今日は月に1度の重役メンバー会議。相変わらず全員は揃わない。
机に置かれたモニターにさとりが表示された。
『すみません、少々遅れてしまいました。あの、音声は繋がってますか』
神奈子がモニターをの位置と音量調整をする。
諏訪子は大きく欠伸をして机に突っ伏す。
「毎月集まる必要なくない?話す事ある?」
「言いながら毎回ちゃんと出席するんだよな」
神奈子が苦笑しながら言った。
「私が出席しないとお前、会議のたびに私の悪口言うんだろ」
…何だかんだこの会議を楽しみにしてたりして。
四季映姫が咳払いをする。皆が注目する。
「そろそろ本題に入りましょうか。人間の里の法整備についてです。手元の資料を見てください」
資料に書いてあるのは人間の里の犯罪検挙件数と概要、それぞれの犯罪者の処遇についてやその会議の内容について書かれていた。犯罪の検挙数は横ばいに見えるが処分などの会議が長引いたり、個人や集団の裁量で服役期間が長くなったり短くなったりする事もしばしば。
これにより村役場と町民が揉める事が発生してるらしい。また、懲罰が緩い事もあり再犯率もそこそこ高く決まり事、掟が犯罪の抑止力になっていない事も取り上げられた。
「また、村役場の同役員に対する処分が甘かったり、反感を買ってる村役場への犯罪に町民が寛容的な処分を求めたり…。人間の里の秩序を保つには法律と、裁判所が必要です」
「私なら裁判員に賄賂を渡して自分に有利な判決を下すように頼むけど?」
レミリアが笑いながら言った。
「今のは犯罪予告と捉えても?」
映姫がレミリアを睨んだ。彼女は悪びれる様子もなく肩をすくめた。
この論題も別に今日初めてではない。レミリアが言いたい事は分かっているのだろうが、まぁおそらく融通の利かない性分なのだ。
ここは私がレミリアが言いたい事を言って話を前に進めるとしよう。
「要は権力が一か所に集中すれば癒着の問題も発生するって事。そのために政府を立ち上げるかどうか…まではもう話したんじゃなかった?」
「ええまあ…そうですね。そこの吸血鬼の不規則発言に少々取り乱しました。続けましょう」
各々がそれぞれの意見を出し合う。これだけ観点が揃えば事実もたくさんの顔を見せるもので、私は感心しながらぼんやりと聞いていた。
たまに自分の主張に賛同するように、あるいは反対するように求められる事もあったが当たり障りのない言葉を並べて躱していた。
議論はヒートアップしていく。それぞれも語調が荒くなって来た。
「論ずるに値しません、お為ごかしもいい所です!誰も支配構造なん必要としていないんですよ。必要なのは急く事無く問題の解決にあたる根気と時間です」
聖が室内に響き渡る声量で叫ぶ。
レミリアは机を手を叩いて笑う。
「それで立ち行かぬ状況だから、解決のための手段として政府の立ち上げを講じているんだろう。迷える羊には優れた牧羊犬が必要だ」
「当の羊は牧羊犬を必要としているのかな」
幽々子は既に使わなくなった手元の資料を鋏で切って折り鶴を作りながら言った。
神奈子は権力を分ける3つ目を提案し、暴走を止めるための三竦み状態を作る事を提案した。行政を行う政府の発案を審議する国会を作り、一定の賛同を得ないと施行できないようにする等。
守矢メンバーは幻想郷の外の政治を元にした旨を取り入れる方向性で話を進めている.
「選ばれるのは民に選挙で選ばれた奴だけだ。自分勝手な事をしようものなら支持率を落とし、他の政党に政権が渡る事になる。これにより誰も自身の地位に安座できない。自身で支持を会得するしかないんだ。聖の言う様な支配構造なんてできない」
「まあ…確かに」
聖は顎の下に手をやって考える。
『権力は集中させるべきもの!国のあるべき理想はまさに一党独裁制!無知蒙昧たる愚民共に先導者の喉元を差し出すなど言語道断、民衆とは知性と伴わぬ魚群が如きもの!民主主義の脆弱性は…』
さとりが映っていたはずのモニターにこしいが映っていた。さとりは椅子を蹴り倒すと持って来た椅子に座ってカメラを自分の方に向けた。
『すみません、うちの妹がお騒がせしました』
中々苛烈な思想を持ちそうな妹だったな。
「と言うか、人間のいない所で人間達の決め事を勝手に会議してるってウケるよね」
諏訪子がケタケタ笑った。
そこで会議室のドアが勢いよく開いた。見やると稗田阿求がいた。
皆の注目を浴びながら彼女は近くの空席に座る。
誰が連れてきたのかとお互いにお互いの顔を見合う。
紫が手を挙げた。
「当事者抜きじゃどうかと思ってね」
映姫と紫はこの会議の内容から連れてくるつもりだったらしい。
これまで諏訪子が発言した様な事を今の今に至るまで誰も発言しなかったことに関して大変ご立腹らしい。まあ言わんとする所は分からなくもないが。
「すみません、もうちょっと早く入場していただくつもりでしたが…機を逃し今か今かとタイミングを見計らっておりました」
映姫は申し訳なさそうに言った。
「いえいえ、良いんです。皆様、人間抜きに人間の事をしゃあしゃあと宣うもので感服しておりました」
「そう目くじらを立てるな。心配せずとも人間の代表ならここにおるではないか」
「それは随分と気の早いお考えであらせられますね、聖人君子の首相殿」
「亀の甲より年の功。人の求める声が聞こえぬほど耄碌してはおらんよ、阿求殿」
阿求は神子の尊大な態度に食ってかかるが、彼女は笏で口元を隠して涼し気に言葉を返すだけだった。
論議は更にヒートアップする。さすがに掴みかかったりする様な事にはならなかったが、場の空気はこれまでになく張り詰めていた。各々、少しずつ疲れも見えて来る。
「ぜぇ…ぜぇ…、とにかく!人外による参政権は認めません!人民の人民による人民のための政治、あなたの様な方が人間を管理しようなどと思い上がりも…げほっげほっ」
「人民に選ばれた代表に種族などあるまい!多くの支持を得るかどうかだ、立候補する権利さえ奪うとは…この排他主義者め!!」
レミリアが立ち上がりながらそこまで叫ぶと、立ち眩みでもしたのか倒れかかる。私はすぐに立ち上がって支え、座らせてあげた。彼女は私に礼を言って深呼吸をする。
阿求は言い返したげにレミリアの方を向いているが、まだのどの調子が良くないみたいで神奈子に背中をさすられている。
僅かな間に室内に沈黙が返る。誰もが次に何を発言しようか考えている様だが…。
部屋にシャボン玉が浮かんだ。幽々子だ。
「急いては事を仕損じる。今の私達に必要なのは議論を過熱させる事じゃなくて、頭を冷やす事だと思うのだけれど…どう思う?」
「私も幽々子の意見に賛成。結論を急くべきじゃない」
そう言って私も幽々子の言葉に同調した。
彼女の提案に誰も異論はないようだ。
「政府の設立そのものへの反対意見はないようだし、今は人間の里代表は作るという方向性で準備にあたるつもりだけどそれでいい?」
紫の発言に聖は複雑そうな顔をしていたが、特に異議を唱える事はしなかった。
ようやく落ち着いて来た阿求が水を飲んで一息つく。
「飛び交った意見などをまとめた書類は後に作成させていただきます。配布はいかがいたしましょう」
今ここにいるメンバーならスマホを使って確認できるが画面のサイズから目を通すのには向いてない。現物があるならその方がいいはずだ。
紫が挙手した。確かに彼女なら難なくここのメンバーの元に届けられそうだ。
「…会議中、昂った感情に任せ不適切な発言をしてしまった事をお詫びします」
阿求は頭を下げて謝った。
「私も売り言葉に買い言葉だった。ごめんなさい」
レミリアも謝る。
『主義主張は異なれど、幻想郷を想う気持ちは同じと言う事で…』
さとりの発言に映姫も頷いて同意した。
そうしてひとまずは解散になった。次の重役会議は来月と言わず割と近いかもしれない。
私も席を立って家路に向かいだすと、紫に止められた。何か話があるのだという。
何の用事なのかは分からないが、取り敢えずついて行った。
自分で書いててなんだけど何の話を書いているのか分からなくなって来た←
ただ分かるのは、未だかつてない程の大迷走をしているという事。
【挿絵表示】
多分今話してる内容が本編に大きくかかわって来るのは次作からで、今作は今作でまとめると思ふ