海藤兄妹のボーダー活動報告 作:フード男
界境防衛機関「ボーダー」
異世界からの侵略者『近界民(ネイバー)』に対抗する為に結成された組織。
後に「第一次近界民侵攻」と呼ばれる三年半前の戦いを切り抜けたボーダーは、その戦いを機に本格的に公に出て活動を開始した。
ネイバーの持つ未知の技術である「トリガー」を独自に研究し多数のトリガー使いを育成、現在は五百人以上の戦闘員を擁する。
そんな組織のラウンジにて、三雲は訓練終わりに休憩を取っていた。彼の机を挟んだ向かい側には、黒い正隊員の服を着た右目の眼帯が印象的な男。
「修お前、本当に近接センスねぇなぁ……今からでも銃手か射手にでもチェンジ……いや、トリオン量的に無理だな、無理無理」
「やっぱり、トリオンが無いと銃手や射手は難しいですかね……」
「というより、攻撃手にゃならなくても良いが最低限攻撃手用のトリガー1個使えねぇと、お前の場合威力不足だ。モールモッドとかは、お前のトリオンだと遠距離からじゃ倒せん」
ランク戦行くなら尚更な、そう一言付け足したこの男は三雲の同級生の兄であり、現在は三雲の師匠をしている。
「ま、地道にやっていこうや。急ぎってわけじゃねぇんだしな」
名は
元
◆
三雲修と海藤衛侍の初遭遇は、かれこれ三年と数か月ほど前に遡る。
当時はまだ第一次近界民侵攻の傷痕が各地に残っており、ボーダーもまだ今ほどの規模では無かった。
三雲自身は家が隣町との境目にあり被害も無かったが、中には友人やその家族が怪我をしたり、死んだ者も何人かいた。
海藤
家は全壊し、両親は避難中にネイバーの無慈悲な砲撃で死亡。
長女の海藤
一週間経ち生存は絶望的、そう言われた中紬と唯は必死に探し回った。
当時まだ紬と交流の無かった三雲にも写真片手に聞き込みをしに来ていたが、何日も寝ていないのか酷い隈が目にあった事が印象的だった。
その写真の人物を、三雲が見つけたのは偶然だった。
話を聞き居ても経っても居られなくなった当時小学生の三雲少年は、どういう思考をしたのか近所の幽霊が出る事で有名な裏山に探しに行った。
近所の悪ガキが作ったまま放置された廃材で出来た秘密基地を横切り、そのほとんどが杉で出来た人口林を突っ切り、修は探し回った。
夕暮れ時の山頂(と言っても余り高くはない)、もう今日は辞めておこうかと三雲が考え始めた時……前の茂みがガサリと音をたてる
もしかしたら、そう思い茂みの中を確認すると、其処には右目が潰れ左腕が肩から千切れた男が一人。
写真で見た顔そっくりだった。
◆
そんなわけで、衛侍を助けた三雲はその後も海藤一家と交流を続け今に至る。
正直今思うと何故あんな場所に居たのかだとか、一週間どうしてただとか、あの怪我は何故できただとかツッコミどころは色々あるが、それを聞くつもりは無い。
本人もいう気は無さそうだし、三雲自身もあまり興味は無かった。
大事なのは、今彼が生きて彼女たちと再会できたという結果だ。そんな事を三雲が衛侍に言いい「その年でそれ言えるって……いや、すげぇなうん」と微妙な顔をしながら返されたのは事件の一週間後の話だ。
「でだ、ボーダーに入って一か月になるわけだが……どうだ?」
若干ニヤニヤしながら衛侍は三雲に問う。
「どうだ、というのは?」
「いや、俺と紬と唯以外のボーダーの知り合いは出来たかと」
「……実は、まだ一人も。何だか他のC級の人達がみんな僕の事避けてるみたいで」
三雲が少し下を向きがらそう返すと、衛侍はアチャーと頭を抱えるようなアクションを取る。
「あーすまん、それ俺のせいかも」
「っえ?」
手に持った缶コーヒー(練乳入り)を飲みながら、英二はばつの悪そうに続ける。
「ほら、C級の内から正隊員の師匠が居る奴って少ねぇし。大抵そういう奴は直ぐ上行くし、他の普通のC級からすると声かけ辛いんだと思う。知らんけど」
「なるほど……まあ、僕学校の友人関係で割と間に合ってますし、大丈夫です」
「いやいや、そういう訳にはいかんでしょ。俺お前の親御さんからボーダー内での色々任されちゃってるわけで」
そう、三雲がボーダーに入るにあたり衛侍は、三雲の母への説得材料として自身がボーダー内で三雲の面倒を見ると約束しているのである。
ボーダーという組織は出来てから三年半の月日で一定の信頼は獲得していた……が、何処まで行っても本質は防衛組織。トリガーを使うために必要な体の器官である「トリオン器官」が若いうちに使わないと衰え少なくなるという関係で、戦闘員の募集は子供に限定されているが、殆どの場合子供が入る事を希望しても親が止める。まあボーダーはトリガーを含めたトリオンに関する知識を隠匿しておりC級にすらほぼ教えてないので、親からしてみたら事情を話さず子供だけ前線に出している秘密主義組織である。 親が入れたくないと考えるのが普通……というか寧ろ入れた親は良く認めたなとかそういうレベルだ。
当然、三雲の母攻略戦も難航した。何日も根気強く頼み込んだが三雲母は駄目の一点張り。
そこで現れたのが、妹二人を食わせるために初期の頃から戦闘員として戦っていた海藤 衛侍だ。最終的に妹二人も戦闘員としてボーダーで働いており顔もボーダー内ではトップクラスに広い衛侍が、三雲母にボーダーは秘密主義だが隊員は大事にするところだしそうじゃなきゃウチの奴らも入れて無いと説得。その結果、衛侍が三雲の面倒を見るという条件の下許可が下りたのである。
「俺が四六時中付きっ切りで入れたらそれが一番だが、そういう訳にもいかん。そういう時頼れる先はあった方が良いだろう」
「……確かに、ずっとお世話になりっぱなしも申し訳ないですしね」
「いや、そこは気にせんで良いというか寧ろ幾らでもなんだが……まあ、お前は気にするタイプか」
そう言うと、衛侍はスマホを取り出し操作を始めた。
「それじゃあ今から俺のダチ呼ぶか。訓練生のは居ねぇからB級かA級だけど良いよな?」
「どういう名目で呼ぶんですか?」
「骨のある新人が居るからボコボコに鍛えてやれって」
「先輩!?」
三雲はこの先輩ならやりかねないと思い止めようとするが、衛侍はケラケラとその反応を見て笑う。
「嘘だよ嘘。普通に昔世話になった奴紹介するってだけだよ」
「それもそれで少し気恥ずかしいのですが」
「事実だろ事実。命の恩人なんだし……お、4人ほど来そうだ」
「どんな人なんですか?」
「ブラコンイケメンと眠そうなキノコとダブルスナイプと最凶の美術センスを持つ美女」
「はい?」
「因みに嵐山隊のフルメンツって意味な」
「嵐山って、最近テレビに出てた?」
「そーそー、広報部隊のな」
嵐山隊とは、ボーダーの部隊の一つで現在はB級の部隊だ。ボーダーの広報部隊として内外問わず有名な部隊である。
「……顔、広いんですね」
「いや、俺元A級隊長だぞ?そりゃそれなりにダチは多くねぇと隊長なんてやってられねぇよ」
「なるほど」
なお、嵐山隊の面々との初遭遇は普通に談笑して終わった。
取り留めも無く終わる。
なお、オッサムが原作より早くボーダーに入っているのは私がやりたい展開の為なので、特に伏線とか無くオッサムは原作通り千佳ちゃんの為に元気にペンチしています。