朝起きると、皆は既に仕事で部屋からいなくなっていた。私はボリボリと頭を掻いてぼーっとする。何となくお腹も空かず、しばらく虚空を眺めていた。
すると妹紅が帰って来た。荷物を置いてドッサリとベッドに倒れ込む。
「あー疲れたー」
「お疲れ、もこたそ」
私は彼女の頭を撫でる。
「咲夜はいつもあんな事をやってるんだな…」
別に彼女1人で仕事を捌いていた訳じゃないが、妖精やホフゴブリンたちは複雑な命令ができないので自分の仕事をこなしながら的確な指示をして回る必要がある。パチュリーが妹紅に同情して小悪魔に仕事のサポートをさせたらしい。
彼女をうつ伏せに横たえると、私はマッサージをしてあげた。
しばらくは向こうで働いてる間の話をしていたが、やがて眠ってしまった。
彼女に布団を被せると私は永琳に人間の里への薬の補給を頼まれた。
私は身支度を済ませて迷いの竹林を抜ける。
しばらく歩いていると霊夢が妖精と弾幕勝負をしていた。
辺りの妖精を倒し終えると、すとんと地上に降りてきた。
「くうっ…金目の物をドロップしない…」
「仕事に精を出してるようだね、霊夢」
声をかけると力なくこちらを向いた。
「死活問題だからね」
かなり空腹な様子だったので、ご飯を奢る事にした。
まあ丁度話し相手が欲しかったところだ。
ここ最近はギャンブルをやっていないとか、人間に加害行為を働く動物や妖怪を棚に上げて動物や妖怪への愛護を叫ぶ妖怪の団体に狩猟を妨害されるとか、近所の妖精が庭にミントを植えに来るだとか、にとりが川に流されていたとか、そんな事を話していた。
妖怪達がたむろしている事もあって、未だにお賽銭箱の中身は心許ないようだ。
「喉元過ぎれば熱さを忘れる。困った時はすり寄って来るのに、平穏が戻ると感謝しなくなる。助けを求められる神様の気持ちも分かろうというものよ」
霊夢はしみじみと言っていた。
そもそも参拝のハードルが高いので守矢神社の様に分社を設置してはどうかと意見したが、建てる金がないと言っていた。やはり人間の里の妖怪退治などを当てにする他ないようだ。
「願掛けは大事だけど、お礼参りも大事よね」
彼女は何度も頷く。私も変なトラブルに巻き込まれない様に願掛けに行こうかな。
前は守矢神社に参りに行って、ストレートに神様が出て来た。
霊夢の神社に限ってそんな事はないはず…多分ないんじゃないかな。ないと思う。
「そう言えば博麗神社に祀られてるのってどんな神様なの?ご利益とか」
「私にも分からん」
「えっ?」
「えっ?」
いや、えっ?って返されても…。
それじゃどんなご利益があるのか分からないじゃないか…。
霊夢は胸をどんと叩いた。
「大丈夫。信じる者は救われる」
すくわれるのは足元だけなのでは?
まぁいいか。本人もいいって言ってるんだし。
人間の里に入ると、往来している妖怪達が霊夢にあいさつしている。
そのやり取りはそう、何というか…。
「姉貴、お勤めご苦労さんです。その節はどうも」
「おうタコ坊、あんじょう頑張りや」
ドスとかチャカとか持ってそう。
霊夢は人間達より妖怪達との方が慣れ親しんでる様に見える。
それから、私は目的地で薬の受け渡しをした。後は霊夢にご飯を奢って家に帰るだけ。
好きな店を選んでいいと言うと彼女は真剣な表情で飲食店を選んでいる。
遠くに鈴仙と妖夢が見えた。そういえば今日は非番だったんだ。
邪魔しちゃ悪いので影に隠れてやり過ごす。
霊夢がいつまでも決まらないので私は近くの市場を見て回った。
「もし…そこのお方…」
声が聞こえた。誰だろう。
声の聞こえた方角を向くと、巨大な水槽に人魚が入っていた。
「私、わかさぎ姫と申します。どうかお助けを…」
彼女は水槽の下を指さしている。
おお、それなりに値が張る。
「あんたそれなりに力のある妖怪でしょ…何で人に連れ去られてるのさ…」
「霧の湖で歌を歌っていると、スーツの人が現れて『著作権使用料を請求する』と言うのです。金を持ってないと言うと、ここに連れ去られました」
抵抗しなかったんだ…。
「著作権の期限は著作者の死後70年までだから、著作権が切れてる曲を歌うといいかもね」
不在の間に買い取られても可哀そうなので、やむを得ず飲食店のあたりを右往左往している霊夢に1万円を持たせて好きなものを食べる様に言った。
「お前が神か」
「私が神だった」
そんな会話を終えてわかさぎ姫を購入する。私は水槽を両手で持ち上げて霧の湖に向かった。店の人にリヤカーはいらないのか聞かれたが、持ちづらい形状じゃなければこの程度の重量はなんてことはない。
わかさぎ姫は水槽からお礼を言っていた。ただ喜びを表現するのに水槽の中を暴れまわるのはやめて欲しい。
それにしてもこのケースはどうしようか。家に持って帰っても場所を取るだけだしなぁ。
「ちなみに何歌ったの?」
「童謡のふるさと」
「うん…それ著作権消滅してる」
折角なので彼女に自慢の歌声を聞かせて欲しいと頼んだ。
彼女はそれを聞いて意気揚々と狩人の合唱を歌を歌い出した。
ケースを中古屋に売り払って永遠亭に向かっていると、道中で魔理沙とにとりがは話し合ってるのを見かけた。
遠くから聞くともめてるように聞こえるが…。
「だーかーらー、目玉焼き機だって。玄武の沢の子河童が持ってるんだろ?」
「知らないって言っているだろ!そんなに欲しけりゃ私が作ってやるよ!」
「ちがう、その子の作った目玉焼き機じゃなきゃ意味ないんだよ」
うーん…どうやら姫海棠のついた嘘を真に受けた魔理沙があの転送装置を探してるようだ。私は挨拶をして彼女らの間に割って入る。
「よお輝夜。聞いてくれよ、にとりのヤツこの間の目玉焼き機の事を知らないっていうんだ。自由研究は見学に行ったと言ってるのに」
「目玉焼き機は玄武の沢の子河童が自由研究で作ったと言ったな。あれは嘘だ」
魔理沙は面食らった。あの機械が何だったのか、何故嘘をついてまで回収する必要があったのか、今どこにあるのかを全て答えた。ちなみに転送装置は紫が預かっているのでもう実物を見る機会はおそらくないだろう。
彼女はしょんぼりと落ち込みながらこの場を去って行った。
残されたにとりはため息をついてその背中を眺めていたが、やがて私の方を向くとスマホを貸してほしいと言ってきた。何用かと思ったが、彼女はスマホを操作して何かアプリを入れた。これは…、『横スク水2』と書かれている。
「良かったらまたプレイしてフィードバックを教えて欲しいって開発部が言っててね。頼むよ、蓬莱さん」
「うぇ!?あの開発って白樺メンバーじゃなかったの!??」
「しらかば…?ああ、さっき魔理沙と話してた何かの秘密組織の?いいや違うよ。あいつらはただのズボラで気のいいオタクさ」
「そうなんだ…」
処理に追われる烏天狗を通してのやり取りが難しくなったらしく、ついに開発が自分たちが月の民である事をにとりに暴露したらしい。それからも両社の関係は続いている。
その開発はフィードバックに私からの意見が重要だと何度も繰り返し言っていたらしい。そんな訳でアルファ版のプレイをどうしても私に任せたかったらしい。
まあ続編はやりたかったので、またぼちぼちプレイしようかな。
にとりは人間の里に向かって歩き出す。
私も横スク水を起動してOPとタイトル画面だけ眺めていた。
永遠亭に戻ると、私は妹紅を誘って外に出かけた。
そして妖怪の山に向かう。今度こそ許可書は正式に取った。目的は観光だ。
そこで昼食を食べたり、買い物をしたりして楽しんだ。
途中で見かけたいいデザインの茶碗があったので、それをお揃いで買った。
沢山歩いて汗をかいたので、一度荷物を下ろしてから亀甲温泉に出かける事にした。
「さすがに疲れてきたな。輝夜は大丈夫か?」
「ここ最近はドタバタしてお互いに都合がつかなかったからねー。多少は疲れてでもやっぱり楽しみたいじゃない?」
一緒に笑った。温泉に着くまでの途中にある守矢神社の分社にしばらくは平穏に過ごせますようにと祈っておいた。諏訪子と神奈子は出てこなかったが、境内に松の木に擬態した早苗さんがいたしきっと聞こえたと思う。
ようやく辿り着いた亀甲温泉は客もそこそこ多かった。もう少し時間をずらして来るべきだったかな、なんて思いながら脱衣所でさっさと服を脱いだ。妹紅は落ち着かず周りをキョロキョロしている。
「うう…輝夜は人前で裸になるの抵抗ないのか?ここに来てなんだがちょっと恥ずかしい…」
「恥ずかしいも何も、私達も産まれた時は一糸纏わぬ姿だったじゃない。脱がせてあげようか?」
「いやいやいや!いいよ、…腹を括るまで少しかかるから先に行っててくれ」
シャイだなぁ…。私は掛け湯をして体を丁寧に洗う。遅れてやって来た妹紅を横目に体を流すと、髪の毛をまとめてから近くの浴槽に入った。はぁ…体が芯から温まる。
見やると近くに古明地姉妹がいるのに気が付いた。
「こんちゃ2人とも。姉妹揃ってる行動なんて珍しいね」
「こんにちは輝夜さん。さっき妹を捕まえたので、敵地視察を兼ねて温泉に漬かりに来たんです」
「敵艦見ユトノ警報ニ接シ、聯合艦隊ハ直ニ出動、之ヲ撃滅セントス、本日天気晴朗ナレドモ波高シ」
妹は相変わらずの様だ。
にとりとさとりはお互いを切磋琢磨するライバルだと思っている。
にとりにも地霊温泉の見学に来ないか誘ってるようだが、不可侵条約が緩くなった今でも旧地獄は苦手らしく来ないとぼやいていた。
また、ゲーセンに置いてあった横スク水もプレイしてたらしくグッズ制作と販売の交渉を行ってるらしい。
2人が上がる頃、妹紅が隣にやって来た。
「何の話してたんだ?」
「ビジネスの話」
私はさっきの話を妹紅に話す。
「そういえば亀甲温泉のイメージポスター作るってにとりが言ってるらしいんだが、そのモデルを募集してるらしいんだよ。それでレミリアがやりたいって言ってたらしくて…」
「流水ダメなんじゃないの?」
「流れてない水なら大丈夫なんじゃないか?咲夜が猛反対したから没になったが」
亀甲温泉のイメージポスターのモデルかぁ…。ちょっとやってみたい気もするが、各地に自分の顔が張られてるのを見るのはちょっとやだなぁ。脱ぐのも躊躇う妹紅なら、多分引き受けないだろう。
私達はサウナに入った。客もいて静かなのでここでは静かに過ごす。
それからしばらくして、私の方から先に出た。
妹紅があまりに長く入ってるので心配で窓を覗くと、こちらに手を振ってくれた。
シャワーを浴びて先に上がり、体を拭いていると遅れて妹紅もやって来る。
「今日という一日は完全に遊び倒したな」
「これ以上ないってぐらいね」
一緒に手をつないで歩く。月に照らされてちょっとだけムードが出て来る。
妹紅の方を向くと、彼女も私の方を向いていた。でも慌てて目をそらす。
私は腕に抱き着いた。妹紅はぎょっとする。
「…いい加減慣れてよね」
「うっせ」
照れ隠しをする所も可愛い。恋人っぽい事してるなぁ~なんて考えていると、彼女は急に立ち止まった。どうしたのか顔を眺めていると、急に私を引っ張って柳の木の下に連れていく。
どうしたのか聞いても答えてくれないし、困惑していると妹紅は私を力強く抱きしめた。
真剣な目で私を見つめるので、思わずドキッとしてしまう。
ああ…そういう…。
私は目を瞑って彼女のキスを待つ。
「おお、妹紅じゃないか。それに輝夜さんも」
急に聞こえた上白沢さんの声に私達は思わず飛び上がった。
彼女はてくてくとこちらに歩いて来る。
彼女はやや上機嫌そうに鍋を持っていた。
煮物を作り過ぎたので近所に持って行くところだったのだという。
折角だと言うのでそのまま私達に食べて欲しいとくれた。
「帰り道は気を付けてくださいね。妹紅もしっかりリードするんだぞ」
「分かってるよ」
「…それから赤蛮奇。覗き見とは感心しないな」
上白沢さんがそういうと、柳の木の上から妖怪が降って来た。
「そっちが後からやって来たんだ。それに他人に見られて恥ずかしい事は家の中でやってよね」
彼女はそう言いながらどこかへ行った。
上白沢さんも手を振って家の方に向かう。
色々と気を遣ってもらってるんだなぁ…。
上白沢さんの後ろ姿を眺めてる妹紅の耳元で囁いた。
「それじゃ、家に帰って他人に見られたら恥ずかしい事をしようか」
「ば、ばっかじゃねーの!?」
妹紅は顔を赤くしながらそっぽを向いた。
妹紅はからかい甲斐があるなぁ。
私は笑いながら彼女の手を引っ張って永遠亭に向かった。
ひとり、にとり、さとり!(言いたかっただけ)
もう物語の方向性が迷子になり過ぎてどこに向かうやら分からずにおりました←
読んでくださった方、お気に入り登録された方、誤字脱字報告してくださった何者さん、ありがとうございました。この作品が虚無らずに最終回を迎えられたのは皆様方と東方と言う作品の魅力のおかげです。本当どう感謝の言葉を述べていいか…。
前に書いたように、人間の里と正邪関連の話はまたいつか書く予定の次回作で書くつもりです。挿絵は後数枚ぐらい更新すると思います。
また機会があればどこかでお会いしましょう、ご愛読ありがとうございました!
m(__)m
風神録、難易度ノーマルで早苗さんのグレイソーマタージまではノーコン行けましたが敢え無くやられました。神奈子戦は残機5ぐらいはキープして突入しないとマウンテン・オブ・フェイスを凌ぎきれないです(´・ω・`)
諦めて神霊廟とか地霊殿を遊ぼうと思う事もあるものの、他の東方作をプレイするとどうしても風神録が頭にチラついて…。永劫にクリアできない気がする←
一番頑張ってた時期は永夜抄の霊夢&紫チームで妹紅戦まで行ったんですが、正直者の死あたりで…。壊れたパソコンのデータなので、またプレイしてもそもそもノーコンクリアでEXを出せるかどうか自信がありませぬ。
話が長くなり過ぎました、今度こそこの辺で…。