ぶっ飛んだヤンデレウマ娘たちが見たくて書き起こした物体   作:妖魔夜行@

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 スターティングゲート2のグラスワンダーのふわふわした喋り方してて好き。「あらあら〜〜」のところとかすこ。エルコンドルパサーに至っては似非外国人口調強調しまくってて芝。「ただ歌って踊ってるダーケージャーナイデース!」ここすこ。

 あ、最後のメンバーです。対戦宜しくお願いします。グラスワンダーはいいry


グラスワンダーの場合

 今日も今日とて事務作業。担当するウマ娘が多いトレーナーなら仕方がないことだ。

 それにしても量が多い。作業を開始してから2時間程経過したが一向に終わる気配がない。時計の短針も既に5時を過ぎていた。

 書類に目を通し印鑑を押したり八割の確率で混ざっている婚姻届や怪しい誓約書を丸めてゴミ箱にポイするだけの単純な作業なのに、だ。心做しか書類の山が増えているように見えるのは気のせいだと思いたい。

 休憩するかと思った矢先にスっ、と書類の束が追加された。

 

「トレーナーさん、追加の書類ですよ」

「書類ね……俺の目がおかしくなければ婚姻届って書いてあるんだが」

「あら〜。まだおかしくなってなかったんですね、ついでに押してくれるかなぁと思ったのですが」

「笑顔で話す内容じゃないよね?」

 

 あらあらうふふと朗らかに笑う少女の名はグラスワンダー。先程から処理している婚姻届の大半が彼女のものだ。作業が終わらない理由が判明した。

 

「大体、お前らなんなんだよ。さっきから書類捌いてるけどその殆どが婚姻届と俺と一生を誓う誓約書って、暇なの? バ鹿なの? 遊んでないでトレーニングしてくれよ」

「失礼ですね。私は本気ですよ」

「正気じゃねーな」

「根気よく口説いていきたいと思っているんですよ〜」

「俺の婚期こんなんばっかなの?」

 

 今度マチカネフクキタルに厄祓いをして貰える神社とか紹介してもらおう、と鳥恵が考えていると自分の手をグラスワンダーに掴まれていることに気がついた。視線を向けてみれば手には印鑑が、下には婚姻届があった。

 

「何してんの?」

「見て分かりませんか?」

「見て分かりたくないから聞いたんだよ」

「トレーナーさんの手に印鑑が収まっていれば合意になるかなぁと思いまして」

「こんな強制的な婚姻は同意しかねるな」

「私も本意ではないんですよ?」

「手の力が本気だって言ってるんだが」

 

 現在鳥恵は空いたもう片方の手を挟みこませて必死に押印を阻止している。大和撫子に有るまじき力技に流石の鳥恵も戦慄ものだ。

 

「おい、自称淑女。今のお前のどこに淑女要素があるのか簡潔に答えろ」

「トレーナーさんへの溢れんばかりの愛を押さえ込み、慎ましく過ごしているじゃないですか」

「慎ましい*1って言葉の意味を辞書で調べてこい。そのあと悍ましい*2って意味も調べてみろ、お前のことが書いてあるぞ。というかいい加減諦めろ」

 

 印鑑の向きを変えて何とか独身を死守することに成功した鳥恵。それを見てグラスワンダーは残念そうに眉と耳を下げた。

 

「もう少しで鳥恵グラスワンダーになれたのに……」

「怖いな。お前シンプルに怖いよ。あと語呂悪いよ」

「あらあら、トレーナーさんのことを想ってチームを移籍までしたっていうのに、そんな言い方はないのでは?」

「言ってることストーカーのそれだっていうことは気づいている?」

「そんなこと言って、毎晩私のトレーニングメニューを見直してくれてるの知ってるんですからね〜」

「今自分でストーカーだって言ったからね?」

 

 今グラスワンダーが話したように、彼女は元々チーム『リギル』に所属するウマ娘だったのだが、彼女の念願叶って先週遂に鳥恵のチームに移籍することが出来た。このことに涙を流して喜んだ女性トレーナーが1人、涙を流して胃を抑えた男性トレーナーが1人いたそうだが、その話は置いておこう。

 鳥恵自身、贅沢な悩みだとは分かっているがそれでもため息をついてしまうのは仕方がないだろう。

 

「あーやめやめ。明日までに駿川さんに渡す書類は書き終わってるし、今日はもう終わりだ」

「あら〜いいんですか〜?」

「だってお前邪魔してくるじゃん」

「構って欲しいだけですよ〜。これからもずっと」

「カマしてくるね。冷房つけてないのに肌寒くなったわ」

 

 最後だけ伸ばさずに冷えきったトーンで言ってきた。ニコニコと朗らかな笑みとは対象的な声色が尚更鳥恵の恐怖心を煽る。笑顔なのに威圧感があるとはこれいかに。

 現実逃避も含めて体を解すために軽く伸びをすると凝り固まっていた肩甲骨からゴキ、ボキという音がした。やはり書類整理、というか雑務全般は長時間やるものでは無いなと鳥恵は息を吐いた。

 

「今更だがグラスワンダー、今日はオフだったんだから俺に付き合わなくても良かったんだぞ」

「いえいえ〜、私も好きで付き合っていますので〜。と言うよりはジャンケンを制した私がトレーナーさんの書類整理に付き合う権利を得たんですけどね」

「ああ、そう。暇なんだね」

 

 そんなことならトレーニングを設ければ良かったな、なんて思っても後の祭り。グラスワンダーの思惑通り2人っきりの時間を過ごしてしまった。

 先程書き終えた書類の束をバインダーに閉じ席を立つ。駿川たづなにその書類を提出するために理事長室に向かおうとしたのだが、グラスワンダーが肩と肩が触れ合うくらいにぴったりと密着してきた。どうやら着いて来るようだ。非常に歩きづらいがここで言っても聞かないのは分かりきっているので仕方なく黙認した。

 せめてもの反抗としてため息をつくが、隣で歩くグラスワンダーは気づいているのかいないのか上機嫌なままだった。

 

 ミーティングルームから十数分、グラスワンダーに右腕を拘束されながら理事長室前に到着し、扉を開く。理事長室には理事長は見当たらず、代わりにトレードマークである淡い緑色の制服に身を包んだ駿川たづなが書類を捌いていた。

 たづなは鳥恵に気づくと作業の手を止めて鳥恵の元へ駆け寄ってきた。

 

「お疲れ様ですトレーナーさん、グラスワンダーさんも」

「お疲れ様です〜」

「お疲れ様です。これ、書類です」

「ありがとうございます。今確認しますので少々お待ち下さい」

 

 鳥恵から書類の入ったバインダーを受け取りその場でパラパラと用紙を捲り枚数と内容を数える。どうやらどちらも合っていたようで、たづなは納得するように頷くとバインダーを胸に抱えて笑みを浮かべた。

 

「はい、問題ありません。確かに受け取りました。ご苦労さまでした」

「じゃあ俺はこれで」

「あ、待ってくださいトレーナーさん。夏合宿の予定なんですけど、決まっていますか?」

「夏合宿? 特には決めていませんが、まあ例年通り行うつもりではいますよ」

「スピカでの夏合宿は初めてなので楽しみです〜……色々と

「ボソッと言っても聞こえてるからな。不穏な呟きしやがって」

 

 グラスワンダーが加入したことで予定していたメニューを組み直すことになったが、まだ許容範囲内なので問題ない。

 夏合宿は時間に縛られないことで伸び伸びとトレーニングに打ち込めて、マッサージ設備や娯楽施設といったウマ娘のコンディションを整える環境がある。なので普段のトレーニングより数倍効率のいいメニューを組むことが出来るのだ。

 

 ちなみにスピカはリギルほどでは無いが大所帯のくくりに入るので学園からそれなりに活動費を出してもらっているのだが、スペシャルウィークとオグリキャップといった大飯食らいのせいで毎回飯代が宿泊費を簡単に上回るので、食事に関しては鳥恵のポケットマネーから出していたりする。

 

 今回は給料何ヶ月分吹き飛ぶのだろうか、と鳥恵が遠い目をしているとたづなに呼びかけられたので意識を会話に戻す。

 

「聞いてましたかトレーナーさん? 先程の話なのですが、どうでしょうか?」

「あー、すいません。何の話でしたっけ?」

「もうっ、夏合宿ですよ。チーム『リギル』と『カノープス』で合同合宿をしないかという話が上がっているんですよ」

「3つのチームで合同合宿ですか?」

「ええ。詳しい内容は後日話し合う時間と場を設けますのでそこで煮詰めてもらえればと」

 

 合同合宿は人数が少ないチーム*3やレースで上位に食い込めないことが多いチーム*4同士がトレーニングの質を高めるために行うのだが、リギルもカノープスも大所帯*5の強豪チームだ。わざわざ他のチームと合同練習などしなくても充分質の高いトレーニングを詰めるはずだ。それにリギルやカノープスレベルのチームになると一緒に練習することで相手に情報を渡してしまうことになる。

 

「……なんでまた?」

「さあ……? 私も先程須郷トレーナーから電話を貰って聞いたばかりなので……」

「はあ……まあ、それなら『リギル』がOKを出せばこっちも了承しますよ」

「分かりました。じゃあスピカは了承した流れで話を通しておきますね」

「はい。他に話はないですか?」

「はい。呼び止めてすみませんでした。暗くなってきたので道中気をつけてくださいね」

 

 そう言われて窓から外を見れば日が傾いており、夕焼け空が学園を照らしていた。夏の日照時間が長いとはいえ、グラスワンダーを寮へ送り届けてトレーナー寮に向かう頃には暗くなってしまうだろう。

 

「寮へ向かう時に不審者に出くわすかも知れませんから」

「そこらの不審者程度ならグラスワンダーが着いて回ってるから問題ないですよ。グラスワンダーが着いて回ってること自体が問題なんですけど。なんならこいつが不審者なんですけどね」

「トレーナーさんが望むのなら帰り道でも部屋の中でもお風呂の中でもベッドの中でもずっと一緒にいますよ〜」

「望まないから帰ってくんない?」

「トレーナーさん、子供は卵から産まれませんよ〜?」

「孵るじゃなくてね? どういう脳内変換してるんだお前」

「はいはい、理事長室で痴話喧嘩しないでください」

「痴話で済むレベル超えてるんですよねこれ。ちょっと、背中押さないで下さいって力強いなおい」

 

 うんざりとした表情のたづなに押されて理事長室から無理やり退出させられた鳥恵とグラスワンダー。未だにニコニコと表情を崩さずに腕を絡めているグラスワンダーに深くため息をついて歩き始めた。

 

「結構遅くなっちゃったしヒシアマゾンに連絡入れないとな」

「そうですね……今日はトレーナーの部屋に泊まる予定ですし」

「泊まらせないが? 何しれっと上がりこもうとしてるの?」

「今日こそ既成事実を作らせて貰います」

「お前の存在こそ規制しなきゃいけねーよ」

「寄生でもいいんですよ……?」

「確実にチーム内から犠牲が出るから辞めてくれ」

「あらあら」

「あらあらじゃないが」

 

 その後、三浦寮へ到着したが鳥恵から離れたくないグラスワンダーが盛大にごねたのだが、何となく嫌な予感がしたヒシアマゾンが対処してくれたことでその場は収まった。

 とりあえず、グラスワンダーとの距離を少し離すことを考えた鳥恵だった。

*1
遠慮深くて動作・態度が控え目

*2
接する状態に恐怖・嫌悪を覚え、そこから逃れたい、いやな思い

*3
並走経験が少なかったり並走相手が変わらないことで変な癖がついてしまったりする、とかだと思う多分

*4
めちゃくちゃ辛辣に言うと弱小チーム

*5
カノープスは5人だが




 くぅ疲w。とりあえずこれで当初予定していたメンバーは書き終えることが出来ました!
 ここまで読んでくれた読者の皆様、元凶の友人、書き起すきっかけとなった偉大なるトラペア様、お付き合いいただきありがとうございました!
 そしてそして、感想評価、誤字訂正をしてくれた方々に感謝の言葉を。特に感想を書いてくれた皆様、感想を励みに頑張りました!ありがとうございま!

 最後に、ぶっ飛び系ウマ娘を人に勧める場合はちゃんと相手を選ぼうね!(戒め)

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