アズールレーン ━深海の瞳━   作:空白部屋

4 / 9
アズレンの設定とかストーリーとかほとんど知らないんで違和感あるかも。


目覚めた化け物(仮名)
第三話 目覚め


 

 暗転していた意識が徐々に回復し、意識が少しずつ明確化していく。それにつれ、ボクはぼんやりとしたままゆっくりと(まぶた)を開いた。

 

 

「んっ、ここ……は…?」

 

 

 真っ白な天井が見える。

 ここはどこだろうか、と疑問に思いながらボクは周囲へと視線を向ける。

 どうやらボクはベッドで寝ていたらしい。暖かい布団と柔らかい枕の感覚が心地いい。近くの窓は開いており、そこから入ってくる風によってカーテンがゆらゆらと揺れている。そしてその風の中から微かに匂う潮の香りがしたのでこの建物の近くに海があるとわかった。

 さんさんと降り注ぐ太陽の光が眩しい。いっそのことカーテンを閉めて二度寝でもしようかなと欲が出る。

 

 

「………………」

 

 

 次第に明確になっていく意識。そのおかげで、とても大事なことを思い出した。

 

 

「━━━ッ!? 今はいつッ!?」

 

 

 一瞬で眠気がぶっ飛び、布団をどかしてベッドから飛び起きる。

 

 

「━━いッ!?」

 

 

 ……が、その時に生じた筋肉の痛みによってボクはバランスを崩してベッドから転がり落ちた。その際、床に肩と側頭部を打ち表情を歪ませる。

 

 

(痛覚が遮断できない……ってことは薬が切れてるのかぁ。うぅ、いつも薬服用してたから純粋な痛みなんていつ振りだろ……)

 

 

 少しだけ現実逃避したくなった。

 ひんやりと冷たい感触が少し心地いい。そしてその冷たさがボクを冷静にさせてくれる。

 

 

「あれは、いったい……」

 

 

 眠っている時に見たあの光景。夢のようで夢ではなく、記憶のようで記憶ではない。過去ではあるものの、ボクはあんな場面を見たことなかった。……で、あるならば。誰かの視点から過去を見ていたのだろう。博士か、あのAIか、それともそれ以外の第三者か……今のボクにはわからない。

 

 

(それにしても、ここはどこだろう…?)

 

 

 立ち上がってキョロキョロと周囲を見渡す。薬品や医療器具があるから医務室のようだけど、現在この部屋にいるのはボクだけだった。ちなみに付近に人の気配もない。

 窓から外の景色を見る。

 季節は春のようで桜並木がとても美しい。そしてその間でかけっこをしている幼い子供もいれば、お花見をしている大人もいた。

 そしてこれらの情報からいくつか共通点を見つけた。一つは子供から大人までその全てが女性だということ。もう一つは年齢層が目測30歳未満の若い者しかいないこと。

 更に付け加えるなら、人間ではありえない獣のような耳や尻尾を持つ者もいた。

 

 

(凄い、あの白髪の女性と黒髪の女性……尻尾がたくさんある……)

 

 

 和服姿で談話しながら堂々と桜並木を歩いている二人の女性━━━の尻尾に思わず目がいった。もこもこしてて暖かそうだ。

 

 

(って、違う。今はそんなこと考えてる場合じゃないよ)

 

 

 危うく本来の目的を忘れてこの穏やかな景色をずっと見てしまいそうになった。すぐに窓から視線をはずして室内にカレンダーがあるか確認する。

 裸足なのでペタペタと歩くたびに足が冷えていく。服装は半袖の黒いシャツ一枚と半ズボンだけ。意識を失う前に着ていたロングコートと靴は見当たらず代わりの物もないので、布団をたたんでからそのままベッドを離れる。

 一歩踏み出すたびに体の節々に軽い痛みがはしる。

 そしてここの責任者が使っているであろう机の上に、小さいカレンダーが置いてあるのに気づいた。

 ボクはそれを手に取ると書かれている西暦を見て、少しだけ目を見開く。

 

 

(………本当に、300年後になってる…)

 

 

 【コールドスリープ】なんて誰も実現させることができなかった架空の存在だというのに、博士はそれを本当に作ってしまった。

 

 

(だとしたら、博士はもう……)

 

 

 実験体とは違い、彼女はただの人間だ。当然、寿命なんて長くても100年くらいだろう。親友の彼女がもうこの世にいない事を悟ったボクは、そっと目を伏せて握り拳を作った。

 親友を失った事への悲しみと、彼女を置いていく事になった自分の弱さへの怒りと悔しさ。どうしようもない感情が胸の内でぐるぐると駆け巡る。いつか別れの日が来るのはわかっていたし、覚悟もしていた。でも、こんな形で別れたくはなかった。

 

 

「変わらないね、あの人は……」

 

 

 文句は山ほどあるがいつまでもこうして感傷的になるのはやめよう。いないものはいない。こうして切り替えてなきゃ、いつまでも前に進めない。もし、彼女が今のボクを見たらきっとからかってくるに違いない。ボクは顔を上げてパンっと両手で頬を叩いた。少し痛かったけどこれくらいが丁度いい。

 それと、今着ている黒シャツと半ズボンは見覚えのないものなので誰かが貸してくれたのだろう。貸してくれた人にお礼も言いたい。

 

 

「あ、いや。その前に……っと」

 

 

 医務室から出ていこうとドアノブに手を掛けた時、かなり重要なことを思い出した。

 すぐに戻り先程まで自分が寝ていたベッドの横にある机の引き出しや物置のようなスペースを調べる。しかし、そこには元々ボクが持っていた物が一切なかった。

 

 

「捨てられたり……は、してないよねさすがに。だとしたら別の場所にあるか、誰かが持っているかのどっちかだろうけど……」

 

 

 今はないロングコートの内ポケットには特効薬が入った小型のケースがあったはず。あの薬はボクたちにしか意味を成さないので300年前ならともかく今は入手出来ない物になっている可能性が非常に高い。

 もしもの時のために艤装にある特殊応急修理装置の中に特効薬の予備が2つの小型ケースに置いてあるけど、今艤装を展開して取り出すのはやめた方がいいだろう。誰かに見られたら確実に厄介なことになるし。

 

 

「本当はここにいた方がいいんだろうけど……ちょっとくらい歩き回ってもいいよね。もしもの時のために建物の構造とか把握しておきたいし」

 

 

 独り言のように言い訳を呟く。

 もしもの事態になって欲しくないと願うばかりだ。

 そんなことを思いながら僕はドアノブをゆっくりと回して、周囲を警戒しながら廊下に出た。

 

 

(……ん、雰囲気が変わった…?)

 

 

 廊下を見ながら漠然とした感想を抱く。

 さっきまでいた医務室はほとんど必要最低限のものしかなく、装飾もまったくと言っていいほどなかった。唯一、医務室にある机にティーセットが一つ置かれていたくらい。

 そんな質素と言える医務室に比べて、この廊下はどうだろうか。床にはレッドカーペット、壁の(ふち)などには金の装飾が施され、ところどころに美しい風景の絵画がかけられている。そして天井はLEDの蛍光灯ではなく、いかにも高級そうなシャンデリアが設置されていた。

 豪華と一定の派手さを兼ね揃えた廊下に、僕は少しだけ目を見開く。

 

 

(うわぁ、どこかの高級ホテルの廊下みたい……)

 

 

 一度も行ったことないけど。

 ボクは基本的に軍の基地か星宮博士の研究所くらいしか行ったことがない。軍の仕事で他の場所にも行ったことがあるけど、実験体は存在そのものが禁忌であり極秘なので秘密裏に移動させられる。移動中、こちらからは外の景色が見えないようにされ、逆に外からもこちら側を見えないようにしてあったので、実質、行ったことのある場所はその二つしかないのだ。

 少し早歩きしながら昔の記憶を鮮明に思いだそうとしていると、すぐそばの曲がり角で人の気配がこちらに向かっていることに気付いた。

 しかし気付くのが遅すぎたため、曲がり角の向こうから歩いてくる人とぶつかってしまった。

 

 

「あっ……と」

「んにゃっ!?」

 

 

 どうやら相手も急いでいたのか、こちらに気付くことなくぶつかって体をよろけさせた。

 

 

「すみません、大丈夫ですか?」

 

 

 すぐに謝罪してこけそうになっていた相手の体を腕で支える。その時、体重の一部を支えた腕の筋肉からミシリと嫌な感触がして思わず顔が強ばってしまう。

 幸い、相手は別の方向に視線が向いていたのでその事に気づいていない。それを確認したボクは少しだけ安堵した。

 

 

「んっ、こっちもちゃんと前を見てなかったにゃ。すまなかったにゃ」

「いえ、お気になさららず……」

 

 

 獣耳の生えた緑髪の少女は崩れた体勢を立て直すと、ブカブカの袖で自らの後頭部を掻きながら謝ってきた。語尾に「にゃ」とついているのが気になるるけどこの子は猫かなにかだろうか? 獣耳と尻尾もあるし。

 

 

「では、ボクはこれで━━」

「ちょっと待って欲しいにゃ」

 

 

 相手の安否確認と謝罪は済ませたし、特に用もないので早々に立ち去ろうとしたが、緑髪の少女に止められた。

 

 

「…? どうしましたか?」

「んにゃ。見たところ新顔の運搬業者かにゃ? 丁度人手が欲しかった所だったしちょっと手伝って欲しいにゃ」

「えっ」

 

 

 なんかとんでもないことを言われた。運搬業者……今の自分とは無縁の職業に思わず首を傾げる。そして目の前の少女の視線が自分の顔より左下に微妙にズレていることに気がつく。しかし、その視線を辿っても刺繍(ししゅう)された英文字しかない。

 もしかして、この刺繍された英文字ってどこかの運搬企業の名前なのだろうか?

 ……なるほど、もしこの予想が合っていたなら少女が勘違いしてもおかしくない。本当は業者どころか、このどこかすらわからない場所もボクにとって無関係だろうけど。

 

 

「あの」

「ん? どうかしたにゃ?」

「いや、ごめん。やっぱり何でもないよ」

「…? 変な奴にゃ」

 

 

 少女に腕を引っ張られて歩くボクは業者ではないと訂正しようと思ったが、直前で考えを改めた。もう少し周囲を観察してからでも遅くはないと思う。もしかしたら色々とわかることがあるかもしれないし。それに、本当に困った時は正直に言えばいいかな。許してくれるかは別として。

 

 

「それより、手伝いって何をすればいいのかな?」

「丁度、ユニオン寮と鉄血寮に届けて欲しい荷物があるからそれの運搬にゃ。あと、それが終わったら明石の店の商品を少し整理して欲しいにゃ」

「わ、わかりました……」

 

 

 どうしよう、早速わからないことだらけだ。完全に自業自得だけど安請け合いした自分が憎い。少女からしてみれば大したことでもないと考えているのだろうけど、ここがどこなのかすら知らないボクにとっては難易度が高い手伝いだ。

 いや、待って。よくよく考えてみると乗り切れるかも。この少女はボクのことを新顔の運搬業者と勘違いしている。それならユニオン寮や鉄血寮という場所がどこにあるか聞いても問題ないのではないだろうか。

 よし、それなら遠慮なく聞いても大丈b━━━

 

 

「ちなみにユニオン寮と鉄血寮の場所はそっちの会社から事前に地図を渡されているはずだからくれぐれも迷わないようにするにゃ」

「……了解です」

 

 

 別の人に聞こう、うん。医務室から見えたけどここには小さい子供もいるみたいだし、聞くならそっちにしよう。心の中で決意したボクは、目の前の猫耳少女の後をついていき倉庫へと向かうのだった。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 それぞれ届ける予定の荷物を倉庫で受け取ったボクは、早速配達して欲しいと猫耳少女━━━もとい、明石さんに頼まれて大きめの段ボールを二つ届けることになった。

 何が入っているのかわからないが、ユニオン寮に持っていく荷物がやたらと重い。重さからして多分機械類が入っているんじゃないかと推測できる。

 ちなみに業者用のシャツとズボンしか着ていなかったボクは、明石さんから予備の作業服(上着)と帽子を受け取り、現在帽子を目深に被ってちゃんと正式な業者の服装をしている。

 

 

(これ、明らかに台車とか使って持っていくこと前提だよね……)

 

 

 艤装を展開してないとはいえ、人間よりも肉体が強化されているボクでも結構重いと感じたのだ。力持ちの人間ではこれを両手だけで抱えて運ぶなんて到底無理だろう。そう考えると明石さんは意外と意地が悪いのでは、と疑問が浮かんでくるけど彼女からそんな意図は感じられなかった。

 ……だってこの荷物、明石さんが軽々と持ち上げていたし。きっと彼女は自分を基準にしていたのかもしれない。じゃなきゃ台車くらい用意すると思う。

 

 

(まぁ、それにしても……不思議な所だな、ここ。それに明石さんの店や倉庫でも見かけたけど、なんだろう、あのヒヨコみたいな黄色い鳥(?)は……)

 

 

 手のひらサイズのヒヨコ(?)が荷物を運んだり、クレーンを操作してたりと常識的に考えてありえない光景が広がっていた。中には作業着を着て何かを作っているヒヨコ(?)もいて困惑した。さすがに表情には出さなかったけど。

 

 

(従業員……みたいな感じだろうか。ヒヨコ(?)が従業員とか意味わからないけど)

 

 

 桜並木を歩きながら周囲を見渡してみると、やはりというべきか数匹のヒヨコ(?)がいる。と言ってもあのヒヨコ(?)のほとんどは花見をしている人達に食べ物を配達したりしていたが。

 花見をしている人の中には大人から子供まワイワイと楽しそうに騒ぐところもあれば、静かに花見を楽しむ人もいる。これらの光景を見たボクは少しだけ懐かしさと羨ましさを感じた。

 もしこの場所を一言で表現するなら『学園』という単語がピッタリと当てはまる。だが、これはボクの推測だけどここは普通の学園じゃない、もしくは学園ですらないのかもしれない。購買部や寮があるし見た目も学園そのものではあるが、普通の学園には存在しなさそうなものもあるのだ。

 例えば倉庫。これは普通の学園にもありそうではあるが、ここにある倉庫は中身が普通じゃない。なんてったって人間用にでも作られたかのようなサイズの主砲や艦載機、魚雷などがあったのだ。中にはよくわからない物も複数あったが、小学校以外通ったことのないボクでもこれが普通ではないことくらいわかる。

 サイズは違えど九三式酸素魚雷なんて約300年ぶりに見たよ。ちょっとだけ懐かしさを感じた。

 

 

(さて、なんだかんだこうして業者に成り済ましていられる状況に困惑しかないけど……取り敢えず荷物を届けるために誰かにユニオン寮と鉄血寮の場所を聞かなければ……おっ、あの子に聞こうかな)

 

 

 視線の先に映るのは桜並木に設置されているベンチの背もたれに背中を預けてコクリ、コクリと船を漕いでいる少女。すぐにでも寝てしまいそうな状態なのでちょっと話し掛けづらいが、宴会をしている人達に話し掛けるよりはマシだろう。

 

 

「あの、すみません。少しいいでしょうか?」

「………?」

 

 

 思い切って、尚且(なおか)つ静かな声量で話し掛ける。

 汚れのない綺麗な白髪ツインテールをしたウサギっぽい彼女は少しの間ぼーっとしてからこちらに視線を向けて不思議そうに首を傾げた。

 

 

「……だれ?」

「(今のところ)ただの業者です。ユニオン寮ってどこにあるかわかりますか?」

 

 

 ボクの質問に対して少女は何も答えることなくまたぼーっとしだした。

 

 

「えっと……あの」

「……あっち」

「えっ…」

 

 

 このまま眠ってしまうのではないかと危惧したところで少女はゆっくりととある方向へ指を指した。

 そして再び言った。

 

 

「……あっち」

「えと、ありがとうございます?」

 

 

 一応、方向は教えてもらったのでボクは少女にお礼を言ってその方向へ向かうことにした。

 

 

(それにしても……ちょっと変わった少女だったなぁ…)

 

 

 どことなくウサギを連想させるのでニンジンをあげたら喜ぶだろうか。いや、普通に失礼か。

 

 

 

 しばらく進むと大きな寮が見えてきたので多分あれがユニオン寮だと思う。

 さて、これからどうしようかな。寮の管理人がいるのならその人に声をかけてから渡すべきなんだろうけど、見たところそのような人も場所も見当たらない。

 今のボクの状態はちょっと怪しい業者さんだろうか。心なしか通りがかる人や周囲の人に視線を向けられている気がする。もちろん、プラスではなくマイナスの意味で。

 

 

「少しいいだろうか?」

 

 

 ユニオン寮の正面玄関口の前でどうするべきか迷っていると後ろから女性に声をかけられた。ボクは持っている荷物が後ろの女性に当たらないようにゆっくりと振り返った。

 しかし、ボクは声をかけた女性の容姿を見て驚愕した。

 

 

「……ッ!? 何故……ここに…?」

 

 

 いるはずのない人物を目にしてどうしようもなく心が揺さぶられる。

 白く長い髪に特徴的な黒の軍服。肩にはよく育った(わし)が寄り添うようにして乗っかっている。

 忘れもしない。300年以上も前に散々ボク達を苦しめた存在。どれだけ策を練ろうが、どれだけ技を磨こうがそのことごとくを嘲笑うかのように超えていくボク達の天敵。

 

 

(何故……どうして、ここにいるの……コードG…ッ!)

 

 

 様々な思いを胸に、ボクは彼女に気付かれぬよう、いつでも動けるように静かに戦闘態勢へと移行した。

 

 




エンタープライズとかヘレナとか蒼龍のヤンデレ画像のコメント欄に誰かが「META化の真実」とか書き込んでたのは笑った。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。