

どうやら私も寝る時間が来たらしい。

 

「んー…そろそろ寝るかな」

 

独り言をつぶやいて背伸びをする。暗いとどこに何があるか分からないな。

 

私は指先に火をともして辺りを確認しようとする。

すると、すぐ目の前に小傘がいた。

 

「ぎゃあ!!」

 

「わあ!!!」

 

お互いに驚いた。

 

小傘はどうやら私を驚かせるために接近していたらしい。

いつの間にベッドから抜けてきた。

 

部屋から彼女の静かな笑い声が聞こえる。

 

「ふふふ、リベンジ成功…」

 

足湯に漬かってた時のアレか。

 

「お前も驚いてたじゃないか」

 

「驚いてない」

 

まぁ、当人が嬉しそうなのでそう言う事にしておこう。

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