ぐーやんでござるよ   作:ヤングコーン

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借りたはいいけど、このペンいつ返そう…


24話 隠れウサギのシッポ

やはり人間の里に玉兎はいなかった。

妖夢は何かに気が付いたようで私に言う。

 

見やると人だかりができていた。

真ん中には物部布都が演説をしていた。

 

「我を信じよ人間の里、この物部布都の言葉を信じよ!何故なら、我こそが太子様に選ばれし者だからだ!恐ろしく強力な太子様、無価値なしもべである我々は称賛する!あなたの慈悲と善意によってのみ我々は真の悟りに到達できる!」

 

どこかで耳にしたことがあるような演説を行っていた。

 

どうやら政府を立ち上げるという情報だけで本当に活動しているようだが、阿求の言う様に参政権についてまだまだ話がまとまっていない。どう考えても時期尚早だ。

 

「気が早いんじゃないの?」

 

私がつぶやくと、私を発見した物部がこちらに走って来る。

 

「ついにきたか!太子様の言葉を聞きに来たな!」

 

その某ダークファンタジーRPGに出て来る狂信者みたいな物言いやめろ。

私は今から選挙活動しても参政権がないんじゃ無駄に終わってしまう事を告げた。

 

しかし、彼女はまるで意に介する様子がない。

 

「そんな事、決める前だからこそ活動しておるのだ。我らが声高に参政権があるように言えば信じる民はついてくる。覆せぬ既成事実を作ればこっちの物じゃ」

 

「ああ…なるほど。確かにそれもそうだ」

 

「そうじゃろう、そうじゃろう。我らにとって天命とは座して待つ物ではなく掴んで我が物とする事ゆえ」

 

大変ご機嫌そうに言う。その過剰なまでの自信、ちょっとうらやましい。

彼女はミカン箱の上に立って再び演説を始めた。

 

遠くで神子が物部の様子を眺めているのが見えた。

私は近くによって話しかける。

 

「やりますなぁ、策士殿」

 

「いや…あれはだな。私はよせと言ったんだ。悪目立ちするから…」

 

彼女の指示じゃなかったのか。

 

「でもな、ミカン箱に乗ってなお周りの大人に埋もれて必死に背伸びしてる様が可愛くて止めるのも気が引ける」

 

……飛べばいいのでは…。

 

ついにミカン箱2つ重ねてその上に乗って演説を始めた物部と、それを見守る神子。なんだかこう…きっと微笑ましい風景なんだろう。

 

「そういえば、あの天邪鬼の姿が見えないけど?」

 

「奴ならあっちの川で洗濯しておるぞ」

 

「そっか…ありがとう」

 

事情は分からないがあいつも不穏な動きを見せている。鎌をかけ、玉兎の事件と関わりがないか聞き出してみよう。

 

 

 

 

神子の言う通り正邪は川にいた。洗濯物はあるが、洗ってるようには見えない。近くには針妙丸がいた。

 

「そう言うなよ。手を貸してくれよ。な?」

 

「足なら貸してやらんでもないぞ。ほれ」

 

バカにする様に差し出した針妙丸の足を正邪は摘んで転倒させた。

 

何の相談だろう。盗み聞きしてみたいが近くには隠れる場所がない。妖夢が私を岩陰に呼ぶ。しかし、その距離からじゃ聞こえない…。彼女には何かが策があるんだろうか。

 

一緒に岩陰に隠れると、彼女は半霊を飛ばして草むらに潜む。なるほど、そういう事もできるのか。

 

「どうやら次の選挙に彼女も立候補するつもりの様です。その時の協力をあの小人に要請してて…交渉は上手く行ってない様子」

 

「玉兎の事は?」

 

「いえ、何も…」

 

結局交渉はまとまらなかったらしく針妙丸の方からどこかへ行った。正邪は舌打ちしてまたぼんやりと川の向こうを眺めている。

 

私の方からも接触して何か聞き出せないか尋ねてみよう。私は妖夢と一緒に彼女の元に向かった。物音でこちらに気付いて振り返る。

 

「これはこれは、永遠亭の姫君に白玉楼の庭師ではございませんか。どうしました?」

 

「最近、人間の里に招かれざる客人が出入りしてるんじゃないかと思ってね」

 

「ふむ…それはひょっとするとこんな顔で?」

 

彼女は口角に指を突っ込み吊り上げ笑って見せた。私は首を横に振った。彼女は首を傾げる。

変わった事はないか、見慣れない人妖はいなかったかを聞いた。

 

正邪は答えず真顔で私の顔をじっと見ていたが、やがて腕を組んで考えた。

 

「実は見たんですよ。真夜中の3時ごろに。閉まった茶屋で」

 

彼女は身振り手振りしながら説明する。

 

「雰囲気はアレに似てましたね。あなたの所のほら…何でしたっけ。あのくたくたな靴下みたいな長い耳のウサギ…」

 

「鈴仙?」

 

彼女はうなずく。本人が聞いたらマジギレしそう。

 

話だと、その玉兎らしき何かは閉まった茶屋でくつろぎながら何か話していたらしい。内容は聞き取れない発音も多く分かりづらかったが、昼の幻想郷を歩いてみたい…とかそんな話だったようだ。

 

どんな巡りあわせなのか分からないが、彼女は玉兎を目撃している。…嘘にしては出来すぎている気がする。

 

「何しろ手癖の悪いものでしてね。ちょいと拝借してしまったんです」

 

そう言って彼女は何かの布切れの様物を見せた。それはよく見ると…。

 

「頭巾?」

 

「ええ、ええ。そうなんです。例の妖怪はこいつを頭にかぶると姿を消せるみたいなんです。あれから色々と試してるんですけどこれが上手く行かなくて」

 

彼女はそう言って被ってみるが、消えたりしない。使い方か…あるいはエネルギー切れか。

 

帰ってじっくり調べたい…。

 

「これ、良かったら貸してもらってもいいかな」

 

「はい喜んで!…と快く言えたら良かったんですけどね。私が持ってても仕方がないにせよ、利用価値をわかってしまって簡単に手放せません」

 

「…何か欲しい物はある?」

 

「ええ。あなた方が持っているような通信端末と、あなたの連絡先ですかね」

 

何かをたくらんでいる事を思えば一見好意的に聞こえるこれもあまり心地のいい条件ではないが、今は玉兎の件の調査を急ぎたい。私はその条件を飲み込んだ。

 

「よろしいので?」

 

妖夢が私に確認する。

 

「ええ。善良な友人を拒む理由はないわ」

 

「お心遣い感謝します、良き友人」

 

私は姫海棠を仲介に新しいスマホの契約をした。使い方をレクチャーして教える。1年間は通信費を支払ってあげる事にした。それからは手続きに則って支払わないと使えない事も伝えた。(課金は請求する)

 

持っていないが、妖夢も興味はある様で正邪と一緒に聞いていた。

電話帳に私の電話番号とメールアドレス、連絡用のSNSも入れておいた。

 

彼女にスマホを渡し、頭巾を受け取った。

後はこれを研究するだけだ。

 

 

 

私は永遠亭に戻り、部屋で横になった。

今日はもう疲れてどこにも行きたくない。

 

妖夢は部屋の隅で正座する。

 

「もっと楽にすればいいのに」

 

「いえ、お構いなく」

 

私は部屋着に着替えると、少し寝る事にした。

妖夢も私が見ていない間ぐらい足を崩してる事だろう…。

 

おやすみ…。

 

「お邪魔します」

 

鈴仙が部屋にやって来た。

 

「お邪魔するなら帰って~」

 

「はいよー」

 

そう言って鈴仙は出て行った。私は毛布を深くかぶって眠る。

どたどたと押し音を立てて戻って来る。

 

「いや、何やらせるんですか!」

 

んんん…。今はとっても疲れてるんだってば。

でも鈴仙の用事も気になるので体を起こして話を聞く事にした。

 

内容は、例の暗号についてだった。

 

「衛星局は場所、白樺は組織を指すメンバー達の隠語なんです。月の民ネットワークでの調査は中々骨が折れましたが、HNP×××の所在は掴めましたよ。公的権力下ではない小規模な集団の様です」

 

「どうやって調べたの…」

 

「実は姫様が出かけてから永遠亭でボヤ騒ぎがあったんです。ごみ焼却の当番による火の不始末が原因で、それも常態化してる事が分かってお師匠様がウサギ達を集めてお叱りになってました。その間にパソコンからデータを頂きました。これはもう必要ないので姫様が破棄してください」

 

そう言って彼女は私にメモリーを渡した。彼女の所有物のノートパソコンも渡し、必要であればフォーマットしても構わないそうだ。

 

「メンバーはいずれも動物の名前をコードネームとしている様です。然るにクロウはメンバーの名前。交信時に誰からの紹介なのか、タランテラは合言葉って所でしょう。姫様さえよければいつでも交信できますよ」

 

本来であれば泣いて馬謖を斬るべきなのかもしれないが、それなら真っ先に罰せられるべきは私だ。彼女にこんな真似をさせてしまった事を悔やみつつ、今は事態の解決のために尽力することを誓った。

 




どこか遠くへ行きたい。観光地を巡ったり、温泉入ったり。
でもコロナ禍とか外出自粛に以前にお財布に金がない(´・ω・`)
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