ぐーやんでござるよ   作:ヤングコーン

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まぁ想像してた最悪のケースよりスケールダウンしたのは良かったけど…


25話 戦禍の旧友、地上への亡命計画

翌日、私はにとりからバンド等の練習用のレンタル防音室を借りた。楽器もレンタルしているため、それなりに客入りはある。使用目的は演奏ではないが、話す内容が内容なので誰にも聞かれない様に徹底するにはちょうど良かった。

 

忙しい事は重々に承知だが、永琳に断って鈴仙を連れて来れた。

妖夢は幽々子に呼び出され白玉楼に帰った。

 

また、何用か珍しく幽々子から連絡が来た。

 

『昔、切り株に自ら頭をぶつけて死んだウサギの亡霊がいてね。どうしてそんな事をしたのか尋ねると「その時はそうするのがいいと思った」って言ってた』

 

何の話なのか尋ねたが、未だに返信はない。

 

ウサギの話の元ネタは守株待兔?

私達の動向をすでに掴んでいると言う事からの警告とも取れるが、意図が分からない。

 

中に入ると各々の防音室からジャンジャカジャンジャカと賑やか音がする。

 

早速と防音室に入って鈴仙に交信をお願いする。

 

「思えば向こうは直接鈴仙に語り掛ける訳だけど、こちらからのやり取りには私から鈴仙、鈴仙から私に言葉のやりとりをする必要があるんだよね…。電話みたいに直接やり取りできればいいのに」

 

安全に通話をするには玉兎の能力を経由するしかない。言ってられないとは言え、やり方は正直少し面倒だった。

 

「それなら、私の両耳の間に顔を挟んでください。私から見て左耳がスピーカー、右耳がマイクになります。それで電話みたいに話せますよ」

 

「マジで?玉兎の能力凄い」

 

私は早速と鈴仙の両耳の間に顔を挟んで交信を待つ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

鈴仙がフフッと笑った。

 

「月人向けの玉兎ジョークです」

 

少し腹が立ったので、耳に息を吹きかけてやった。

 

「はあ…んっ!!…姫様、表情がこわばってたので場を和ませようと冗談を…んひぃ!!」

 

「次から時と場合をよく選ぶ事ね」

 

「はひ…。それじゃあ、本題に…」

 

彼女はそう言って例の頭巾を取り出した。まだざっくりとした所しか分からないが、どうやら玉兎の能力の応用でステルス機能が使用できるようになるらしい。類似した能力でも持たない限り、他のどんな種族が持っても使う事はできない。

 

小型化及び使用者への弊害に関しては地上の物質を用いる事で完成に漕ぎ着けたようだ。

 

そこまで分かったところでその日は寝る事にしたが、鈴仙はもう少し調べたいと言っていたので貸しておいた。しかし、どうしてこんな所に持って来たのだろう。

 

「実はこの頭巾、玉兎の持つ念力を増幅させる力があるみたいです。言っても普通の玉兎には不要な微々たる程度なんですが…。負傷したり疲弊してる玉兎、または能力の低い玉兎のためではないかと」

 

「そんな機能がねぇ…」

 

「まあ早い話、私が補助すれば姫様が頭巾をかぶるだけで玉兎みたいに交信できるって事です。まあ月人仕様じゃないので多少なりと姫様の体に負担はかけますけどね」

 

「問題ない」

 

私は頭巾を被り、鈴仙の能力で交信を行った。

早速と繋がる。さて…。

 

『地上から?ん…鈴仙か!』

 

「んぇ?」

 

『いやびっくりした、いきなり地上から通信来たと思ったら鈴仙なんだもの。覚えてる?柊木だよ』

 

「知り合い?」

 

「柊木…ああ、はい。知り合いです」

 

かつて月人を中心としたテロ事件が起きたのだが、早急な解決のため司令塔である月人のみを捕らえる作戦が決行された。重要文化財を根城に置いたため大掛かりな兵器は使用できず、また抵抗も激しかった。

 

少数精鋭の部隊を結成し秘密裡に敵地に潜入した鈴仙達だったが、陽動作戦に気付いた月人により反乱分子の玉兎と交戦する事になった。その折に投げられた擲弾を投げ返した柊木は身を隠す時間が足りず爆発による破片の飛散で怪我をしてしまった。

 

医師によれば負傷した左肩と左耳は回復後は日常生活を送るにはさほど支障ないが、軍務をこなす事はできないとの事だった。

 

月人は無事にフルトン回収し、テロリストもそれを知るや否や政府に投降した。

この作戦後に退役するはずだった彼女にどんな言葉をかけていいか分からず、そのまま別れになってしまったらしい。

 

今は新しい夢を見つけて、そのために一生懸命働いて元気に過ごしているとの事。

 

しかし、地上に現れた玉兎の事件を追った陰に旧友がいたとは。鈴仙は複雑そうな顔をしていた。

 

私は柊木に交信に至るまでの経緯を説明した。幻想郷で見かけた玉兎の事、玉兎の忘れ物のペン、頭巾の事、烏天狗との手引き…。

 

『まさにその烏天狗と手引きしているのは私達、白樺ですよ。白樺は玉兎197羽と月人1人で構成する組織です。そしてゆくゆくは幻想郷に移住する計画を立てているんです』

 

 

 

 

私は白玉楼に戻る。幽々子様は庭で少し伸びた草木を眺めていた。

中に入るとすぐにこちらを向いた。

 

「おかえり、妖夢」

 

「ただいま戻りました」

 

共に居間に向かい、私は茶を淹れて出した。

一息つくと、質問を受けた。

 

内容は近況と、鬼人正邪の事だった。

知ってる範囲の事は全て答える。

 

月の民の事は…聞かれない事は答えないつもりだ。

 

「…事情をお聞かせ願えませんか」

 

「大変な事が起きてる。2つも。あなたは私の指示の元、解決に協力してくれている」

 

「仔細が分かれば、私にできる事ももっと増えるはずです」

 

幽々子様はお茶をすすり、静かに首を横に振った。

私は俯いてた。

 

「私ではお役に立てませんか…」

 

「あなたは良くやってくれている。ただ各々にはできる事とできない事があるだけ」

 

…信じて待てと言われればそうするのが私の正しい在り方なのだろう。それでも、心の内で物寂しさと悲しさを感じずにはいられなかった。

 

全ては私が未熟者故。もっと、心身共に屈強たれたならば…。

 

私は机の下、強く拳を握った。

 

「私は貴方様の懐刀。早くお傍に置いていただきとうございます」

 

「あなたには寂しい思いをさせるね。でももう少し待ってて」

 

「承知しました。して、今後はいかように」

 

私は幽々子様からの指示を仰いだ。

それを聞くと、軽く庭の選定作業と掃除をして永遠亭に戻った。

 

 

 

 

玉兎197羽、月人1人…。烏天狗は天狗の里にこれを匿う気なんだろうか。あるいは白樺は計画の全容を烏天狗に伝えていないのだろうか。いずれにせよただ事じゃない。

 

姫様は酷く思い悩んでいるようだった。どんな立場をとればいいのか…。受け入れれば異文化問題による近隣との衝突、また月からは身柄の引き渡しを要求される。トラブルは避けられない。

 

しかし、月から逃げ延びたいとする気持ちも理解できないわけじゃない。

私達に、彼らの想いを咎める事ができるだろうか。

 

私は窓の外から月を眺めた。

 

…コンコン。

 

ノックが聞こえた。ドアを開けると、妖夢がいた。

近くに姫様がいるかと思えばそうでもなかった。

 

顔がほんのり赤みがかっている。酒を飲んでるようだった。

 

「夜分遅くに申し訳ありません。…1人の晩酌が堪えまして」

 

「うん。いいよ、入って」

 

私は妖夢を中に入れた。姫様から、「今は妹紅と二人きりにして欲しい」と頼まれたらしい。彼女の佇まいはいつもより頼りなくその表情はどこか物寂しかった。

 

2人でベッドの上に腰を掛け、彼女の注ぐお酒をお猪口で受ける。それを傾けた。

 

妖夢も同じように酒を飲んで俯く。

 

「…鈴仙さん、私は…頼りないでしょうか」

 

白玉楼で何かあったんだろうか。

 

「そんな事ない。あなたはその背中に、身の丈以上の物を背負っている」

 

「その重圧に耐えかね、膝をついてしまいました」

 

「最良のコンディションを保つには、休憩も挟まなきゃ」

 

月の光に照らされ、妖夢の目元が光った。泣いているらしい。

私は静かに抱き寄せ頭を撫でた。

 

「幽々子様、どうして私に離れていろなどと酷な事をおっしゃるのです。私はただ、お傍に…」

 

妖夢の目元から落ちる涙が私の肩を濡らす。

冷静で、平生を保っているようで、内心は心寂しく思っているのだ。

 

稚児の様に鼻を啜って泣いている。

 

「とても温かい…。春に吹く暖風の様な穏やかさ、山の懐に抱かれた様な慈しみを感じる」

 

「何もかも忘れて私に身を委ねるといい。その痛みを和らげてあげるから」

 

「鈴仙さん…」

 

妖夢は私に寄りかかったまま眠った。ゆっくりとベッドの上に倒してあげると、徳利とお猪口を机に置いて彼女を軽く抱いて横になった。…誰かに甘えられるというのは、悪くないものだ。

 

あれやこれやと心配事は尽きないが、今は私もそれを忘れて眠りにつくのだった。




内容が内容で執筆と添削に時間かかる…。「もうすぐ最終回だから…」と自分に言い聞かせて設定テキストを作ってないから、もうどこで矛盾点が生まれるかも分からんね(白目)

自分の頭の中で今年のどうしてこうなった大賞を受賞できそう
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