馬、ウマ、うま!   作:ジャックマン

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久しぶりに二階堂君の視点を書きたくなったのでやりました


久々にね

夏に入るとG1レースの数が減る。

春は天皇賞を筆頭に始まりの季節だからと桜花賞等を、秋は春の馬が出れるからと秋華賞やエリザベス女王杯を。

冬は終わりだからと有馬記念を筆頭に日本の最高峰を。

 

二階堂にとっては夏こそが穏やかに過ごせる季節なのだ……今までは。

知っての通り、日本の競馬界は盛り上げようとレジェンド達のレースを使ったCMの作成が頻繁で言い方は悪いが逃げた二階堂には泣きたくなるような辛いのが多いのが現実だ。

 

天才を天才にした馬、瞬きさえ許さぬ熱戦、圧倒的な強さを見せ付けた馬。

今まではその姿を見る度に何故どうしてと己を責めたものだ。

だが今の彼にはそんな気持ちはない。世界で唯一自分にだけ背中を預け、三流の自分をレジェンドなんて呼ばれる様にしてくれた相棒と再会出来たからだ。

 

情けない話、彼は頻繁にとあるゲームを開き相棒と再会している。

オタクと笑われてもおかしくない位にだ。だが彼にとっては親と同じ自分と言う人間を作ってくれた恩人。

一言では表せない関係だ。

 

穏やかな表情でテレビをつければあのCMが流れている。

何時もとは違い各優勝馬を撮してる少し変わった作りだ。

 

『最強の馬は皆制した

タマモクロス、シンボリルドルフ、イナリワン、メジロマックイーン、ライスシャワー

だが誰もコイツを越えることは出来なかった

最速最強、無敗の王者にして不可能を可能にした悪魔

トキノミノルの再来、無敵の男

イットーショー

天皇賞春、5月○日』

 

今までは聞くのが怖かった。

死んだ事実を認めたくない、もしくは居なくなった現実を認めたくなかったかりだ。

だが今ではその姿は成りを潜めただ誇らしく思える。

 

ゲームとは言え人々がコイツは特別すぎると泣き叫び認めてくれたからだろう。

そうだお前は特別なんだ、俺なんかが乗ってるのが烏滸がましい位に凄いんだと思うといつの間にか肩の荷が降りてたのだ。

 

言い方は悪いが二階堂にとって一番の重荷はイットーショーその物だ。だがその姿を皆が認めてくれるだけで違う気持ちが出てくる。

変な言い方な上に解りにくいかも知れないが、重荷であったと同時に誇りでもあった。

人とは奇っ怪な生き物だ。

感情を文字にするのは難しい。

 

『勝ちたかった……だが誰一人として挑むことすら許されない絶体王者

奴が歩けば人は喜び騎手は怯えた

勝てるなんて淡い希望すら抱かせない走り

イットーショー

奴にとって人の希望はただの道端の石だ

ジャパンカップ、4月○日』

 

『稲妻と悪夢、出会ってはいけない2人が此処で出会ってしまった

鉄の肺は軋まず走り抜けるが稲妻は貫こうと激しく動いた

イットーショー、タマモクロス、時代が違えば2人は各々この賞を獲っていた……

2:12秒間は人々は喋ることさえ出来なかった

宝塚記念、6月○日』

 

「凄いなイットーショー……」

 

テレビをつければレジェンド達のCMばかり。

贔屓目からか、その中で特に目につくのはイットーショーの物ばかり。

 

 

 

 

 

 

二階堂が思い出すのは宝塚記念だろう。

自分も少しだけ経験を詰み自信をつけた頃、人気投票でイットーショーが選ばれたのだ。

 

嬉しかった、それ以外の感情が浮かばなかったが馬場につけばそんな気持ちは消えた。

一言で言おう、顔が違う。

浮かれてる二階堂と違い騎手の皆は勝つためにどうするかと、どう行くかと考えてる。

 

恥じた、自分は温かったと後悔した。

だがイットーショーだけは何時も通りにしてくれている。

 

その時、二階堂の頭にはある文字が過る。

『引退』だ。

一流達はどう勝つかを考えているのに自分は……なんて情けない気持ちになり、逃げたくなったのだ。

 

「なぁイットーショー……俺、場違いだな」

 

「ブルフ!?(相棒!?)」

 

「皆勝つために来てるのに……俺、参加できただけで喜んでた……」

 

「バルハフフフ(何言ってやがる相棒、なら今から勝てば良いだろ)」

 

もしこれを他の騎手が聞いたら怒るだろう。

二階堂は勝つことを考えず、ただ馬を信じるしか出来ない男なのだ。

 

前に言った中山と二階堂がそっくりな、ただ『信じる』以外出来ない不器用な男。

 

ゲートに入った馬達は興奮し、騎手達も一瞬でも出遅れない様に気を張っている。

派手なファンファーレが鳴り、そしてそれが終わりゲートが開く間近となった。

 

開くと同時に駆け出す2つの影。

イットーショーの時代に存在した数少ない名馬、ウマ娘となって尚関わる存在『タマモクロス』だ。

 

イットーショーと唯一渡り合える存在、それは二階堂が知るところでは二頭しか居ない。

葦毛の怪物『オグリキャップ』と白い稲妻『タマモクロス』だ。

 

独走と言って良いだろう、二頭の白熱した走りに他の馬は圧されたか出てこない。

気付けば大量リードでの勝利、まさに圧倒的であった。

 

マンガの主人公に抜擢される程のタマモクロス、それを抑え圧倒的な逃げで勝利を掴むイットーショー。

これが様々な馬主を絶望に追い込んだ暗黒の時代を知らしめたレースだ。

 

タマモクロスとイットーショー、この2人はこの時代からつるんでいたのだった。

 




今回は答え合わせでした
イットーショーは1988年、つまりタマモオグリ世代の馬だったのですが時期が合わなかったりしてつまらない勝ちを重ねてるだけでした
丁度
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