1
「そういえば、お互いの個性について話したことないよね」
彼が振り返る。私が自分の個性について話すと、彼は「なるほど!」だとか「ええ!」なんて大袈裟に反応するものだから、私はもしかすると、とんでもない才能を持った人間なのではないかと錯覚してしまいそうになる。私の個性の説明が終わると、彼は「よし、じゃあこうしよう!」と地図を指差し、作戦をすらすらと語り出す。お互いに、という言葉を辞書で引いて赤ペンを引いて欲しいものだ。
「ちょ、ちょっと待って!まだ、君の個性聞いてない」
入学試験のときの彼の活躍っぷりはすごかった。0pロボから私を助け出してくれた時は、No.1ヒーローにだってなれてしまうのではないかと思った。きっとすごい個性に違いないと思い期待する。彼が顔をあげる。
「ん?僕の個性はね、笑顔!」
彼はそう言いながら、笑った。その笑顔は、それは個性じゃないでしょ、なんて言葉を吹き飛ばしてしまうほど、輝いて見えた。
2
クソ!あたらねぇ!ちょこまか逃げやがって!
「そんなにバカスカ打つなって。核、爆発しちゃうよ?」
あいつが、心底腹の立つ笑顔で、話しかけてくる。
煙に紛れたり、攻撃を受け流したりセコいことばっかしやがって!
「舐めプしてんじゃねぇぞ、クソが!てめぇも個性出しやがれ!」
核がなんだ!どうせニセモンだろ!全力のやつをぶっ倒さなきゃ意味がねえ!!
「ずっと出してるさ」
どういうことだ。ずっと出してるだぁ?だんだん俺の攻撃が当たらなくなってるのがあいつの個性ってことか?だとしたら攻略法は
「なんか見当違いなこと考えてない?僕の個性は」
「学習だろぉ、そんで俺の攻撃ちょこまか避けてんだよなぁ!!」
「それいいね!今度それ名乗らせてもらうよ」
新しいおもちゃもらったガキみてえな顔であいつが笑う
「っざけてんじゃねえぞ、てめぇ!個性なんだ!」
ん?と眉を上げ腹の底から馬鹿にした顔であいつが言った
「あ・お・り♡」
「ブッッッッッッッ殺す!!!!」
3
「それ、ホントですの!?」
私としたことが、取り乱してしまいましたわ。しかし、今回ばかりは仕方がないと思いますの。だって、爆撃を羽毛のようにかわし続けだと思えば、隙をついて岩のように思い一撃を打っていく彼が、まさか無個性だなんて!
「私も信じがたい。彼はいずれ、この世界の希望になるかもしれない」
入学書類には、個性:ゲーム好きって書いてあったけどね。と先生がおっしゃった時には眩暈がしましたが。燃えてはだけだ服から覗く引き締まった体、ここまでの作戦を一瞬で思いつく頭脳、そして、無個性でありながら強個性に立ち向かっていく胆力。一体どれだけの研鑽を積み上げれば、そんなに強くなれますの。
「格が、違いますわ、」
そんな言葉が転がり出てしまいました。
「入試を見た私は彼に頼み事をしたいと思ってね、まあ振られてしまったんだが。そのとき彼はこう言っていたよ」
「小指の関節がないくらいで威張るな!僕なんか薬指より人差し指がこんなに短いんだ!って手を見せられたよ。彼にとって、個性ってそんな程度のものなんだってそう言われた気がしたよ」
身長が高い、茶髪、絵が上手い、服が好き、個性だってその一環でしかないとね。そうおっしゃる先生は、とっておきの今日の出来事を、大好物の並んだ夕食中に母親に話す少年ような顔をしていました。
「わたくしも、」
クラスメイトであるのに、まるで遠い彼の背中に、いつか追いつきたいと
4
火傷がズキズキと痛む。爆音で耳鳴りが止まらない。正直、さっきから雰囲気だけで会話してる。
「なんで攻撃当てないの?そういう作戦?」
「死ねやクソがぁぁああああ!!!!」
笑え。相手を煽ることに集中しろ。相手の視野を狭めろ。攻撃を単調にさせるんだ。
「当たらなきゃ死なねえよ!」
インカムで先生と会話してるのか。なんて言ったんだろう。声が遠い。
BooooooM!!!!!!!!
「……は?」
直後、すぐ近くで地面が抉れた。壁も、天井も無くなっていた。
「びびってんのか、煽り野郎ッ!!」
足が震えてる?視界が歪んだ、僕はいつのまにか転んでいた。
「そんな小せえ声じゃ聞こえねえよ」
「……ぶっ殺す!!」
やべぇ、今僕煽った?すげえ突っ込んでくる。立たなきゃ。
「死ねやぁぁああああ!!!!!」
身体に力はいんないや。無個性の割に頑張ったじゃん。そろそろ休んじゃおうかな
……どうせ諦めるなら、
最後に一回だけ、頑張ってみるか
5
丸まって、ビビってんのかよ!ザコが!!
「死ねや!!!」
Booooom!!!
こいつ転がって避けやがっ…!
避けた勢いのまま腕で押し返された彼の両脚が顎を撃ち抜く
「ガハッ…!!」
「…また、やろう、な、」
倒れ込む2人の顔は、まるで対照的なものだった。
6
「2人とも駅なん!?一緒かえろ!!」
「君は、無限女子!」
「そー、駅駅、一緒かえろな〜」
帰り道で彼を見つけた!今日の訓練かっこよかったね!とか何か武道習ってるの?とか、聞きたいことたくさんだ!なのに…
「おい!クソナード!!!」
「ん?」
呼び止められて、彼が振り返る。
「てめぇ、無個性なんだってなぁ」
「だからぁ、僕の個性は笑顔…って言いたいとこだけど、そうだよ、んで?」
「オールマイトに褒められて調子乗ってんじゃねえぞ!!次は勝つ!勝って勝って、No.1ヒーローになるのはこの俺だ!!!!」
「…へえ」
そう呟くと、また彼は笑って、こう言った。
「負けてやんないぜ?