オトモの枠にウマ娘があるとしたら[凍結] 作:つヴぁるnet
宿を確保したが部屋はひとつだけしか取れなかった。
少しゆっくりしすぎた様だ。
セイウンスカイにはこの部屋で泊まるように言って、俺はどこか一夜過ごせる場所を探したがセイウンスカイはこの村でひとりにしないでと不安そうにしていたから夜は部屋を共有することにした。 しかし彼女と部屋を共にして寝るのは初めてかもしれない。 家の寝床に関しては俺は自室、セイウンスカイは茶の間で敷布団を敷いて眠っている生活スタイルだ。 元々小さな家だから二人暮らしも難しい。 そこは仕方ない。
でも今日は一緒の部屋。 そんな彼女は「そ、そんなの気にしないよ〜」と言うけど、少しだけぎこちない。 俺もぎこちないが、ただ眠るだけだと部屋と意識を傾けて割り切ることにする。 心拍数はほんの少し落ち着いた。 無事に…と、言えるか難しいがともかく宿屋の確保は終えたので夜ご飯を食べるためにユクモ村を歩いていると…
「誰がぁぁぁぁぁ! 誰がぁぁぁぁぁ! ドレーナをダズゲェでェェ!!」
「「!?」」
ユクモ村の入り口から女性の声が聞こえる。
いや、女性と言うより……子供か?
そしてウマ娘だ。
青色のツインテールの彼女は泣き叫ぶ。
村長さんも騒ぎを聞いて入り口までやってきた。
「ダズゲェで! ごのままじゃドレーナーがぁ!」
「落ち着いてください。 あなたのトレーナーだと言うことはユタカの事ですね?」
「っ、ユタカ…だと!?」
「ア、アマグモ?」
俺がユクモ村のハンターになった時に色々と教えてくれたユクモ村が代表する英雄のハンターだ。 デビュー時期は1ヶ月程度差だがそれでも俺の先輩に辺り、彼とは良くコンビを組んではクエストを熟していた。 最後に組んだのは一年前のジエン・モーラン戦以来であるが、そんな彼がどうしたと言うのだ?
「うあああんん!!」
「一度落ち着いてください。 誰か彼女にお水を持ってきて。 そして今すぐ動けるハンターを…」
「あ、自分が行きますよ!」
「アマグモ!?」
立候補する。
他にもハンターは居るが、誰かを助けに迎えるほどの腕の立つものは居ないみたいだ。
なら俺が行こう。
「アマグモさん。 しかし、あなたは今…」
「いえ、構いません。 俺は今カムラの里のハンターですが心はユクモ村と共にあります。 今すぐユタカ先輩を助けに向かいます!」
「かっこいいこと言うじゃないか!」
「アマグモ! ユタカを頼んだー!」
「ユタカならアマグモが行かないとな!」
「お願い!! 私達の英雄を救って!」
「アマグモー!持ってけー!回復薬だ!」
俺は村人の声援を受けて最後に村長を見る。
村長も判断を遅らせまいと考えて承諾した。
俺はお辞儀してセイウンスカイと走り出す。
太刀の紐を今一度閉めて村を出て方角を確認。
「道沿いか。 急いだほうが良いな…」
「なら背中に乗っていきな」
そう言うと一人のウマ娘が現れた。
ゴールドシップだ。
いつもとは違って真面目な表情だ。
「……軽装備とは言え背負ってるのは太刀だぞ?」
「はっ、ウマ娘の身体能力舐めんじゃねーよ。 その程度は気にはしねぇ! おら、急ぎな!」
「わかった。 セイウンスカイ、一気に走るぞ!」
「致し方ないよね……うん、特別にアマグモは任せるよ」
高身長な彼女だからこそ成人男性も背負えるくらいに背中に余裕がある。
屈んでいたゴールドシップに背負われると一気に走り出した。
ガシャガシャと太刀が揺れる中で駆けるウマ娘だがその脚質は落ちることない。
「到着したらこのゴールドシップ様は戦術的撤退として引っ込むからな。 モンスターが弱ったら"追い込み"入れるからそれまでは若者に任せるぜ。 まぁ、別に倒してもいいんじゃろ?」
「それ言う側が違うだろ? てか罠は使い慣れてるのか?」
「あたぼうよ! 頭から落とし穴にぶち込んでやったるぜ!」
「それだと捕獲用麻酔玉の煙吸わないだろう」
「問題ない! 春巻き用ドレッシングの準備はできてる!」
「全然ッッ問題有りだろ」
ウマ娘での"追い込み"と言われるスタイル。
弱ったモンスターに対して強気にアクションを起こせるウマ娘。
例えばモンスターが逃げる先に回り込んで閃光玉などで足止めしたり、罠を仕掛けて嵌めたり、環境生物を使って追撃を入れたりと、弱ったモンスターに対して一気に追い込みを入れる役割を持つ。 他にも移動したモンスターを"追い"かけてしてからペイントボールをぶつけてハンターの位置を知らせたりと、比較的アシスト系のアイルーと似たような動きが出来る。 生命の粉塵も撒いたりもするため一部のアイルーのお株を奪うようなスタイルだ。
そのかわりアイルーと違ってウマ娘は武器を持って戦えないが、その役割に集中してくれるため確実にトレーナーのオーダを果たしやすい。
そんな感じにリアルタイム中は積極的にアイテムを使ってくれたりと、武器を持たないで、アイテムのみを使うハンターの様な感じだ。
もちろん戦いに巻き込まれないように下がっている。
ともかくこの活躍によってクエスト中の事故率が下がりやすい。
何せ追い込まれたモンスターは最後が怖い。
最後の最後で大暴れを起こして討伐をしくじったり、何処かに逃して討伐対象を見失ったりと、詰めどころを間違えてクエストの失敗は珍しくない。 あと一歩だった。 あと数分有れば耐えれたとか、そんな僅かならところでクエストの成功を取りこぼすケースが起きる…てか、ユクモ村はベテランハンターが少ない故にクエストの成功率が安定しない。
だから追い込みがその確率を少しでも上げる。
まぁなんというか…
極論からすると時間を掛けるほど失敗する確率はあがってしまう。
経験不足から油断が生まれて、詰めの甘さが表れやすい。
時間を与えるごとにこちらも足元が掬われやすくなる。
ならどうしたら良い?
__とっとと捕獲すれば良いじゃん
ごもっともな話である。
そこで"追い込み"のウマ娘が罠で支援して、捕獲なり、速攻で決着をつけるなり、ハンターのクエスト成功を早めて手伝うのだ。
ただし、コレ、かなり難しい役割だ。
人間でも難しい。
何せモンスターを見極める能力が必要であり"追い込み"ができるウマ娘は全くと言って良いほどいない。
だがゴールドシップはこう見えて状況把握は得意であり勘もハンター並みに鋭く、彼女が冷静な時は本当に心強い。
そのかわり扱いづらい性格が帳消しにしている感じだが、果たすときはちゃんとオーダーを果たしてくれる。
それが"追い込み"を得意とする彼女だ。
本当はカムラの里でその力を活かしてくれたら回収班の役割も減って、俺は討伐ハンターとして戦えるけど、最近のユクモ村は生態系の変化が激しく、タマミツネなど現れ始めている。
そのため捕獲したモンスターの研究が重要となっていた。
どこから来たのか? どこで生まれたのか?
それを知る必要があるため、ゴルシの力はユクモ村でも活かされている訳だが。
「見えた! あそこか! ……って "トビカガチ"がユクモ村近辺に生息してんのか!?」
「おおー、ギザギザしてなんか常に反抗期な感じだなあのモンスターは? どこかの扱い辛い誰かさんみたいだぞ」
「おう、自己紹介お疲れ様」
「じゃ、ギャラもらって、ギャラもらうから」
欲張りなその言葉になにか意味があるのか?
いや、意味なんてある訳が無い。
深く考えても「ゴルシだし」の5文字で終わってしまうから気にするだけ無駄だが、それはともかく5分も掛からずに来れたのは彼女のお陰だ。
お礼を言いながら太刀に手を掛けて翔蟲を真上に放つ。
大ジャンプしてからトビカガチの背中を捉えると尻尾目掛けて一気に斬り込んだ。
スパッン…
「キシィィィ!!?」
「おお? なんだなんだぁ??」
トビカガチの尻尾は疾風刀・裏月影の一撃で容易く切断されてしまう。
そして俺の加入に戦っていたハンターは驚いていた。
それも、俺の顔を見て。
「久しぶりだな、ユタカ」
「もしかしてアマグモか!? なるほど……へへ、こりゃ良いぜ」
「良いって…何がだよ?」
「仲間と言う最強の武器が届いたことだな! ははっ! おい!ゴールドシップ! でかしたぜ! あとで足湯の温泉水飲ませてやるよ!」
>白だし味じゃ無いと嫌だからなー!
「扱い方慣れてるな」
「ユクモの様にゆったりも悪くないが、自由であることを全力に楽しむ奴はもっと好きだ! あ、ところで俺様のオトモダービーは無事か? 左腕が折れただけなのにメチャクチャ泣いてしまってなぁ。 あの状態だと巻き込まれて危ないからな、助け呼んでくれって安全な村に行かせたんだわ」
「無事だけど、スラッシュアックスを片手で使ってたのか? そりゃ厳しいな」
「バーカ! 片手程度ハンデだっつーの! しかし見たことない奴だな。 動きは面白いが上手く攻撃があたらねぇ。 まぁ、どうでも良いか! とりあえずアマグモ! 片足だけでも良いから斬り込んで転ばせろ。 俺様が一撃でぶちのめしてやる」
「ふーん? 転ばせると思うか? 俺がそのまま倒してやるよ」
「ハッ! 言うじゃねーか! おもしれぇ! なら早い者勝ちと行くか! そっちのほうが燃えた滾るねぇ!」
こんな奴だけどユクモ村が代表する英雄…
てかユクモ村最強のハンターだ。
ジンオウガを2頭同時に戦って打ち勝ち、次の日にリオレイアとリオレウスの夫婦をぶちのめしてきて、次の日にガノトトスを仕留めてきたりとバイタリティのヤベーとんでもない野郎。
なんから急に「アオアシラの素材欲しいな」と真夜中に飛び出して、朝になると「アシラは逃したけどレイアの尻尾だぜ!」とプリセスレイピアの開発が早まったりした変な話もある。
そんな感じに感覚で生きているような体育会系で、まどろっこしい事が苦手。
しかもユタカの名前に見合わない雑な性格。
本当にユクモ村でも生活してるハンターかと疑われるが、実はこの人は他所から来たハンターであり、ユクモ村出身ではない。 なのでユクモ村の遺伝子は全くない。 しかしその強さは誰もが認めるほどであり、細かいことを気にしない勇猛な戦士。 故に恐怖心を母親のお腹の中に忘れて生まれてきた男と言われている。
俺はそんな奴から狩を教わった言うが、実はそこまで教わった訳ではない。
しかしダメージの与えやすい攻撃のやり方と、間合いの取り方といった、意外と脳を使う立ち回りだったので流石に俺も「どうした急に」と心配になった。
てか皆んな「どうした急に」と言っていた。
なんというか、勘違いされやすい雰囲気を持ってるけどユタカはバトルセンスの能力が高くて観察眼もあるため、モンスターとの戦い方は結構上手く口で説明することができる。
まるで物語の主人公みたいな奴だお前?
けれど俺はそんなコイツにほんの少しだけ羨ましくも感じた。
それでユタカの性格に少しだけ影響受けてしまったりと俺のハンターライフにユタカの要素はある。
だが嫌ではないし、皆んなもユタカを嫌ではない。
むしろ逆だと言えるほどにコイツは魅力的だ。
「オラオラオラ! どうしたオイ!!」
「キシィィィ!?!?」
しかし片手で器用にスラッシュアックスを変形させやがる。 しかもトビカガチの背中にスラッシュアックスを食い込ませながらカートリッジを交換すると、素早く変形させてその場で回転斬り。 着地と同時に石ころを蹴飛ばしてトビカガチの眼に当てた怯ませ、ユタカの着地狩りの攻撃を中断させたりとバトルセンスが高い。
お前本当に援軍必要なの?
「必要だ!! そろそろ手が痺れてきたからな!! あと腹も減った!! あと喉も乾いた!!あとついでにお腹が減った!!」
「めっちゃピンピンしてる様に見えるんですがそれは」
トビカガチの飛来を鞘で弾きながら一気に詰め寄る。
するとトビカガチが羽ばたいて回避しようとしたが、閃光玉が飛んで光る。
しかも上手いことに俺の真上で光るから俺は閃光に巻き込まれないでそのまま攻撃に移れた。
しかし投げたのはセイウンスカイ?
いや、彼女は隠れている。
それともユタカ?
いや、片手は塞がってる。
ならば…
「やっぱりか!」
投げた人物が刃に反射して映る。
なるほど、ゴールドシップだった。
素晴らしい閃光玉だ。
やるじゃないか。
「すぅぅ…!」
目を眩ませて落下したトビカガチのマントを切り裂いて飛行能力を奪い取り、一息挟まず翔蟲でトビカガチの首を巻きつける。
そしてグッと踏み込んで刀を振り抜いた。
一閃。
背首から血飛沫を上げる。
「食いしばれモンスターぁ!!」
するとユタカはスラッシュアックスでトビカガチの顔を下から殴り飛ばした。
トビカガチの顔は真上にかち上げられる。
背首が斬られて、首が動きやすくなっているトトビカガチの視点は夜空に動いた。
そのまま目眩を起こしながら顔から力が抜けて、重力に従って垂れ下がる顎をスラッシュアックスのソードモードの剣先が刺す様にトビカガチの顔を受け止める。
ユタカは叫んだ。
「弾けてしまいな、ザコが!」
スラッシュアックスが属性解放する。
トビカガチは吹き飛び、そのまま絶命した。
♢
「ゔあ"あ"あ"あ"あ"あん!!!」
「おい! さっさと泣き止め!」
「うあ"あ"あ"ん!だっでぇ! ターボすごくじんばいじだんだぞ! トレーナーがあぶながだんだもん!! うあああああん!!」
「ったく、腕が折れただけで大袈裟だっつーの。 こんなの唾つけとけば1時間で治る!」
「「「「そうはならんやろ!」」」」
村人総員にツッコミを入れられたユタカをよそに俺は村長と話していた。
トビカガチの生息域はユクモ村近辺まで伸びてきている。
モンスター図鑑の更新を急いでユクモ村でもトビカガチの情報がハンターに伝わるようにとするためまた忙しくなりますね、と言っていた。
そして村を代表してお礼を言われるが、俺はユクモ村のハンターであるつもりだから、ユクモの仲間を助けることは当然だと伝えた。
それに元相棒を助けたまでだと付け加えて村長は「そうですか」と静かに笑っていた。
「おいアマグモ、なんだかんだで助かったぜ」
「お互い様だろ? まぁしっかり腕は治せよ」
「秘薬飲んで唾つけとけばそのうち治るさ。 おい! それより腹が減った! なんか上手いものねぇか? 腹減ったんだ! 泣いてるコイツのためにもニンジン頼むわぁ!」
「おっしゃー!そうこないとな!」
「じゃあ用意するぜ!」
「英雄の帰還に宴だー!」
「わーしょい!わーしょい!」
またたくまにユクモ村は賑わう。
毎日のように賑わっているけど今日は特に賑わいが激しい。
肉まんや焼き鳥、とうもろこしやココットライスの炒め物など村から出されて夜は楽しくなった。
「セイウンスカイ、俺たちも食べるか。 元々夜ご飯食べるために外出た訳だし」
「にゃはは、外どころから村の外に出たもんね? ともかく好意にあやかるとしますか〜」
「おうおう! 食ってケェ! ウマ娘なくてハンターは戦えねぇ! いや、俺は戦えるから関係ねぇがウマ娘がいるともっっと戦えるんだ! ハンターに役立つためにしっかり食ってけ! 食え食え食えぇ!!」
「あはは〜、なんかすごい人だね」
「ユタカはそう言う奴だ。 色々とざっくりしていて、でもその言葉に見合う強さを持っていて、羨ましい限りだよ」
「でもアマグモの太刀筋すごくカッコ良かったよ。 あんな動きして戦えるなんて初めて見た…いや、どこか片手剣でそんな感じの動きは見たことあったけど、実際に太刀を握りしめてモンスターに立ち向かうアマグモは……その、ええと…」
「?」
「か、カッコよか__」
「君がユタカの助けてくれたハンターだな! ターボ見覚えあるぞ!」
「うわっ!?」
「君もウマ娘なんだな。 それとユタカの危機を知らせてくれてありがとう」
「どうってことないぜ! だってターボはユタカの自慢のオトモダービーだからな! って事でターボはお利口だからちゃんと恩人にお礼参りしたぜ! じゃあなー! たくさんありがとう!!」
「お礼に参ったじゃなくて、お礼参りなのか、ははは」
「…」
「で? セイウンスカイ、その先はなんだ?
「!? ……わ、忘れた、かな? あははは…」
「そうか、そうか、俺の太刀筋がカッコよかったのか。 なるほど、ありがとうな」
「ッ〜!! い、言わなければ良かった! もう…」
そう言ってセイウンスカイは別の料理を取りに席から離れる。
今日は意地悪しすぎたかも知らない。
あとで謝っておこう。
…
…
…
「アマグモのバカ…」
「おっと? アマグモと喧嘩か? 俺様も久しぶりに喧嘩したいなアマグモとは」
「!?」
「おお、悪い悪い、驚かせたか。 あ、知ってると思うがユクモ村専属ハンターのユタカだ。 そんであそこにいるやかましい相棒はツインターボって奴だ。 今日は特別泣き虫だけど根は良い奴だ。 ここにいる間だけでも良いから同じウマ娘として仲良くしてくれや」
「あ、はい、どうも…」
「しっかしアマグモにも良いパートナーができたもんだな。 昔とは良い感じの表情で笑う」
「え?」
「なんと言うかな…アイツはな、昔そんなにコロコロ表情を作らねぇ今よりもつまらない奴でなぁ? 笑えるけど笑うことがあまりなかった。 俺様と同い年なのにちょっとそれが嫌になってしまってな? まぁ人間はソレゾレがあるから勝手な事は許されねえけどよ、でもハンターとしていつ死ぬかわからないんだから死んでも後悔しないくらいには笑った時間を覚えてろ!と柄にもなく説教してな。 そしたら冗談で人を困らせたその反応を見て、自分が笑うようになった。 まぁそんな良い感じに面白みのある奴になってくれた」
「…」
「それから笑うようになったし、よく叫ぶようになって、それで生きるための必死さで溢れている。 元々それができる奴だったからハンターライフでも経験を積んで、余裕が持ち、どんなに過酷でも余裕面の虚栄を貼ろうとするくらいに、やり遂げれるハンターになった。 なんというかアマグモらしくなったんだ。 でもな、その冗談を言う相手の中で、アイツが一番と言えるほどに笑顔にさせれる相手ってのはなかなかにいなかった。 俺含めてもな。 でもお前さんが隣にいるとな、もう面白いくらいに味が出てる。 なんと言うかあれだ? "特別"ってヤツだ」
「へ?」
「お前さんはアマグモにとって特別なんだろうな。 こんな俺様でもアイツと3回に1回と多いペースで相棒組んで色んな依頼をこなしてきた。 俺様の出来ない強さを持って足並み合わせてきた。 いまもあの最後を覚えてる。 ジエン・モーランを打ち取りに行って、ジエンの中に飲み込まれたアイルーを助けるために大銅鑼を慣らし、アイツすらも口の中に入って、それで俺様に大砲を頼んで、そしてジエンからアイルーを引っ張り出して、二人で死ぬ気で立ち向かって、最後は討ち取るところまできた。 ベトベトの砂まみれで大の字になって大笑いしたっけな。 ありゃ最高だった」
「…」
「そのあと上位ハンターとユクモ村専属の座を俺様に譲って、アイツは下位のままでユクモ村を去った。 アイツも強いのに下位での異動ほんの少し嫌だった。 けどな、アマグモは『俺にできることをやります』と言ったんだ。 それがアマグモらしさだった。 だから良く相棒組んでた俺様はアイツが去ったあと泣いちまってなぁ、もう、本当におもしれぇ奴になったと嬉し泣きだよぉ。 だがな、ユクモ村を出たアマグモらしさを、更に引き立てているのは間違いなくお前さんだろうな」
「!」
「ええと、お前さんはセイウンスカイだったか? ほうほう、なるほどな? 雨雲に青雲か。 そりゃ晴れ晴れとして潤っている訳だ。 ガサガサでゴワゴワなアイツはいま、セイウンスカイがいることでアマグモな訳か。 ふっ、少しだけ妬いちまうな…」
「!! ええと、でも、わたしは、その…たまたま彼のオトモダービーになっただけで、もしかしたら他の女の子でも…」
「おいおいそんなの考えてもわからねぇよ。 結局、誰がとか、あの人がとか、その方がとか、そんなの狩と同じで結果論に持ち込んでも意味なんかねぇ。 もしかしたら最高のパートナーがいて、最高の選択技があるかも知らないけどよ、そんなは想像の中で止まってしまう。 考えるだけその時間に意味はない。 結局はさ…」
_その時、その時の【雲行き】だろ??
「!!」
「アマグモのパートナーはお前さんだ。 その脚で助けてきたんだろ? なら変わらずその脚で
「わたしが、特別…」
「ああ、特別だ。 間違いない。 だってお前さんはさっきの発言では『もしかしたら』の後に普通ならば『他のウマ娘』と言うところを『他の女の子』って言ったからな? お前さんもそれだけアマグモが特別なんだろよ」
「!!?」
「特別と思って、特別と思われてる。 もうこれは最強じゃねーか? そこに勝るものはないって思うけどな。 じゃあな、長話悪かった」
_元相棒の事、頼むぜ。
ユクモ村の英雄はそれだけを残して大団円の中に戻っていく。
一人佇むウマ娘を他所に、ユクモ村の宴はまだ熱の覚めることない夜として…
つづく
A_ところで恋のキューピッドは誰ですか??
「このゴールドシップ様に決まってるだろ」
あ、はい。
ラブコメの波動を感じる、そんな回でした。
そして次回は温泉回だぞ。
あとサラリとジエン・モーランの中に入ってオトモアイルーを助けているアマグモかなりヤバいですね。
《ユタカ》
ユクモ村の専属ハンターであり、スラッシュアックス使いの上位ハンターとして最前線を戦う。 ハンター歴はアマグモの1ヶ月先であり、相棒として良く組んではクエストをこなしてきた。 現時点でのケシキよりは強いが、どちらも主人公なので化け物になるのは変わりない。 ちなみにこの話の宴から10日後に秘薬と唾を付けて早々に腕を完治させると霊峰まで向かってアマツマガツチと殴り合ってきたらしい。 倒せなかったが尻尾を持って帰ってきた。 初見でやりあってしかも生きて帰ってきたこいつかなりヤバい。
ではまた