ぐーやんでござるよ   作:ヤングコーン

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正義も悪も観点によるし、線引きは難しいんじゃないかな。


30話 革命かテロか

私達は永遠亭の倉庫に転送装置を置いた。フレームがないので立てる事はできない。この機械は2つで1セットなのでこれだけあっても使えない。送信先、受信先が必要になる。

 

「うーん…訳が分からない。どういう事?当日に工作員が同じように転送装置を持って組み立てるんだったら見学に来た2羽の他に8羽を送り付けて転送装置を運ばせる意味ある?」

 

魔理沙は転送装置の完成図を知らなかった。完成したものをわざわざバラしたとも考え難い。烏天狗との手引きにトラブルが生じて保険代わりに置いておくにしてもわざわざバラバラにしておく必要はあるだろうか?

 

あれこれ悩んでいると、樫と檜がやって来た。

 

「輝夜さん、その機械なんですか?」

 

檜が呑気に聞いてくる。

 

「転送装置の内部だ。どこでそんなもの見つけたんです?」

 

樫が檜の問いに答えながら尋ねた。

姫海棠が誰なのか聞くので、お互いにお互いを紹介させた。

 

して先ほどの質問に答える。

 

「魔法の森。野ざらしにされてたのか盗まれてたよ。樫も檜もこれが運ばれてたの知らないの?」

 

「まぁ同行する同胞の荷物がやけに多いのは気になってましたが、中身が何なのかまでは」

 

檜は肩をすくめた。私は腕を組んでため息をつく。

 

「やっぱり楠木に直接聞くしかないかぁ。捻くれてそうだし素直に答えてくれるかどうか」

 

「うちのリーダーは誰にでも優しい立派な人ですよ」

 

樫が口を尖らせる。騙されてるだけでは?

 

天狗の里にあった物より小さい事は気になってたが、これが完成しても1度に転送できるのは1名までなのだという。そして、同じく同日に5回まで。

 

「前から思ってたけど何で5回までなの?クールタイムとか?」

 

「いえ、実は転送装置の使用には宇宙に飛ばしてある白樺メンバー用の小型衛星を中継するんですがそれを月人の御偉方に察知されないようにしてできる限度が5回までなんです」

 

「…御偉方に察知さえされなければ制限なく使える……。もしかして作戦の決行日ってそれが可能な日なんじゃないですか?」

 

姫海棠が顎に手をやりながら言った。そんな都合のいい日があるだろうか。

肝心な決行日は当日に知らされる予定らしく玉兎の2羽も知らない様子。

 

私達が頭を捻っていると、空いた入り口に人影が現れた。

 

「…大型太陽フレアが発生する日よ。今から4日後の朝2時頃」

 

永琳が洗濯機を抱えながら言った。

皆の視線が集まる。彼女は倉庫の隅にそれを置いた。

 

「確かに月の都の月人の目は掻い潜れるだろうけど…、リスク高過ぎない?転送装置に不具合が起きたら…」

 

「楠木はそうは思ってないでしょうね。それに、白樺メンバーが冒してるリスクも似た様なもの」

 

永琳は帽子からインカムを取り出し、それを私に持たせた。

使い方を教えてくれる。

 

まあ早い話、鈴仙を中継せずに楠木と秘密回線を用いて通話ができるらしい。

 

「ヤゴコロえもん~!」

 

私は永琳に抱き着いた。彼女はため息をつく。

 

「しょうがないなぁ輝夜君は」

 

永琳はダミ声で私の背中をさすってくれた。どんな時も何だかんだ助けてくれるんだよなぁ。

 

 

 

 

私は楠木と交信する前に鈴仙も呼んだ。

更新そのものには必要ないが、ここまで協力させて蚊帳の外も酷な真似だと思ったからだ。

 

呼び出しが数コール入ると応答があった。

私は周りに聞こえる様にスピーカーの設定を変えた。

 

『…この回線から連絡とは、さては八意先生だな』

 

「輝夜です」

 

『アッハイ』

 

何でちょっと残念そうなんだよ。

 

『いかにも私が白樺メンバーのリーダーの楠木だ。してどんなご用件で』

 

「脱兎計画」

 

樫から聞いた言葉をそのまま伝える。向こうからの返事はしばらくなかった。

 

私は地上と月の争いを生むだけである事や、計画が無茶である事を伝える。

計画を敢行した所で、月の治安部隊がメンバーを捕らえ監獄行きになるだろう事。

 

『百も承知、二百も合点。そんな事は分かっている』

 

「だったら何で…」

 

『玉兎の願いは地上へ移住する事。私の願いはその計画を実行する事。私の目的は地上への移住ではないよ』

 

樫と檜は首を傾げる。姫海棠は釈然としない様子で何か考え付いた様子だ。

 

「楠木さんの目的は飽くまで玉兎を地上に送り届けるまで…と言う事なんですか?」

 

『…近くに誰かいるのか?まあいい、その通りだ。玉兎が私の願いを叶え、私が玉兎の願いを叶える。それだけの事』

 

「そんな、聞いた話と違います!私達は地上で暮らせるって聞いたから計画に乗ったんですよ!」

 

檜が叫ぶ。楠木は呆れた様子でため息をついた。

 

『檜、私は嘘は言ってない。君達がそんな風に勘違いしているだけだ。君らが地上で暮らすための方法も手段も教えたし協力もした。だが私が幻想郷に住むとは一言言ってない』

 

既に偵察部隊も、工作部隊も送る事に成功している。

ならば楠木の目的は現時点で半ば達成させられているようなものだ。

 

奴は初めから、亡命を企てる玉兎が本当に地上で生活できるかどうかはどうでも良かったのだ。大勢の玉兎を地上に送り込む、その事実を作るだけで良かった。

 

「分からない。どうしてこんな訳の分からない計画を…」

 

「研究結果の再評価、機会を奪った月の都の重役への復讐。そんな所?」

 

『八意先生…、いらしたのですか』

 

永琳は彼の来歴について語りだした。

 

楠木は元軍人だった。頭脳を売って開発部に着任し、治安維持のために尽力していた。特に頭を痛めていたのはテロリストへの対応だった。被害を最小限に、怪我人を出さないためには隠密行動のための道具が必要だと考えていた。

 

そこで構想を練っていたのが透明化の頭巾だ。

どこから情報が漏れたのか、当時は玉兎達の間で都市伝説扱いになっていた。

 

小型化、使用者の安全性。この問題の解決だけはどうしても解決しなかった。

 

そんな時に起きた事件が月人を中心とする玉兎達のテロリストによる重要文化財の立て籠もり事件。人質も多く、場所が場所であるため膠着状態が続いた。

 

楠木は成果を上げる事に必死になって頭巾の完成を急いだ。

小型化、使用者の安全…その問題の解決のための物質が地上にあると分かった頃、少数精鋭の部隊が結成され主犯となる月人の捕縛作戦が決行された。

 

陽動作戦は失敗に終わり、潜入していた部隊も含め作戦に当たった多くの玉兎が怪我を負った。

しかし月人は無事に捕縛され、司令塔を失った敵の玉兎達はすぐに投降した。

 

楠木を襲った悲劇は3つ。1つは完成まで後1歩だった所を強硬策が決行された事。1つは文化財の修繕のための費用を捻出するため開発費がカットされ開発中止になった事、1つは作戦の場にいた楠木の姉が失明してしまった事。(現在は回復傾向にある)

 

「あの事件の裏でそんな事が…」

 

当時も気になっててメディアで公開される情報は目を通していたが、そこまで事細かくは知らなかった。

 

「ありがとう先生。でもその事実は少し違う。頭巾開発が中止に追いやられたのは文化財修繕のための予算の確保のためじゃない。後少しで犠牲が少なく済んだはずの発明品が完成するはずだった事実が世間に知られる事を付きの都の重役が恐れたからだ」

 

確かに事件後のメディアは月の重役の判断、作戦任務にあたった玉兎達を誇張するような番組が目立った。映画化までされた。観た所、テロリスト役の発言が実際の事件の主張と趣旨がブレている事に違和感を覚えていた記憶がある。それが世論操作のための工作だった?

 

いや…相手は飽くまでテロリスト。言う事をあまり鵜呑みにするのは危険だ。話半分で聞いておこう。

 

「テロリストを憎んでいたあなたが、テロリストになってしまうとは…皮肉な物ね」

 

『私はテロリストではない。革命家だ。自らの怠慢さと傲慢さ、愚かさを知らしめ意識改革を世に促す者』

 

「違いは完遂したか未遂に終わったか、そんなもの」

 

『必ず完遂させる。脱兎計画は誰にも止めさせない。無理に止めようものなら『衛星局』を爆破し、メンバーと共に心中する。私はセンセーショナルなニュースで埋もれた事実が広まればなんでもいい…』

 

交信が切れた。秘密裏に動いていた亡命計画。197羽と1人の月の民の死。世論がどう動くか想像もできない。楠木は気が狂っている。これはどう手を打ったものか…。




投稿したつもりでぐったりしてた。まだしてなかった。
とにかく校正に時間がかかる…ゴールが見えてきたからいいけれども。

チルノの学校生活の時の球磨も凄く悩んだけど、物語の進行上の都合で出した原作にないキャラを出しゃばらない様にしたり抑え過ぎない様にしたりするの大変……。

次の話で一気に進むと思うからそろそろこういう悩みから解放されそう。不快に思われた方には本当に申し訳なく思う。




…ちなみに、白樺メンバーの総数の中にさりげなく樫と檜が入ってないのは普通にミスしてた。全部で199羽と1人で200名。あたいって、ほんと⑨
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