ぶっ飛んだヤンデレウマ娘たちが見たくて書き起こした物体   作:妖魔夜行@

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 Twitterの方でリクエストされたゴールドシップです。
 本編とはまた別のものとして考えてください。すげぇ難産でしたね……。キレもあんまりないような気がするけどこまけぇこたぁいいんだよ!

 ゴールドシップは言っ、言う……?言わない……?


if:ゴールドシップの場合

「どやっほー! おいトレエナ! 山行くぞ山! 山の神様に見守られながら婚姻を結ぼーぜー!」

「口説き文句で山の神様って言葉が出てくることある? というか山に行くならなんで水着になってんだよ。いや待て水着で校内うろつくとか正気か?」

「お前それスペとマブいチャンネーにも言えんのか?」

「常軌を逸してるよお前もアイツらも、周りもなんで止めないんだよ」

 

 練習メニューを組み立てているとミーティングルームの扉を蹴破ってゴールドシップがやって来た。しかし服装は何故か水着、髪の色と同じシンプルな純白のビキニを身につけている。学校内をこんな格好で平然と彷徨いているゴールドシップもおかしいが、彼女に加えてもう二人水着で彷徨く者がいることが何よりもおかしい。

 手は止めずに視線だけゴールドシップに向けて相手をすることにした。

 

「で……山は冗談として、何の用だ」

「あー? 用がなきゃ会いに来ちゃいけねぇのかよ」

「出来れば」

「即答かよ。まっ、愛に生きるゴルシ様にそれは無理な話だな」

 

 ヤレヤレと陽気な外国人みたいなのりで首を振るゴールドシップ。その動作がやけに滑らかだったのことに少し苛立ったが鳥恵は軽く息を吐いてゴールドシップと目を合わせた。

 

「おっ? なんだなんだそんな熱い目線送ってきやがって〜。夜はまだだぞっ☆」

「そんな目線は送ってないから気の所為だぞ」

「そんなつまんねーこと言うなって! 今に気の所為じゃないようにしてやるからな」

「怖いから急にマジトーンにならないで貰えます?」

 

 笑顔だったゴールドシップが急に真顔になり、普段の明るい声から低く冷たい声に変わったので鳥恵は割と本気でビビった。

 パッと笑顔に戻り、いつものように狂気じみた発言をする。

 

「ゴールドシップ・エナになるのももう少しだな」

「そっち? そっちは初めて聞いたわ。外人みたいな名前になってるけど、お前の本名はゴールドシップ・ゴールドシップなのか?」

「何言ってんだお前? そんなわけねーだろ、常識でものを言えよ」

「常識の定規が壊れている奴に言われたくねーよ、殴るぞ」

 

 拳をちらつかせて見せるがゴールドシップに反省する様子は見えない。鳥恵は深くため息をついて背もたれに寄り掛かった。

 

「おっ、どうした? 結婚するか?」

「結構です」

「そんな塩対応されてもアタシはお前にゾッコンなんだぜ。ふん縛って家に連れて帰ってもいいか?」

「そんなことしてみろ、チーム内が怨恨の渦で溢れかえるぞ」

 

 どこから取り出したのか、ゴールドシップの手には麻縄が握られていた。家に連れ帰った後、何をされるかわからないし何より怖いので『仕舞え』という意味を込めて手を払う動作を見せた。「ちぇー」と言いながらもすぐに胸元にしまい込んだのでゴールドシップも本気ではなかったのだろう。目が血走っていたような気がしなくもないが、本気ではなかったはずだ。そう思いたい。頼むからそうであってくれ、内心冷や汗だらだらの鳥恵は切に願った。

 

 ゴールドシップが何もしてこないのを見て安心した鳥恵は執務作業を再開した。初めのうちは構え構えとうるさかったゴールドシップだったが、反応せずに黙々と作業する鳥恵が詰まらなかったのか暇つぶしにルービックキューブを弄りだした。

 部屋の中はガチャガチャとルービックキューブを動かす音とペンを走らせるカッカッという軽い音だけになる。

 

 暫く書類と睨めっこを続けていた鳥恵だったが、いつのまにかルービックキューブの音が途絶えていることに気づき、机に向けていた顔を上げてみた。すると眼前で瞬きもせずにこちらを凝視するゴールドシップと目が合った。

 

「何してんだお前」

「暇だったから、見てた」

「暇潰しで俺の寿命縮ませないで貰えます?」

「縮んだ寿命分、アタシも縮めてやるから安心しろって」

「どこに安心する要素があるんだよ。罪の償い方が重過ぎるだろ」

 

 涼しい顔をしているが心臓はバックバクの鳥恵、ふと掛け時計に目をやると短針が12時を指していた。

 

「昼か、書類に夢中で気づかなかったけど腹減ったな」

「そんなトレエナの為にゴルシちゃんがお弁当作ってきてやったぞ! 褒めろ褒めろ!」

「弁当ね……どうせなんか入ってるんだろ」

「ゴルシちゃんはそんな回りくどいことしないぞ☆」

 

 ドン! と書類を退かした机の上に重箱が置かれた。恐る恐る中を開けてみると一段目にはうな重*1、二段目にはカキフライ*2、納豆の油揚げ包焼き*3、アボカドとアスパラガスのサラダ*4と少し重いこと以外には普通*5の内容の弁当だった。

 拍子抜けしながら最後の三段目を開けると、山芋が*6ぎっしりと詰められていた。

 

「おい」

「あ、ドリンクはこれな」

 

 隣に置かれたのはスッポンの生き血ドリンク*7、しかも箱と来たものだ。ゴールドシップを睨むと彼女は笑いながら話した。

 

「言っただろー? 回りくどいことはしないって。ゴルシちゃん特性の精力増強メニューだ。たーんと食えよ」

「確かに直球だけどさ、もうど真ん中全力ストレートだけどさ、そうじゃないでしょ?」

「ゴルシちゃんが愛を込めて作った弁当が食えねぇってか!?」

「込められてるのは愛じゃなくて精だろ。しかも2段目の割合3:3:3だし山芋に至っては皮すら剥いてねぇじゃねーか。軽めの地獄か?」

「なんだよーそんな怒ることじゃねーだろー?」

「至極真っ当な反応だと思うが」

 

 山芋以外は普通に食べられるものなのでタチが悪い。最早癖になったため息をつき、渋々弁当に手をつける。普通に美味しいので反応に困る。

 

「美味いか?」

「ああ」

「そりゃ良かった」

「ゴールドシップは食わないのか?」

「んー、じゃあ食わせてくれよ」

 

 イタズラっぽく笑い「あー」と口を開けるゴールドシップ。普通にうな重を食べさせるのもいいのだが、普段からゴールドシップにおちょくられてる鳥恵は日頃の恨みを込めて山芋を突っ込んであげることにした。

 

「おごぉっ!?」

「へー、山芋って生食イケるんだ。初めて知ったわ」

「アタシはイケねーから言いながら詰め込もうとすんな!」

 

 山芋を頬張りながら追加の山芋を回避したゴールドシップ。舌打ちをした鳥恵はうな重に舌鼓を打った。

 重箱が空になる頃には短針は1を指していた。その重箱も1人で食べるには量が多かったのでなんだかんだゴールドシップと一緒に食べることになったのだが。

 

「ご馳走様でした」

「お粗末サマー。ところでトレエナ、アタシの手料理を味わったわけだが……どうだ? メロメロになったか?」

「そうだな、全部食ってたらゲロゲロになってたかもな」

「ゴルシちゃんのお陰で助かったってワケか! なら感謝の気持ちとかそれ相応の態度とかあるよな?」

「急にヤクザ染みて来るじゃん」

「いやいや、別に金じゃなくて体で払ってくれればいいからよ」

「余計ヤクザ感増しただけだぞ。肩に手を回すなウシジマくんか」

「ウマ娘だが?」

「そうじゃなくてね?」

 

 机に足を乗せて鳥恵の顔をのぞき込むゴールドシップ。黙っていれば美人なので圧が凄い。心做しか顔が上気しているように見えるが気のせいだろう。

 

「気のせいじゃねぇよ。お前のせいだぞ責任取れ」

「責任転嫁やめろ。どう考えてもお前が勝手に生き血ドリンク飲み干したのが悪いだろ」

「だったらお前が飲めばよかった話だろ」

「誰が好き好んでスッポンの生き血なんか飲むんだよ、こちとら生き死に関わってるんじゃい」

 

 顔を近づけてくるゴールドシップとそれを両手で抑えて断固拒否する姿勢を見せる鳥恵。このままでは押し切られてしまう、そう思った鳥恵は断腸の思いで苦渋の選択をした。

 

「分かったゴールドシップ、取引をしよう」

「取引だあ? 生半可な報酬でアタシが止まるとでも──」

「膝枕+耳かきをやってやる」

「…………」

 

 動きが止まった。数秒の沈黙の後、ゴールドシップが口を開いた。

 

「……ハグも追加してくれたら許す」

「ハグか……ハグ、うーん……それくらいなら……まあ、いいか。いいよな? 大丈夫だよな?」

「アタシの理性は丈夫な方だと自負してるぜ」

「俺の中の帰省本能は全力で寮に戻れと訴えかけているんだけど」

「そんな本能ゴルシちゃんが規制してやるからな」

「俺が犠牲になるじゃねぇか」

 

 シッ! と全力でガッツポーズをするゴールドシップ。メジロマックイーンの時も使った手だがゴールドシップにも効いてよかったと鳥恵は安堵したが、その後の反応を見て早まったかもしれないと若干後悔した。

 

「ハグと耳かき、どっちが先がいい?」

「んー、じゃあハグで」

「はいよ」

 

 正直担当ウマ娘(コイツら)相手にハグなんて自殺行為に等しいが、ゴールドシップはバグっているように見えて意外と常識人なところがある。だから貞操の心配はしなくてもいいはず……だと思う。

 

「押し倒すなよ」

「常識人の中の常識人と言われたゴルシちゃんがそんなことするわけねーだろー?」

「正直に言わないとやらないぞ」

「押し倒すに決まってんだろ。お前は獲物を前にしたタコが躊躇するとでも思ってるのか?」

「なんでタコなんだよ。もっとあっただろ獅子とかさ」

「四肢を雁字搦めにする吸引力を表現してやったぜ」

「吸引力って……掃除機かお前は」

「信頼と実績のダイソンだぜ」

「とんでもないとばっちり食らったなダイソン。その株買ったやつは大損だな」

 

 ジリジリと詰め寄ってくるゴールドシップに恐怖心を抱くが、『一度約束したしなぁ』と腹を括り迫るゴールドシップの背中に手を回しハグをする。

 先程まで古めの乾燥機くらい煩かったゴールドシップが急に静かになった。

 

「おい……ゴールドシップ?」

 

 表情を見るために顔を覗き込もうとしたがぷいっと逸らされる。破天荒な彼女らしくない珍しい反応だ。一体全体どういうことなのか、少し考えて、鳥恵は今まで担当ウマ娘たちとのやり取りから培った経験から答えを導き出した。

 

「ゴールドシップ……」

「……あんだよ」

「お前も案外可愛いところあるんだな」

「うっせぇ!」

 

 ゴールドシップは照れを誤魔化すように鳥恵を突き飛ばしてミーティングルームから飛び出して行った。一方ウマ娘の力で突き飛ばされた鳥恵はロッカーと椅子を巻き込みながら壁にめり込んでいた*8

 

「…………膝枕しなくて済んだし、その代償と思えば軽いもんか」

 

 どうやら担当ウマ娘に振り回されすぎたせいで物事の異常に対する大小の判別がつかなくなってしまったようだ。

 よいしょっ、と身体を抜き出す動作が慣れている滑らかさだった。こんなことが慣れているのだったら危険察知機能がイカれるのも無理はない。

 

「……これ経費で落ちねぇかな」

 

 壊れたロッカーと椅子、壁を死んだ目で見つめながら、鳥恵はため息をついた。

 

 この数秒後、膝枕をしてもらうことを忘れていたゴールドシップが戻ってくることで代償にもならなかったのだが、それは蛇足だろう。

*1
精のつく料理

*2
精のつく料理

*3
精のつく料理

*4
精のつく料理

*5
普通とは……?

*6
精のつくもの

*7
精しかつかない

*8
ギャグテイストだが普通なら死にかけ




 オチのパターンが少なすぎることに定評があります。
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