馬、ウマ、うま!   作:ジャックマン

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レストランじゃ有りませんよ


ラストラン

『ここフランスのパリロンシャン競バ場では熱い火花が散っております

1番人気はフランスのスタリオンヴェール

気迫の籠った仕上がりです』

 

『昨年の優勝ウマ娘ですからね~

2冠にかける気迫が有りますよ』

 

中山の最後のレース。

それはイットーショーの凱旋門賞だ。

シンボリルドルフは残念ながら参加出来なかったが、各国のNo.1ウマ娘が終結しているレース。

様々な人がテレビを介して見ている。

 

此処でもあの名言は生きているのを覚えておいて欲しい。

「日本のウマは凱旋門では勝てない」

かつて幾人ものウマ娘が挑んでは負けていった魔境、そこに奴は降り立つのだ。

 

『8番人気は日本のイットーショー

あまり期待されていないのかあまり評判は良くありませんね』

 

『日本が誇る無敗のウマ娘が何処まで通じるのか、そこに期待しましょう』

 

解説も解説だ。

イットーショーがどう勝つかよりも、イットーショーが何処まで通じるのかを語っている。

仕上がりは完璧、それに二階堂は居ないが中山と仲間達が居てくれる。

負ける気なんて無い。

 

「相変わらずね」

 

「何せ島国のウマ娘だからな」

 

「…ゴールドボスね」

 

「流石アタシだな、辺境の島国の猿でも知ってるか」

 

長い金髪に挑発的な目付き。

かつてホクオウガンバルとイットーショーに敗北したゴールドボスが嫌味を言いに来たのだ。

 

「えぇ、何せプレッシャーに弱くて勝てる勝負すら落としてしまう臆病なウマ娘なのだから」

 

「テメエ…」

 

「ごめんなさいね、私って遠慮無く言っちゃうウマ娘なの」

 

レース前から本気の煽りをかますイットーショー。

それに、日本の競馬とアメリカの競馬はかなり似ておりスピード重視の作り。

だが、フランス等の競馬はスタミナと粘りの作り。

適正が真逆なのだ。

 

「後、言い訳は考えておきなさい…無様な順位になってしまうのだからね」

 

「テメエにゃ絶体負けねえからな!」

 

らしくない煽り、何時ものイットーショーとは違う。

いや確かに煽ったりはするが殺意をこんなにも抱かせる煽りはしたことが無い。

一応、彼女なりに緊張しているのかも知れない。

 

「イットーショー…」

 

「イットー…」

 

「イットーさん…」

 

最前列で見ているサジタリウスのメンバーはらしくない姿に一抹の不安をおぼえるが、コイツなら何とかすると言う感情により複雑な心境となっている。

 

(…困ったわね

ゴールドボスは良いとして他のウマ娘も仕上がりは完璧、ましてや前年の優勝も居る

簡単には勝たせてくれなさそうね)

 

闘志に満ち、勝つために完璧に仕上げて来ている。

それだけでかなり厳しい戦いになるのに、そこに前年の優勝ウマ娘。

つまりこのコースを熟知しているのまで居るのだ。

 

馬時代と違い敵がかなり多い。

だが、たからこそ楽しい。

イットーショーは好戦的な笑みを浮かべ、ゲートに入っていった。

 

「アイツ…笑ってやがった」

 

「笑ってると何なのホクちゃん?」

 

「……………アイツ、レース前って笑わないだろ」

 

「当たり前だろ」

 

「…………普通はな」

 

レース前もレース後も笑わない。

あのイットーショーがだ、この異常が歩んでくれた諸君等なら解るだろう。

 

ウマ娘とは各名馬の特徴を色濃く引き継いでいる。

オグリキャップなら超大食い、ゴールドシップなら奇行が目立つ等だ。

ならばイットーショーは?

 

そう、笑顔だ。

誰もがネタにし、だが愛してくれていたレース前とレース後の笑顔を1度もしていないのだ。

 

それは楽しい勝負しかなかったからだ。

イットーショーの時代に名馬とは戦えなかった、だからか笑顔を見せる余裕があった。

でも此処では違う。

大逃げの先輩であるサイレンススズカ、気紛れな天才ゴールドシップ。

セイウンスカイ、マヤノトップガン、エアグルーヴ、ウオッカ、ダイワスカーレット、アグネスタキオン等々

挙げればキリが無い程の名馬達との戦いは余裕なんて無い、常に必死に挑んだ。

 

代名詞の笑顔は捨て、1人の挑戦者として常に挑んでいたのだ。

そんなイットーショーが凄く良い笑顔を浮かべているのは、この勝利で己の不満が消えると思ったからだ。

 

「ゲートが開いた、各ウマ娘一斉にスタート」

 

「おっと、イットーショー僅かに出遅れたか」

 

「苦しい展開になりますね」

 

「と言いますと?」

 

「イットーショーは最初から突き放してずっと前に立つウマ娘ですから、バ郡に飲まれた経験が無いのですよ

出遅れは痛恨のミスですね」

 

そんな訳あるか!

中山は叫びたいがグッと拳を握りしめ耐える。

負ける訳が無い、お前は何時も言ってるよな「自分は一等賞なのよ」ってさ。

 

だからか…サジタリウスだけじゃない、トレセン学園のウマ娘やトレーナー達は勝つと信じている。

奇行が目立つ、変なウマ娘、色々と言われているが実力だけは皆が認めている。

プライドの高いメジロマックイーンやキングヘイローもだ。

 

「第2コーナーをカーブ」

 

「これはなんと!?」

 

「イットーショーが上がってきた!」

 

ウマ娘になれて浮かれてた…でも、1度も会えなかった娘達に会えて嬉しかった。

彼女達に()はこんなにも偉大なんだと見せてやる。

 

「マスカットクイーンを抜いた!」

 

「凄まじいリカバリーですね!」

 

自分はライバルなんて表には居なかった。

裏ではガンバルが居たけど、奴もすぐ居なくなった。

此処には最高のライバル達が居てくれる!

 

「続けてリットリオも抜いた!」

 

「速い!?」

 

「もしかしてあり得ますよ!」

 

トレーニングはあまり好きじゃない。

院の為に何かする時間が減るし、でもすれば賞金で少し良い事をして上げれる。

でも、1番の恩返しは勝つこと。

 

「ブラッドワールド、ターフレモン、ユーキブルーも抜いた!」

 

「こうなったイットーショーは止まりません!」

 

「勝てイットーショー!!!」

 

中山君と二階堂君は似てる。

体型や性格はそれなりに違うけど、2人の全く同じところに惹かれたから組んだ。

 

「最終コーナーをカーブ!」

 

「イットーショー対スタリオンヴェールの1対1になりましたね!」

 

「その差は2バ身、あっという間に消える差です!」

 

ガンバルはライバルとして私を見てた。

ブラックは一応先輩として敬ってくれた。

でも中山君は違う。

 

「並んだ!並びました!」

 

「行けー!イットーショー!」

 

彼は…彼だけは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺はお前が勝つって信じてる!」

 

どんな時でも信じてくれる。

皆そうだった。

でもね、貴方には誰にも負けない「信じてあげれる」って凄い才能があるの。

 

それを磨いて、誰よりも凄くなって来なさい。

その時が何時になるか解らないけど、引退しないで待っててあげるから。

一等賞じゃ無くなってもね。

 

仮にもし私達が巣立ちの為の重りになってるなら退くわ。

貴方が信じたイットーショーは世界最強のウマ娘、その答えに不満があるなら蹴飛ばしてあげる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから…行ってらっしゃい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴ………ル」

 

「っ!?!?!?」

 

「なんと……」

 

最終コーナーを回ったところで勝負は変わった。

勝負からイットーショーの蹂躙劇に。

 

抜かされまいと加速しようとするスタリオンヴェールだが、国の競バが違うので思い通りに出来ない。

だがイットーショーは日本のスピード競バ、加速にはなれているほんの少し進んだところで逆転。

そのまますぐに2バ身、3バ身と突き放していく。

 

「や、やりやがった…」

 

「アイツならやるよトレーナー」

 

「うっ…うっ…おべでどうございばずイッドーざん」

 

うっすらと涙を浮かべて勝利を喜ぶ中山に号泣のキタサンブラック。

そして、ライバルが勝つと思っていたので軽く微笑むホクオウガンバル。

 

こうして日本は初めて凱旋門賞優勝の栄誉と、レコードタイムを塗り替えた栄光を手にするのだった。

 

「あ、悪夢だ…」

 

「芝の悪夢だよ…」

 

「It's two show」

 

名前にちなんでか、そんなことまで言い出す者が居た。

最初は追い抜くなんて玄人が喜ぶ展開をしつつ、そのまま圧倒的な差でゴール。

応援していたウマ娘が下手したら再起不能になりかねない圧勝をされたら誰だって絶望してしまう。

 

なんて心地良い絶望だろうか。

東洋の島国と侮っていた人達の怨みの籠った視線、これこそが『最強のウマ娘』であるイットーショーの望んでいた物なのだ。




イットーショー
名実ともに芝の最強となったウマ娘
後に芝逃げのお手本と呼ばれる程になった















そろそろ最終回なので

  • お疲れさん
  • じゃあ第2部行こうか
  • イットーハンターの始まりだな
  • 聖闘士一等賞の始まりだ
  • 神は言っている、ここで死ぬ運命ではないと
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