絵画世界の一角で行われていたリフォーム会議は佳境を迎えていた。混沌の魔女ベルカ、プリシラと名付けられ、育ちすぎて部屋に入れず外から顔をのぞかせるベルカの娘、英検三級で世界を制した男ギネル、号外売りのティモテ、邪教の鍛冶屋、銀河の守護者ガレンダーク、武器職人エアダイス、黄の王ジェレマイア、ハーコーンの救済者、血に吠える同志、カリムの神父、ベリーロール鑑定士、白ネズミの王、梅干しの種、半魚人ならぬ半鴉人、更衣室を見守る影、そして最初の住人となった白い少女と蒙昧の博学者ペスキス。
「ちょっと待って」ベルカが手を挙げた。「知らない人がまざってる」
「まったく、今度は何だ?なにか問題でもあるのか」ジェレマイアがうんざりしたように言う。彼には時間がなかった。18:00から楽しみにしているアニメが始まってしまうからだ。
「むしろ問題しかない」ベルカが言い返す。「オリキャラはタグをつけないと怒る人が出てくる」
「じゃあ誰がオリキャラなのか言ってみろ」
「外れたら追放な」
「ちょっと待って。どうしてそんなことになるわけ?」
「チュウチュウ (そうだそうだ!)」
「ママ、私の部屋は?」
「待ってプリシラ。それどころじゃない」
「ああ。鉄板焼き屋台を作る話がまだ終わってない」
「始まってもいないっつの!」
「俺達」「あたし達の旅もね!」
「誰!?今ハモった二人は誰!?」
「おそらくそこに落ちているハーモニカとカスタネットだろう」
「絶対違うわ」
「お母さん、好き」
「うん私も大好きだよ。でも今はそれどころじゃないから少し静かにしててくれるかな」
「お嬢様をいじめるやつはこの奴隷騎士が許さん」
「早い!あんたまだこの世界にいないから帰って!」
「ママー、私の部屋ー」
「聞こえてるから大丈夫だから!」
「この一角は車輪骸骨のレースに使えるな」
「そこ勝手に話を進めない」
「ベルカ様と抱いてるお嬢様、お二人見てるとまるで東方の観音様みたいっすね」
「ふむ、なるほど。それを信仰の像にできるな」
「そこも勝手に話を進めない!」
『ガイア通信が、18:00を、お知らせします。ポッ…ポッ…』
「時間だ。あとは勝手にやってくれ」
「待てい」
「私も子供を迎えに行かなきゃ。じゃーね」
「待…誰?」
「ママー」
「…もぉー!!」
ドォンドォンドォン!
ベルカの右手が一瞬光ると、怒りに任せた炎の嵐は集まっていた人々を跳ね飛ばした。
「…安心しろ、死にはしない」
フゥー、と指の煙を吹き消しながら静かに言う混沌の魔女。少女を抱いたまま仁王立ちする迫力に、それまで勝手気ままにしゃべっていた面々も沈黙する。
「前から思ってたがそれ使ってたら大王も倒せたんじゃないか?」上下逆さまになったままジェレマイアが言った。
「無理だね。あいつの拳は岩のウロコを砕きHPも43億くらいある」
なお符号なし32bitの最大値が約43億である。
「誰だよ!」
「お母さん、かっこいい」
「ありがと。でも腰が痛いからそろそろ降りてくれるかな?」
「や」
この日も絵画世界リフォーム会議の進捗はゼロだった。
「え!?これで終わり!?」
ジェレマイアがアニメを観に去ってしまい、絵画修復の責任者がなくては議論が進まない。わらわらと出ていくなか、部屋にはベルカと少女だけが残された。ため息をつくベルカと、しがみついたままベルカの耳たぶを触る白い少女。
「そうだ、ママー」外で見ていたプリシラが思い出したように言った。
「はいはい、なんですか」
「私、赤ちゃんできたみたい」
「はい!?」