ほとんど出てきませんが、テイオー主人公回
何故、ヒカリエというウマ娘に『覇者』という名がついたのか。
圧倒的な差をつけての勝利。加えて全くと言って良いほど動かない表情。そして只々敗北者を眺めるその姿。本当は声を奪われた者であったのだが、側から見ればそれは恐怖の対象であった。
だからかっこいいというファンは居たが、可愛いというファンはまず居なかった。アイドル性を求めるのではなく、ただ勝ちを見たいファンだけが残っていた。
勿論、ヒカリエが話せないということは観客は知らない。話す言葉もないと思われていたのだった。
それを知っているのはトレセン学園の一部の者のみ。スピカのトレーナーと所属するウマ娘。そして学園側の者のみ。
だから、途端に愛想を振り撒き始めたヒカリエの姿に、ウマ娘達は驚きを隠せないでいた。勿論、本人的には愛想ではなく、ただ出会ったウマ娘達の名前を呼んでいたのだが。
呼ばれたウマ娘達は、『覇者』のまさかの笑顔に驚きを隠せず、そのまま空いた口が塞がらない者。そして心がキュンとする者に別れた。
そんなヒカリエを引っ張りながら、何とか追従するウマ娘を振り払ったマックイーンは、生徒会室の扉を叩いた。
「待ってたよ、既に噂どころか耳にまで入ってきてしまっているよ」
そう答えたのは、生徒会長であるシンボリルドルフ。いつもの椅子に腰を掛け、此方を嬉しそうに見ていた。
マックイーンは直様返事を返し、扉を閉めようとした所。
「るどるふ!」
「おっとっと……こんなにも懐っこかったのか」
ヒカリエは目にも止まらぬ速さでルドルフに抱き付いた。その胸に頬擦りをしながら名前を呼んでいる。そんな姿を愛らしく思ったのか、ルドルフもルドルフで優しそうに目を細めながら頭を撫でている。スーパークリークが見たら嫉妬しそうな光景だ。
だが、マックイーンは見逃さなかった。
(は、速い……ヒカリエは言わずもがな閃光と呼ばれたスピードを持ってしてそれで一才ブレない速度で会長の元へいやでも会長もそれを見越した上での椅子からの立ち上がり……全く見えませんでしたわ流石実力者達……私はこんなウマ娘のお世話を……大きくなりましたわねヒカリエ……いやでも私も負けない様に
「まっくいーん?」
「ひゃいっ!!??? ど、どうしましたのヒカリエ?」
「んーん」
顔をのぞいてきたヒカリエに驚くと、彼女は何事もなかったかの様に会長の方へと向き、そしてマックイーンの手を握った。名残惜しそうに見える会長の姿は置いといて。
そして、最早空気となっているテイオーは、会長に撫でられたいとこっそり憤慨していた。
「それで、恐らくだが情報規制の話だろう?」
「話が早くて助かりますわ。ヒカリエの知識ははっきり言って宝。安全性、速度。そしてレースでの勝ち方。どれも他に類を見ない程の逸材。本での知識なんか比べ物にならない」
「そこで生徒会側から無理に聞き出す事。そして外的要因によって無理矢理聞き出したと判断する場合には適切な措置を取ってほしいと」
「そうですの」
「はっきり言って私も賛成だ。勿論聞きたい事は山の様にある。が、それはあくまでも彼女自身が話せばの話だ。権力や暴力をちらつかせて、聞き出した事なんて信憑性に欠けるし、まず一個人としてやってはならない事だ」
エアグルーヴの名前を短く呼ぶと、直ぐに書類作りに取り掛かる様に指示を出した。
「生徒に対しては生徒会が責任を持って統制しよう。だが、ヒカリエが話せる事を外部の者は知らない。それに関してはどう考えているマックイーン」
「ていおー」
「な、なんだい? 今マックイーンとカイチョーが喋ってるから静かに……」
「そうですわね……そればかりは私達もヒカリエを止める訳にはいきませんの。彼女が話したいと言えば話させますし、その逆も然り。折角喋れる様になったのですから、彼女の自由にしてあげたい」
「なでてもらった」
「じ、自慢!? ふん! ボクも撫でられた事あるもんね!」
「だからバレるのも時間の問題。その事実を知って仕舞えばもう隠しようがない。寧ろ早めに知って貰ってその都度対応する方が賢明に見えます」
「だきしめてもらった」
「カイチョー愛溢れるボクとやりあうつもり?」
「成程。だが、勿論批判も来るだろう。ヒカリエの態度をよく思っていなかった者が多い事も事実だ。彼女が責められる様な。悪意の下に晒されて、それでどうする?」
文句を言われることも少なくなかった。推しが見下され、SNSで暴言を吐くファンもいた。それでも喋れないのだから仕方がないと思っていた。
こちら側から見れば話したくても話せなかった。だが、向こうから見れば話すことなどないと言われてる様に見える筈だ。それが今更になって「実は話せなかったんですよ〜」何て、嘘に聞こえる。ヘラヘラを掌を返した様にしか見えない。
外では楽しそうに喋り、レースのウマ娘は見下たように見て。
「それでも信じてもらうしかありませんわ。話せなかった。それが治ったから話した。私達にできる事はそれを信じてもらえる様にする事」
「方法は?」
「ってか静かに! ほら! カイチョーが喋ってるんだから」
「ふーん」
「ヒカリエにライブに出てもらい、そして歌声を聞かせます。その後、トレーナー、学園巻き込んで説明をしてもらいます。勿論私も出席しろと言うのならば、喜んで」
「君の覚悟は分かった。だが、出席は出来ない。何故なら、生徒会は生徒の為にあるのだから、私が直々に出よう。それで文句はないだろうか」
「な、なにさ! その勝ち誇った様な顔は!」
「勿論、会長自身が出てくださるのであれば、本望ですわ」
「テイオー」
「ひゃい!」
「ヒカリエを散歩にでも連れて行ってあげてくれ」
事実上の出てけ。テイオーはヒカリエの手を引っ張って出ていくしかなかった。因みにであるが、テイオーとヒカリエではヒカリエの方がずっと大きい。
ぐぐぐとヒカリエを連れて行く事になったテイオーは、何とか生徒会室の扉を閉め、スピカの部室にでも帰るかと考えていた。
「ちょっとあんた!」
「うぇえ!!?」
すると強い言葉で止められた。振り返ってみると、ウマ娘が明確な敵意を持ってヒカリエを睨みつけていた。
首を傾げるヒカリエだが、それにより一層怒りが高まったのか、激昂したウマ娘はずかずかとヒカリエに寄っていった。
慌てるテイオーだが、彼女には何も出来なかった。
「何なのよ……! 今頃になって喋り始めて愛想振り撒き始めて……あんたのあの目。人を人だと思っていない様な目」
「あわわわわ」
「どういう意味なのよ! ねぇ、なんか話してみなさいよ!」
「ほらちょっと落ち着こうよ……」
「人の勝利奪って。あんたに心折られた娘は何人もいるのよ。どう思ってるのか話してみなさいよ!」
レース後。もう少し言葉が有れば、きっとこんな事にはならなかっただろう。お世辞でも良いのだ。「強かった」「ありがとうございました」それが有ればよかったのだ。だが、喋れないヒカリエには蹲って泣くウマ娘達を上から見下ろすことしか出来なかったのだ。
だが、何故彼女が『覇者』と呼ばれるのか。
「よわかった」
「え?」
「よわかった」
「何なのよあんた……」
「ほっほら! ヒカリエもまだ喋りたてであんまり喋れないからじゃーねー!」
テイオーはヒカリエの背中を押し、すぐにその場から去った。
壊れた機械の様に言葉を繰り返すヒカリエが怖くなったのだ。恐る恐るヒカリエの顔を覗くと笑顔で此方を見返してくる。名前もちゃんと呼んでくれる。
だが、テイオーは見た。レースの覇者。前に立つ者なしと呼ばれたヒカリエの片鱗を。
「もしかして君って結構ヤバい?」
テイオーはこの日、彼女がどうして『覇者』と呼ばれるのかを理解した。
態度が悪い。何も言わない。
↓
推しが負けてる姿しか見れん!許せんあいつ!
↓
炎上
↓
喋れる様になりました〜wwwいっぱい笑顔見せて喋りまwww
↓
は?うざ。炎上
めっちゃ簡単に言えばこんな感じですが、久しぶりに書いたので何も伝わってないと思われ。頑張るます。
なんで表情すら変わらないのかはどっかで説明できれば。
誰かヒカリエちゃん書いて(希望