「さて…」
そう言うと、その男は着崩したスーツの胸ポケットからハンター語で「ハンター試験会場案内」と書いてある一枚の紙を取り出した。そこには試験会場が行われる大まかなエリアの情報と何かの時刻表のようなものが載っていた。
「…3時45分…ドーレ港行き…まぁ、恐らく、あの船で間違いないだろうな。」
男はこう呟くと港に泊っている巨大な船の方をチラリと見、紙を大事にそうに胸ポケットにしまい込んだ。
「ドーレ行き、一枚ね。」
船のチケット売り場で小太りの男に話かける。
「…あんたも空を見たら分かるだろう?酷い曇天だ。それに小雨だって降り始めてる。…本当に良いんだな…?」
「これくらい分かり易い方が逆に助かる。覚悟って意味では。」
「…あんた名前は…?」
「ウィルター。ウィルター=カルタシス」
「…そうか、頑張れよウィル。ほれ、25Jだ。」
「サンキュー」
ウィルはチケットを貰い受け、そのままの足で船に乗り込んだ。ゴツイ大男に案内された部屋に入った瞬間、殺意のこもったような視線が一斉にウィルの方を向く。
「…ちったぁ仲良くやろうぜ…ったっく…」
ボソッと呟き、ノソノソと空いているペースに体を寄せ、抱えていたカバンから一枚の写真を取り出した。そこにはウィルともう一人、ウィルの肩を抱いている大柄の男が写っていた。
「…ここまで来たんだ…お前の為になるかは知らねぇが…仇はきっちり取ってやるぜ…」
暫く写真を見つめた後、大事そうに写真をカバンに戻し、そのままタバコを取り出し、一本口に吸おうと咥えた瞬間、先程の殺意のこもった視線とはまた違う視線がウィルを貫いた。
「…ハイハイ…皆さん、見た目スゲーアレなのに、こうゆうのは気にしてんのね…」
頭を掻き、苦笑いしながらタバコを箱に戻す。すると、隣で座っていた男が急にウィルに話掛けてきた。
「お前さっき、仇って言ったか。」
「あぁ、だから?」
ウィルがそっけなく返す。
「そうなれば懸賞金ハンターってところか。まぁ、お前みたいなのは受かんなさそうだがな。アーハッハッハッハッハ。」
「あっそ。ほっとけ」
「良いか、ハンター試験ってのは毎年何万人も受けてんだぜ。しかも合格率は0.1パーセント未満!合格者もいない年なんてザラだそうだ。なんというか、お前にはそれに受かるような覇気ってもんが感じられねぇんだよなぁ。」
死んだ魚のような目をして天井を見つめながら男の戯言を聞き流していると、扉が勢い良く開き案内人の大男が「出航だ!」と部屋全体に響き渡る声で言い放った。