オトモの枠にウマ娘があるとしたら[凍結] 作:つヴぁるnet
ユクモ村から帰ってきて1週間が経過。
ナルガクルガ亜種の素材を使用して生産された疾風刀・裏月影の名を持つ太刀を回収して、カムラの里に戻ってきた。 しかしアマグモは片手剣を得意とするハンターの認識が強かったせいか、立派な太刀を背負って帰ってきた俺の姿を見たハンターやウマ娘達は何事かと騒いでいた。
俺としてはこっそり持って帰って来たかったけど入り口の元気な御上さんが元気よく迎えたところから引き金となる。 とりあえず触ると肌が溶けるぞと冗談を交えて太刀に関しては軽く説明しておいた。
それで何故かセイウンスカイが誇らしげに「にゃはは〜、どうだどうだ〜、セイウンスカイのパートナーは凄かったんだよ〜!」って自分の事のように自慢していた。 シンボリルドルフを自慢するテイオーみたいだな?と、揶揄ったら耳を引っ張られた。 ウマ娘の力つよいから手加減しろ痛い痛い痛い。
しかし太刀を回収した話はギルドには告げず、噂程度に広めて、そこら辺はじっくりと足を突っ込む事にする。 まぁフゲンさんやハモンさんは俺の腕前について把握してるみたいだから遅かれ早かれな気はするが、そこら辺はゆるりと雲のように流れて待つ事にしよう。
そんなわけで…
「寒い…」
「寒いね〜」
ここは寒冷群島と言われる地帯。 名前からして寒いところ。 ホットドリンクをちびちび飲みながらセイウンスカイと寒さを凌いでいる。 たまに翔蟲にもホットドリンクを与えて凍らせないようにいるところだ。 あとエリア7から遠くに見えるイソネミクニはなかなかに幻想的で人魚に見える。 ギルドからも人魚竜と言われるくらいだからそれも当たり前か。
しかしあいつかなり交戦的な性格で気性が荒く、そのあたりラージャンに負けていないモンスターだ。 危険度は低めだが正面から顔を見たら怖いお顔をしている。 まだおやすみベアーを抱きしめて仰向けに寝ていたラージャンの方が可愛かったぞ。
あ、ちなみに俺もセイウンスカイを抱きしめてるところだ。
後ろからだけど。
「…動き辛くない?」
「いやいや〜、ぜんぜん余裕だよ〜」
何をやっているかと説明したら、俺はセイウンスカイに背負われていると説明するしかない。
では何故このようなことになっているのか?
そこまでを説明すると、彼女はもっと俺の役に立ちたいと言ってこの現状にとりあえず行き着いた。 まず彼女が役立つとするなら"逃げ"の能力を使った支援であり、モンスターの誘導や分断に一役買ってくれる。 これだけでも大変助かるのだが、先週のユクモ温泉での急な独白からセイウンスカイもまたその後、少しだけ考えていた。 今の自分がアマグモにもっと役立てるウマ娘はなんなのか? とりあえずアマグモの負担を少しでも軽くしたいと考えた結果、背負って移動することだ。
うーん、ガルクで良くない????
「ダメ、ゼッタイソンナコト、ユズラナイカラ」
「!?」
寒気がした。
いや、寒気はしてるのになんか寒気がした。
……俺は何を言っているんだ??
「……なーんてね、冗談だよ。 別にアマグモがガルクの方が効率が良いと思って雇用するならそれでも良いよ? わたしだけがわがままと独断でそんなことはしないよ」
健気に振る舞ってそうは言うけど、背負われていることで近くで見えるその耳が沈みそうになっていることがよくわかる。
これはウマ娘が不安を感じている時に良くある仕草だ。 セイウンスカイの事を見てるとそれは嫌でも理解できる。 しかしそんな彼女は私情を押し込んで効率を選ぼうと発言した。 クエストを果たすためのだけの存在ならこれはよく出来ているウマ娘だろう。
けど、俺はそんな彼女を求めない。
「何言ってんだ。 ガルクなんて雇用するわけないだろ。 俺たちはセイウンスカイと『二人だけ』で充分だ。 仮にガルク雇用しても家は狭くて面倒見きれないし、ケシキの様にモンスターに強襲する訳でもない。 例え討伐向けの太刀を持ち帰って来たにしろ、今の俺たちはまだ回収班ターである。 ガルクは使わない」
「……そっか、ならいいよ」
「何が『いいよ』だよ、まったく。 そんなに俺を信用出来ないのか?」
「別にそうじゃないけど、でも、やはりわたしがやろうとしてることは他のオトモならうまく補える事でしょう? なら、そうした方が良いとか、考えるだろうなって、思ったりしてね…」
「まぁ、シュンギクは居たよ? 俺が薬物依存症でおぼつかない時にユタカが勝手に雇用して来て、それで確かにシュンギクがオトモとしてサポートしてくれたし、助かったことは指で数え切れない。 でもシュンギクと離れてからカムラの里に来て、一人で歩む努力をした。 セイウンスカイが現れるまでの1年間はオトモに慣れていた身として大変だった。 薬物依存症を抜きにしてもやはりサポートの有る無しではクエストの捗り方は違うし、一人で女々しく不安になったりもした」
「…」
「それで普段集まらないハンターと最初の百竜夜行を共に切り抜けて、それでやはり誰かが近くにいる事は今の狩り業界にて大きいことを再確認した。 そこにオトモダービーの名を聞いて、カムラの里にウマ娘が現れて、俺はセイウンスカイを選んだ」
__おや〜? もしかしてこの私を選ぶのかな?
__逃げる事だけに脚が慣れてあまりご期待に添えれないかもよ?
__だからこそだよ。
__今の俺にはお前が必要だと感じてる。
「そこから劇的に変わったさ。 セイウンスカイが隣にいて大きく変化した。 恐らく…いや、間違いなくアイルーやガルクを雇用するよりもそれは存在の大きい
背負われながらだけど、目の前にあるその頭を撫でる。 すると一歩ずつ駆けるその脚の速度が落ちて、だんだんとゆっくりな歩みになり、静かにその場で止まった。 何も言葉を発さない彼女だけど、耳は機敏にピクピクと動いている。 これは何かの気を紛らわせたい時、または何かを隠したい事がある時、あるいは抱えている気持ちを誤魔化したい時だ。 どうであれセイウンスカイは俺の言葉に困っている訳である。 それは良い意味でなのか、悪い意味でなのかは、聞かれた本人次第だろう。
「アマグモは、すごく……その、セコイ人だよね…っ、もう、あなたに、そんなこと言われたら、わたしは、何も、アマグモに言えないじゃない…」
「俺はセイウンスカイに何も不満が無くむしろこれ以上を求めたいとは思ってない。 ただそのままのセイウンスカイが良い言ってるのだからアマグモに何も言えないのは当たり前だ」
彼女の背中から降りて、その細い体を後ろから抱きよせ、雪で積もりそうになるその頭をゆっくりと撫でる。 彼女の頬と自分の頬を合わせて冷たい肌を貰い受ける。 その状態でもう一度良く聞こえるにセイウンスカイに言う。
「俺はお前が、セイウンスカイが良い」
「……うん」
「セイウンスカイの出来ることをこの俺だけにくれ。 他の者に譲るな。 …良いな?」
「……言われなくても、セイウンスカイのトレーナーはアマグモだけなんだ。 だからそんなに近くで改めさせなくても良いよ」
「お前は逃げるからな。 逃げなくても良いところで逃げるからしっかりと近くで伝えてやらないと。 それに……」
「…それに?」
「セイウンスカイはめんどくさいから、何度も言ってやらないと、答えを求めに勝手に駆け出す困ったウマ娘だ。 だからその必要ない様に俺が答えになってやらないとダメな訳だ」
「……うるさいなぁ。 だってアマグモがめんどくさいウマ娘ってわたしに言ったんだから、めんどくさいわたしである事を隠せなくなったんじゃん。 青雲のつもりだった私の事を雨雲で湿らせたアマグモが悪いんだからね……ばか」
「セイウンスカイに言われたくないな、ばーか」
「バカって言う人が馬鹿なんだよバーカ。 それと私は鹿じゃなくて馬だから」
「やーい、うーま、うーま」
「あまりやかましいと雪原地のど真ん中に置いていくよ?」
「寂しがりやで一人置いていけないくせに強がんなよ。 ほら、寒いから背負ってくれよ。 ホットドリンクじゃこの寒さは保たない」
「いいよ、私も寒いから背負わせてもらうから」
彼女は笑いながら屈んで背中を見せる。 後ろから抱きしめていた様な状態だからそのまま彼女からヒョイと軽く持ち上げられて走り出す。 ウマ娘の力の強さと身体能力の高さを今一度感じながら彼女の足取りは軽い事を知る。 雪原で足が取られやすいはずなのに走る速度は落ちず、走りやすいところを順次に把握しながら駆けていく。 これはむしろガルクよりも安定してるのじゃないのか? いや、俺があまりガルクに乗った事ないからこのような視点になってしまうだけだろうが、でもそう思えるのは俺の脚となって駆けてくれる存在がセイウンスカイだからだ。
「っ、止まるよ」
セイウンスカイは何かを見つける。
そして音が届かないだろう距離を測って減速した。
「ウルクススだな」
「うん、これ以上は踏み込むと聴こえるよね…」
うさぎなのか、くまなのか、ともかく牙獣種に分類される巨大な体を持つモンスターであり、雪バージョンのアオアシラみたいなやつだ。 獣だけあってやはり交戦的で、目が合うと直ぐに襲いかかってくる。 雪原では高い機動力を持ち、アオアシラと同じ感覚で戦うと手痛い反撃を喰らうだろう。 あと音爆弾に弱い。 それだけ耳が発達していてるので、セイウンスカイもそれを理解して発覚を防ぐために急停止してくれた。 下手なオトモよりも良く出来てる。
「出来ればどこか行って欲しいな」
「だったら、ここは得意のわたしが誘き寄せるよ」
「いや、ここ一帯は冷水地で占めていて、そこにウマ娘を走らせる訳にもいかない。 走ってる間は熱で昂まって大丈夫かもだけど、脚が凍えると流石に危険すぎる」
「ならどうするの?」
「今回の回収物は双剣の片割れでそこまで重たくない。 なら俺がウルクススの気を惹くからセイウンスカイが双剣を持って撤退して欲しい。 タイミング見て俺も高台に離脱するから」
「むしろわたしが惹きつけるのはどうかな?」
「いや、使用するアイテムの関係で俺がやる。 それで双剣の片割れは蔦の近くにあるらしい。 俺も探すけど、見つけたら回収してこのエリアから即離脱してほしい。 良いね?」
「わかった。 じゃあ……行くよ!」
セイウンスカイは俺を背負いながら雪原を走る。 するとウルクススがこちらに気がついて威嚇を始めた。 俺はセイウンスカイから離脱して滑り込む様に片手剣を抜刀、ウルクススの左腕をオデッセイブレイドで斬りつけて先制攻撃を行う。 ウルクススのヘイトが完全に俺に向いたので盾を構えながら向き合う。
「フギィィ!!」
「可愛くないうさぎだなお前! まだユクモ村にいたプギーの方が可愛かったぞ!」
ウルクススは大腕を振るいながら飛びついてくる。 横に回避してホットドリンクの液体を顔にぶつけると眼に入ったのか苦しみ始めた。 投げナイフで鼻目掛けて投擲する。 火薬草と唐辛子を織り交ぜた爆破投げナイフなので大きく息を吸ったウルクススはむせる様な悲鳴をあげる。 ウルクススは自分の顔をぐしゃぐしゃと掻き乱して火薬を取り払おうとのたうちまわり、その間に俺はセイウンスカイを確認する。 まだ双剣の片割れを探してるらしい。
てか双剣の片割れだけなら新しいの作れば良いんじゃないのか? って思うかもだけど今回のはモンスターの素材を使った双剣なので放置するのは好ましくない。 もし鉱石とかで作っていたのならまだ良いけど、モンスターの素材で作られた武器に関しては放置はあまりよろしくない。 それを構わず食してしまうモンスターがいる場合、その武器を消化して何かしらに変化する事を嫌がるからだ。
例えばフルフルにも赤いフルフルがいるらしく、そいつは亜種と言われてる。 そして原種のフルフルは火属性に弱いのに赤いフルフルは火属性に強い謎の耐性を抱えている。 それでとあるクエストの報告にて痕跡がフルフルと聞き、討伐に向かったハンターは火属性の武器を持ち込んだが、現れたのは同じフルフルでも赤いフルフルが現れたらしく、返り討ちにあってしまい、ネコタクも間に合わず捕食された悲惨な話を聞いたことある。 それで武器を捕食するフルフルに関してだが奴らは目が無いので武器である事を知らず、モンスターの素材で作られたその匂いとモンスターの返り血にて生物の死骸だと勘違いするケースが稀にあるらしい。 それを食べて赤いフルフルの様なやつが生まれるとか。
なので武器の放置するにも生産した時の系統によっては回収が強要される事もある。 そんなわけで今回のクエストは"骨系"の産出物であることが分かるわけだ。 まぁでもリタイアしてハンターがその武器を気に入ってるパターンばかりで、大半は系統なんか関係なく回収を望まれるので、ギルドのお達しじゃなかろうとも回収班ターはそのために毎日動くわけだ。
「フギィィィ! グギギ!」
ウルクススが突っ込んできた。
直線上にマキムシを撒いて引っ掛けてやると顎下に食い込んでしまい、激痛で地面にのたうちまわっている。
俺は翔蟲でウルクススの首に飛び乗り、音爆弾を取り出してからウルクススの両方の耳の中にひっかける。 首に乗られていることで振り下ろそうと暴れるウルクススの首にオデッセイブレイドを突き立てて深く食い込ませて、振り落とされないように耐える。 するとウルクススは二足歩行になって首のオデッセイブレイドを引っこ抜こうと暴れ始めた。
俺は高くジャンプしてウルクススから離脱すると、飛び降りながらよく見えるその顔を盾でおもいっきり右からガツンと殴りつける。 するとパキィィィーーン! と耳を貫く様な音が響き渡り、ウルクススは「カッ…」と首を絞められたような声を出して二足歩行でふらつき、翔蟲でオデッセイブレイドを引き抜きながら次はその首を翔蟲で巻きつけて一気に顔を引っ張る。 そして裏拳の容量で次は左側からアッパーカットを放ち、殴られた衝撃でウルクススの左耳から音爆弾が弾ける。
すると何も反応は無くなり、そのまま大の字で白目を剥きながらウルクススは倒れた。 オデッセイブレイドの血を払いながらウルクススを確認する。 死んでは無いようだが両耳の鼓膜を破壊されたことでウルクススはピクピクと痙攣している。 うん、所詮牙獣種だな。
「よし、これでしばらく起きないだろう」
「や、やる事が、エグいよ……閃光玉で良かったんじゃ無いの?」
「それでも良かったけど、探すために暴れられると邪魔だから行動不能にしたかった。 なのでゼロ距離で両耳の鼓膜ぶち破る事にした。 お陰で大人しくなったな」
「もしかして私に任せなかったのは音爆弾を使うから?」
「ああ。 閃光玉で切り抜けるのは最後の手段として考えて、音爆弾が有効ならそうするつもりだったから。 あとウマ娘も音はよく聴こえるだろ? そこら辺任せると危ないから俺に任せて欲しかったのはそういうことだ」
「なるほどね〜。 しかしアマグモはハンターだとしても自分の2、3倍ある体格のモンスター相手に良く戦えるよね」
「でもそれ言うと
「投げたアマグモが悪い」
「セイウンスカイの背中があったかいから無問題だな」
「こらこら〜、人を湯たんぽ代わりにしない」
「何言ってんだ。 カムラの里に帰ってきてから夜は一緒に寝るようになって、それで湯たんぽ否定するのは些か難しいな」
「むー! そんなこと言うならアマグモとはもう一緒に寝な…………いや、ダメ、離れるの、だめだから」
「不安になったりならなかったり忙しいな君」
そういや実験の好きなウマ娘から「ほぉ、これは良い"独占欲"の眼をしてるねぇ?」って興味深そうな感じに意味深な言葉を貰ってたけど、つまり、これは、そういう事なんだろうか?
セイウンスカイはほわほわしてる様な一面を常に見せているけど、その時になると何処かしら濁った様に感情が溢れ出すこの子はほんの少しだけ怖い時がある。
でもそうさせてしまったのは俺だから、受け止める他あるまい……と、言うか俺に限らずウマ娘の殆どが「トレーナー」と慕う対処に向けての"信頼"イコールの形が変に強すぎる。
ウマ娘ってそのような種族なんだろうか?
随分とまぁクソデカ感情に躊躇いが無いというか…
「アマグモ、あったかい?」
「あったかい。 あと寒い、はやく帰りたい」
白目を剥いて倒れているウルクススを横目に寒冷群島のクエストは終了した。
♢
「ふむふむやはり独占欲から始まるバロメーターに強い変化はある様だが一般的には信頼は強さに変化すると言う事であり結局はそこに応えたい力と現状のやる気にてリミッターが少しだけ外れる仕組みで変化するだけだがしかしウマ娘の信頼の形は人間からするとほんの少しだけ歪んでいる方向性になるものみたいだねしかしその分倍率的な話にするならば人間よりも身体能力の高いウマ娘だからこそ上昇する量は今も計り知れなくていやはや尽きない神秘だしかしウマ娘はそれ特有に歪んだ感情として変換してしまうケースがある様だからトレーナーがどれだけにストッパーとなり安全装置として働けるかもまた試されてるあたり変化の訪れを見逃すことはこの私が……へっ、くちゅん!」
「息を絶やさず言い切って凄いかな、と思ったけど最後のくしゃみでアホさ加減が見え隠れして何をどう反応したら良いかわからないなこれ。 そもそも厚着しないでこんなところに来る辺り本当に頭良いのか悪いのか悩ましい」
「やれやれセイウンスカイのトレーナー君、結局人は暖を求めるのに衣類では補えない。 大半の生き物の体内構造は凍えない様に筋肉を震わせる仕組みを持っている。 へっ、くちゅん!…その震えを阻害する吹き付ける冷気だけを防げば薄着でも生きていけるのだよ。 ……へっ、くちゅん!」
「はいはいわかったから君のトレーナーが持ってきてくれたウルクススの上着を着こなしたらどうだ?」
「暖をとり過ぎるとむしろ、くちゅん! …に、鈍るからね。 今から個人的な興味、くちゅん! …のために探し求める大型のウミウシをくちゅん! …逃さ、くちゅん! ふぇ……こ、こほん、…ウミウシを逃がさない様にするため程よく…ちゅん! 寒い方がちょうど、くちゅん! は、は、はくちゅん!……ぅ……げふっ」
「一旦寒いの定義調べ直して来いアタマヌケテマスタキオン」
「くちゅん!」
クエストを終えて寒冷群島から抜けようとしたところにアグネスタキオンとそのトレーナーであるウルクスス装備のハンターとすれ違った。 どうやらドスバギィの実験だと言ってわざわざこんな悪環境までやってきたらしい。 実験内容は永続的な元気ドリンコの効果を試すとか言って眠狗竜を相手に睡眠されて来いの話だった。
いやおまえ肉食獣を相手に頭おかしいだろ。
「タキオン、風邪を引く方が効率の悪いからしっかり着てくれ」
「安心したまえトレーナー君。 寒いとは言え薬で予防してる。 風邪は引かないさ」
「だがくしゃみする度に凍えてそうなタキオンが心配だ! 僕は安心してドスバギィの睡眠をくらえないじゃないか!」
「むっ…それは困るな……致し方ない」
いや、お前ら何言ってんの?
「じゃあ厚着することは決まりだな! ほら! ウルクススの素材を使った上着だ! とてもあったかいぞ」
「問題はそこじゃ無いが…仕方ない。 トレーナー君に心配事を残すと実験に支障が残る。 実験のためにしっかり厚着をしようではないか。 やれやれ、衣服はともかく厚着は少し苦手なんだが……おい、待ちたまえ。 この上着の袖、些か長いでは無いか?」
「いや、それが良いんだよ! いまは視覚的効果にて今回の実験成功率は高まったさ!」
「ほぉ? 何がどう視覚的効果なのかはわからないが、見たところ今のモルモット君のバロメーターは高水準に満たしている様だねぇ。 わたしがこの格好で……格好? まて、もしや馬鹿にされてるのか?」
「まさか! 愛バのすがたが愛らしい理由で馬鹿にする意味として繋がらないな! それに君さっきほど説明していた事だよ。 愛情の形が力をくれるのさ! それはこの僕が愛バの萌えにて鼓動の高鳴りが生命の強化に繋がり実験の成功に導いてくれる話だけ! さぁさぁ、その姿を崩さずにドスバギィの元までいこうでは無いか、 大丈夫、奥歯に秘薬は詰めてある。 容易く死にやしないさ!」
「か、かわい…………ふぅ、実験は中止にしようモルモット君。 なんだか納得がいかないからねぇ。 ウミウシだけ見て帰るとしよう」
「なんと!? 何がダメだと言うんだ!!」
「……帰るか、セイウンスカイ」
「……うん」
どうやらドスバギィに身を差し出す狂気は免れた様だがなんとも言えない気持ちになった。
……モルモットになるって怖いな。
つづく
殺そうと思えばウルクススを殺せる辺りアマグモもやっぱり強いですね。 ちなみに殺すとその臭いバギィが寄って来るからそうしなかった裏設定。 やってること鼓膜破壊とかエグいけど、ナルガ亜種の件も考えるとアマグモはこのスタイルが得意なんだろう、そんな描写です。
ちなみにアグネスタキオンのモルモットになると言うのはそれで普通なのでこれに異常に感じることがむしろ異常だからしっかりモルモットの気持ちを理解しようね。 モルモットレーナーとの約束だぞ。
ではまた