ホクオウガンバルとイットーショー。
その2頭の関係は馬時代にまで遡る。
丁度イットーショーが秋の天皇賞を制した時、馬主に1通の連絡が届いた。
なんでも非公式のレースに出場出来るとだ。
最初は怪しく思い、断ろうとしたのだが知り合いから「違法ではない非公式レース」と聞き、更に賞金の良さから出走を決めてしまった。
賞金800万$
軽く見積もって10億前後。
喉から手が出る程なんて言葉があるが、これ程までに欲しくなる物は無い。
ピンと来ない方の為に解説するなら、日本の競馬での最高賞金はジャパンカップと有馬記念の3億。
そしてそれをオーナーやジョッキーで分配するので手元に来るのは結構減ってしまう。
その点、このJackpot Raceはジョッキー等の関係者に配った上での800万$。
つまりそれが丸々手元に来るのだ。
開催地はギャンブラーの楽園ラスベガス、そこに意気揚々と乗り込む面々。
この時は疑って無かったからだ。
「こ、此処がラスベガス…初めて来ました」
「お、俺だって初めてだよ」
光輝くネオンに止まらない歓声。
2人と1頭は目的地に巨大な専用車で連れていかれた。
日本では想像すら出来ない派手なレース場。
圧倒されてしまう程の巨大な観客席。
そして予想外過ぎる程の大人数。
日本ダービーや有馬記念では毎回10万を越える観客が居るが、これはその倍は居そうだ。
気圧される二階堂とイットーショー、パドックやプラクティスを終え一息吐くと1頭の馬に目を持ってかれた。
黄金に輝く毛はこの舞台に相応しく、またジョッキーも非常に自信が満ちている。
なんて存在感、なんて威圧感。
2人とも飲まれそうだった、だがそれでも飲まれなかったのは二流故の経験の足り無さとふてぶてしさが有ったからだろう。
「1番人気はコイツだ!
8番ゴールドボス!」
やはり黄金毛の馬が1番人気だった。
全てが此処に居て良いのかと疑いたくなる程の名馬、だからかイットーショーは嬉しかった。
こんな強敵と競えることが。
「9番人気は10番
日本のイットーショーだ、おいおいそんなちっちゃな体で走れるのか?」
「う…」
小さくは無いが非公式だからか、解説のノリはかなり酷くこんな言葉まで言われてしまう。
「最低人気はコイツだ
15番ホクオウガンバル、またもや日本の馬だ
おいおいやる気有るのか日本?」
紹介されたのは葦毛の牡馬。
なんて言えば良いか…わりと小柄でとてもでは無いがこのレースには着いていける気がしない。
それを感じてか誰も買わずに最低人気へ。
少し時は進み16頭がゲートに入るとイットーショーは違和感を覚えた。
何か重い物が乗っているような、嫌な感覚だ。
「ゲートが開いた!
各馬一斉にスタート!
おっと、いきなり飛び出したのはゴールドボスとイットーショー!
ボスは逃げるのがそれなりには得意だがイットーショーは良いのか?」
スタートと同時にダッシュするゴールドボスとイットーショー。
だが様子がおかしいとすぐに二階堂は気付いた。
「笑う馬」としてファンが着いているイットーショーが1度も笑わない。
ペース配分なんて考えていない逃げのゴールドボス。
彼は後にこのレースをこう語った。
「Jackpot Raceですか?
うーん、あまり話したくは無いのですが特別ですよ
最初はいいスタートでした
気質と言えば良いのですかね?
イットーショー自体はあまりプレッシャーを感じないふてぶてしいって言うか大物って言うか…そんな馬でした
でもそいつが初めて俺にプレッシャーを掛けられてるって言ったんです
そんな馬ですらこう感じるなら他の馬はどうですか?
後で調べたのですけどゴールドボスって差し馬なんですよ、なのに逃げちゃう程の恐怖
ビックリしましたよ、長い間イットーショーと一緒に居ましたけど唯一の敗北は彼だけでした」
最終コーナーを曲がったところで勝負は動いた。
元々逃げを苦手とするゴールドボスが失速し、馬郡に飲み込まれていった。
そして後ろから迫り来るプレッシャー。
最低人気のホクオウガンバルだ。
1頭、また1頭と抜いていきすぐにイットーショーと並んだ。
(は、速い!?)
(コイツ飲まれてない!?)
一歩イットーショーが前に出れば一歩ホクオウガンバルが前に。
その逆もしかり。
何時しかゴールしていた2等はすぐに電光掲示板を見てどちらが勝ったのかを確認した。
1分…5分…僅差過ぎたのか写真判定に時間がかかる。
そして映し出された順位。
1着15番
2着10番
ハナ差
初めての敗北だった。
自分が負けるなんて、そう思って無かったイットーショーの胸にはモヤモヤが出来、何時もの笑顔が浮かばなかった。
「い、イットーショー?」
「ブルル…(ま、負けた?)」
「ンー!(いい勝負だった)」
「!?(お前!?)」
「ブルルルル(今回は俺が勝った、そして次も俺が勝つ)」
「?(公式に来るのか?)」
「ブフゥ(いや、オーナーの考えで俺は公式には出ない)」
「バルフフフフ(非公式に出てればお前とまた闘えるって事か?)」
それを聞き満足そうに頷くホクオウガンバル。
すると何時もの爽やか(自称)の笑みではなく、好戦的に口元を緩くするイットーショー。
最高だった。
国内無敗は確実だ、何せ名馬なんて殆ど居ない時代だからだ。
負ける訳無いと決めつけていた、なのに負けた。
最高の気分だった、誰も自分に追い付けないなんて思ってたのに追い付いてしかも抜いてくる奴が居るなんて。
この日の払い戻しは単勝で17000と言う破格
更に3連単では100万を越える事が示された。
だが、この日は1円も払い戻しが無かったのだった。
それから少し後、丁度有馬記念に優勝し中山に絶望と悪夢を届け多数の馬券をちり紙に変えた後の事だった。
Silent Night Cupへの招待状が届いた。
またもや非公式のレース、だがイットーショーは有馬記念での疲れなんて微塵も感じさせない。
だからか、良くは無いのだが出走を決めた。
そしてたどり着いたのは何処かの競馬場。
出走は夜らしく、月の明かりが勝者を照らし出すそうだ。
そしてその舞台に奴は居た。
「ブルルルルルル(久しぶりだな)」
「…(イットーショーか)」
「ブルルルル!(今回は俺が勝つ!)」
「ブルル!(望むところだ!)」
またもや低人気の2頭だが、その闘志は観客でさえ息を飲むほどに満ちている。
そして笑わないイットーショー。
二階堂は笑わない時は負ける、なんて失礼な事を思ってしまうがすぐに気を取り直して出走の準備。
「8番人気は日本の悪夢イットーショー!
闘志満々、やる気十分、勝つか負けるか楽しみだ」
「お隣は6番人気のホクオウガンバル
裏じゃ無敗の最強馬らしいが今回はそんなに甘くはいかないからな!」
表の馬じゃ裏の馬には勝てない。
そんな風に笑っている観客だがすぐにその考えは改めさせられた。
ゲートが開き一斉に走り出した時、イットーショーは全速力で前に出てきた。
何時もより前に、何時もより速く!
彼奴にはもう負けない!
強い気持ちで脚を使うイットーショー。
そして運命の最終コーナー。
曲がったところでまたもやホクオウガンバルが1頭、また1頭と抜き去りイットーショーと並んでくる。
「!(ガンバル!)」
「!(イットーショー!)」
激しかった。
2頭は最終コーナーを曲がったばかりで尚も加速していく。
もう誰も追い付けない、いったい何馬身の差が着いたのだ?
気付けばまたもやゴール、此処まで来てイットーショーはやっと理解できた。
(俺、コイツと競うのが楽しいんだ)
公式に出ていては楽しめない。
そう思ったが伝える術が無く、オーナーが持ってきた招待状に期待するしか無い。
「ブフゥ(楽しいな)」
「ブル(あぁ)」
「バルフフフフ(またやろうぜ)」
「ブルルルル(勿論だ!)」
激しい勝負はイットーショーの勝利。
電光掲示板に映されるのはハナ差、そしてホクオウガンバルと3位の差は大差と計測が難しい状態になっていた。
「やった、やったなイットーショー!!!!!」
感激のあまり涙を流しイットーショーに抱きつく二階堂。
そこで何かを思い出した。
「ブルルルル!(あ、そうそう、これやらなきゃ)」
「ブフゥ?(何だ…ってお前これは草生える)」
観客に向けての満面の笑みだ。
それを見て笑うホクオウガンバル、そして真似するかの様に同じく笑顔を振り撒いた。
「月の女神に愛されたのは馬鹿面を見せるイットーショー…おいおい、馬だけに馬鹿ってか?」
解説は少し呆れているが何処か満足そうにそう言うのだった。
そして時は流れトレセン学園。
そこでは毎日勝負が繰り広げられている。
下らない物ではどちらが勉強せずに高い点をとれるか、マトモならどちらがより重い物を持ち上げられるかだ。
栗毛の美女と葦毛の美少女は負けたくないからと、常に極限まで互いを研ぎ澄ますのだった。
何時もより長くなってしまいましたがこれにてイットーショーとホクオウガンバルの出会いと勝負はおしまいです
此処から先はウマ娘としての話が増えると思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます
字数はどうでしょうか?
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今まで通り2000前後で良い
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3000は欲しい
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4000くらい書けよ
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天元突破10000を狙え
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字数よりも早く更新しろ
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良いからイットーショーを可愛く書け