敵(ヴィラン)個性でもヒーローになってやる   作:マーボーDon

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第18話

 

控え室で精神統一、といっても好きな大福食ってただけだけど。そんな時、ドア蹴り開けて爆豪が入ってきた。

 

「あぁ、てめっ、なんで!?」

 

「ここ控え室2だぞ、お前のはあっちな」

 

指差しで部屋を伝えたんだが、何故かそのまま部屋に入ってきた。

 

「半分野郎の半分だけに勝った奴が偉そうに」

 

轟? そういやこいつ障害物競走で轟に結構張り合ってたもんな。目の敵にしてたってことか。

 

「偉そうだったなら謝るよ。で、それが本題か?」

 

「USJで(ヴィラン)に使った技あんだろ。あれ使え」

 

響転(ソニード)のことか? それなら別に」

 

「ちげぇよ! 壁に穴開けたレーザーの奴だ!!」

 

あぁ、虚閃(セロ)か。あれ使えって。どんだけ自信満々だよ。

 

「てめぇが今日、あの日見せた技で使ってねぇのはあれだけだ。それを上からねじ伏せて俺がトップになんだよ」

 

自尊心の塊、いや自分がトップであることがプライドなのかもな。そうなっと、これ言うとキレるだろうなぁ。

 

「あれな、この大会で使用するの禁止されてんだ」

 

「あぁ!?」

 

「そりゃそうだろ。壁に穴開ける技だぞ。会場で打ったらどうなるかなんてわかり切ってんだろ?」

 

普通に考えりゃその結果は当然だ。観客巻き込んで壁に穴開けたりできるかよ。

 

「んだよ、クソがっ」

 

「ただまぁ、お前が俺の本気も所望してんならお望み通り見せてやるよ」

 

「あ?」

 

「雄英で見せたことあんのは教師だけ、俺のほんとの本気をよ」

 

そういうと爆豪は満足そうな笑みを浮かべそのまま部屋を去っていった。さて、決勝戦、行こうか!

 

 

****

 

 

『さていよいよこの時が来た! 一年ステージ最終試合、決、勝、戦、だあぁぁあぁ!!』

 

プレゼント・マイクのアナウンスと共に会場が沸き立つ。今年度注目度の高かった一年ステージ、波乱の多い中での最終戦とありボルテージはうなぎ登りだ。

 

『一年の頂点がこれで決まる! ヒーロー科、虚影白夜! バーサスっ!! ヒーロー科、爆豪勝己!!』

 

フィールドに並ぶ二人ともに強敵を倒し、勝ち抜いてきた猛者。二人の実力差はほとんどないだろう。それ故に、いかに自身の得意を押し付けるか。ここが勝負の分かれ目だとプロヒーローをはじめとした観客は考えている。

 

「二人ともいいわね、始め!」

 

スタートと同時に二人が駆け出す。そのまま二人ともに右の大振り。爆豪は爆発を起こしダメージを狙う。対して虚影は右掌のみを強化、爆発を掌で受けに行く。両者のファーストコンタクトは爆発を虚影が受け止めることに成功、爆豪は舌打ちをしながらそのままラッシュを始める。

 

『両者ともに接近戦、インファイトでの殴り合いだぁ!』

 

『爆豪は爆発を駆使しているが虚影はそれを完璧に受けて流してる。結果ダメージも極小に済ませてな。二人ともセンスが光ってやがる』

 

「爆豪の反応速度に張り合ってる!?」

 

「なんつー戦いだよ!」

 

「かっちゃんと互角なんて、虚影君。すごいっ!」

 

観客席で観戦するクラスメイト達も驚いている。才能マンの爆豪の力は見てきて知っている。しかし、虚影の近接がそれに張り合えるとは思っていなかったのだ。

 

「うっぜぇなぁ!」

 

「こっちこそ!」

 

近接戦を行う、二人とも全力で手を動かす。しかし爆豪は攻めきれず、虚影は受けに集中し攻めに転じれない。結果二人ともに距離をとることを選択した。

 

『激しい打ち合いは引き分け! こいつはわかんなくなってきだぞ!

つか爆豪の爆発にも耐えれるってほんとなんだ虚影の個性!?』

 

(いいんだな、虚影。先輩。なら)

 

『そのことだが、虚影の個性について有力筋から情報を得た』

 

『おい、イレイザー!? それって』

 

『本人からだ。いいんだと』

 

フィールドでの二人の攻防を見ながらも、観客たちは相澤の言葉にに耳を傾ける。ここまで勝ち上がってきた虚影の個性。それを知るチャンスを逃しはしないと。

 

『まず、奴の個性だが、名を(ホロウ)という』

 

『聞いたことねぇな。なんだそりゃ?』

 

『超常が発覚する以前の話、とある地域に伝わる伝承みたいなもんだ。曰く、(ホロウ)とは悪しき人の魂が変質した異形の化物。顔は人骨のようで、肉体は大きくその皮膚は鋼のごとし。特徴として胸の真ん中にぽっかり穴が開いてるらしい。穴はそいつが心を捨てたことを表すらしい。まぁ、伝承で伝えられているだけだが』

 

その話を聞いてもよくわからない、というのが観客の本音だろう。ネット上を探してもそんなものは該当しない。本当に事実なのかと疑問に思う。

 

『これは偉い学者が該当するものを探した結果ってだけだ。何故ならあいつの個性は遺伝ではなく突然変異。虚影オリジナルのものだからな』

 

『オンリーワンってやつだぁ!! でもそんなら何で隠すんだ?』

 

疑問はそこに行きつく。ここまで協力で魅力的な個性を何故か隠していた。それはなぜなのかと。フィールド上で爆豪と互角に戦い、結果の残しているのにだ。

 

『そりゃあいつの出生なんかが関わってる。

あいつは産まれて間もなく個性が発現したそうだ。そこも異例だが問題はここからだ。個性発現時、あいつは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

会場を沈黙が支配した。それはそうだ。産まれたての赤子が大人に怪我を負わせている。この超常社会でもそんなことは普通にあり得ない。

 

『その時を見ていた人はこういったそうだ。化け物だ、とな。全身が硬いものに覆われ、手足は鋭く尖って皮膚を切り裂き、顔は骸骨のようなものに覆われ、そして胸には穴が開いていたようだ』

 

その特徴は先ほどの話に合致する。話が本当であれば化け物だ。齢0歳ですでに人を傷つける。そんな子供がいるなんて。

 

『しかしその暴走も一過性。一度きりだったみたいだが、その後虚影は親に捨てられ今の保護者に拾われた。今でも加減を謝ると暴走の危険はある』

 

『そんなヘビィな話だったのかよ…、つか拾った人すげぇなおい!!』

 

『ほんとだよ。俺も一度暴走を目の当たりにしたが、肝が冷えたよ。あれと常に隣り合わせってのは心が落ち着かないだろうな』

 

会場のムードは悪くなる。簡単に人を傷つけることのできる個性。物心がないとはいえ、見方によっては(ヴィラン)予備軍では? そんな話が錯綜する。

 

関係(かんけえ)ねぇよ!!!」

 

瞬間、フィールド中央で多く爆発が起こる。爆豪だ。

 

「てめぇがどんな個性だろうが、どんな過去だろうが関係ねぇ! 今重要なのはてめぇと俺のどっちがトップか、№1かってことだけだろうが!」

 

目の前の男には自分の抱えているものなど関係ないと言われた。それを聞いて虚影は笑いだす。周囲はどうしたと首をかしげる。

 

「そうだよな、お前はそういう奴だわ。ありがとよ爆豪、吹っ切れたぜ」

 

自分の過去も、個性に対する恐怖も、今は関係ない。ただ目の前の男を倒す。頂を目指す。そのために今できるすべてを。

 

「見せてやるよ爆豪、俺のとっておき」

 

「こけおどしだろうが、死ねぇ!!」

 

爆豪はその場から爆破の勢いで急加速、虚影に向けて右腕を振るう。対する虚影は右手を顔の前に当て、呼吸を整える。

 

BOOOM!!

 

『こりゃ麗日の時に見せた大爆破じゃねぇか! 虚影はガードする素振りも見せなかったぞ!? 勝負ありかぁ!?』

 

『いや、まだだ。見てろよお前らこっからが虚影白夜の真骨頂だ』

 

「な…に!?」

 

爆破の煙幕が開ければ、無傷で立ち、爆破の右腕を左手で掴んでいる骸骨の仮面を被る虚影の姿があった。爆豪はそのまま離脱しようと腕を動かすがビクともしない。全く意に返すことなく、虚影は右腕を振るう。

 

『虚影の拳が爆豪の顔を直撃! 爆豪も勢いでフィールド端までぶっ飛ばされるも受け身をとったぁ! つかなんだあの仮面!!』

 

『恐らくあれが(ホロウ)ってやつの顔なんだろう』

 

瞳は黒く染まり、眼光は鋭く見据えるものを委縮させる。見られている筈はないにも関わらず、視線の先の観客は悪寒を覚える。

 

「仮面状態って呼んでるけどな。長くはないから、一気にいくぜ!」

 

立て直し息を整えた爆豪だったが、一瞬で目の前から虚影が消える。周りを見渡すが次の瞬間には背中に痛みが走る。そして気づく、背後に回られ蹴られたのだと。

 

だが爆豪もやられっぱなしではない。蹴られても背後をみて爆破を行う。しかし既にその場に虚影はいない。どこだと探すが見つからない。

 

「こっちだ」

 

「!?」

 

聞こえたのは真下。蹴り飛ばした直後に爆豪が反撃することも読み切り、フィールドと爆豪の間に滑り込んだ。そして両足で蹴り上げる。しかし爆豪もそのまま喰らうことなく空中で爆破を行い身をよじり回避する。

 

その攻防をみて落ちていた会場の熱気は再度増す。目の前で高校一年生とは思えない戦いが繰り広げられている。

 

「クッソ、避けんのかよ。爆発さん太郎が」

 

「あぁ!? って仮面とんじゃねぇよ!」

 

避けられたのを見て仮面を一度取り、爆豪を見る。爆豪はそのことに怒る。

 

「聞いてなかったのかよ、まだ時間制限あんだよ。30秒が限界だ。轟の時に4秒くらい使ったからお前に25秒くらいしか使えねぇの」

 

『なるほどな、腕をクロスさせてたのは仮面を使うためか』

 

そう。先程の轟との試合、大氷結を喰らう寸前に仮面をつけ全身の強度と出力を強化。受けきってから力づくで氷を破壊した、というわけだ。一瞬でもタイミングを誤れば失敗していたであろう博打に近い戦法だ。

 

「んで、今使った感じで後15秒くらいか。本気で来いってんならその間に勝負決めなきゃいけねぇんだけど、どうする?」

 

「てめぇの全力を上からねじ伏せなきゃ、完膚なきまでの一位を取らなきゃ意味ねぇんだよ!!」

 

「だよな、じゃ、次の技に全部込めてやる。爆豪、てめぇのそうしろ!!」

 

「はっ、上等だぁ。虚影!!」

 

二人の意志は決まった。次の一撃にすべてを込める。二人が構えをとる。虚影は仮面をつけ、右腕に力を込めていく。

 

『刮目しろよオーディエンス!! 次の一撃で全部決まんぞ!!』

 

『衝撃にも備えとけ』

 

爆豪は爆発を両手で繰り返し、回転を加える。速度が増し爆破の威力もさらに強くなることだろう。対して虚影はただ一点に力を籠める。自分の今できうる最大の力を放つために。

 

榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)!!!」

 

鉄拳虚力(フェルサ・ペーガ)

 

『二人の技が衝突! 会場全体が揺れてやがる!! イレイザー、やっぱお前の生徒すげぇなぁ!! どういう教育してんだ!?』

 

『言ったろ、俺は何もしてねぇよ。あいつらの力だ』

 

フィールド中央で二人の技が激突。特大の爆破とそれに対抗する拳。手加減なし、小細工なしのぶつかり合い。その衝撃に会場が揺れ観客は吹き飛ばされないようにしがみつく。

 

衝撃が止まり、全員がフィールドに注目する。爆破の煙幕で何も見えず、結果を今か今かとまちわびる人々。それは会場だけでなく、中継されている画面の向こうも同じだった。

 

『煙幕が晴れてきたぞ、結果はどうだ!?』

 

主審ミッドナイトが確認する。フィールドに影は一つ。その姿は、

 

「爆豪君場外、よって勝者虚影君!!!」

 

虚影白夜だった。

 

『決着!! 一年ステージ優勝は、ヒーロー科、一年A組虚影白夜ぁぁ!!

だが爆豪もよくやった、会場のオーディエンス、クラップユアハンズ!!クラップユアハンズ!!』

 

虚影はフィールドの場外線ギリギリで脚を踏ん張っているが、爆豪は場外に吹き飛ばされてしまっている。

 

『恐らく勝敗を分けたのは支えがあるかだろうな。虚影は地に足をつけ、踏ん張りを効かせた一撃、それに引き換え爆豪は空中での爆破技。威力は申し分なかったが今回は分が悪かったな。力は両者互角、だが立って踏ん張っていた分虚影はフィールドに残れたわけだ』

 

相澤が冷静に解説を行う。爆発的な歓声と惜しみない拍手が虚影に送られる。爆破の影響か先ほどと異なり無傷ではなく裂傷などがあるものの、虚影はフィールド中央まで歩く。そして右腕を高らかに空に掲げた。

 

スタンディング、それは№1ヒーローを思わせる姿だった。歓声が鳴りやむことはなくそのまま彼を今日の主役へと導いていく。

 

 

 

雄英体育祭一年ステージ、頂点に上り詰めたのは虚影白夜であった。

 

 

****

 

 

闇の中、動く人影。光はテレビから発せられ、そこには一人の少年が映し出されていた。

 

「虚影…白夜…。フフフ、順調に育っているようじゃないか」

 

巨悪は既に動き始めている。少年の姿を見ながら男はほくそ笑む。

 

「会える日が楽しみだ。あぁ、()()()

 

その男が少年と交わるまで、そう時間はかからないかもしれない。

 

 




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