ぶっ飛んだヤンデレウマ娘たちが見たくて書き起こした物体   作:妖魔夜行@

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スペちゃんはこんなこと言いません!!(鏡に向かって叫ぶ作者の図)


スペシャルウィークの場合

 朝を告げるアラームが鳴り響く。焼きたてのパンのいい匂いが鼻腔を擽り意識の覚醒を促す。うっすらと瞼を開ければスペシャルウィークの顔が視界いっぱいに映っていた。スペシャルウィークはトレーナー、鳥恵エナが目を覚ましたのを確認すると元気な挨拶をした。

 

「おはようございますトレーナーさん!」

「おうおはよう。ところで何で俺の部屋にいるの?」

 

 そう、ここはトレーナー寮。基本的にウマ娘は立ち入れない場所だ。ましてはここは鳥恵の部屋、鍵もしっかり掛けていたハズなのに何故ここにいるのか。鳥恵がそう聞くとスペシャルウィークはポケットから鍵を取りだした。

 

「合鍵で開けました! そんなことよりトレーナーさん、朝ごはんできてますよ!」

「待って、知らない間に合鍵作られてたんだけど。『そんなこと』で流せる内容の会話じゃないよね?」

 

 いつの間に作ったのか、そもそもいつ自分の部屋の鍵を確認したのか、どう考えても犯罪臭しかしないので軽く流せる話ではない。

 しかし鳥恵の追求を流水のように受け流したスペシャルウィークは朝食を勧めてくる。よく見ればピンク色の可愛らしいエプロンを身につけている。よく似合っているがまさか自分の部屋で見ることになるとは思わなかったなあと鳥恵は他人事のように考えていた。

 

「お母ちゃんにお願いして新鮮なミルクとバター送ってもらったんですよ。トレーナーさんは朝はパン派ですもんね! 焼きたてのトーストにバターをたっぷり塗ってミルクで流し込むと美味しいですよ! いつもジャムとコーヒーですけどたまにはこういうのもいいですよね!」

「うん確かに美味そうだけども。何で俺のいつもの朝飯内容把握してらっしゃるの?」

「お母ちゃんから伝言預かってるんですよ! 『うちのスペをよろしくお願いします』って! 明日から鳥恵スペシャルウィークって名乗ってもいいですか?」

「全くもって良くないが。語呂悪いし。あとしれっと外堀埋めるの辞めようね? 宜しくされても困るのよ」

 

 トレセン学園に在籍している生徒の中でも一、二を争う食欲と胃袋を持つスペシャルウィーク。そんな彼女を丸投げされても食費的に困るし世間体的にも困る。自分が担当するウマ娘に手を出すトレーナーなどマスコミのいい餌だ。

 

「スペシャルウィーク。これ何?」

「ミルクです!」

「そっかーミルクかー。でも俺が知っているミルクはマグカップから溢れるくらい謎の白い粉をかけるものじゃないんだよな。何だこの粉」

「砂糖です!」

「だとしたら入れすぎだろ。糖尿病で殺す気か」

「大丈夫ですよ! 人体に害はありません! ちょっと体が熱くなってちょっと体の一部分が興奮してちょっと私とうまぴょい*1したくなるだけですから!」

「自白してんじゃねぇか。これぜってー砂糖じゃないだろ」

 

 こんもりとかき氷のように盛られた謎の粉入りミルクを飲める訳もなく、トーストに手をつけようとして伸ばした手を止めた。

 

「スペシャルウィーク、これ何?」

「バターです!」

「そっかーバターかー。でも俺が知ってるバターは謎の白い粉はかかってないんだよなー。隠せよ少しは。なんでここで欲張ったんだよ」

「少量だと効果ないかなぁと思って」

「十分だよ。恐らく致死量だよ。このトースト食べてこのミルクで流し込んだら確実に死ぬよ俺は。こんなんが最後の晩餐とか昭和初期の刑務所の飯の方がまだマシだよ」

 

 謎の粉さえなければ美味しく頂けたであろうに。そもそもどこでこの粉を手に入れたのか。というより態々北海道からバターとミルクを送ってくれたお母ちゃんに謝れ。

 色々と言いたいことはあったが全て言おうとすると恐らく日が沈んでしまうので、冷蔵庫からゼリー飲料とブロッククッキーを取り出して朝食にした。

 

「えー!? 折角作ったのに食べてくれないんですかー!」

「逆に何でこれで食べてくれると思ったんだよ」

「トレーナーさんなら食べてくれるかなぁって。多少怪しくても食べ物なら何でも食べちゃいますよね?」

「なわけねぇだろ。どんな食い意地してんだ餓鬼*2でも取り付いてんのかお前の腹には」

 

 話しながら食事を進め、腹の中に収めたトレーナー。歯を磨き、顔を洗い、髭を剃り、寝間着からスーツに着替える。いつも通りの朝だ。トレーナーの半径1メートル以内から離れないスペシャルウィークを除けば。

 何故か開いている玄関を出るとスペシャルウィークが鍵を閉める。

 

「えへへ、同棲してるみたいですね!」

「寄生の間違いだろ。鍵寄越せ」

「嫌ですよ! これは私とトレーナーさんを繋ぐ愛の証なんですから……」

「愛の証をグレーゾーンスレスレの行為で作らないで?」

 

 歩き始めるとスペシャルウィークは自分の腕をトレーナーの腕に自然に絡ませる。その際、たわわに実った二つの果実がトレーナーの左腕を包み込む。ここだけ切り取ると付き合いたてのラブラブカップルに見えるが、如何せんそれ以前の行動がモロストーカーのソレだったのでときめく要素は一切ない。むしろ恐怖心の方が勝っている。

 しかし悲しいかな、世間様の目からは30近いオッサンが女子高生を連れ回しているようにしか見えないのだ。ご近所さんの視線が辛い。

 

「ねぇ離れてくんない? そろそろ俺職質されちゃうんだけど」

「そしたら私とトレーナーさんの関係を話せばいいじゃないですか。『夫と妻です!』って!」

「『ストーカーと被害者です』の間違いだろ」

「も〜照れないで下さいよ〜!」

「照れてるんじゃなくてキレてるんだよ」

 

 朝からこんな調子ではマトモに仕事も出来ないだろう。どうしてくれるのか、スペシャルウィークにジト目をぶつけると何を勘違いしたのか、彼女は顔を赤くして頬に両手を当てて体をくねらせている。

 

「トレーナーさん、そんな熱い視線をぶつけないで下さいよ〜……外でそんな、ダメですよ〜!」

「脳に人参でも詰まってんのか」

「トレーナーさんに対する愛情がたっぷりですよ!」

「そうか。不味そうだから捨てといてくれ」

「え!? なんでですか!? 私の愛情ですよ!」

「だからだよ。何でお前はそんなに自信あるんだよ朝の行動見直してこい」

「???」

「この子本気で言ってる?」

 

 本気で分からないのか首を傾げるスペシャルウィークに恐怖の視線を送るとこれまた勘違いして頬を赤く染める。何これ無限ループ? とトレーナーがゲンナリしていると校門前に立つ駿川たづなの姿が見えた。いつの間にかそこそこの距離を歩いていたようだ。

 と、左腕がミシリと悲鳴を上げた。目を向けてみればスペシャルウィークが彩度を失った瞳でトレーナーを見つめていた。

 

「なんで私がいるのに他の女の人を見るんですか……」

「視界に入るんだから仕方ないだろ」

「私はトレーナーさんの一番になりたいんです……だから他の女の人なんて見ないでください」

「おっと話を聞かなくなったぞ。いや朝から聞いてなかったわそういえば」

 

 不穏なことを言い始めたスペシャルウィーク。同時にトレーナーの左腕も不穏な音を出し始めた。

 

「ちょっと待って、人体から出ちゃいけない音が聞こえたんだけど。スペシャルウィークさん?」

「トレーナーさん、トレーナーさんを独り占めするにはどうすれば……トレーナーさんに他の女を見えなくするにはどうしたら……あはっ、そっか。食べちゃえばいいんですね」

「食い意地張りすぎだぞデブ」

「女の子にデブは言い過ぎですよ!?」

 

 どうやら元に戻ってくれたようだ。瞳に光が戻ったのが何よりの証拠だ。スペシャルウィークは頬を膨らませてトレーナーを睨みつける。

 

「罰として今日1日私とくっついてて下さいね!」

「いや授業受けろよ」

「トレーナーさんも教室に来るに決まってるじゃないですか」

「さも当然のように俺を教室に連れていかないで?」

 

 腕に込められる力が強まる。どうやら本当に今日1日離すつもりはないらしい。

 始まったばかりの1日が憂鬱で仕方がないトレーナーだった。

*1
隠語

*2
腹を空かせる妖怪




1発ネタなので続きは期待しないでください()
気が向いたら他のキャラも書くかもしれません。
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