罪の女神   作:jamcha

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21 - 罪人録3

「んー!いいわよベルカちゃん!すごくいい!」

 

カシャカシャとシャッター音が幾度も鳴り響く。『罪の女神』の像を作るために、ベルカは写真撮影に望んでいた。とはいえ…

 

「ダメよ右手で隠しちゃ!ほら、おムネさえ出せばどんな男もイチコロよん☆」

「む、むり…」

 

極薄のローブに身体のラインがくっきり浮き出て、隠そうものならカメラマンにわざと強調させられてしまう。

 

「ハラスメント…ひどいハラスメントだ…」

「ベルカちゃん、あなたニンゲンじゃないんだからそんな女々しいこと言わないのっ」

「ち、ちょっと待って変なとこ引っ張んないでよ!」

「まー!変なとこって、ふともものどこが変なのよ!あたしだってプロなのよ!いい仕事する義務があるのっ!少しは言うこと聞きなさいっ!」

「助けて…」

 

こんな像がいくつも作られ大勢に見られるのかと考えると、ベルカはあまりの恥ずかしさにフードで顔を隠さずにいられなかった。一方、グウィンドリンはカリムの使節と新たな治安維持システムのために交渉を行っている。

 

「では告罪符の販売はこちらに一任すると」

「ええ。利益はそちらでお納めください。こちらは利用者の情報さえいただければ構いませんので」

 

ベルカが提案したのはカリムの情報網を活かした警察組織『暗月の剣』であった。カリムの指導者アルスター伯を公爵に叙するかわり、王家への協力を取り付ける。ひとつは小ロンドの排除、もうひとつはカリムが構築したネットワークの相互利用である。

 

以前から『あらゆる秘儀に精通した』『王家に仇なす異端』といった設定てんこもりの偶像であったベルカに、新たに『罪と罰を司る女神』が加わった。カリムが販売する告罪符を通して通報された罪人は、データベース『罪人録』に記録され、グウィンドリンの配下が討つ。これまでカリムの教戒師が密かに行っていた賄賂による免罪も堂々と行えるようになる。

 

「見えちゃう!見えちゃうから風弱めて!」

「隠しちゃダメよベルカちゃん!愛よ!愛なのよ!ほら、人形!もっと愛おしく抱くのよ!」

 

今度は母子像の撮影にうつった。大型扇風機がベルカの着る布を揺らす。風にひらめく衣装は母の歓喜を示し、その躍動感は我が子への限りない愛を表現する。しかし色々めくれそうなほど風が強い。

 

「笑え!笑うのよベルカちゃん!」

「う、うえーん…」

「眉を上げて!あんまり言うこと聞かないともっと強くするわよ!」

 

「ええ。では小ロンドは水に沈めるということで始末しましょう」

「懸念があるのですが、うかがっても?」

「何なりと」

「水に沈めるというのは一時的な対処にすぎません。それで契約を果たしたとするのは不十分かと」

「そうは言いますが、ただでさえ当方のネットワークにただ乗りしようとする状況で、これ以上を求めるのはいささか要求が過ぎるのでは?」

「そうでしょうか。我が王家は “白教” の聖地ロードランのみならず、アストラとソルロンドの二大国を治め、カタリナとも協力関係を結んでいます。 “邪教” の巣食う小ロンドを誅し、その平和を貴国が保つことは、我らに敵意がないと示す絶好の機会だと存じますが」

「…なるほど。小娘のわりに先王が託しただけの知能はあるようだな。いいだろう。小ロンドを沈めたのち、不老の術を施した者たちに監視させる。どうだ?これで文句はあるまい?」

 

それを聞いたグウィンドリンは立ち上がり、手を差し出した。

 

「このたびは大国カリムと友好を結ぶことができ、感謝いたします。ベルカの像は完成し次第、すぐに送らせましょう」

 

カリムの使者も立ち上がると、さっきまでの険しい表情が嘘のような満面の笑みへと変わり、その手をガッチリと握る。

 

「我らも偉大なる王家の発展に貢献でき、これ以上の喜びはありません。今後も何かあればこの小国カリムにお申し付けください」

 

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