全力絶唱シンフォギア-キキカイカイッ!唄と機械がダイ合体ッ!-   作:メンツコアラ

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前回のシンフォギアはッ!

謎の力に目覚めた響と歌いながら戦う風鳴翼。
闘いを終えた介人たちが連れてこられたのはリディアン音楽院?
その地下にあったものとはッ!?


第7カイッ! カモンオーライ 二課に御用カイッ!

「ようこそッ! 人類守護の砦、特異災害対策機動部二課へッ!」

 

『──……え?』

 

 両手を広げ、歓迎の言葉を述べる漢。その後ろに立つ大人達からはパチパチと拍手が送られ、クラッカーの僅かな火薬の匂いが介人達の鼻を突く。まさか、このような歓迎を受けるとは思ってなかった響やジュラン、ガオーンは困惑するしか無かったが、介人だけは違った。

 

「弦十郎おじさんッ!?」

 

「久しぶりだな、介人くん。元気そうで何よりだよ」

 

「おじさんこそ。でも、職場ってリディアンだったっけ? 他の場所だったような…?」

 

「移転したんだ。ちょっと訳があってね」

 

 困惑する響達を他所に、漢『風鳴 弦十郎』と気軽に…それこそ、数ヶ月前の翼との時のように会話する介人。そんな彼に一人の女性が抱き付いてきた。

 

「久しぶりね、介人くん♪ 随分といい男になったじゃない」

 

「了子おば「ん?」…じゃなくて、了子さんも久しぶりッ!」

 

「あらぁ? 昔みたいに『了子お姉さん』でいいのよ?」

 

(((いや。その歳でお姉さんはキツいだろ)))

 

「○○くん。■■■くん。✕✕ちゃん。何か言った?」

 

『いいえ。何もございません』

 

「なあ、介人。そろそろ説明してくんね? この人ら誰だよ?」

 

「弦十郎さんと了子さん。俺の父ちゃんと母ちゃんの仕事仲間なんだ」

 

「てことは、ここに介人の御両親がいるのッ!? 今まで会ったこと無いけど、もしかして住み込みで働いているのかなッ!?」

 

『──ッ!』

 

 ガオーンの何気ない質問。だが、その言葉に介人達の表情が強張った。

 

「なんつう質問してんだよッ! 介人の御両親は今行方不明なんだぞッ!」

 

「ええッ!? ゴメン、介人ッ! そうとは知らなくて──」

 

「大丈夫。気にしてないよ」

 

 そうは言うが、介人の表情は先程と比べると少し暗い。あわあわと慌てるガオーンだったが、パンッと渇いた音が響き、重苦しい空気が一変する。

 

「はいはい。暗い話は、今は無し。それよりも重要な話があるんだから」

 

「重要な話、ですか?」

 

「そうよ。だけど、その前に──」

 

 未だに手錠を付けられた響に近寄った了子は彼女の細い腰に手を回し、そっと抱き寄せる。

 

「──取り敢えず、服を脱いで貰いましょうか♪」

 

「だから、なんでぇッ!!?」

 

 

 

 

●●●●●●●●●

 

 

 

 

 草木も眠り、町から明かりが少しずつ消えていく深夜12時。リディアンの僚では未だに帰ってこない幼馴染みを待つ未来の姿があった。

 

「響、遅いな…(介人やジュランさんも帰っていないみたいだし…何かあったのかな……?)」

 

 未来の脳裏に最悪の可能性が横切る。

 …が、幸いにもそれは杞憂に終わった。

 

「た、ただいま~……」

 

「響ッ!? 今まで何処に行ってたのッ! 心配したんだよッ!?」

 

「ご、ごめん……」

 

「…何か、あったの?」

 

「……今はまだ言えない」

 

「…まだって事は、いつかは話してくれるんでしょ? なら、それまで待ってる」

 

「ごめん……でも、ありがとう。心配、してくれ、て……zzzz

 

「響? ……もう」

 

 気持ち良さそうに寝息を立てる響に呆れを覚えるが、同時にその寝顔に安心感を覚える未来であった。

 

 

 

 

●●●●●●●●●

 

 

 

 

 翌日の夕方。とあるビルの屋上でイジルデと一体のクダックがいた。

 

「ジオラマトジルギア、セット」

 

「グ、ダ、ダガガガガガッ!?」

 

 イジルデの持つ怪しげな黒いギアを埋め込まれたクダックが痙攣しながらも、その姿を大きく変貌させ、右腕がデザインナイフ、左腕はア○ンア○ファを思わせるデザインの武器腕となり、頭部はジオラマのようなデザインの四角い形へ。背中には木箱

 

「我輩、クダック改め『ジオラマワルド』ッ! ジオラマトピアの力が満ち満ちてくるジオラマッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 一方、その頃。

 昨日の疲れを少し感じながらも学園生活を送った響は、放課後に翼に連行され、地下の二課本部へと訪れていた。案内された一室には弦十郎、了子、奏と数名の職員。更に先客として、ジュランとガオーン。そして、セッちゃんの姿があった。

 

「ジュランさんッ!? ガオーンさんにセッちゃんまでッ!? なんでここにッ!?」

 

「昨日の事でちょっとな。あと、オレたちの力について聴かれてた」

 

「オイラが居るのは、現状で詳しく説明できるのがオイラしか居ないからチュン」

 

「そうなんだ……」

 

「響くん。君は彼らの事を知ってたんだな」

 

「はい。あの、わたし以外にもその事を知ってる子がいて、名前は未来って言うんですけど……」

 

「皆まで言わなくて良い。全て、セッちゃんくんから聞いている。小日向 未来くんは我々の協力者として迎え入れよう。無論、何かあった際は全力を持って保護するとも」

 

「大切な親友に隠し事をし続けるのは辛いでしょう? 今回だけの特例だからね♪」

 

「あ、ありがとうございますッ!」

 

「良かったね、響ッ!」

 

「うんッ!」

 

「……さて。こちらもそろそろ、君たちが聞きたいであろう質問に答えていこう」

 

「あ、そうでしたッ! 教えてくださいッ! あの力は一体何なんですかッ!?」

 

 響の言葉を受け、弦十郎が壁際に並んで立つ翼と奏に目配せをし、その意味を理解した二人は首から下げていたペンダントを見せる。

 二つとも、細長く赤い宝石のようなペンダント。違いを挙げるとするなら、奏の持つ物は翼の物と比べて色褪せており、輝きも鈍く感じた。

 

「翼の持つ第一号聖遺物『天ノ羽々斬(アメノハバキリ)』。そして、奏の持つ第三号聖遺物『ガングニール』だ」

 

 そこから弦十郎と了子による聖遺物並びに、歌によって聖遺物の力を増幅し、戦う力『FG式回天特機装束 シンフォギア』の解説を受けるのだった。

 

「──と言うわけだ。理解してくれたかな?」

 

「シンフォギアとか言うのは分かった。けど、響があの時に使った力がそれだって言うが……そんなの持ってんのか?」

 

「持っていた…と言うよりも『埋め込まれていた』と言った方が正しいわね」

 

 了子が部屋に取り付けられたスクリーンを操作し、先日の検査で取ったレントゲンを写して見せた。

 そこには胸の中央に骨でも臓器でもない破片らしき影があった。

 

「これって、二年前のッ!」

 

「二年前?」

 

「はいッ! 翼さんと奏さんの…ツヴァイウィングのライブの時に出来た傷で、お医者さんからも摘出出来ないって言われてて」

 

「ちょっと待ってくれッ! 二年前のライブって……お前、あの時のッ!」

 

「はいッ! あの時の奏さんの言葉があったから…わたし、こうやって生きていますッ!」

 

「~~~ッ! 聞いたかよ、翼ッ! あの時の子だってよッ!」

 

「……ええ。そうね」

 

 余程嬉しかったのか、隣にいる翼の肩を叩きながら顔を抑える奏。周りの者達もそんな彼女の様子に苦笑している。しかし、ジュランとガオーンは話に着いていけずにいた。

 

「あ~…あんまり着いてけ無いんだが、どゆこと?」

 

「……二年前。翼たち、ツヴァイウィングのライブの最中、会場にノイズの大群が現れた。二人が何とか迎撃しようと奮闘するが、奏は時限式…つまり、薬物によって無理矢理適合率を挙げているため、時間的リミットがあり、結果、一命は取り留めたもののシンフォギアを起動することが出来ずにいる。その時、彼女のシンフォギア…ガングニールの破片が逃げ遅れた一人の少女に突き刺さった」

 

「それが響って事か……」

 

「話を戻そう。現在、ノイズに対抗出来るのはシンフォギアを纏うことの出来る翼と響くん。そして、介人くんたちゼンカイジャーの極一部だけ。

 日本政府特異災害対策機動部二課として、改めて協力を要請したい」

 

「そんなの、答えはもう決まってる」

 

「可愛い人間ちゃんたちを守るためだもんッ! 喜んで協力するよッ! 介人もきっと、二つ返事でオーケーするよッ!」

 

「……響くんはどうする?」

 

「…わたしの力で、誰かを救うことが出来るんですよね? なら、やりますッ! 全力全開でッ!」

 

「ありがとうッ! そうと決まれば、早速手続きを──」

 

 その時だった。

 突如、二課本部にけたたましいサイレンが鳴り響き始める。

 あまりの突然さに理解が追い付かず、困惑する者もいれば、身構える者もいる。そんな中で、弦十郎の携帯端末に通信が入った。

 

「どうしたッ!? ……なにッ!? 町が消えた、だとぉッ!?」

 

『──ッ!?』

 

 

 

●●●●●●●●●

 

 

 

 

 

 夕暮れに染まり、あるものは家族の待つ家へ。あるものは同僚と酒場へ。各々が思い思いの場所へ向かう時間帯だが、街は悲鳴と恐怖に包まれていた。

 すべての元凶…ジオラマワルドはビルの屋上にいた。

 

「フフフ…逃げても無駄だと言うのに」

 

 ジオラマワルドは何処に持っていたのか、赤いセロハンのような物を取り出すと、それを街に向かって投げる。するとセロハンはみるみる大きくなり、街の一角を包み込む。すると一瞬にしてその一角が更地となり、替わりにジオラマワルドの背負う木箱の一段の中に包み込まれた街の一角のジオラマが…否。ジオラマサイズまで縮小された街の一角が納められた。

 

「我輩の作品がまた増えた。この調子でどんどん作るぞぉ──……ん? なんだ? 歌、か?」

 

 更にセロハンを投げようとしたジオラマワルドだが、ふと聞こえてきた風を切る音。そして、鋭い刀を思わせる唄に手を止める。音の発生源と思われる上へ視線を向けてみれば、一機の大型ヘリが飛んでおり、そこから飛び降りる一人の戦姫の姿があった。

 

「──御免ッ!」

 

「のうぁッ!?」

 

 飛び降りた戦姫…シンフォギア『天ノ羽々斬』を纏った翼が振るう刀型のアームドギアを間一髪で避けるジオラマワルド。もちろん、木箱もしっかり守っている。

 

「急に斬りかかるとは…その姿、報告にあった唄いながら戦う女だな?」

 

「俺たちもッ!」「いるよッ!」

 

「ま、待って──てうわわわわッ!?」

 

 翼に続いてヘリから飛び降りるジュランとガオーン。シンフォギア『ガングニール』を纏った響も続くが、高所から飛び降りるという未知の体験にへっぴり腰となってしまい、『飛び降りる』と言うよりも『ダイブする』と言った方が正しくなってしまった。だが、そのまま屋上にキスすることは無く、ジュランが見事にキャッチして見せた。

 

「あ、ありがとうございます」

 

「気にすんな。初めての戦闘なんだから仕方ねえって。それよりも…テメェッ! トジテンドかッ!? ふざけた頭しやがってッ!」

 

「あれって、ジオラマっぽいよね? イジルデの奴、また変な改造兵を造り出したのかな?」

 

「変なとは失礼なッ! 我輩の名はジオラマワルドッ! トジルギアに籠められし、ジオラマトピアの力によって強化された兵士であるッ!」

 

「街が消えたのもテメェが原因だなッ! 何が目的だッ!」

 

「簡単な事だ。この世界の人工物や生物をジオラマサイズまで縮小し、後に出来た更地は我らトジテンド王朝の新たな領土とするのだッ!」

 

「そ、そんな…なんで、そんな酷いことを…ッ」

 

「酷い? そこの小娘。勘違いしているようだが、我らトジテンドは元々侵略するためにこの世界にやってきたのだ。酷いも良いもな「お喋りはソコまでよ」って、危なッ!?」

 

「貴方が大切に抱えている木箱。その中に消えた街があるのは分かったわ。早く寄越しなさい」

 

「翼さん、いきなり攻撃は「府抜けた事を言わないで」で、でも……」

 

「ここは戦場よ。そんな甘い考えは捨てなさい」

 

 ジオラマワルドに剣先を向けたまま、翼は響に冷たく言い放つ。

 流石に言い過ぎだと思ったジュランとガオーンだったが、翼の言ってることも分からなくは無いため、言い返すなんて事は出来ない。

 

 一歩でも動いたら斬る。そんな気迫を漂わせる翼だったが、ジオラマワルドを護るように突然の横槍が入る。

 

「はあ──ッ!」

 

「──ッ!?」

 

「クダイターッ!? いつの間にッ!?」

 

「それだけじゃないみたいッ!」

 

『クダッ! クダッ!』

 

「あれって、クダックッ!?」

 

「お、お前たちはッ!?」

 

「イジルデ様からの命令だッ! 貴様は己の任務を果たせッ!」

 

「畏まりました。ここは任せましたよッ!」

 

「待t「行かすかッ!」くッ……」

 

 そう言って、颯爽と逃げていくジオラマワルド。翼が追いかけようとするが、クダイターが行く手を阻む。

 ジュラン、ガオーンも同様。襲いかかるクダックの群れに対処で忙しい。

 響はその性格故か、戦わなきゃいけないと分かっていながらも襲ってくるクダックと対話しようとしてしまう。だが、クダックたちに…正確にはトジテンドの兵士相手には無駄な行為。結局、まともに戦うことなど出来る筈もなく、ジュランとガオーンに護られる羽目になった。

 

「ご、ごめんなさいッ!」

 

「気にすんなッ!」

 

「本格的な戦いは初めてなんだしねッ! 響は下がっててッ!」

 

「は、はい……」

 

「てか、介人はどうしたッ!? 異変の事は聞いてる筈だろッ!?」

 

『た、大変チュンッ! 介人が消えちゃったチュンッ!!』

 

「なんだってッ!?」

 

 

 

 

●●●●●●●●●

 

 

 

 

 放課後を迎え、リディアンへ向かっていた介人。その道中、偶然にも未来と出会い、先日のノイズ騒動について聞かれた。秘密厳守と言われていたが、介人にとって未来は幼馴染みであり、ゼンカイジャーの仲間である。だから、話しても問題はないよね?、という軽い認識で説明するのだった。

 

「──で、今からリディアンでその説明を受けに行くってこと」

 

「…そっか。昨日、響がまだ話せないって言ってたの、この事なんだ」

 

「…なんか、怒ってる?」

 

「怒ってます。訳があったとしても、心配くらいはさせてよね」

 

「昨日、ヤッちゃんにも言われた」

 

 タハハ…と後頭部を掻く介人とそんな彼の態度に苦笑を浮かべる未来。

 街はいつも通りの平和な空気に包まれていた。

 

 ……筈だった。

 

「それで……ん?」

 

「あれ、なに?」

 

 唐突に街を包む大きな影。見上げてみれば、赤い膜のようなものが街の上空を覆っていた。

 介人と未来を含め、赤い膜の範囲内にいた人々はその奇妙な光景に足を止める。そんな中、突如として膜が発光し、見上げていた人々の視界を一瞬だけ塗りつぶした…かと思えば、視界が戻った時には、天上の膜は綺麗さっぱり消えていた。

 

「なんだったんだろう?」

 

「さあ?」

 

 辺りを見渡しても特に変わった様子はない。

 あれは何だったのか、と疑問符を浮かべながらも町の人々は動き出す。

 ──気のせいだったのかな?

 そんな考えが介人の頭を横切るが、異変は既に起こっていた。

 それに気づいたのは十数分後。リディアンに向かっていた介人たちは道路の真ん中で大破している数台の車を見つけた。

 大丈夫ですかッ!?、と声を掛けながら駆け寄る二人。幸いにも運転手や同乗者の人々には大きな怪我は無かったが、大破した車の様子に疑問を抱く介人。

 車は衝突で大破している。それが玉突き状に起こっている。この言葉だけなら、違法駐車と前方不注意が原因と考えるだろう。しかし、一番前の車は他の車と同様に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「これって……」

 

 介人は戦闘車両の向こう側。車両や歩行者の姿が見えない方向へ手を伸ばしてみると壁らしきものに触れた。

 

 ()()()()()()()()()()

 

「なにこれ? 壁?」

 

 よくよく見れば、向こう側の景色と思っていたのは精巧な写真だった。

 ふと耳をすませば、近くから悲鳴と何かが衝突する音。恐らく、似たような事が他の場所でも起こっているのだろう。

 

「介人、何が起こってるのッ?!」

 

「俺も分かんないッ! ……そうだッ! セッちゃんに電話ッ!」

 

『……介人? 介人チュンッ?! 何してるチュンッ!?』

 

「リディアンに行く途中。なんか、町が変な事になってて」

 

『こっちも大変チュンッ! 町がどんどんトジテンドに消されて行ってるチュンッ!』

 

「町がッ!? 場所はッ!?」

 

『場所は○○町○○区の✕✕通りチュンッ! あとは「ちょっと待ってッ!?」どうしたチュン?』

 

「✕✕通りって…俺、今そこに居るんだけど」

 

『え゛え゛え゛ッ!?』

 

 

 

 場所は変わり、ビルの屋上。

 クダックを一掃したジュランたちは、介人の現状から消えた町が別の場所に隔離されているという結論に辿り着いた。

 

「でだ。問題は何処に行ったかだ」

 

『それについては目星がついている。了子くん』

 

『監視カメラの映像にバッチリ写ってたわよ。多分、ジオラマワルドの背負っている木箱がそうね』

 

「ジオラマワルドの現在地は?」

 

『今、緒川くんたちが全力で捜索中よ』

 

「よし。俺たちも二手に別れて「結構よ」」

 

「私は一人で探すわ」

 

 そう言った翼は一人、ジュランたちを避けるように離れていった。

 

(翼さん……)

 

「仕方ねぇ。俺たちも各々別れて探すか。ガオーンはあっちを頼む」

 

「わかった」

 

「響は向こうを…て、大丈夫か?」

 

「は、はい。早く介人を助けなくちゃ。わたし、行ってきます」

 

「あ、おいッ! ……大丈夫には見えねぇよな」

 

 

 

 

 一方、介人と未来は捕らわれた町の上空を飛んでいた。

 

「だ、大丈夫だよね?」

 

「大丈夫だって。スーパー戦隊の力はスゴいんだから」

 

(介人の運転が心配なんだけどなぁ)

 

 そんな思いを口にしないよう未来は介人が使った『魔法戦隊マジレンジャー』のギア『マジレンジャーギア』で呼び出した魔法のホウキ『スカイホーキー』から落ちぬ事だけを考えた。

 二人を乗せたスカイホーキーはどんどん上昇していくが、雲に届くことは無かった。

 

「やっぱり空にも限界がある」

 

「何とかなりそう?」

 

「触った感じ、フィニッシュバスターでなら穴を開けられそうだけど、木箱ってことは捕まった町は重なってるかも知れない。もし、誰かに当たったら……」

 

「う~ん……テレビみたいに皆に伝える方法があれば……」

 

「……未来、今なんて言った?」

 

「え? テレビみたいに皆に伝える方法があればなって」

 

「それだッ!」

 

 

 

 

●●●●●●●●●

 

 

 

 

 クダイターの手助けにより翼たちから逃げおおせたジオラマワルド。その後、いくつかの町をジオラマ化したジオラマワルドは進捗報告のために人気の無い道路へ向かう。辿り着いた場所にはイジルデの姿があった。

 

「ジオラマワルド、調子はどうだ?」

 

「はッ! 日が昇るまでにはここら一帯を更地に出来るかと。そうすれば、明日にはトジテンドの領地として活用できるジオラマ」

 

「見事な手際だ。所で、その語尾はなんだ?」

 

「我輩、ジオラマワルドに成り立てジオラマ。なので、自分がジオラマワルドだと忘れないようにしているジオラマ」

 

「いい心掛けだな。では、この調子で計画を進めてくれ」

 

「かしこまりジオラマ」

 

 お辞儀をするジオラマワルド。そんな彼の態度や働きぶりに上機嫌になりながらトジテンドパレスへ帰ろうとするイジルデ。だが、突如聞こえてきた爆音と背後からの光に足を止める。

 

「な、なんだ──て、はあッ?!」

 

「何の音ジオラマッ!? 後ろで何が起こっているジオラマッ!?」

 

「じ、ジオラマワルドッ! 木箱ッ! 木箱ッ!」

 

「木箱? 木箱で何が起こってるジオラマッ!?」

 

 状況を把握できていないジオラマワルド。一方のイジルデの視界にはジオラマワルドの木箱の天井を突き破って、白い高出力のビームが天に向かって放たれている光景が写っていた。

 

「一体何が起こってるのだッ!?」

 

 

 

 事は十数分前。ジオラマワルドの木箱に捕らわれていた町全てのテレビや携帯にライブ配信が届いていた。

 

『皆、こんにっちわーッ! ゼンカイジャーでーすッ!』

 

 最近話題のゼンカイジャーの突然のライブに町の人々は驚いているが、事の本人はどうやって配信しているのか。

 まず、介人は木箱の外から電波が届いていることから別の段にも電波が届くのではと考える。なら、通信で捕らわれている町の人々に壁際に寄って欲しいと伝え、頃合いを見計らって天井を撃ち抜く作戦を思い付いた。

 ここで問題になるのが通信方法。町中の人々に一度に伝えることなど、普通なら不可能である。だが、幸いにも介人は普通ではない。

 介人は変身してゼンカイザーに。その後、未来にはカメラマンとなって貰い、携帯で撮影。ゼンカイザーはバックルから21の数字が刻まれたギア…『電磁戦隊メガレンジャー』の能力を秘めた『メガレンジャーギア』で携帯をハッキングし、そこから全ての通信機、テレビやモニター等に自分の姿を写し、皆に呼び掛けた。

 

『皆を救うためにも皆の協力が必要なんだッ! 俺に皆の力を貸してくれッ!』

 

 後の流れは予想がついただろう。ゼンカイザーの呼び掛けに皆は壁際へと移動し、ジオラマの中心へ移動したゼンカイザーは必殺技を天井に向かって放った。

 

 

 見事に天井を破り、暗くなり始めていた空に輝く光は明確な目印となった。

 偶然にもその近くには響がおり、ジオラマワルドの元へ一番に到着することが出来た。

 

「見つけた…ッ!」

 

「ややッ!? 貴様はさっきのッ!」

 

「ちッ! 邪魔が入ったかッ!」

 

 身構えるジオラマワルド。だが、響は戦おうとはせず、何故にこんな事をするのかと対話しようとした。

 

「何か理由があるなら教えてくださいッ! こんな事をしなくてもいい方法が──」

 

「貴様、何をバカな事を言っている?」

 

「──……え?」

 

「理由なぞ、特に無い。強いて言うなら侵略の為だ」

 

「だ、だから、何で侵略なんか…そこに住んでいる人たちだ「どうでもいい」─ッ?!」

 

「何故、自分達よりも下等な存在なぞ気にしなくてはならない。貴様らはただ我らに従い、淘汰されれば良いのだ」

 

「そん、な──」

 

 響は知らなかった……いや。知っていたが忘れていたのだ。この世には()()()()()()があることを。

 

「話はそれだけか? では、ここで失礼しよう。ジオラマワルド、行くぞ」

 

「ま、待って──」

 

 立ち去ろうとするイジルデたち。響は咄嗟に手を伸ばすが、足は動かずにいる。

 そのまま、彼女の視界から消えていくジオラマワルドたち……かと思いきや、突如として降ってきた無数の刃に彼らの足が止まる。

 

「なんだ、いったいッ!?」

 

 刃の発射地点。そこには青き刃が一振…即ち、アームドギアを構えた翼が行く手を阻むべく立っていた。

 

「もう逃がさない。ここで斬る」

 

「生意気な小娘めッ……ジオラマワルドッ!」

 

「かしこまりジオラマッ!」

 

 

~BGM【絶刀・アメノハバキリ】~

 

「接着マグナムッ!」

 

 ジオラマワルドが粘着性のある液状の銃弾を放つ。一つでも当たれば、それは重石となり、動きに大きな制限が掛かるだろう。しかし、翼はそれを恐れること無く、華麗なステップと身のこなしで躱し、ジオラマワルドへ刀を振るう。

 

「なんのこれしきッ!」

 

 ジオラマワルドも負けじと応戦するが、刃のリーチや剣の腕前は翼が上。簡単に刃を弾かれ、がら空きになった胴に翼の蹴りが入る。

 

「な、ならば、これはどうだッ! ジオラマデコイッ!」

 

 頭部のジオラマから飛び出してきたのはジオラマワルドそっくりの偽物が四人。翼を囲むように出現する。性能的な面ではジオラマワルド本人よりも劣るが、それでも数が数。ジオラマワルドが優勢になるか、と思いきや。

 

「…笑止」

 

 翼は振るわれる刃を掻い潜り、シンフォギアによって強化された脚力で自身の倍以上の高さまで跳ね上がる。

 空中で身を翻す彼女の姿は例えるなら空を斬る刀。その美しさに思わず見とれてしまうジオラマワルドだったが、動きを止めたせいで翼の狙いが確かなものとなった。

 

 ── 千ノ落涙 ──

 

『ギャアアアッ!?』

 

「デ、デコイたちッ!?」

 

 頭上から降り注ぐ無数の刃は大地へ降る雫のごとし。ジオラマワルドは何とかダメージだけに押さえることが出来たが、耐久性の低いデコイたちは簡単に消滅してしまう。

 

「強すぎるッ…! ここは一時退却を──て、あれッ!?」

 

「何をしている、ジオラマワルドッ!」

 

「う、動けないジオラマッ!」

 

 そう言うジオラマワルドの足元……正確には、電灯の灯りで出来た影に先程の刃が突き刺さっていた。

 『影縫い』。翼が緒川から教えられた忍術。

 動きを止めたジオラマワルドに対し、翼はアームドギアを大剣へ変形させる。

 

「ま、待てッ! 我輩には消した町があるッ! それがどうなっても良いのかッ──て、あれ? 木箱がないジオラマッ!?」

 

「何をやってるッ! 先の攻撃で留め具が外れたのに気づいてないのかッ!?」

 

「しまったッ!?」

 

 気付いた時には既に遅し。木箱は落ちた拍子で少し離れた場所に転がっている。故にジオラマワルドが爆発しても少し表面が焼ける程度で済むだろう。

 翼は大検を振るい、その軌跡が形となり、ジオラマワルドに放たれた。

 

 ── 蒼ノ一閃 ──

 

「お、おのぉれぇぇぇぇッ!!!?」

 

 翼の放った斬撃によって両断されたジオラマワルドは断末魔を残して爆発四散。最後には僅かなスパークを放つジオラマトジルギアのみが残され、木箱はジオラマワルドの消滅と共に消え去り、中に閉じ込められていた町は無事に解放され、彼方此方から人々の歓声が聞こえてきた。

 

 

 

「す、すごい……」

 

 ゼンカイジャーの戦い方とも違う、例えるなら研ぎ澄まされた刃のような翼の闘いに見ることしか出来なかった響。そんな中、ジュランとガオーンが遅れてやってきた。

 

「わりぃッ! 遅れた…って、もう終わった感じね」

 

「響、大丈夫?」

 

「う、うん。わたしは大丈夫……」

 

 そう言うが、この闘いで見せられたあまりの差に響は途方に暮れていた。

 

 

 しかし、闘いはまだ終わっていない。

 

「まだ終わっていないぞッ! クダイテストッ!」

 

「御呼びですか、イジルデ様ッ!」

 

 イジルデの声に答え、トジテンドパレスからクダイテストが召喚される。

 新たな敵の乱入に身構えるジュランたち。

 クダイテストはそのまま踏み潰そうと足を前に進め、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「──あ」

 

「「「「「──え?」」」」」

 

 トジルギアを踏みつけた足から広がる紫色の靄と電流。それらは瞬く間にクダイテストの全身を包み、その姿を変えた。

 

「ウォアアアッ! ジオラマパワーが満ち満ちるジオラマッ!」

 

「ええええッ!?」

 

「クダイテストがジオラマワルドぽくなったッ!?」

 

「そ、そうかッ! ギアに閉じ込めてあったジオラマパワーが暴走したんだな」

 

 イジルデの推測は正しく、ジオラマパワーはクダイテスト改めて、『ダイジオラマワルド』だけでなく、町にまで影響を与え、彼方此方に巨大で精巧なジオラマが出現していた。

 

「不味いんじゃねえか、これッ!?」

 

『みんな、聞こえるッ!』

 

「介人ッ! 無事だったんだねッ!」

 

『このままだと、世界がジオラマパワーに飲み込まれるッ! その前にあれを止めるぜ全開ッ!』

 

「「オーケーッ!」」

 

 

─機界変形ッ!

   ジュランティラノッ!!

   ガオーンライオンッ!!

 

「全界合体ッ!!」

 

─ゼンカーイ合体!

 

「あぁ…またこれか」

 

しははないはほ(仕方ないだろ)

 

─ゼンカーイ!

  ゼンカイジュラン!

  ゼンカイガオーン!

 

─ゼンカイオー!ジュラガオーン!

 

「「「完成ッ! ゼンカイオー ジュラガオーンッ!!」」」

 

 

「行くぞッ! 全力全開ッ!!」

 

「おうッ!」「うんッ!」

 

「かかってこいジオラマッ!」

 

 空が暗闇に染まり、町の明かりが輝く夜中。ジュラガオーンとダイジオラマワルド…以後『ダイジオラマ』が激闘する。

 刃が重なる毎に飛び散る火花。

 剣術ではジュラガオーンの方が上のようで、最後にはダイジオラマワルドの刃を砕いて見せた。

 

「一気に決めるぞッ!」

 

「甘いッ! 粉塵煙幕ッ!」

 

 止めの一撃を食らわせようとしたが、ダイジオラマは残った武器から煙幕を放つ。

 突然真っ白になる視界。そんな中、突如衝撃に襲われる。

 

「うわぁッ!?」

 

「野郎、卑怯な真似しやがってッ!」

 

「どうするッ!? このままじゃ負けちゃうよッ!」

 

 こうしている間にもジュラガオーンは衝撃に襲われている。

 一方のダイジオラマはと言うと、煙幕の中で見えるジュラガオーンの瞳の光を頼りに攻撃していた。

 

(ふふんッ! この視界の中、貴様らは手も足も出ずに負けるジオラマッ! これで我輩の昇級は間違いなしジオラマッ!)

 

 だが、この時のダイジオラマは失念していた。相手から見れば、自分の瞳も光っている事に。

 

「「「そこッ!!」」」

 

「ぎゃふんッ!?」

 

「一気に行くよッ! 必殺全開ッ!」

 

 

『ジュランソード・円月クラッシュッ!!』

 

 

「よ、良い子のみんなッ! ジオラマは勝手に触っちゃダメ~~~ッ!!?」

 

 ジオラマギアのせいか、必殺技を受けたダイジオラマはおかしな断末魔を残し、爆発四散してしまった。その中でトジルギアも完全破壊される。

 

 ダイジオラマが倒されたことで、町は元の姿に戻った。

 

「世界全開ッ! オールオッケーッ!」

 

「さぁてと。早く帰んないとヤツデが心配するぜ」

 

「そうだ。どうせなら夕飯に響たち誘おうよ」

 

「いいねッ! それじゃあ、まずは合体を──」

 

 その時、ジュラガオーンのカメラがあるものを捕らえた。

 

「え?」「なッ!?」「嘘でしょッ!?」

 

 それは響に剣先を向け、殺気を剥き出した翼の姿だった。

 

 

 

 

 




次回のシンフォギアはッ!

「そうね。貴女と私、戦いましょうか」

「仲間同士で戦うなんて間違ってるッ!」

 激突する介人と翼

「流れ星、みんなで見たかったッ!」

「だから? で、どうすんだよ?」

 豹変する響と新たな敵。


次回『(さき)もる覚悟とネフシュタンッ!』だチュンッ!

次は何が見たい?

  • ゲキゲキ!戦う意味!
  • 果て無き好奇心
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