ぐーやんでござるよ   作:ヤングコーン

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2話 アルミホイルを頭に巻くでござる

『追い詰めた、ここで終わらせる!』

 

迂闊だった。敵のビーム砲が被弾してしまった。損傷が著しく出力が落ちて行っている。

短期決戦に持ち込まねば勝機はないと言うのに、切り返しの手がない。

 

無駄撃ちさせた。兵装は残り少ないはずだ。

しかし、この機体を破壊するには充分な数は残っている。

 

私は敵の弾幕を小惑星の後ろに隠れてやり過ごし、敵機に向かって蹴った。

相手は小惑星をバターの様に切ってこちらに向かう。

 

私はバックパックからデコイを射出してばら撒く。

 

『こんなデコイで私の目が誤魔化せるか!』

 

「デコイが誤魔化せるのは人の目ばかりじゃない」

 

ジェットの出力を上げてデコイから僅かに距離を取る。

そしてビームライフルの照準を敵機のコクピットに合わせる。

 

『死ねえっ!』

 

ビームは私がトリガーを絞るより早く放たれた。

 

このままビームが私に当たればゲームオーバー。

それは分かり切ってたが、勝負に出る事にした。

 

私の予想が正しければ当たらない。

そのためのデコイだ。

 

『この距離で外した!?』

 

「エイムアシストをオフにしておくべきだったな」

 

私の放ったビームが敵機のコクピットに直撃する。

危ない賭けだったがどうやらこの勝負は私の勝ちらしい。

 

客からの苦情で、このゲームの射撃にアシストツールが入るようになった。

操作性の難しさから初心者には評判のいいこのエイムアシストだが、上級者ともなれば先読み撃ちなどを狙った射撃ができず返ってこのツールが邪魔になるのだ。

 

近距離でデコイを放ったのも同じ理由。

エイムアシストを入れた場合、自動カーソル対象になってるデコイにも狙いが向くため至近距離で正確な射撃に手間がかかるのだ。

 

もしこれをオフにされていたなら、負けていたのは私だった。

悔しいが辛勝である。

 

リザルト画面をさっさと飛ばした。

そしてオフラインにしてからスペース・タクティカルの電源を落とす。

 

最近はあんなに強いプレイヤーを見かけなかったので驚いた。

次の通信でもマッチングしたらいいな。

 

私はそう思いながらゲーム部屋を出た。

 

 

 

 

部屋に寝転がってスマホを弄る。

通知が来てた。烏天狗…射命丸からだ。

 

内容は例のアプリの事について。

 

あれからまたオンラインに潜ってゲームやってたからこっちは手付かずだった。

 

せっかくなのでアプリを開いてみた。

画面に複数のゲームが表示されている。

 

本格的に作り込む前に今後の方針も兼ねて途中までのゲームが作られているんだろうか。

うちの1つを起動してみる。内容は横スクロールのゲームだ。

 

ワンコインで残機3つのキャラを操作してクリアを目指す。

スマホ画面でやや操作しづらいが、軽快なBGMが耳に心地いい。

 

ステージ中に葉っぱが落ちてて、拾うとポイントになる。

これが何の役に立つのかは今は分からないが。

 

難なくステージ4までクリア。

 

それからは落とし穴やギミックで徐々に減らされゲームオーバー。

コイン投入代わりのコンテニューボタンをしてリトライ。

 

2回ミスしつつ無事にクリア。

続きはまだ作られていないらしくタイトル画面に戻された。

 

タイトル画面でキャラのコスチューム変更やステージクリアのためのアイテムが買えるらしい。

この時に使うのが集めた葉っぱの様だ。

 

ステージクリアのためのアイテムはコンテニュー画面にも増やした方がいいのでは…。

 

大画面かつ高画質のゲームに慣れてるとやや作りがチープに思えてしまうが、これはこれで面白い。

 

しかし、ゲームの難易度の低さが気になる。

村の子供を対象に作るにしたって、数が多い訳じゃない。

開発費回収のためにも少ない数のプレイヤーに多く遊んでもらう必要がある。

 

オープニングの様な、キャラがゴールに向かうための目的がないのも気になるがこれは後に追加されるんだろうか。

 

意見と疑問について書いた文章を開発に送った。

 

 

 

 

「輝夜~、お客様がお見えよ」

 

永琳が襖を開いて言った。

 

「ううん…お気にのワンピがないから今日は行けないって言っておいて」

 

「ビジネスパートナーなんだからぞんざいに扱わないの!」

 

んもう…運営はほぼ永琳に任せてるんだから私と話したってどうしようもないでしょうに。

仕方がない。適当に流して帰そう。私は今多大な倦怠感に覆われ何もしたくないのだ。

 

さて、そのお客様とやらのご尊顔を拝んでやろうじゃないか。

 

客室に続く襖を開いた。

 

「お邪魔しマンボウ!」

 

「ええっ!?」

 

開幕から奇抜な挨拶で先制攻撃。相手は不意を突かれ驚いている事だろう。

これで会話のイニシアチブを奪った。後はいかに適当な話をして帰るかだ。

 

さて、この愛らしいちんちくりんは…。

 

「さとりん……!!」

 

「あっはい、どもです」

 

いやああああああああ!!!!!!

 

さとりんだ…さとりんだよ…あのさとりんだよ……!!

未だに重役会議でテレワーク出席を求められる名は伊達じゃないあの子だよ。

 

会いに来る!?んもーやだぁー!!

 

……いや、待てよ。さとりんは常時心が読めるのか?

効果の範囲は?どのぐらい読めるのか??

 

全ての心の声が聞こえるのであればこのト書きも聞こえている事になる。

試しに何か考えてみよう。それに反応したらこの間も心を読んでるに違いないのだ。

 

私は試しに彼女の妹が頭の中で増えていく想像をしてみる。

 

「頭の中でうちの妹を増やすのやめてくれませんか」

 

読まれてる…。もうやだこの子。

 

私は台所に行くとアルミホイルを1mほどで切って頭に巻いた。これでよしと。

 

「それで、何のご用なんです?」

 

「いえ、近くを通ったので挨拶をと思いまして。これ、菓子折りです。どうぞ」

 

「あ、これは丁寧にどうも」

 

人間の里でしか手に入らない菓子折りを持って永遠亭をついでに通るというのも中々なアクロバット社交辞令だと思う。私は菓子折りを受け取った。

 

鈴仙がお茶請けを届けに来た。

 

それからはちょっとした世間話に花を咲かせた。

人の心を読むという意外は普通に話せるというのはSNSを通しても変わらない。

 

話を通してぼんやりと思い出したが、そういえばにとり達が温泉事業をやっていたんだった。

それで今後ともよろしくとの挨拶だったのかもしれない。

 

「まあそんな所です。これからもご贔屓に」

 

「こちらこそよろしく」

 

握手を交わし、彼女の背中を見送った。

 

 

 

 

私はぼんやりと鯉の餌を投げる。

鯉たちが餌を奪い合い、ぱくぱくとしている。

 

それにしてもこの餌に向かって集まるこの感じはいつ見ても美しい。

 

鯉に餌をやるゲームとか流行らないかな。

 

「この間のゲームプレイしてくださったんですね。感想喜んでましたよ」

 

誰かと思えば射命丸だ。

 

「もうちょっと煮詰めればより面白くなるかもね。個人的には物足りなかったけど」

 

「2、3面の難易度調整はしてるみたいです。二段ジャンプを入れようかとか、操作に関する話も出てるみたいですね」

 

「ステージのギミックとか敵の追加とかで難易度を上げるのはいいけど操作の変更は絶対にやめて。あのゲームは絶妙な操作性の悪さがいいんだから」

 

「そうなんですか?プレイした事ないんでよくわかりませんけど」

 

仕方がないのでアプリを開いてスマホを射命丸に渡す。

随分ぎこちない操作で、1面の敵にやられたりしている。

 

にとりの販売したポケットゲームの試作はプレイ済みと言う事だから大丈夫と思ったが思ったより進まない。

 

「何か指に力入りますね」

 

「肩の力抜いて。キー入力を正確に」

 

ようやく操作がサマになって来た頃、穴に落ちてゲームオーバー。

これで300円分のコンテニューになる。

 

私にお手本を見せて欲しいと言うので目の前でプレイしてあげた。

 

ゲーム画面と私の指さばきを見て目をぱちぱちさせていた。

 

「こんな感じ」

 

「指の動きどうなってんですかそれ」

 

「意外に操作難しかったでしょ?何度もプレイすれば慣れるだろうけど、その前に飽きられないとも限らない。今はそのこの操作性ならではの難易度の高さを作るべき」

 

「ふうむ…わかりました。伝えておきます」

 

そう言って射命丸は帰って行った。それだけを聞きに来たのだろうか。

まあ何でもいい。またプライベート時間が戻って来た。

 

私はもうひと眠りすべく自分の部屋に向かった。




絶賛スランプ中です(げっそり)
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