私は守矢神社に向かうためにロープウェイ前にやって来ていた。
しかし、稼働はしていない模様。これは一体どうしたものか。
元より妖怪の山の住民には快く思われていないらしいのだが、素で妖怪の山を突っ切ると色々と面倒かもしれない。参拝者は一体どうしているのか…。
そう思っていると近くに小さなポストにボタンを付けた様なスイッチが設置されていた。これを押すとロープウェイが動き出した。節電なんだろうか。
ワイヤーを伝って行くと、神社に到着した。
百度参りと言う言葉があるが、守矢神社でその祈願をする場合はロープウェイからなのだろうか。あるいは鳥居から拝殿までだろうか。そんな風に考え事をしながら中に入った。
中に入ると緑髪の巫女らしき女性が境内で倒れていた。
「大丈夫ですか?」
「あ、すみません。参拝者の方ですか。今しがた志半ばで倒れたお侍様の死体ごっこしていました」
「ちょっと何言ってるか分からない」
どうやら体に異常をきたしているとか、死んでいるという訳ではないらしい。
人間の里に分社が建ってからは参拝客もあまり多くないとの事。
「たまには総本社にもお参りに来て欲しいものですね」
埃を払いながら立ち上がる彼女。
少し話をして手水舎で清めてお参りしに向かった。
お賽銭を入れ、本坪鈴を鳴らし、二礼二拍手一礼をして祈る。
『河城にとりとのビジネスが上手くいきます様に…』
「え、何その話kwsk」
「詳細キボンヌ」
八坂神奈子と洩矢諏訪子が現れた。
オーストリアの精神科医、フロイトは神は人間の発明だと考えた。
子供は窮地に親に頼る様に、大人が窮地に頼れる物が必要だったために創造されたのだと。
私のこの神社参りは自身の不安から逃れるための一種の行動だったと言える。
不安を解消するための儀式が必要だったのだと思う。
そして思う。こうストレートに祈りが通じ、神が出現するのも善し悪しだと。
重役会議で毎月会ってる。この結果も容易に想像できた。
しかし…この祈りはとりあえず流して欲しかった…!←
月の民が絡んでる事情上、下手な事は相談できない。
取り敢えず、余計な事は省いてにとりに出資してる話だけした。
「チャレンジ精神は買うんだけどねー、あの子の計画は足元がおぼつかないのよね」
腕を組みながら諏訪子が言った。
「会社の規模がそこそこ大きくなって来たからね、あの経営の杜撰さが後に響きそうで…。むしろこの辺で一度トラブルを起こさせて灸を据えようと思ってたんだー」
ううん…胸中に収めておくならまだしも、それを神様の意見として私に告げるのはいかなものか…。
「何、時を得た一針は九針の手間を省くって奴さ。今釘を打たないと後に大きな問題を起こしそうなんだよ」
諏訪子が何か用紙を渡した。今後トラブルになりそうな問題点をまとめたメモだった。誰に調査させたのかやけに詳細が書かれている。
確かに天狗にゲーム開発を任せた時もその詳細を知らなかった。デジタルゲームに馴染ませるべく販売したポケットゲーム…あれも月の民のゲーム開発がしっかりしていないと販売が遅れて効果が薄れてしまいかねない。飽きられてしまえばそれまでだ。
人妖共にそれなりに多くの従業員を抱えている。こんなどんぶり勘定を続けてたら…。
「処理に追われてる従業員が無茶なプランを何とか間に合わせてる。自分の計画が上手くいってると河童は益々調子に乗る。このままじゃヤバイ」
神奈子は空気椅子しながら顎の下に手をやる。
この感じでは、分社に多くの従業員がお参りに来ているのかもしれない。
「何か面白い話です?」
さっきの巫女がやって来た。
「早苗が話に入るとややこしくなるから、あっちに行こうね」
諏訪子が早苗をどこかに連れて行った。
それから、2柱の神としばらく人間の里と経営とその辺の話をした。
私は自宅に戻って来た。門に入ると篭を持った鈴仙と会う。
「あ、姫様。お戻りになられましたか」
「ただいま。今から出かけるの?」
「ええ、薬の補充に。お風呂は沸いてますよ」
それなりに汗をかいたしお湯に漬かりたかった所だ。
開発部へのフィードバックの事、にとりの経営方針の見直しの事…。
身の振り方、考える事はたくさんある。
ここ最近は塞ぎ込んでてあまり情勢に詳しくない。もう少し外に関心を向けて知っておかなければ。
「……………」
出かけるはずの鈴仙が私の方をずっと見ている。
「私の顔に何かついてる?」
「あ、いえ別にそんな訳じゃ……」
鈴仙の反応は曖昧だった。
その目線が何を意味するのかはわからないが、気にしても仕方がない。
私は自室に向かおうとすると呼び止められた。
「あの、姫様って本気で恋した事ありますか」
「何を藪から棒に」
「この人を本当に好きになったとか、この人無しの人生なんて考えられないとか…」
ううん…。
この質問の意味は分からないが…誰かに恋でもしているんだろうか。
それにしても恋ねぇ…。どうったかしらん。
「そういう経験もあったかもしれないけど、ずいぶん昔だし忘れちゃった」
「そうですか…。すみません、呼び止めてしまって」
鈴仙は出かけて行った。変な子。
ああ、いい湯だった。冬至に入る訳ではないが今日の風呂には柚子が入っていた。
柚子風呂は好きだ。入った後も何となくポカポカしてよく寝付ける。
今日は考え事もやめてすっかり寝てしまおう!
そう思って寝床に向かった。
「月が綺麗ですね」
部屋には妹紅がいた。
うちのセキュリティどうなってんだよ。
と言うか今曇ってて月見えないし。
「…ここ私のプライベートルーム。分かる?君の部屋じゃないんだよ?ん?」
「分かってる。でも、今の想いをどうしても伝えなきゃって思うんだ」
「改まって何さ」
「私な…好きみたいなんだ。お前の事」
…ん?聞き間違いかな。聞き間違いじゃなければ今、私に告白したみたいに聞こえた。
今日は色んな所を出歩いて疲れていたのは事実。聞き間違いの可能性だって十分にあるだろう。
改めて私は今の言葉を聞き返した。
「お前の事が好きだ。愛してる」
おっと…聞き間違いじゃなかった。
マジで告白だったよ。マジかよ。
頭を抱えて悩んでいるとズイッと距離を縮めて来た。
「寝ても覚めてもお前の事が頭に浮かぶんだ。今どうしてるだろうとか…何を考えてるだろうとか…。お前と離れたその時から胸に風穴が開いた様に心に風が吹き込むんだ」
近い、近い近い近い。
「ちょ、待って!まず待って」
落ち着け…とりあえず冷静になれ私。この状況何?
何がどうした因果でこうなってる?
考えろ、まず気持ちを整理するんだ。
えっと…妹紅の事は好きではあるがラブではなくライクだ。
良く分からないが妹紅は私の事がラブな方で好きらしい。
ちょっとずつ落ち着いて来た。
「輝夜は…。お前の気持ちが聞きたい」
「とりあえず答えは保留でいい?」
「そうか…。答えはいつ頃に聞けばいい??」
「いつって言うか…。私達お互いに永い付き合いの割にこう、お互いの事あまり知らないしさ。うん。例えば一緒にどこか出かけてみたり…そんな風にして決めたい」
「わかった」
お互いに話し合い、翌日の昼頃に茶屋の近くで待ち合わせする事になった。
本当に急な出来事で驚いている。
少し前は上白沢さんの前で妹紅に抱き着いてみせたりしてその場を修羅場にして遊んでいたが、まさか自分がこんな事になるとは思わなんだ。
というか、あいつが私の事を好きなら上白沢さんはどうなるんだ?
ううん…。悩み事が増えてしまった。
今度永琳に相談してみよう。
今日の所は寝る事にした。
挿絵をどこに挟めばいいか良く分からん。
教えてアルムおんじ。教えてアルプスの山。教えてイルカのカイル