オトモの枠にウマ娘があるとしたら[凍結] 作:つヴぁるnet
カムラの里と同じくらいに和風と紅葉が彩るこの場所は湯治地として有名な"ユクモ村"である。
観光客はこの温泉を求めてこのユクモ村に訪れるが、一年前までジンオウガがユクモ村の近辺で暴れていたため、来たる観光客などに被害をもたらしては客足が途絶えるなどそこそこ大変な時期があった。
今はなんとか現状が落ち着き、観光客も増えつつある中、俺とセイウンスカイもそれらに紛れるかのようにユクモ村に訪れた。
「アマグモじゃないか!?」
「ア、アマグモさん!」
「アマグモじゃないですか!久しぶり!」
村の人達は俺を覚えていたのか一眼見て名前を言い当てる。 ここは落ち着いた村だから人々の声が良く聞こえるため、俺の名前を叫ぶ人々の声にゾロゾロ集まってきた。 やれやれ、だから観光客に紛れてこっそりと来たかったが毎日ユクモ村の入り口に腰掛けてるあの野郎が騒ぐから無理に等しかった。
仕方ないので「ただいま」と言って出迎えてもらうことにした。
「ねー!アマグモ兄ちゃん!お隣さんは?」
「あー! 隣とお姉ちゃんはもしかして?」
「やっぱり耳が生えてるからウマ娘だよ!」
紅葉狩りをしていた子供たちは手を止めて集まると質問攻めを始める。
一応俺もこの村で上位ハンターとして認められて、ジエン・モーランを討伐した実績は持っているからそこそこ有名人である。
そのため大人も含めて子供たちは俺のことを知っている者は多い。 一緒に温泉に浸かってクルペッコの人形を湯船に浮かべて遊んであげたりとしたこともあるので、懐いてくれてる子供達からはアマグモ兄ちゃんと慕われている。 村を出る時も「行かないで!」と泣きつかれたこともあるくらいにだ。 そんな子供たちにセイウンスカイは自己紹介する。
「にゃはは〜、わたしは空のように青いセイウンスカイだよ〜」
「セイウンスカイお姉ちゃん!」
「よろしくー!」
「?? ……ねー、ねー、アマグモ兄ちゃん」
「どうした?」
ちょんちょんと服をつままれる。
何か聞きたいことがあるんだろう。
無垢な表情の子供の言葉を待っていると…
「お姉ちゃんって……アマグモのお嫁さん?」
「「ぶふーーッッ!!!!!」
「「「「!!!???」」」」」
この後めちゃくちゃ大変だった。
…
…
さて、少々面倒なことになった。
まず無垢な子供達からジンオウガの攻撃なんかよりも強烈な一撃を貰ったセイウンスカイは1乙すると「無理ー!」と叫び、そして知らない村の奥に逃げてしまった。
ここで逃げ馬しなくても良いのだが、子供達の大タル爆弾G発言はかなり強力で、羞恥心を部分崩壊させられたセイウンスカイはぷるぷる震えながら耳を折り畳んで、尻尾は恥ずかしさで萎れてしまい、怒ったウラガンキンよりも煙を吹き出したその顔を手で隠してユクモ村のどこかにエリア移動してしまった。
中々にやり手なこの子供たちは将来頼もしいボマー系のハンターになるんだなと俺は遠い目をしていると大人達からも揶揄われる。
俺はトレーナーとオトモダービーのパートナー関係だと説明したが、むしろパートナーの発言に茶化されて面倒だった。
そしたら一人が「夜は乗りこなしたのか?」と意味深に要らない発言をして来たのでその頭をアイアンクローしてそのまま足湯の温泉に投げ飛ばした。
さすがに子供達のいる近くでその発言は許されなかったので村人から咎められていた。
馬に蹴られて地獄の湯船に落ちろ。
「あ、村長さん!」
「あら、アマグモさん、おかえりなさい。 お久しぶりでございます。 しかし今日は突然どうしたのですか?」
「アレを回収しに参りました。 あとユクモ村の温泉も恋しくなりまして、少しだけカムラの里を空けて…まぁ、休暇という形ですね」
「あら、そうなのですね。 それでしたらしっかりとこの村で体を休めてください」
会話を終えた村長さんは落ちてくる紅葉を手のひらに受け止めながら微笑んで、村の平穏を噛み締める。
これだけ悠々とした姿勢でユクモ村の時間を過ごしてる村長さんは安心感の塊だ。
ユクモ村に帰って来たと思えるくらいである。
「さて、セイウンスカイは何処だ?」
正直あの子供達の大タル爆弾G発言はびっくりしたし、俺もポーカーフェイスの中で心拍数を抑えるに必死だった。
あの場から逃げ出したくなるのはわかる。
けれど知らない村で逸れるのは些か心配だ。
一応村長さんも見たことないウマ娘が勢いよく走り去った姿を見たようなので、間違いなくセイウンスカイであることが分かる。
そんなわけでセイウンスカイの情報を集めていると…
この世で一番面倒な奴にエンカウントした。
「おお? これは新たな
後ろから突然声をかけられる。
関わると面倒そうな雰囲気を感じたが、無視するのも難しいので諦めて振り返る。
「それは脅すのか、脅されるのかどっちなんだ?」
「そりゃもちろん省みぬの方だろ?」
「いや、何に対してだよ"ゴールドシップ"」
「何に対して、って…そりゃ袋叩き系男子たるカボチャの種に対してだろ?何言ってんだコイツ」
「ししおどしの要素何処行ったよ、何言ってんだコイツ」
背の高い彼女の名前はゴールドシップ。
彼女はカムラの里ではなくユクモ村に滞在する数少ないウマ娘だ。
何故ユクモ村かというと「第14惑星よりも面白そうだから」を理由にしてカムラの里ではなくこちらの方で活動している。
これに関してはシンボリルドルフも手綱を握ることができず彼女に対して困っていた。
それでもユクモ村にウマ娘を活動させる計画はあったようなので現状そのままにしているらしい。
一応ゴールドシップも里の役には立ってる。
あとカムラの里は第14惑星なんだな。
うん、どうでもいい情報ありがとう。
「そんな獅子脅しマスターにいい情報あるぜ」
「情報?」
もしかしてセイウンスカイのことか?
だとしたら助かる…と、思ったが。
「マカライト鉱石をココットライスで食べる方法なんだけど」
「あ、結構です」
「いやいや遠慮しなくて良いぜ! 慣れるとドラグライトまで食えるようになるかさ! そしたら一緒にバサルモスごっこしようぜ!」
「お前はまず常識を食ってくれ」
「味噌汁こぼして捨てたから無理だな」
話にならないことがよくわかったゴールドシップに頭を抱えているとメジロマックイーンが走って来た。
ゴールドシップは「やべぇ邪神の福神漬けにされる!」と言い残してティガレックスの素材を使った装衣を揺らしながらメジロマックイーンから逃げて言った。
ゴルシは変わらずゴルシのようだ。
「あ、すみません。 セイウンスカイ見ませんでした?」
「あ、はい! 見ましたよ! 集会所の方まで走って行きました! 石階段を駆けて行きましたが中々鍛えられた足腰でしたね! よーし! もうワンセット筋肉を追い込もうかな!」
なるほど集会所の方か。
間違って温泉にダイブしてなければ良いけどそこまでドジでもないだろう。
俺は久しぶりにこの石階段を登って集会所に足を運び、集会所の中に入れば温泉の香りが強くなる。 ここは珍しいことに集会所の中に温泉が付いている。 それもかなり大きい温泉だ。 竹で柵を作っているが身を乗り出さなくても温泉が全然見える程である。 しかも混浴だ。
流石に女性用のエリアも存在して、そこはしっかり壁を作って隠している。 それでも混浴のエリアに関しては丸見えで、湯煙が立ってなければ受付嬢の仕事姿も湯船に浸かりながら見える程だ。 かなりオープンな場所の上に、集会所は温泉の湿気で大丈夫なのかと心配だが大半は露天風呂のように外に出ているので湿気は外に飛ぶ…と、言えども嵐で外を閉めてる時は集会所の熱気も上がる。 上に湯気を逃す場所があるとは言え、正座してあまり動けない受付嬢が少しだけ可哀想に思えるが、彼女たちもプロでありそこら辺は慣れているらしい。
「あ、セイウンスカイ」
「!」
「温泉眺めていたのか? 入りたかったら入って来ても良いぞ。 俺は色々と用があるからしばらく暇になるだろうし」
「あー、ええと…ま、まだ後でいいかな? アマグモの用事に付き合うよ。 そのために来たから」
「そうか? じゃあ加工屋に向かうぞ。 アレは加工屋が管理してるからな」
「わ、わかった………その、アマグモ、探させてごめんね」
「ああ、気にするな。 それとなんだかんだで温泉気になってたんだろ? 今日はユクモ村で泊まるから好きな時に好きなだけ入ったらいいさ」
「あ、うん。 ありがとう」
まだどこかぎこちないけど少し落ち着いたセイウンスカイを連れてユクモ村を歩く。
もうワンセット筋肉を追い込むウマ娘とすれ違いながら来た道を戻るだけだが、こうして今一度ゆっくりと紅葉の下を歩いていると心が落ち着く。
観光しながらユクモ温泉タマゴを啜るとこれがまた美味しんだよなぁ。
後でセイウンスカイと食べたいところ。
「加工屋さん、久しぶり」
「オウオウ、久しゅうなぁアマグモや。 どれ、ここに来たということはアレじゃろう? ならここの裏に回って2番目の蔵を覗けい。 真ん中に置いてあるわい」
俺は加工屋の裏に回る。
言われた通りに2番目の蔵を開けて中を除いた。
するとそのど真ん中に……アレがあった。
「アマグモ、もしかしてアレ?」
「ああ」
蔵の中には加工した武具が飾られている。 中には廃棄されるであろう物までも散りばめられていた。 そこそこごちゃごちゃしたような蔵の中であるがとある一角…いや、奥の真ん中まで続く道を開けるようにそこだけは足場を確保されていた。 この蔵に初めて入ったセイウンスカイだが、俺がユクモ村まで求めてやってきた代物に対して直ぐに理解したみたいで、ソレに指をさす。
「もしかして、この細くて緑色に細長い片手剣の……あれ?」
折れている。
それが率直な感想だ。
彼女のその表情も見るだけで分かる。
「ええ!? お、折れてるけど!?」
「それは"プリンセスレイピア"と言われるリオレイアの素材で作られた片手剣だ。 あと心配はいらない。 レイピアの半分はとある闘いで折れてしまった。 だから折れているのは前からなんだよ」
加工屋で壊れたと思っていたらしいく、セイウンスカイは俺のために慌ててくれたらしい。
あたまをポンポンと撫でて落ち着かせると、俺は更に奥に立てられて飾られている武器に指を刺す。
「プリンセスレイピアの片割れはこれと一緒だ」
「!!」
セイウンスカイは目を見開く。
彼女がイメージしていたソレよりも規模は大きいから。
「片手剣…じゃない?」
俺はうなずく。
回収しに来たソレは片手剣では無い。
二人で武器を眺める。
濁ったような濃ゆい緑色の鞘。
眺めるているだけでその眼を刻むような刃筋。
いや、実際にその眼を刻んでやった代物。
正しくはその末路を描いて刃となった存在。
長き死闘の中で得た新たなる長刀の産物。
樹海に潜みし深淵の暗殺者の名に恥じぬ切味。
これまでの武器よりもそれは遥かに優れる。
その武器の名は…
「疾風刀・裏月影……太刀だ」
「太刀!? か、片手剣じゃなくて、太刀?」
「ああ。 …驚いた? 俺は片手剣だけじゃなくて太刀も使える。 ハンターのデビュー当時は片手剣だったけど、大型モンスターと戦う時は太刀を使って戦ってきた。 元々ハンターは一つの武器に縛られず戦える生き物だ。 無論それぞれの拘りを持って一つの武器のみを高めるハンターは多い。 その方が最大の武器でもある。 俺はなんでも使えるわけじゃ無いけどその時に合わせて武器を変えてきた。 太刀が使えるのもそれが理由だ」
「だからケシキに太刀を教えてたと、言ってたんだ」
「そういやそうだったな。 太刀はそこそこの経験はあるから、小型モンスターの斬り方と、中型モンスターの戦い方と、大型モンスターの捌き方を教えた。 ケシキはセンスがあったのからものすごい勢いで化けたな。 すこしだけ誇らしい」
「ふーん、そっか。 でもアマグモもちゃんと自分の太刀を持っていたんだね。 でもなんでカムラの里に持ち込まなかったの?」
「役割が決まってたから。 カムラの里でも武器の回収班としてギルドマスターから目をつけられて派遣させられたんだ。 もちろん大型モンスターとも戦えるけど、いまやっている回収班ターとしての腕前もあったからさ。 なら太刀は良いかなって思った。 それに持ち運びが大変だったし……まぁ、何よりこの武器を通して上位ハンターである事を隠す必要がある」
「え、ええ!? あ、アマグモって、下位ハンターじゃ、無いの?」
「あれ?言ってなかったけ? 俺はユクモ村では上位ハンターだよ」
「うそ! 初めて知った!!」
「そうか。 まぁ何というか、色々と都合があってカムラの里では下位の扱いなんだ」
「都合が良い??」
「何というかユクモ村って"専属ハンター"ってのが少ないんだよね。 ユクモ村が代表するハンターは上位になる事が条件…と、言うのは少し違うけど専属ハンターとして恥ずかしくない証は上位ハンターであること。 そんな俺も上位として腕前が認められるようになって、そのまま俺もユクモ村の専属ハンターになろうとしたその直前だった。 丁度ギルドカードを更新するハンコを押す間際にカムラの里の話が舞い込んできた」
_ハンター殿、お主にお願いがあるにゃ。
_とある国へ派遣して助けやってほしいにゃ。
_ここで上位になると難しい、頼むにゃ。
「上位になるとフットワークが重くなって異動が難しくなる。 俺もそれは理解していた。 特に専属ハンターがあまりいないユクモ村にとって上位ハンターは村の英雄なんだ。 村の安平が約束される剣として皆から慕われる。 そんな村の英雄を容易く扱ってはならない」
「だから、上位に更新する前のアマグモが?」
「ああ。 上位になると自然とその村の専属みたいになる。 そのためギルドの登録状況まだ下位である俺が選ばれた。 もちろん異動を断ることが出来た。 でも俺の代わりに専属ハンターとしてユクモ村を支える人が他にいたから承諾した。 あと個人的な理由でタイミングも良かったからな。 それでギルドは回収班をカムラの里に連れて今があるんだ。 都合が良いとはそう言う事であり、役割が決まっているから太刀を持っていく必要が無くなった……が、百竜夜行を考えるとそうも言えなくなる」
「マガイマガド…」
「ああ。 あんなのが出て来てしまったんだ。 もしかしたら俺にも本来の在り方を求められるだろう。 それに最近はカムラの里のギルドマネージャーも動きが激しい。 あと恐らくユクモ村から俺の話も通っているはずだから、モンスターの討伐に狩り出される可能性は高い。 そうなったときのためにこれを回収したかった」
「なるほど、ね〜」
疾風刀・裏月影を手に取って鞘に収める。
折れたプリンセスレイピアも布に包んで持ち運び、セイウンスカイと蔵の外に出た。
久しぶりにそれを背負う。
ああ、とてもしっくりくる。
「にゃはは、綺麗な緑色だね。 とてもおどろおどろしく濃ゆい色してるけど」
「素体が元々緑色なんだけど、この折れたプリンセスレイピアの片割れを溶かしてそれを着色に変えたからいつもよりも濃ゆい緑色なったんだよ」
「ふーん、なるほどね……あれ? そうなるとレイア素材が使われてるなら着色に使ったそれって…」
「お? 気づいたか。 毒に慣れない人が握ると皮膚が溶けるぞ、この鞘」
「ええ!!? 嘘ぉ!!?」
「あははは、冗談だよ。 加工時に毒は抜かれているから問題ない。 でもそう言って脅してるからこの太刀に触れる人は居ないよ? だから盗みの心配がないな」
「な、なーんだ。 もう、ビックリさせないでよね」
「悪いな。 でも尻尾がピーンとして可愛かったぞ」
「っ!? あ、あはは〜、にゃ、にゃにを言ってるかな〜? セイウンスカイが可愛いなんて、アマグモは見る目が無いんじゃない〜? ほら、可愛いと言うなら、まだグラスちゃんとか、テイオーの方が、その…可愛いでしょ?」
「いや、俺はお前が良い」
「ッ〜!!」
「あ、逃がさないよ。 また逸れると面倒だから」
「え、え、ええ!? …ま、待って! いや! だめ! お、おもはゆいんだけど!? なんでアマグモもそう簡単に、こう、こう…ええと、恥ずかしくもなくそう言っちゃえるのよー!」
「ユクモ村の人間はな、大体こうだ」
「なにキリッと言ってるのかな!? うわー! もう! 逃げ馬なんだから逃してよ〜!」
さっきほどまで、探させる手間を掛けさせたセイウンスカイに仕返しとして揶揄いながら加工屋を後にする。 半分は俺のせいだがユクモ村に来てからぜんぜん落ち着きないセイウンスカイにユクモの温泉卵を渡して食べてもらうと大変気に入ってくれた。 名物に舌鼓して落ち着いてくれたセイウンスカイの手を引いて次はユクモ農場まで向かう。
一応この村の目的は済んだけど、折角帰ってきたので軽く見て回ろうと思う。
なのでハンター生活に入ってからお世話になり続けたユクモ農場まで足を運び、セイウンスカイと見て回る。 カムラの里にも似たような施設はあるがユクモ農家はその何倍も大きく、その中で高級なキノコの木の存在に驚いていた。
他にも虫籠やハチの巣箱を農場見学のように見て回る。
そして"採掘場"までやってきた。
採掘場で働くアイルーに挨拶をすれば「アマグモかニャ!?」と驚かれた。 そんでもって久しぶりに帰って来た人が女性を連れてきてるものだから「可愛いそちらはアマグモの奥さんかにゃ?」と揶揄われてしまうのがお約束。 そして尻尾をピーンとさせてその場から逃げ出そうとするセイウンスカイだけどその手を掴んで逃がさない。 俺は目で諦めろよ、と訴えてセイウンスカイは耳を元気なく折り曲げて諦めた。
それはともかく折角来たのだから採掘の体験でもと思ってアイルーから許可を貰い、セイウンスカイにピッケルを握らせてカンカン叩いてもらう。 丁度良いポイントを見つけたので採掘してもらうと出てきたのは大地の結晶だ。 ユクモ村はなにかと手に入りやすい。 それをアイルーに渡してから採掘場を後にする。
次に"虫の木"までやってきた。
虫の木を管理するアイルーから「アマグモじゃにゃいか!」と帰還に驚かれる。 そして「虫よりも奥さんを捕まえてきたのかにゃ〜?」と揶揄われて尻尾ピーンのセイウンスカイをカバディしてから逃がさないように確保する。 俺は目で慣れろよ、と訴えてセイウンスカイは尻尾をしなっと落としていた。
せっかくなのでネコシーソーがどんなのかを見せるために俺は武器を置いて高台に登り、勢いよく飛び降りてシーソーを踏んづける。 テコの原理で飛び上がったアイルーは何かを見つけて虫の木をガサガサと探る。 そして着地。 見つけたのは珍しいことにゴットカブトだ。 ユクモポイント増えるなこれ。 一応精算ポイントとして加算できるが今のギルドカードはカムラの里で登録されてるからユクモ村での精算は手続きが面倒である。 それをアイルーに渡すと代わりに温泉のドリンク引換券と交換してもらった。 ありがたい。
次に
魚籠の網を手入れしているアイルーに声をかける「おやおやアマグモじゃにゃいか」と久しぶりの再会を喜ぶ。 そして「こりゃ魚よりもめんこい女子を獲ってきたにゃ」と揶揄われて尻尾ピーンから逃げようとしたセイウンスカイに網を広げて阻止しする。 俺は目で落ち着けよ、と訴えてセイウンスカイの耳と尻尾は先に諦めてていて、最後は彼女も諦めた。
せっかくなので魚籠がどんなのか見せようと思って餌をぶん投げると魚が寄ってくる。 捕まえるアイルーは居ないので代わりに網を投げて魚を捕まえるとサシミウオが数匹取れた。 釣りと魚が好きなセイウンスカイのために俺はその魚をもらってとある場所まで足を運んだ。
それは"よろず焼き"と言われる装置であり、肉や魚を一本の串に沢山刺して焼くことができる。
今回は2匹分なので程よい量の薪を燃やして、サシミウオを串に刺すと、セイウンスカイにぐるぐると肉焼きセットのように回してもらう。 俺は大団扇で仰いで炎の火力を上げているとセイウンスカイの頭に「!」とビックリマークが浮かんだ気がした。
そしてグッと串を上げるとこんがりとしたサシミウオが完成。 口からじゅりと垂らして尻尾は興奮気味にぶんぶんブンブジナしてるセイウンスカイとこんがり魚に齧り付く。 焼き立てで美味しい。 そこにユクモの温泉卵を垂らして齧り付いたらセイウンスカイも同じことして齧り付き、そして蕩け始めた。
お腹を満たすと俺はよろず焼きの副産物である灰を回収する。
それを"畑"に持っていった。
畑の雑草を捕まえて引っこ抜いているアイルーに声をかけると「おうおうアマグモじゃにゃいか!」と久しい再会を喜び合った。 そして「アマグモの可愛いおにゃのこを捕まえてきたか」と揶揄われて尻尾ピーンのセイウンスカイだったけど流石に4回目なのでリアクションも疲れてのかもう諦めていた。
揶揄い好きのアイルー達の茶化しに慣れたフリをして、むしろ開き直りながら「そ、そうだよ〜」とほんのり赤い顔で自己紹介をする。
俺は灰を持ってきてアイルーに渡した。
灰は畑の肥料になるので大変喜ばれて……とある畑にアイルーは持っていく。
っ、この畑は…
「まだその畑を残してたのか…」
「うにゃ、まだ残してるにゃ」
「そうか。 でも俺は大丈夫だよ。 あれから2年近くは経っているんだ。 体はまともだし、今は自分で畑作ってそれ様に管理している。 それにまだユクモ村に腰を落ち着かせないから使う機会は訪れない。 だからこれはもう良いさ」
「うにゃ、そうかい。 そこまでいうならこの畑は変えるにゃよ」
それだけ会話して畑を離れてユクモ農場を出る。
いつのまにか夕方だ。
急いで宿を取らないとな。
「アマグモ? その、今の話って何なの?」
「畑の事か? まぁ、ユクモ村にいた頃にちょっと大変な事があってだな。 俺ように作ってくれたんだ」
「…何かあったの?」
「………まぁ、色々とだ」
今はもうそこまでひどくない。
この太刀を背負って克服してきた。
だから、俺は大丈夫な…筈だ。
クスリは、ドコダ?
ハヤク、ノミタイ。
ノドが乾く、ノんで潤サナイと。
「っ…」
もう、大丈夫なはずだから。
克服した、はずだから…
頼むから…
その姿を彼女には見せないでくれ。
お願いだよ。
つづく
プリンセスレイピア…
疾風刀・裏月影…
薬…
水没林での5日間が響いてますね。
ではまた。