ぐーやんでござるよ   作:ヤングコーン

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あの無茶ぶりで笑わなかった私も悪い


19話 幽霊ジョーク

私は朝食をとりながら幽々子に妖夢の派遣についての質問を書いて送った。

返信は遅くなるだろうと思っていたものの、案外とすぐに帰って来た。

 

『うちの妖夢をよろしくお願いします(^^♪』

 

なにわろてんねん…。

 

私は質問に答える様に促す。

 

『好物はチョコです。あげすぎに気を付けてください。割と繊細な子です。驚かせると拗ねる事があります。頭を撫でると喜びますが、あまりやると怒ります。落ち着きがない時はストレスが溜まってます。静かな環境にいると落ち着きます』

 

…何の説明なんだろう。

 

私はおそるおそる妖夢の頭を撫でた。彼女はこちらを向いたが、特に何も言わない。

喜んでる様にも見えないし、怒ってる様にも見えない。

 

「なあ、私も撫でていいか」

 

妹紅も妖夢の隣に座る。

 

「はあ…、まあどうぞご自由に」

 

やや困惑しながら許可した。妹紅は妖夢の頭を撫でる。

 

ううん…何と言うか撫で心地がいい。

あまりやると怒るらしいので私は食事の手を進める。

 

メールでやり取りしてもこれ以上幽々子から有益な情報を聞き出せそうにないので返信はやめておいた。

 

 

 

 

永琳に頼まれ亀甲温泉に薬品を届けに向かっていた。

妹紅はバイトに出かけるとの事で途中で別れた。

 

荷物の半分は妖夢に持ってもらっている。

話題を振っても中々盛り上がらず、お互いにどう話したものやら困っていた。

 

間が持てないもので、いっそ無茶振りをしてみる事にした。

 

「じゃあ…面白い話をして」

 

目を伏せて少し考えていたが、うなずいて話し出す。

 

「平生の時は自若泰然であられる幽々子様ですが、実はああ見えて怖がりなのです」

 

「え?」

 

とてもそうは見えない。あの幽々子が、何かに怖がる所なんてとても想像できない。

 

…まんじゅう怖い、というオチじゃないよね?

 

「草木も眠る丑三つ時。静まり返ったお屋敷に悲鳴が響き渡りました。すぐに自室を飛び出し、厠の前でうずくまる幽々子様に駆け寄って何があったのか尋ねたのです」

 

身振り手振りをして説明する妖夢。割とノリノリだ。

口ぶりはジョークを離す時のソレではないのだが。

 

彼女は虚空を指さして話を続ける。

 

「おそるおそる指を差し、震える声で我が主はいうのです。『鏡に幽霊が…!』」

 

 

【挿絵表示】

 

 

妖夢の貴重な幽々子の真似が見られたが、そのジョークの出来は笑うにも若干無理があった。

彼女はしばらく私の顔を見ていたが、白桜剣を取り出すとその場に座って腹に刃を当てる。

 

「お見苦しい所をお見せしました。自刃致しますので介錯をお願いします」

 

「いい!いい!面白かった、面白かったからそれやめて!」

 

妖夢にジョークは禁物かもしれない。

 

 

 

 

人間の里に到着すると、遠くに変わった妖怪が見えた。

あいつは…鬼人正邪だ。

 

妖夢は楼観剣の柄に手をやって構える。

 

「なます切りに致しましょう」

 

少し前に捕らえる様にお触れが出ていたが、今はどうなのだろう。

近くに妖怪がいれば見逃すとも思えないが…。

 

考えていると私たちの前に影が下りてきた。

 

翻るマント…豊聡耳神子だ。

 

「あいや待たれい。彼奴への暴力は私が赦さんよ」

 

「何故…」

 

神子は正邪を呼んだ。

 

「はい、なんでしょう」

 

「これまでの騒動、及び行いを水に流して欲しい。正邪も己の性分、苦心しておったのだ。良心の呵責に耐えかねた彼女は私の元で更生に励むと誓ってくれた」

 

私は正邪の方を向いた。彼女はニッコリと笑って見せる。

いや絶対に騙されてるよこれ…。

 

私は露骨に疑いの目を正邪に向ける。

 

「私も心を入れ替え懸命に皆様の信頼を勝ち取るつもりです。仲良くしてください」

 

顔が引きつっている。演技であっても心にもない言葉を述べる事は堪えるらしい。

 

何をたくらんでこんな事をしているのか分からないが、下手に騒動を起こしても厄介だ。今は泳がせておくべきだろう。

 

妖夢は冷たいまなざしを向けたまま彼女に頭を下げた。

 

「そうとも知らず、斬りかかる所でした。深くお詫び申し上げます。…どうぞこれからよろしくお願いします、正邪さん」

 

「はは…いいんですよ別に」

 

正邪は笑う。神子はため息をつきながら笏で正邪の頭を叩いた。

 

「これまでの非礼を詫びぬか。見直してもらうのであろ」

 

彼女は予想しない展開に驚く。彼女はやや慌てつつ頭を下げようとするのだが、どうにもこうにも上手く行きそうにない。何か言い訳を必死に考えているようだが、立ち尽くすばかりだ。

 

神子は肩をすくめ代わりに私達に頭を下げた。

 

「またの機に必ず。行くぞ、正邪」

 

「は、はい」

 

そう言って2人とも去って行った。正邪は振り返ると妖夢に殺気立ったにらみを利かせて行った。

妖夢は勝ち誇りに満ちた表情で笑っていた。

 

「実るほど頭を垂れる稲穂かな。…人格者を演じるには、いささか教養が足りぬようですな」

 

「言うね」

 

私はスマホで重役メンバーにこの出来事について伝えておいた。

 

 

 

 

亀甲温泉に届け物を渡すと自宅に戻った。

風呂と食事を済ませて自室に戻る。

 

部屋に入ってすぐの所に今朝、烏天狗が置いて行ったチラシがあるのが見えた。

 

そういえば妖夢の訪問ですっかり忘れていた。結局何だったんだろう。

 

内容は…紅魔館で立食パーティーをするという催し事のお知らせだった。

あのお嬢も好きだな、パーティー…。

 

スマホを確認すると、やはり神子と正邪の件は知らなかったという意見が多かった。

 

匿ったのは飽くまで自己判断と言う事らしい。

 

紫からは今は無理に干渉する必要はないと返事が来た。

人間の里に潜伏しようとした動機を模索しているとの事。

 

今まで様々な人妖に殺意を向けられ逃げおおせているあたり、下手に深追いしても仕留める事は難しそうだ。

 

「今はあのままにしておくべきか」

 

大きく欠伸をしてうとうとしているとまた電話がかかって来た。

今度は烏天狗からだ。一体何の用だろう。

 

内容は医者に過労と診断されてしばらく仕事ができないという内容だった。

 

うちは新聞は取ってないし、もうにとりに投資もしてないし、なぜ私にそれを伝えたのかは分からないが…。とにかく「お大事に」とだけ伝えて電話を切った。

 

彼女の所で広告を打っている店は大変だろう。

花果子念報は今のうちに知名度を伸ばしそうだ。

 

人間の里での動向を探るためにも新聞を取るようにしようか…。

 

ベッドに寝転がりあれこれと考えていると妖夢がお風呂から戻ってきた。

 

「今戻りました」

 

「ありがとう。それじゃ楽にしてて」

 

妖夢は隅で正座する。

 

しばらくすると妹紅も部屋に戻って来た。1人部屋にはそこそこ広い自室だが、さすがに3人もいると少し狭く感じる。彼女は手荷物を置いてお風呂に入りに行った。

 

戻って来た彼女と社員食堂に向かう。

 

「今度、紅魔館で立食パーティーやるらしいね」

 

「ああ、知ってる。咲夜が妖精向けにマニュアル作りを急いでた」

 

「妹紅のバイト先って紅魔館だったんだ…」

 

今は研修期間らしいのだが、元より組まれたカリキュラムが妖精向けであるため軽い仕事はさっくり説明の後に任されるらしい。

 

妹紅は不器用なのでどうしてるか心配だったが、割と上手くやってる様だ。

 

レミリアが立食パーティーの提案をしたのはいつにも増して急だったらしく、前よりドタバタしているんだとか。いつもは親睦を深めたり企画を発表したりする事を目的として行っているらしいのだが、今回はその真意が分からず咲夜も困惑しているのだという。

 

確かに事前通告が遅かった。根回しがしっかりしてないと都合がつかず狙った相手と話ができないだろうに…。不気味だ。

 

一連の出来事には何か繋がりがあるのだろうか。

あるいは、ただの杞憂だろうか。

 

物事が見えない今はあれこれ考えても仕方がない。

今しばらくは事態を静観し、次の行動を考える事にした。




友達に今書いてる小説の話をしたらパロディが細か過ぎて伝わらないと指摘された。うん。言われてみればそうかも。
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