ぶっ飛んだヤンデレウマ娘たちが見たくて書き起こした物体 作:妖魔夜行@
ダイワスカーレットちゃんは!こんなことを!いいまry
「ねえトレーナー、アンタにとって1番ってアタシ? それともダイワスカーレット?」
「二択に見せかけてハイorYESしかないパターンの選択肢だ」
事務作業をしているとソファでだべっていたダイワスカーレットが唐突にそんなことを言い出した。
作業を止めて彼女の方を向けば見慣れた暗さ*1の瞳で鳥恵の目を射抜いていた。キラキラお目目はどこへ遊びに行ったのか、淀んだ真っ黒な瞳はまるで深淵だ。覗いていると自分までおかしくなってしまいそうなのでサッと目を逸らした。
「ねぇ何で逸らしたの。アタシの目を見なさいよ。ねぇ、見ろ」
「どうした急に」
「……アンタ、昨日の午前10時46分33秒に商店街でアタシ以外の女と一緒に並んで歩いていたわよね。どういうこと?」
「秒まで覚えてるのもやばいけど何よりやばいのは俺の行動が把握されてることなんだよな。なんで知ってんの?」
「アンタのスマホにGPS埋め込んでるからよ」
「めちゃくちゃ堂々と犯罪暴露するじゃん。一周まわって潔いいよもう」
ため息をついて背もたれに体を預けるとダイワスカーレットが覆いかぶさってきた。去年まで小学生だったとは思えないほど大きい胸が押し当てられるが、鳥恵は日常的に色仕掛けを受けているのでこの程度なら楽々耐えられる。
「重いな」
「アンタに対する想いよりは軽いわよ」
「重いなぁ」
「で、一緒にいたのは誰? 返答によってはアタシの服は真っ赤に染まるわ」
「レッドエースってそう言うことだったのか」
「いいから教えなさいよ、誰なの?」
「お袋」
「シンプルに怒りづらい人来たわね」
実家が近い鳥恵はその日、母親に頼まれて一緒に買い物をしていたのだ。ちなみに鳥恵が担当しているウマ娘は全員挨拶済みだ。みんな揃って外堀を埋めようとしてくるせいでご近所さんに鳥恵エナという男は嫁候補が片手じゃ足りない数いるという何とも不名誉な認識をされている。
「どうしたらアタシを1番にしてくれる? 24時間アンタに張り付いていれば1番になる?」
「狂気度的には1番だな」
「失礼ね、私は正気よ」
「成程。じゃあ病気だよ」
最近癖になりつつあるため息をつき、ダイワスカーレットの頭を撫でた。
ウマ娘達はことある事にスキンシップを求めてくる、ある日ウンザリした鳥恵が気まぐれに頭を撫でてみたところ彼女らの琴線に触れたらしい。その日から彼女たちは執拗に頭を撫でることを要求し始めた。
どれだけとち狂っていても頭を撫でれば落ち着くことが分かったので、鳥恵もこのような事態に陥った時は行動に移すようにしている。
「…………」
「どうしたダイワスカーレット」
「ちょっと黙って。今幸せで脳髄弾け飛びそうなの堪えてるんだから」
「俺の手ヤバすぎるだろ」
「あれ……? アンタ、指にタコ出来てるわよ。タイピングの力が強すぎるんじゃないの? そういえば昨日の22時14分12秒から23時54分06秒までの時間いつもよりキーボードを叩く音が大きかったし、絶対そうよ」
「なんで秒数までしっかり把握してんの?」
「盗聴器仕掛けてるんだから当たり前でしょ?」
「いや知らないから。常識みたいに言ってるけど非常識だからな」
今度の休み、自室の整理をすることに決めた鳥恵。この時はまだ自分の部屋から30個近くの盗聴器が発見されることは思ってもいなかった。これにはゴールドシップもドン引きしていた*2。
鳥恵が手を離すとダイワスカーレットは悲痛に顔を歪める。そして名残惜しそうに鳥恵の手を掴み、握りしめた。決して離さない、そういった意思がひっしりと伝わってくる。
「もっと撫でなさいよ」
「いやそろそろ仕事に戻らないと」
「仕事とアタシ、どっちが大事なの!?」
「倦怠期の夫婦かよ」
「あら、昼ドラみたいでいいじゃない」
「昼ドラにしてはドロドロしすぎだろ。いやドロドロしてるもんか昼ドラって」
会話をしながらもどうにか腕の拘束から抜け出そうとするが流石ウマ娘、ビクともしない。
「離してくれるか?」
「アタシと結婚してくれるならいいわよ」
「一生離してくれないじゃん」
「あっ! 別にアンタのことが好きだからって訳じゃないんだからね! ……どう? 今の少女漫画っぽくなかった?」
「ああそうだな、盗聴器仕掛けてなければ最高だったぞ。というか恋愛感情ないのに結婚申し込むとか1番怖いじゃねーか。少女っていうよりは狂女だろ」
「誰が狂ってるっていうのよ! ちょっと愛が行き過ぎてるだけじゃない!」
「それがちょっとのレベルなら俺はゾッとするぞ」
どうやら離してくれそうにないので諦めて脱力する。ふと鳥恵は思った、ここで撫でればいいのでは、と。
思い立ったが即実行、空いた片方の手でダイワスカーレットの頭を撫でてやれば彼女は気持ちよさそうに目を細め、同時に腕を掴んでいた力も緩まる。
こうして見ればただの可愛い女の子なのだが、鳥恵が絡むとどうにも暴走しがちになってしまう。単体ならまだ対処できるがこれが複数になってくると厳しい。
以前トウカイテイオーとメジロマックイーンに挟まれたことがあるのだが、その時は特に酷かった。あんなシチュエーションは二度とゴメンだと鳥恵が1人思考にふけっていると視線を感じた。ダイワスカーレットがジト目で鳥恵を睨んでいたのだ。
「今他のウマ娘のこと考えてたでしょ」
「なんで分かるんだよ」
「愛の力よ。それよりどうしてアタシがいるのに他の娘のことを考えるの? 浮気?」
「浮気相手どころか恋仲すらいないんだが」
「……? アタシがいるじゃない?」
「どうしてそんな純朴な顔ができるんだ。疑問に思いたいのはこっちの方なんだぞ」
キョトンとするダイワスカーレットに厳しい視線を送るが彼女は何処吹く風、どころか何故鳥恵が怒っているのか本気で分からないでいた。なんか既視感があるな、と鳥恵の頭にスペシャルウィークの姿が浮かぶとダイワスカーレットがぎぬろと睨んできた。
「スペ先輩のこと考えてたわね」
「もしかしておれの脳内って透けてたりする?」
「アタシへの愛情が透け透けね」
「大根の皮並に薄っぺらな愛情だな」
「大根みたいに真っ白で清い交際をしてるってことね!」
「俺の知ってる清い交際は好きな人の部屋に盗聴器なんか仕掛けないしストーカーもしない」
「愛ゆえの行動よ。だから無視しないでね」
「だとしたら横暴すぎるだろ。俺の意思を無視するな」
椅子に座っている鳥恵の膝にダイワスカーレットが腰を下ろした。対面座位、といった姿勢が近いだろうか。鳥恵の背中に手を回して抱きしめながらダイワスカーレットは妖しく笑った。
「2人きりだし、このままここでアタシたちの愛の結晶、作りましょっか。アタシの初めて……受け取ってくれるわよね」
「アグネスタキオンに頼んでまた幼児化させるぞ」
「ごめんなさい」
凄まじい速度で鳥恵の膝から離れた。何故ダイワスカーレットがこんなに恐れているのかと言うと、少し前にアグネスタキオンが作り出した薬を飲んで幼児化してしまう事件があった。それだけならまだ笑い話なのだが、保育園児程まで精神も肉体も退行した彼女は昼寝の最中にお漏らしをしてしまったのだ。
幸いその処理を鳥恵が手早く行ったことでお漏らし事件を知るのは鳥恵とアグネスタキオンだけなのだが、彼女の中ではあの事件はトラウマになっている。
身体が戻っても記憶は残っており、羞恥心で死にそうになったと後にダイワスカーレットは蚊の鳴くような声で話した。その顔はリンゴのように真っ赤だったと興味深そうに記録をとっていた。
ガクガクと体を震えさせるダイワスカーレット。色々と暴走しがちな彼女だが、他の担当ウマ娘に比べるとまだ大人しい方だ。どこぞの食いしん坊のように食費を圧迫するわけでもなければ、逃亡者のように印鑑を持ち逃げするわけでもなく、黒い刺客のように延々と追跡してくることもない。
そう思うとまだまだ可愛い方だな、と鳥恵はホッコリとした気持ちになった。その気持ちが大分麻痺していることを指摘する者はここにはいない。
「……飯でも食いに行くか。何食べたい?」
「え……怒ってないの?」
「元々怒ってねーよ。いやまあ盗聴器ストーカー云々の話は許してないけどな」
「……ありがと。お詫びにアタシがご飯作ってあげる! アンタの部屋に行きましょ! 確かお肉が残ってたはずだから……生姜焼きにしてあげる!」
「おかしいな。俺飯を食いに行こうって言ったはずなんだが。というかなんで俺の冷蔵庫の中身把握してんの?」
胸元から取り出した見覚えのある鍵を見せて、ダイワスカーレットは鳥恵の手を取った。
「さあ、行きましょっ!」
「お前らの中では俺の部屋の鍵を持つのが流行ってるのか」
諦め気味に呆れたため息をつき、渋々ダイワスカーレットの背中に着いて行った。
翌日、食料を大量に持ったウマ娘たちが手料理を振舞おうとしたのは蛇足だろう。
ダイワスカーレットが去年までランドセル背負ってたって思うと犯罪臭が凄い。