今のGBNには大きく分けて二つの問題がある
1つ目は第一次有志連合戦で根絶したはずのブレイクデカール問題。
公式はすでに対処済みとの発表はしておりその特性上どの記録媒体にも残ってはいないがプレイヤー間での噂話でどんどんと広まっている。
2つ目は第二次有志連合戦で対処したはずのELダイバー問題。
対処したはずなのにぞくぞくと目撃報告が上がり、やがてはとらえて運営に引き渡すことで対価に報酬をもらうELダイバー狩りという金策が広まったほどだ。
それらの不具合を解決するために運営も何度もメンテナンスやアップデートを実施してきたがいずれも効果はなく、ユーザーたちからの不評を買う原因にもなっていた。
「…俺たちは何のために戦ったんでしょうね」
とあるダイバーはそう言い残してログインしなくなったという。
そのダイバーに限らず多かれ少なかれ同じ思いを抱いたダイバーは次々にGBNを去り。
代わりに入ってきた新規ダイバーの共通認識は「ELダイバーはバグの集合体であり生け捕りにすれば金がもらえる敵である」というものだった。
‐レジスタンス本部‐
「…というわけで新しい報告は以上かしら?」
レジスタンスのフォースリーダー、マギーがELダイバー狩りの対策会議を終えようとしている。
結局のところいくら保護しようと彼らが生きていくのはこの世界しかなく、世論そのものが敵の現状だと不可能である。何度会議を重ねてもそれを覆すことは困難だという結論しかない。
唯一の救いはELダイバー狩りを行うダイバーの多くは新規勢が多いため古参のおおいELレジスタンスのメンバーならば大抵は何とかなるという点。しかしあくまでもELダイバーをNPDだと考える者や愉快犯的な行為でELダイバー狩りを行うダイバーもまれにいるため油断は禁物というのも共通認識だ。
「ちょっといいかな?実は…黒い00ガンダムと遭遇したんだ」
ためらいがちに手を挙げたのはシャノワール・ネオを代表してきたコージーだ。
シャノワール・ネオはELレジスタンス結成前からELダイバー保護を謳ってきたフォースの一つだ。
「黒い00…ってあのブレイクデカールを使ってるって噂のかい?」
そう聞き返すのは単独でレジスタンスに参加しているシャフリヤール。彼のフォースSIMURUGはレジスタンスにこそ参加はしていないがリーダーがレジスタンスに参加していることを知ってELダイバー保護に動いている。
「うん、噂通りものすごい力だった、でもELダイバー狩りを倒したらすぐにいなくなって…」
「なるほど?つまり彼…かどうかはわからないが、黒い00はこっちサイドということかな」
「そうだと嬉しいんだけど…問題はブレイクデカールを使ってるってことね」
マギーが話を引き継ぐ
「確かにELダイバー狩りは見過ごせることじゃない、でもそれを倒すためにブレイクデカールを使ってるってことはGBNを壊そうとしてることと同義…本末転倒だわ」
「俺も黒い00にあったぜ」
同じく目撃証言をするのはタイガーウルフ、フォース虎武龍のリーダーだ、彼のフォースもまたレジスタンス創設前からのELダイバー保護派だ
「ほう?彼の助太刀が必要なほど追い詰められたのかい?」
「んなわけあるか、俺が駆け付けた時にはもういたんだよ」
シャフリヤールの軽口に鼻をふんと鳴らして答える
「ありゃあ見事な太刀筋だった、それこそブレイクデカールなんかを使わなくても十分そうに見えたな」
「へえ、君が近接戦をほめるだなんて相当な手練れだね」
「当たり前だ、あいつは…いや、何でもない」
何かを言いかけて口をつぐむ、それを言ったら自分の中の疑問が確信に変わってしまう気がして…
「はいはい、ともかく黒い00はひとまずは保護派ってことで様子見…しかないわよねぇ」
これ以上状況をひどくしないための現状維持、それがレジスタンスにできる限界だった。
状況を変える一手が欲しい、そう皆が思っていた。
‐第7機甲師団フォースネスト‐
「以上が本日の報告になります!」
「ご苦労、もう下がっていい」
「はっ!」
軍服を着た老練そうなアバターの男が報告を終え去っていくのを見送るのはフォース第7機甲師団リーダーのロンメル。
彼もまた頭を悩ませていた
「今週だけで10人の目撃情報…それに対して捕獲できたのは…2人だけか…」
割合にして2割、もしかしたら目撃情報がないだけでもっといるかもしれない。
それに前は1週間に一人か二人だったのが日に日に数が増えている…
「…それでも、GBNを守るため…彼女の犠牲を無駄にしないため…私は止まるわけにはいかないのだ」
自分に言い聞かせるようにそう呟く、誰でもない、己を納得させるために…
「…クルトは…皆はこんな私を見たら何というだろうか…」
どこか自嘲気味にそう呟く、以前はサブフォースまで持っていた彼だが一連の騒動がきっかけでログイン率は全盛期の1割以下に落ち込んでいた。
現状を変える一手が欲しい、そう望んでいたのは殲滅派も同様だった