ぶっ飛んだヤンデレウマ娘たちが見たくて書き起こした物体 作:妖魔夜行@
サイレンススズカはこんなこと言いません!(鏡にry)
「おっかしーな。俺の飲みかけの缶コーヒーの中身が消失している」
まだ半分近く残っていたハズのスチール缶は空き缶となっていた。勝手に消滅するものでもないので誰か犯人がいるはずだ。
「どうかしましたか、トレーナーさん」
「ああサイレンススズカか。なるほど犯人はお前だな」
「……? なんのことですか?」
「いや口、口。がっつりコーヒー飲んだ痕残ってるから」
口元に茶色い液体を付けたサイレンススズカ*1が堂々とトレーナーの前に現れた。しかしサイレンススズカは慌てふためくことなどせず、トレーナーのデスク上に置いてあるティッシュを1枚取ると口元を拭いた。
「なんのことですか?」
「嘘でしょ? この子これで誤魔化せると思ってるの? いや俺証拠隠滅の瞬間見てたからね? なんならその証拠を指摘したの俺だからね?」
「トレーナーさん、体調でも悪いんですか? 少しおかしいですよ」
「おかしいのはお前の頭だよ。そのせいで体調悪くなってきたわ」
「なら私が看病しますね。ふふっ、ベッドに行きましょう。人肌で温めれば風邪も治りますから」
「ここまで下心丸出しで看病を買って出るやつは今どきの成年コミックでもいないと思うんだ」
何食わぬ顔でシラを切ったかと思えば自身の欲望を吐き出したサイレンススズカに軽く引く鳥恵。『軽く』で済んでいるあたり鳥恵も大分マヒしていることが伺える。
「ところでトレーナーさん、明日は休日じゃないですか」
「この状況で話を変えるとか凄い神経してんなお前。まあ一応聞いてやるよ、休日がどうした?」
「婚姻届を出しに一緒に役所に行きませんか?」
「休日全く関係ないじゃねーか。ウマ娘の中で婚姻届を常備するのが流行ってるのか? あと行かないからな、お前は役所行く前に病院行ってこい」
「トレーナーさん……まだ子供は早いですよ……」
「脳みそ異次元に逃亡してんのか。頬を染めるな、そんな事実はねぇよボケ」
間接キスの話から休日の話題に飛んで、既成事実の話題に変わった。ゴールドシップもびっくりのワープ具合である*2。頬を染めて自身の下腹部を優しく撫でるサイレンススズカの姿は傍から見れば絵になるが、当事者からすればおぞましい狂気に満ち溢れた姿にしか見えない。
「子供の名前は何がいいと思いますか?」
「少なくともお前と考える話ではないな」
「鳥恵サイレンススズカと鳥恵エナ、2人の名前から1文字ずつ取るのが王道ですよね」
「お前の行動は邪道だけどな。あと人の苗字勝手に名乗らないで貰えます? 語呂悪いんだよ」
サイレンススズカと会話しながら練習メニューを組み立てる鳥恵。いくら頭がおかしくても一応自分が担当するウマ娘の1人だ。レースで勝たせるための努力は惜しまないし、惜しませるつもりもない故の努力の姿なのだが、どうやらサイレンススズカはあまり面白くないようで頬をぷくぅと膨らませている。
「……なんで私と話しているのにずぅっとパソコンと睨めっこしているんですか……?」
「練習メニュー考えてるからだよ。誰かさんが最近食いすぎたって言ったから調整しなきゃいけなくなってな」
「スペちゃんですか?」
「正解。ホントあの食い意地バカは……確かサイレンススズカ、お前スペシャルウィークと同室だったよな? あとで注意しといてくれ」
「…………」
「サイレンススズカ?」
急に黙りこくったサイレンススズカを不思議に思い、キーボードを叩く手を止めてサイレンススズカの方に目を向けてみれば彼女は虚ろな瞳で鳥恵を見つめていた。
ハイライトが仕事をしない光景など鳥恵にとって日常茶飯事。本来なら見慣れるはずの無い光景なのだが悲しいかな、鳥恵の周りにいるウマ娘の瞳は2種類あるらしい。
さてサイレンススズカの様子に戻るが、彼女の表情は感情が抜けきっており瞳は昏く、鳥恵の腕をしっかりと握りしめている。
ウマ娘の腕力は常人のソレとは桁違いなので普通は悲鳴を上げたり顔を歪ませたりするのだが、悲しいかな。先程も説明したが鳥恵にとってこの程度の出来事は日常茶飯事、こんなことで怯んでいては彼女らのトレーナーは務まらない。
「さっきから……なんで私がいるのに他のことや他のウマ娘のことばかり話すんですか……!」
「いや仕事。それ禁止されたら俺の仕事なくなっちゃうよ」
「そしたら私の旦那さんになればいいんですよ」
「よくねぇよ。キレてると思ったら単なる発作じゃねぇか」
「すみません……私ったら咄嗟に欲望が出てしまって……」
「ちょくちょく常識を異次元に逃亡させるの辞めてくれる?」
「これが速さの向こう側……」
「お前が見てるのはヤバさの向こう側だよ」
出会った当初はこんなキャラでは無かったのにいつからこんなポンコツになってしまったのか。しっかり手綱を握っていなかった自分が悪いのだろうか、一瞬そう考えた鳥恵だったが、もし握っていたとしてもそれはそれでポンコツになる結果に変わりはないと思い、ため息をついた。
「困り事ですか? 私でよければ相談に乗りますよ」
「困ったな。困り事の原因が自ら相談相手に立候補するのは初めての経験だよ」
「初めての経験だなんて……まだ昼間ですよ。もう、カーテン閉めてくださいね」
「おっと遂に会話の次元が異なってしまった」
「私の行動基準、優先順位は全てトレーナーさんに依存してますから」
「怖すぎるだろ。もう俺が逃げたいよ」
「あっ! 知ってます。それって愛の逃避行っていうんですよね」
「少なくとも俺が知ってる逃避行はそんな一方的な狂愛に塗れてないかな」
流石は異次元の逃亡者、常日頃からスピードの向こう側を見たいと言っているサイレンススズカは会話だけでなく行動までぶっ飛んでいた。ついでに思考もぶっ飛んでいるだろう。
のそりとサイレンススズカが鳥恵の腕に絡みついてきた。暗かった瞳はいつの間にか熱を帯びており、すぐにでもうまぴょい*3しそうな雰囲気を醸し出している。
「トレーナーさんが進んで婚姻届を出す方法があるんですよ」
「そうか。初耳だな。俺の事のはずなのに」
「私とうまぴょい*4すればいいんですよ。子供さえ作っちゃえば逃げられませんよね?」
「俺は早く自宅に逃げたいよ」
「確かにするならお家の方がいいですよね! 私、色々準備していくので先に帰っていて下さい。ふふっ、まるで新婚夫婦みたいですね」
「仮にそうだとしたら会話内容が歪すぎるだろ。鍵かけてお前入れないようにしとくからな」
鳥恵がそう言うとサイレンススズカは困ったように笑い、懐から鍵を取りだした。見慣れた鍵、つまりは鳥恵の部屋の鍵だ。
「なんでお前ら当然のようにうちの合鍵持ってんの?」
「もう、夫婦なんだから合鍵があるに決まってるじゃないですか」
「夫婦を自称する前にルールを守って?」
「もうっ、トレーナーさんったらさっきから意地悪ばかり言って。そんなに私を困らせたいんですか? あっ……それとも、私の身体に触れて興奮しちゃいましたか?」
「ビー玉乗せても転がらなさそうなフローリング機能美のくせに何言ってんの?」
「酷い!?」
やはりこのノリが重要だ。異様な雰囲気を纏っていたサイレンススズカが素に戻った。ほっと一息つき、コーヒーを口にしようとした所で中身が無いことを思い出した。
自身の胸部を触り落ち込んでいるサイレンススズカを退かして席を立つ。
「どこに行くんですか?」
「自販機。誰かさんがコーヒー飲みきっちまったから買いに行くんだよ」
「そうなんですか……行ってらっしゃい、あなた」
「なんで他人事みたいに言いながら奥さん面してんだコイツ」
ヒラヒラと手を振って鳥恵を見送るサイレンススズカに違和感を抱きながらミーティングルームを後にした。
「いつものなら俺が止めても着いて来るやつなのになあ。風邪でも引いたか?」
三女神の像広場にある噴水を見て気分を涼ませながら視界に見えた自販機に向かう。財布を取り出し小銭を投入口に入れていつも飲んでいる無糖コーヒーのボタンを押そうとしたところ、突然割り込まれ隣の微糖コーヒーを押された。
目を向ければそこにいるのは先程まで部室にいたはずのサイレンススズカ。鳥恵が固まっているのを他所に、購入したコーヒーを取り出して鳥恵に差し出す。
「たまには微糖はどうですか、トレーナーさん?」
「待ってなんでお前ここにいるの? 部室にいたよね?」
「私、異次元の逃亡者なので」
「パルキアかなんかなのかお前は」
色々なウマ娘を担当してきてやたらホラーな目に会ってきた鳥恵だったが、1番のホラーはサイレンススズカなのかもしれない。そう思った鳥恵だった。
映画ポケットモンスター!
ディアルガVS
サイレンススズカVS
だぁくらぁい……(ねっとり)