ぐーやんでござるよ   作:ヤングコーン

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湿った煎餅の様な気分で御座候


7話 心のざわめき、ラブラブチュッチュ

「妹紅…妹紅!」

 

「大丈夫か、私ならここにいるぞ…」

 

ハッと目が覚めた。なんだ、夢か。

私はでこの汗を拭った。

 

すぐ隣で妹紅が心配そうに私の手を握っている。

 

「うなされていたが、大丈夫か?私の名前を何度も呼んで…」

 

「大丈夫。妹紅が簀巻きにされて坂を転げ落ちる夢を見たんだ」

 

妹紅はやや困惑していたがそう言う夢を見たんだから仕方がない。

 

私が妹紅の手を握り返すと、ハッとした様に私の手を離した。まだぼんやりする私をじっと眺める彼女。少しずつ意識がはっきりして来た。

 

「…なんで妹紅が私の部屋にいるんだ?」

 

「それは…お前が私を呼んでたから…」

 

もし私が塀の外まで聞こえるほど大声でうなされていたならまず最初に永琳が駆けつけるはずだ。そうでないのだから、私が出した声はそこまで遠くに響き渡るほどの声量ではなかったはず。

 

早い話、私の寝言が聞こえる範囲に初めからいた事になる。

 

「夜這いかな?」

 

「違う!えと…闇討ちに来たんだ」

 

「虚に乗ずるは臆病の印」

 

ふむ…。結局何用があってここにいたのか分からないが、案外とただ寂しいだけなのかもしれない。

いつもあの相方と一緒にいるように思えたが寝るときは1人だと聞く。

 

まだまだ夜は冷える。独り身の生活が心身に堪えたのかもしれない。

 

ここは1つ器量の大きさという物を見せてやろうではないか。

 

「ほら、添い寝してやるから来い」

 

「だ、誰が行くか!」

 

妹紅は赤面しながら捨て台詞を吐いて出て行った。

訳の分からん奴め。私はもう一度深く掛布団を被って眠った。

 

 

 

…私は茶屋で団子をつまみながら空を眺めていた。

ああ…私は一体どうしてしまったんだろう。

 

目を瞑ると思い出すのは輝夜の顔だ。

殺意とは他に何か温かな感情が胸にこもる。

 

あの寝顔を思い出すと胸が苦しいのに考えずにいられない。

 

「はあ…」

 

「どうしたんです、ため息なんて。らしくないじゃないですか」

 

鈴仙だ。彼女は隣に座って私の団子の1つをつまんで食べる。まあ別にいいけども。

 

「寝ても起きても誰かの顔がチラついて仕方ない。鈴仙ちゃんにはそんな経験ある?」

 

「ちゃん付けはよしてください。…まあ無い事ないですけどそれがどうしたんです?」

 

「輝夜っているだろ?お前のご主人の。…最近あいつの事が気になるんだ。今どこで何してるだろうとか、何を考えてるだろうとか」

 

鈴仙は珍妙な顔をする。

 

しばらく腕を組んでいたが、落ち着いた声で言う。

 

「恋…じゃないですかね」

 

「恋って言うと…ライクじゃなくてラブの方の?」

 

「ラブラブチュッチュの方です」

 

鈴仙はそんな事言わない。

 

そんな馬鹿な…。私は輝夜の事が好きなのか?

つい最近までおはようの挨拶の代わりが殺し合いだったのに??

 

私は輝夜と結ばれてラブラブチュッチュしたいのか?

私が告白して、了承してくれれば輝夜も私とラブラブチュッチュしてくれるのか?

 

というか、私は輝夜とラブラブチュッチュしたいのか?

 

私は頭の中に輝夜を思い浮かべて見る。

もし私の恋が本当なら、妄想の中であっても彼女の言葉にドキドキするかもしれない。

 

『なあ妹紅、タラバガニって実はヤドカリの仲間らしい。収斂進化ってやつなのかな。どう思う?』

 

私は鈴仙の手を掴み上げた。

 

「輝夜、今すぐラブラブチュッチュしよう」

 

「私に言われても…」

 

酷く困惑する鈴仙。今の私には彼女が輝夜にしか見えていない。もう愛が止まらない。

 

「ハネムーンはどこへ行こうか…」

 

「あの、私鈴仙ですって。妹紅さん、もしもーし」

 

遠くで買い物袋が落ちる音が聞こえた。見やるとそこには慧音がいた。わなわなと身を震わせ、怒りの感情を露わにしている。

 

ずかずかと踏み鳴らして私達に割って入った。そして鈴仙を平手打ちする。

 

「この泥棒猫!」

 

「何が泥棒猫だ、私は兎だよ!」

 

2人が揉み合いになりキャットファイト?が始まった。私は静止に入るが寸分違わぬ見事なダブルキックが入り倒れてしまった。

 

遠くで私達を眺めていた魔理沙が肩をすくめているのが見えた。

 

「痴情のもつれか。くわばらくわばら」

 

 

 

 

私は霧の湖で水切りをして遊んでいた。

何か用事があってこの近くを通ったはずなのだが、その用事が思い出せずにいた。

 

思い出すまでの間、こうして水切りで遊んでいようと思った訳だ。久しぶりにやったら6、7回までしかいかなかったが今は14ぐらいまで跳ねさせられる。

 

この遊びにもやや飽きが来て私は近くの岩に寝そべった。

 

「ふああ……あぁ。ねむ…」

 

大きく欠伸をした。やがて瞼が重くなってくる。

少し眠ろうかな…。

 

そう思ってると青髪の少女が顔を覗き込んで来た。

氷精か。いくら私が暇だからと言って妖精に構いたくない。

 

「私の視界から消えて頂いてもてもよろしいか」

 

「なんだ、生きてたのか」

 

そう言って携帯を取り出すと私の写真を撮ろうとする。

私はとっさにその場から離れる。

 

「被写体が動いたら写真が撮れないじゃないか!」

 

「すみません、今オフなので撮影やめてくれませんか」

 

氷精はなおも私を写真を撮ろうとするので、グーパンで沈黙させた。

妖精が携帯を持っているというのも気になったので少し話を聞き出す事にする。

 

まず彼女の名前はチルノ。携帯は新聞の記事のためのネタ探しに渡された物らしい。

それで金稼ぎのついでに私を撮ろうとしたと言った所らしい。

 

「付き合う相手は選んだ方がいい。烏天狗と付き合うとロクな事がない」

 

「金の臭いは往々にして面倒な事、危険な事に付きまとう物。毛嫌いしてたらとてもありつけないからな。付き合う相手はよく選んでいるよ」

 

一理ある。

 

この子は寺子屋に通っているようだ。学費が足りないのかと聞けば、亀甲温泉の一角にできるゲーセンの資金集めをしているのだという。私が月の民に任されているテストプレイもしっかりやらないと期待を裏切る事になるかもしれない。

 

更に驚く事に彼女の家にはゲームの筐体があるらしい。かなりやり込んで飽きてしまったらしいが。

何しろ地上の物なんだとか。

 

デジタルゲームはこっちで普及してないから新しいゲームをプレイする機会と言うのは滅多にない。それは興味があった。頼んでみると、新聞の記事のネタとの交換を条件に承諾してくれた。

 

家に到着すると、机に置かれていた巾着袋から謎のコインを取り出して入り口のコイン投入口に入れる。

 

「意外に生活水準の高い暮らししてるのね…。妖精って木の上で寝泊まりしたり、枝で作った家に住んだりしてるイメージだった」

 

「そう言う先入観で警戒されづらかったり便利な事もあるけどね。それはそうと、ちゃんと新聞の記事になりそうなネタって本当にあるの?」

 

「今は確かなネタを提供できそうにないからね。もう少し待っててくれればいいネタに実りそうなのは確か。信じてくれるから家まで案内してくれたんだったよね?」

 

「まあね」

 

せっかくスマホを持っているという事で連絡先は交換した。

はっきり言って新聞のネタは持ってない。そのうち見つけたら連絡するつもりだ。

 

まあ応じてくれたあたり私との連絡先の交換だけでも何ら有用性を感じたからだと考えている。

この際、私はゲームをプレイしてチルノは私の連絡先を手に入れるってだけいいのだ。

 

それから例の筐体を見せてもらった。

ふむ、ガンシューティングゲームか。

 

元々コインを入れて遊びゲームの様だが、ボタンを押せば投入した事になるらしい。

その辺のこまごまとした説明を聞いた。

 

それから早速とゲームをプレイしてみる。

 

ユニークな操作性だ。慣れるのに苦労はしない。

ドットが美しくぬるぬる動き、敵をなぎ倒していく様は快感の一言だ。

 

繊細なボタン操作を求められ、一瞬の判断ミスが死につながる。

中々の緊張感だ。

 

かなりハマッて進めたが、4面ぐらいで疲れて休憩を置いた。

 

「機会があればこれ全クリしたいなぁ…」

 

「無限コンテニューすれば?」

 

「それは私のプライドが許さない。くぅー…、自分のプレイヤースキル以外に責められる場所がない。悔しいなあ」

 

それからゲームの事についてしばらくチルノと話した。彼女もにとりが販売していたポケットゲームを持ってるらしいのでそっちもプレイさせてもらった。

 

これだけ遊ばせてもらってあの交換条件を守らないのはさすがに気が引けるな。近々何かいい情報を提供できるように私もネタ探しに出歩てみよう。

 

それから、今日は守矢神社に向かう所だったのを思い出して彼女の家を後にした。

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