時は流れて年末。
部室にはサジタリウスの4人が集まって、大きな鉄板を囲んでいる。
「えー、この度は皆の目標が達成された事にトレーナーとして非常に嬉しく思う」
「キタちゃんの走りには痺れたな」
「そう言う貴方の走りだって良かったわよ」
「あれはウオッカが一瞬油断したからだ、次も同じになるなんて事は無い」
「私はイットーさんの走りに驚きました
あれって狙ったんですか?」
「いえ、ただの出遅れよ」
ただの出遅れで彼処まで見事な逆転勝利。
しかも、あの後の事だがスタリオンヴェールとゴールドボスはイットーショーのプレッシャーに完全に折られ、走行恐怖症となり引退を余儀なくされた。
別にこれは珍しい事ではない。
例えばサイレンススズカの様に大舞台で走って途中で骨折、その記憶のせいで走ることに恐怖を覚える。
言い換えればイップスの1つだ。
それに掛かると多大な時間を消費してしまうので、殆どのウマ娘は引退を決意する。
凱旋門の悪夢は真の悪夢となったのだ。
「それであの勝ちか、天才だよお前は」
「そうね…」
「ところでトレーナー、いい加減直らないのか?」
前に食べたイットーショースペシャルシリーズのせいで、腕は血管が浮き出て非常に逞しく見える作りに変わった中山。
あれは本当に何なのか。
「後1年はこのままね
ただ、今なら不眠不休で働けるわよ」
「おいおい、鉄鍋さんの料理かよ」
実際、3日3晩働いて平気なので恐らくマジだろう。
だが後が怖いので無茶はしないが。
「取り敢えず今日はお前達の目標達成と忘年会を兼ねて焼き肉パーティーだ!
肉は買い込んで来たからスペちゃんだろうがオグリだろうが満足するレベルだ!」
「「「おぉ…!?」」」
中山は意気揚々と業務用冷蔵庫を開くと、牛や豚や鳥。
羊に熊に猪とレア物も含めて何頭分か数えるのが億劫になるくらいの肉を見せつける。
これで最後だからと、奮発して地元の肉屋を巡りありったけ買ってきたのだ。
「先ずは何にする?」
「俺はカルビ!」
「私は熊で!」
「私は野菜を焼いて」
「焼くのはお前達もやるんだからな!?
ったく、手の掛かる奴等だ」
そう言い冷蔵庫側の折り畳み式のテーブルに皿とまな板を乗せると丁寧に切り始める。
「仕方無いわね、手伝うわ」
「イットーが?」
立ち上がり中山の隣に行くと、丁寧で素早い手付きで肉を切り盛り付けていく。
しかもただ乗せる盛り付けではなく、1枚1枚丁寧に重ねて出す高級店の様な感じでだ。
「肉ケーキ!?」
「イットーさん…何でも出来ますね」
「何でもは出来ないわ、出来ることだけ出来るのよ」
「それ使えそう」
「ホクちゃん…」
相変わらず、使えそうな言葉を見付けては喜ぶホクオウガンバルについ突っ込んでしまう。
「さて、皆グラスは行き渡ったな」
「はい!」
「えぇ」
「おう!」
一通り切り終えると席に戻り、中山の音頭を待つ3人。
咳払いを1つし、恥ずかしそうに口を開いた。
「今年は最高の1年だった
ガンバルは新時代レースと名高いhighway classicを勝利
キタは日本最高峰の有マ記念でレコード
イットーショーは凱旋門賞で圧勝
全員が目標を達成し、尚且つその上を行ってくれた
お前達は問題児だが同時に俺の誇りでもある!
忘年会で言うのも何だが、お前達には更に上を行って伝説になってほしい」
「当たり前だろ!」
「勿論です!」
「しない、なんて選択肢は無いわ」
「その言葉を聞いて安心した
これからサジタリウスは外部の連中だけじゃなく内部、トレセン学園のチームからも狙われる立場になる
だから1つ俺から目標を提示する
勝て、勝って黙らせろ!」
「負けるつもりは無いぜ!」
「負けなんて考えてません!」
「2人はともかく私が負けると?」
3人の発言に満足そうに頷くと、ビールジョッキを高々と掲げる。
それに合わせてグラス(中身は烏龍茶)を掲げる3人。
「勝ち続けろ!
乾杯!」
「「「乾杯!」」」
飲み物を掲げた直後は戦場、これはウマ娘と関わるなら覚えておくと良い。
特に長距離を得意とするウマ娘はそれが露骨で、特にオグリキャップとスペシャルウィークが有名だろう。
ちなみに3人とも長距離なのでその例には漏れないのを忘れないでほしい。
開始と共に消えていく肉と野菜。
キラキラと脂が輝くカルビはホクオウガンバルが、少し渋めにハツやレバーを焼いたがキタサンブラックに。
野菜は焼けた物から順にイットーショーが食べていく。
「おひゃひゃひ!」
「あひゃひほ!」
「キタとガンバルはおかわりな」
「私は少し切ってくるわ」
「助かる」
食いしん坊万歳の2人は容赦なくおかわりを要求、まさか業務用炊飯器が2台空になるなんて誰が予想出来るか。
中山だ。
彼はこの日の為に更に上を行き8台用意していた、まぁ肉は追い付かないのでイットーショーに任せたがこの2人を満腹にしてやると決めていたのだ。
「ほらよ」
「うんまーい!」
「ホクちゃんに同意です!
どんな魔法を使ったんですか?」
「炊く時に備長炭入れただけだよ」
そう言ってイットーショーの元に行き肉を切るのを手伝う。
「それで、何時話すの?」
「っ!?」
「それくらい見抜けるわ
でも、早くした方がいいわよ」
「あぁ」
コイツは凄いな。
敵わない、中山は1人そう思い黙々と肉を切るのだった。
2時間後、満足そうに寝転がる2人とそれを見て満足そうに微笑むイットーショー。
そして神妙な顔付きの中山と、凄い状況となっていた。
「あー、皆に聞いてほしい事がある」
「?」
「なんですかー?」
呑気にまどろんでいる2人だが、続く言葉で無理矢理目を覚まさせられた。
「アメリカに留学する事になった」
「なっ!?」
「えぇ!?」
知っていたのか呑気にお茶を啜るイットーショー。
だが2人は知らなかったので慌ててしまう。
「アメリカの学園からの要望でな、お前達を育てた手腕をもっと磨いてほしいらしい」
「そ、そんな!?」
「ガンバル!!!」
「っ!?」
「すまん
任期は解らないし何時帰ってくるかも解らない、もしかしたらそのまま永住させられるかも知れない」
驚く2人、もし暴れようなら抑えつけるつもりで常に体制を取っておくイットーショー。
「そ、そんな…じゃあサジタリウスはどうなるんですか!」
「理事長が何とかするとの事だ」
「……そう、本音は?」
慌てふためく2人を脇目で見つつ、その本心を問い質す。
逃げる為か、それとも…
「お前達は最高で最強のウマ娘だ
だが俺はどうだ?何処にでも居る平々凡々な三流新人トレーナーだ
今はお前達を育てたトレーナーだって言えない」
「っ!?」
「……」
「そうね」
「だから、必ず一人前になってお前達を育てたトレーナーだって断言出来るトレーナーになって帰ってくる
何時になるかは解らない、でもお前達の引退前には帰ってくる」
出来る人物には出来ない人物の気持ちは解らない。
それを嫌って程知っているイットーショーは2人を諭し、見送る事を決めるのだった。
後日、中山は涙を圧し殺し3人と別れて旅立つのだった。
姉であるナカヤマフェスタはその煮え切らない態度に笑い、背中を蹴り飛ばしたくなるが中指を立てる事で我慢するのだった。
レースの時系列がバラバラなので軽く纏めると
ホクオウガンバル優勝→イットーショー優勝→キタサンブラック優勝です
うん、気分で書いてると混乱してきますね
中山源八
3人が1人前になったと思い、安心して海外に飛び立つ 目標は1つ 「こんな鬼才を育てたって胸はって言えなきゃな こんなの見てくれてありがとうな 次合うのは…何時だろうな、その時までには一人前になってるよ」
そろそろ最終回なので
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お疲れさん
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じゃあ第2部行こうか
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イットーハンターの始まりだな
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聖闘士一等賞の始まりだ
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神は言っている、ここで死ぬ運命ではないと