「ええーっ!?私、深淵の化け物にさらわれてたんですかーっ!?」
宵闇がキノコの乳母・エリザベスの前で叫ぶ。
「そう。それを英雄のアルトリウス様が救ってくださったのよ」
「私、親父様にかくまってもらって、その後何があったのか全然知らないというかわりとどうでもいいと思ってたりしてたんですけど、でも親父様でも勝てなかった化け物を打ち倒されるなんて、アルトリウス様、どれほどお強い英雄だったのかしら…」
宵闇が地面を軽く蹴る。「会いたかったですわ。…あ、ねえ、エリザベス」
「何でしょう?」
「私、深淵の化け物とシンクロしたんですよ!」
「シンクロ…」
「ええ!なんかいろいろ人間臭い思いを抱いていたような感じがします!寂しさとか、なんて言うんでしたっけ、難しい言い回しで、き、き、えーと故郷の郷の字があった気がするやつです!」
「郷愁、でしょうか」
「そう!アイミスユーとかアイウォンチューとかファッキ」
「ピー!ピー!」
「なんですか?アイミスユーとかアイウォンチューとかファッ」
「ピー!ピー!」
「もう!とにかく、シンクロしたときにそんな思いを感じました。悪い化け物には思えなかったんですけど、何か知ってます?」
「さあ、私はキノコだからわかりません」
「む!それは何か知っている様子ですね!教えるのです!」
「フフフフフ…」
* * *
「あ、王子殿。私、故郷が滅んじゃったんでここに残ることにしました」
ハーフライトのようだったものは形を取り戻し、今日も泥だらけの顔で言う。
「よいのですか?こちらでも新たな街の建設に着手するところですが」
「お嬢様に迷惑かけちゃったんで、お詫びのつもりで、へへ」
「そうですか。いいでしょう。許可します」
「あざーっす!」
「許可を取り消します」
「あー!すみませんすみません王子殿!ありがたく役割を全うしたいと思います!」
「では護衛の者を送らせますので、今後は教会の槍として外敵を処分するように」
「へ?」
「そちらで私が担当できる役職はそこしかありません。今から契約書を送りますから、そちらに届き次第、すぐに返信するように。よろしいですね?」
「い、いえ、その、私、戦ったこととか…」
「誰でもはじめは戦いの素人です。アルゴー法官がビシビシ指導してくれると思いますからがんばってください」
「王子殿!?」
「では」
ブツン。…ポチッ。
「は、はい?王子殿?」
「アルストロメリア (Alstroemeria) の花は根絶やしにせず、ある程度残してください」
「はあ、元からそのつもりでしたけど、また何で?」
「お姉様の思いを絶ってはいけないでしょうから」
「思い、ですか。ふーん…」
* * *
ウーラシールの闘技場。手の平ほどの石を積んだ小さな墓に、キアランはベルカの黒髪と花をそえる。それは温暖なウーラシールで摘んだ白いジャスミンだった。
キアランは膝をつくと、手を組み、二人の冥福を祈った。白い花、花言葉は信頼の輝き…
ではなく「あなたといたしたい」であった。
『チャンス!チャンスだぞ狼騎士!いま後ろから抱きつけば確実に落ちる!ワシも嵐のlove so sweetを流して援護するから、さあ!』
戦士に滅ぼされ肉体を失った深淵の主が、同じく肉体の消滅したアルトリウスの背中をバンバンと叩く。
『とはいえジジイ殿!肉体がないのにどうすればよいのだ!?いやそもそも肉体がないのになぜ叩ける!?』
『ワシは禅問答を極めたから叩けるのだ!ガハハハハ!ほら、早く行かねば去ってしまうぞ!』
『くっ…キアラン…あんな積極的な女だったとは…』
『ぬをー!男ならたぎれ!なんとしても現世に伝える方法を編みだすのだ!なんとなればワシが代わりに…』
『待て!待つのだジジイ殿!キアランはこのアルトリウス以上に奥手、花言葉を知って添えたかわからぬではないか』
『かーっ!ダビデ像よりチ』
『あああああああああ!』
『コ小さいやつめが!このままあの一途な娘がお局様になってもいいというのか!?』
『それは困る』
『ならば進め!進むのだ!』
「ハッ…ハッ…」
白熱する二人など知る由もなく、キアランは荒い息をつきながら近づく影に顔を向ける。それは剣をひきずり、ケガをしながらも生還したシフだった。
「…シフ」
シフはキアランの隣に座ると、墓を前に微動だにせずたたずむ。剣をくわえたまま。
「…ふっ。貴公はどこまでも忠実だな」
キアランは決意を秘めて立ち上がる。「よし。いいだろう。このキアラン、これよりは我が友の墓を守るために刃を振るおう」
「あたしも協力させてもらうよ。あんたたちだけじゃ不安なんでね」
ひたひたとやってきたのは白猫のアルヴィナだった。
「あたしはアルヴィナ。アルトリウスとシフの知り合いみたいなもんさ。あんたたち貧乏な兵隊と違ってあたしはそれなりに宝を持ってる。それで仲間をもっと集めようじゃないか。『森の狩猟者』の仲間をね」
「ウォォーン…」シフが大きく吠えた。
『ウォォーン!シフううううううう!このアルトリウス、相棒の勇姿に
アルトリウスは吠え続けた。
もしあなたが夜中に森を歩き、狼の遠吠えが聞こえたら、それはシフを鼓舞するアルトリウスのものかもしれない。
この作品はChannel Yoshimitsu氏の動画罪の女神ベルカを観たのをきっかけに書き始めたものです。Lokey氏のブログ『Lokey Lore』で情報を補いつつ、ダークソウル1〜3でベルカが誰と関わり何をしたのか、ハチャメチャな展開ながらもなるべく本編と矛盾しないよう目指しました。大型連休を使って書きましたがお楽しみいただけたでしょうか。ステイホームの暇つぶしにわずかでも貢献できたなら幸いです。
ロードラン編はこれで終わりです。舞台はドラングレイグにうつります。お楽しみに。