ぐーやんでござるよ   作:ヤングコーン

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霧雨魔法店にある工具で組み立てられるような技術も凄いけど、どんな空間認識能力があったらそんな芸当ができるの



29話 ネゴシエーターはたて

「ええっ、それじゃあ私達は何もしなくても事態は解決しちゃうんですか!?」

 

魔法の森に向かいながら姫海棠と話をしていた。

私達が事態の解決に動かずとも、放っておけば紫達が対処する事を伝えたのだ。

 

彼女はため息をついた。

 

「はぁ…それじゃ侵攻して来る様を映して新聞にできないじゃないですか…。超ショック。モチベ急降下です」

 

「ただし、彼女らに任せきりになると白樺メンバーは月の都の月人達に捕まり処罰を受けてしまう。私はそれを止めたいの」

 

「止めたいって…どうするんです?説得とか?」

 

「蓬莱の薬を飲んだ罪人にこそ、地上への流刑が待ってる訳だけど…。地上の憧れからの亡命だなんてどんな罪に問われるか…。私は彼女らが裁かれるのを放っておけないの」

 

姫海棠は頬を搔く。

 

「地上への憧れから自ら進んで流刑を受けた罪人が、同様亡命した玉兎を匿うために異変を起こし、幻想郷のために同じ憧れを持つメンバーの移住計画には反対し、それでいて罪に問われない様に情けをかける…。ここだけピックアップすると滅茶苦茶ですね」

 

「うん…そこ一番悩んでるからツッコミ入れないで…」

 

頭痛がするから考えない様にしていた。

いや、でもどうにかしないと大問題になるし…うん。

 

私は月と地上の間に問題が生じる事を承知の上で月人、楠木が移住計画を進めている。問題はこれなのだ。何を考えこの計画を敢行するのか…。これについて彼女と論じる。

 

「案外住んでしまえば身も心も穢れてしまったと見なして無理に自分達を月に戻さないって踏んだんじゃないですか?」

 

「同じ様な事例が相次げば困るでしょうし、何より法に裁かれるのを免れるために地上への脱出を試みる輩も出る。そういう事態を防ぐためにも地上への亡命は許さない。楠木って奴もそれぐらいは予想してると思うけど…」

 

「そいつ、何者なんでしょうね。監視の目を搔い潜って装置を作ったり中規模のメンバーを結成したり」

 

「それが分かれば狙いとか分かりそうなんだけど…」

 

そんな事を話しているうちにかなり森の奥に来た。玉兎達も迷わない様に何ら目印でもつけてるかと思ったが、そんな事はなかった。ここに転送装置のパーツがあると言うのが見込み違いなのか、あるいは白樺にだけわかる目印があるのか…。

 

少し歩き疲れたので近くの岩に腰を下ろして休憩した。

 

「こんな広大な森の中を、あるかも分からないものを探すなんて無謀でしたねえ…」

 

「こうなったら仕方がない。これを使おう」

 

私は袂からある物を取り出した。

 

「何ですかそれ」

 

「ロッド・ダウジング!!!」

 

「帰りたくなって来ました」

 

休憩を終えると、ロッド・ダウジングを頼りに広大な魔法の森を探し練り歩く。必死に探す私とは違い、姫海棠はぼちぼち辺りで休憩したりしながらついてくるようになった。

 

「だらしないなぁ」

 

「私は頭脳労働者なので足を使った労働が苦手なんですー」

 

適当な事を言っている。

 

そうこうしていると、一軒家が見えてきた。絵っと確かここは…。

中から悲鳴が聞こえる。私達は急いで家の中に急いだ。中には宙ぶらりんになった魔理沙がいた。やっぱりそうだ。霧雨魔法店だ。

 

彼女を掴んで離さないのは小さな鉢から生えた巨大な植物だった。巨大植物は蔦を器用に使って魔理沙の弾幕の照準を逸らしている。

 

「ひえーっ、誰だか知らんがそこの人助けてくれ!」

 

私は巨大植物の花弁に張り手を打ち込み、のけ反った所を鉢を蹴って壊す。すると巨大植物は虹色の光になって霧散した。落ちてきた魔理沙は姫海棠がキャッチして下ろす。

 

「ふぃー、危ない所だった。幽香のヤツ、何が観賞用の食虫植物だ」

 

それにしても、ロッド・ダウジングが反応したかと思えば霧雨魔法店についてしまったとは…。私の直感もそこまで長けていないのかもしれない。彼女はもう心配ないし帰ろうと思っていると、姫海棠が何か見ているのに気が付いた。

 

同じものを見に行くと、それはまさしく…。

 

「これじゃないですかね」

 

「うん…これだと思う」

 

まさしく転送装置のパーツだった。なるほど、分解してこう組み立て直せばこんなにコンパクトになるのか…。

 

「おっと、それは非売品だ。研究の最中でね」

 

魔理沙がぴしゃりと言った。困ったな。この様子だと罠などなく簡単に持ち運べたのだ。位置を変えたぐらい、何ら探知して奪い返して去る事ができるのだろう。むしろ、壊されない様に保管してるだけ親切とさえ言える。姫海棠はふふんと得意げに笑う。

 

「ここは任せてください輝夜さん、交渉は断られてからが本番です。天狗の交渉術、お見せしましょう」

 

射命丸と言い、天狗が弁が立つのは身を以てよく知っている。とはいえ、相手は会の魔理沙だ。上手く言いくるめる所が、上手く言いくるめられるんじゃないかとも思うが…。まあダメで元々、ここはお手並み拝見と行こう。

 

 

 

 

「…烏天狗と月人が私の目の前で内緒話か。ますます興味が湧いてきたし手放したくなくなったぞ」

 

私は肩をすくめて首を横に振って呆れて見せる。

 

「それは違いますよ魔理沙さん。私はあなたの審美眼の無さと、助けてもらった相手に対する非礼に呆れているんです」

 

魔理沙は口を尖らせた。

 

「助けてもらった事は感謝してるよ。他に欲しい物があるならそれをやるから、それ以外にしてくれ」

 

輝夜さんは事の成り行きを心配そうに見ている。

私は顎に手をやって機械を眺める。

 

「実はこの機械、玄武の沢にいる子河童の自由研究により作られた目玉焼き機なのですよ」

 

「はあ?作り話にしたってもっとマシな…」

 

「事実です。それだけ大がかりな部品で作り上げてできた機械が目玉焼き機…。同世代の子河童に笑われたその子河童は恥ずかしくなってその機械を近くの魔法の森に捨てに行ったのです。…先生に叱られた子河童はその機械の持ち主に謝って仲直りしたらしいですが…後になって探してもその発明品が見当たらないそうで」

 

私は笑顔で言葉を続ける。相手が妖怪であっても、子供の所有物だったと揺さぶりをかける。平生を装っているようだが、機械をチラ見したり落ち着きがない。

 

どうして運ばれた時にバラバラだったのか。いくら河童とは言え子供がこの大きさの機械を持ち運びできたのか。それについての質問はないらしい。それっぽい答えは用意しておいたが、詰めが甘い。私は続けて良心を責める方向性で嘘を続けた。

 

「妖怪と言えど子供が魔法の森をうろつくのは危険じゃないですか。それでジャーナリストである私が記事作りも兼ねて捜索を手伝っていたという訳です。…ああ、困りましたねえ。返していただけないんですか」

 

「うう…。でまかせもそのぐらいにしろよ、どう組み立てたって目玉焼き機になる訳ないだろ…」

 

「しょうがないですねえ…」

 

私は目の前で組み立てて見せる。どう見ても目玉焼き機には見えないが、そもそもこれがどんな風に機能するか機械なのか分からない魔理沙には関係ないだろう。本来であればフレームが必要だし未完成なのだが。私はできた転送装置を寝かせた。

 

「もっとも、これを動かすんだったら持ち主の元に持って行かなきゃいけませんね。卵を焼く様子は当人に見せてもらいましょう」

 

「本当に完成させちゃったよ…」

 

輝夜さんが困惑している。実は、地上であの転送装置をあの部屋に搬入したのは私なのだ。その時に見た図面を写メに撮っていたので、何度も見返しては部品を頭の中で組み立て何が運ばれたのか考えたりしていた。その時は結局それが何の機械なのかまでは分からなかったが、基礎を抑えていれば小型化したものも同じように組み立てる事が出来た。

 

動揺している魔理沙さんに、友達に電話をかけ携帯電話を渡した。

 

「さて、持ち主の子河童へ繋げました。どうしても欲しいのであれば、譲る様に当人にお願いしてもらってもいいですか?」

 

「わわ、分かった分かった!…さすがに私も子供を相手に物をぶん取る趣味はないよ…」

 

私はニヤリと笑って受話器に手を当てる。

 

『もしもし』

 

「ああ、目玉焼き機は見つかったよ。うん。返してくれるって。今から行くね」

 

『は?何のはな…』

 

私は電話を切った。後でメールして間違い電話だったと謝っておこう。魔理沙はすっかり信じ込んでしまっている。私は礼を述べると、再び分解した。8羽がそれぞれ分担して運んで来た大きさと重さと言えど、各々の運搬に支障を来さない程度だ。堂々と運んでいいならこの程度の機械であっても然して問題はない。

 

念写で香霖堂に荷車がある事を確認すると、それを借りてきた。本来は客が香霖堂で購入した大きな物を運ぶ手段に困らない様にと無料レンタルとして置かれてた物なので渋っていたが何とか説得した。

 

それを持って霧雨魔法店に向かうと玄武の沢に向かう様に見せかけるために遠回りしつつ、永遠亭の方へ向かった。

 

「転送装置はあった…。どうしてこれをすぐに使わなかったんでしょうね」

 

「これを見せて楠木に聞いてみようかなぁ」

 

組み立てたり分解したりしてるうちに日は傾いてしまったが、事は順調に進んでいる。私はこの先どんな謎を、どんな事件目の当たりにするのか…。これから起こる事に期待を膨らませた。

 

 

 

…今更だが、人間相手に分かりやすい作り話をするためとは言え主に鶏卵を使って作られる目玉焼きの話をしてた事に自己嫌悪がして来た。とにかく忘れよう…。

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