オトモの枠にウマ娘があるとしたら[凍結] 作:つヴぁるnet
更新速度下がるかもだけど、頑張ります。
ボロボロの戦場。
しかし今日も地獄の宴を乗り越えた。
「ぐぅ…う、腕が…」
「こりゃひでぇ……秘薬で治るか?」
「とりあえず固まれ、粉塵撒いてる」
「ちっ、こりゃ明日は畑仕事無理だな…」
「おいおい、朝日迎えるからもう今日だぜ?」
「お、そうだな! あっははは!」
「はー、きちぃ……帰って寝てぇ…」
「なんかここ最近勢い増してねぇか?」
「ああ、回数重ねるごとに過酷になってきた」
「こりゃもっと設備強化に勤しむ必要あるな」
「やれやれ、随分と暇しない事で」
「だな」
「てかウマ娘がいなければもっと酷かったな」
「「「それな」」」
百竜夜行を乗り越えた里人達は乗り越えた安心感に尻餅をついて朝日と共に愚痴を言い合う。 かと言って悪態はつきながらも、バリスタや大砲などの設備兵器で自分達の倍以上は大きいモンスター達を退けた益荒男たちは生き残れた事を第一に笑みをこぼしていた。 中には怪我を負って痛みに苦笑いする者達もいるが、朝日を迎えれたことの安心感が大きかった。
もちろん…
「やれやれ、なんとか乗り越えましたな、ネイチャさん」
「いや、もう、ほんと、きつかったですよ…」
「おい見ろよグラス! ヘビィが壊れちまった!!」
「あらあら、ではまた素材集めに勤しまないとですね。 あとウンディーネさんからも取り寄せないとですね」
「がっはは! 今日もまた一段と険しく楽しい狩だったぜ…だろ!!」
「ぅえ!? こ、こほん…と、当然ですわ! キングに相応しい宴でしたわ!」
「うぅ…こ、怖かったぁ…生きてて良かったぁ…」
「トレーナーさん!? だ、大丈夫だよ! ウララが元気を分けてあげるから!!」
「なに!? ランスが折れただと!?これでは驀進できないじゃないか!!」
「ちょわっ!? なんということになったのでしょう!! こりゃハモンさん驀進的修復を施さなければ!!」
「あたいは狩猟笛の演奏が長引いて耳が痛いね」
「わたしは腹が減って胃袋が痛い…」
それぞれの腕を振るい、それぞれの足で駆ける。
二人三脚なハンターとウマ娘達も百竜夜行を乗り越えてカムラの里に戻り始める。
だが、それは無事なメンバーのみだった。
「あぁ、そんなッッ、すまない! すまない!! すまない!!! あ"あ"あ"あ"あ"!!」
「もうトレーナーちゃん、少し大袈裟だよ? そんなに泣かないで。 しばらくトレーナーちゃんを夢中に出来なくなっちゃうけど、でも足は治してまたトレーナーちゃんのために走るから元気出してね。 ユー、コピー?」
「……………すまない、無理させた」
「問題ありません。 損傷箇所は修復可能です。 ダメージから判断して5日程度のユクモ村に滞在。 それまでトレーナーのクエスト成功率は僅かに低下しますが……貴方ほどの腕ならば些細な事です。 必ずマスターの元に戻って来ます」
「大丈夫です。この程度かすり傷です。 回復薬を飲めば元通りだからあまり泣…ぐっ…思ったよりも深いですね…」
「ぅぅ、ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい! やはりライスが! ライスがお兄さまのウマ娘だから不幸にしたんだ! ライスが、ライスが…! ぅぅ、うええええん!!」
怪我した者。
怪我に悲しむ者。
百竜夜行を乗り越えるに苦しんだハンターやウマ娘も全員が無事とは言えなかった。
腕を痛め、足を傷つけ、どれだけ悲惨だったのかを物語る。
死人が出ていないだけ奇跡なんだろう。
しかし、それも段々と危うくなって来た。
「ルドルフ、まずはご苦労だった。 今日も気炎万丈に激らせ、カムラの里は皆で乗り越えた。 しかし皆も薄々気づいておるが、回数を重ねるごとに百竜夜行の勢いが増しているな。 まだ予兆があるからこそ対策は取れるが消耗している事実は確かだ。 これからさらに厳しくなってくるだろう」
「ハンターと同じようにウマ娘も無限ではない。 ユクモ村の秘湯を使っているとは言え、それでもウマ娘は怪我の治すのに時間がかかる生き物だ。 駆ける足数が減り続ける現状は芳しくない…が、しかし、それでも立ち向かわなければならない」
「うむ、その通りだ…時を得て、約束してくれたからな」
「?」
_お主は今どこにいるのだ?
_それとも、50年はおぬしにとって、そうなのか?
_たづな……
「なぁセイウンスカイ。 俺の見間違いじゃなければなんだけど、最後のラージャンっておやすみベアー抱えてなかった?」
「にゃはは、アマグモもそう見えた? じゃあやっぱり見間違いじゃ無かったんだね」
「百竜夜行に紛れて現れた時は何事かと思ったよ。 出来ればサブクエスト化してしまったおやすみベアーの回収依頼をこの場で果たそうか思ってたけど、流石に百竜夜行の中でそれは厳しすぎたから見送ったが…」
「にゃはは、無理して死んだら意味が無いからそれで良かったんじゃない? 私たちは分断するために細道にいたんだから」
「それがメインだからそうなんだけど。 あと今回の百竜夜行はてっきり
「うん、私もそう思ってた。 けれどこのエリアを任せれるハンターって中々居ないよね? アマグモは百竜夜行が始まってからずっとこのエリアを任されていて、カムラの里からは適任者として思われてるってことでしょう? それを証拠にアマグモはこのエリアの司令塔」
「荷が重いのですがそれは…」
「でもそれだけの事が出来て、それでいて認められているって事は、わたしはトレーナーであるアマグモのウマ娘として誇らしいよ」
「ありがとう」
セイウンスカイを中心にウマ娘を集めて生存報告を確かめる。
もちろんハンターやバリスタで援護してくれた里人達にも離脱者はゼロだった。
死人もなくそれは嬉しい報告となった。
だが俺自身の内心は穏やかでは無い。
「これは、しんどいな…」
日に日に増して行く百竜夜行の勢い。
ウマ娘の力があるからこそ今はどうにかなっているが、それでも人的資源は無限ではない。
里人も、ハンターも、ウマ娘も、モンスターの宴の中で怪我を負って次々と離脱して行くこの現状。
マガイマガドを討てば少しは収まるだろうか? と考えていた。
もちろんマガイマガドが乱入してきた百竜夜行を乗り越えてからはしばらくは静かだったけど、また再び百竜夜行が始まり、リオレイアやタマミツネの様に危険度の高いモンスターすら現れる様になった。
そして今回はラージャンまで現れる始末だ。
環境生物のクグツクモがストックにあったから糸をぶつけて躁竜して奴のコントロールを握り、なんとか被害を止めた。 だが危険度が桁外れに高いモンスターの登場に俺も必死だった。 ラージャンがおやすみベアーを握ってモンスターを殴る姿は些かシュールだったにしろ、被害が大きくならないで済んだことに胸を撫で下ろした。 正直怖かった。
だがこの勢いが収まらないとしたらカムラの里はどうなる?
それはもうこの場所を捨てるしか無いだろう。
そんな未来すらも見えている。
「兵器が弱いな…」
「え?」
「ハンターもウマ娘も有限だ。 そこに里人が加入して兵器で戦っているが、兵器がインフレに取り残されるとしたら里人が戦っても意味もなくなる。 そこから先は物量で負ける未来しかない」
「なら、兵器を強くすれば現状を変えられるのかな?」
「乗り越え続ける前提ならそうなる。 しかしこれに終わりがないとしたら、百竜夜行の"原因"を突き止めない限り終結しないと考えてるよ。 なぜ地獄の宴がカムラの里を巻き込む形で始まっているのか? そこを解決しないとカムラの里はいずれ疲弊して、食い尽くされる」
「……あまり考えたく無いね」
「ああ。 でもそれを考えないといけない」
ため息が出てしまうここは薄暗い宴の細道。
しかし段々と明るくなり始める。
どうやら朝日が登って来た様だ。
♢
「アマグモ、わたしがアマグモのためにもっと役立つための方法とか手段とか、何かないかな?」
「それはクエストに於いてか?」
「主にそうだね。 あ、もちろん日常でも、いつでも、アマグモのためになることがあるならなんでも言って」
「別にそこまで頑張らなくても良いよ。 さて…なんだっけ? クエスト関係でもっと役に立つ話か。 そうだな…」
正直に言えばこれ以上求めなくても充分すぎるほどに役に立っている。
セイウンスカイは逃げ馬としてモンスターを誘導する能力は高い。
これだけでも非常に助かっているのだが、本人の希望にて環境生物の扱い方や飛竜に対する閃光玉のタイミングなど、ハンターが実戦でやっていることも知識としてセイウンスカイに落とし込んだ。
それでも彼女は更に役に立ちたいと言うのだ。
「かと言って、キャパオーバーを求めるのは違うよな…」
「?」
「なんでもないよ」
月明かりのおかげでほんのりと部屋が見えているため、すぐそこにセイウンスカイがいる事が確認できる。 意図的に差し出された彼女のあたまを撫で、それに答えてくれた喜びを表す様にウマ娘の耳がピクピクと動き、触れる手にペチペチと耳で柔らかく叩かれる。 彼女の細やかな愛情表現を受け止めつつ布団の中で天上を眺めて、しばらく悩ます。
ちなみに今は夜。
俺は百竜夜行を乗り越えてそのまま一徹の状態でカムラの里で事後処理などに1日を費やした所である。 大変だったけどそこは人間の役割なので頑張った。 ちなみにウマ娘のまとめ役であるシンボリルドルフやエアグルーヴを除いて他のウマ娘はしっかり足を休めていた。 同じくセイウンスカイも自宅に帰ると朝風呂に入るとそのまま一度寝て、起きたら家事をしてのんびり過ごしていた。
俺は夕方に帰宅して、浅漬けのニンジンと米で夜ご飯を食べてから寝る準備を始める。
いつも通り茶の間に敷布団を2つ並べてから二人揃って就寝する。
しかしセイウンスカイは自分の敷布団に寝転がず、体半分こちらの敷布団に侵略していた。 満足そうな声と共に腕を抱きしめてホールドすると、足と足を絡めてより密着しようとする。 お陰で体温が少し高くなるがこれはいつもの事であり、彼女は幸せそうな吐息を漏らして頬をスリスリと寄り添う。
しかし先程問いかけてきた声だけは透き通る様に覚めており、自分の活躍の幅がもっと広がらないかとセイウンスカイは相談する。
「装備を充実させるわけにもいかない。 そもそもハンターの様にガチャガチャした物を纏わせるのはウマ娘としての力を取り上げてしまうから却下だな。 たが、しかし…」
「にゃは……アマグモ、今日はもう良いよ。 ごめんね。 眠たいのに、色々考えさせて…」
「気にするな、俺はお前のトレーナーだ」
「……そんなこと言うから、わたし、アマグモに掛かってしまいそうになるよ?」
「死ぬほど疲れてるから今日は我慢して」
「……この代償はとてもうまぴょいだよ」
「いや、とてもうまぴょいってなんだよ」
懐に潜り込むセイウンスカイを抱きしめながら寝息を立てて意識は闇の中に堕ちる。
「おやすみ、アマグモ」
彼女の声を聞き届けながら夜を過ごした。
♢
百竜夜行から数日後のことだ。
討伐クエストでは無い採取クエストなので、オデッセイブレイドとレザー装備をメインに整える。
そしてピッケルを多めに持ち込んだ。
「ここって溶岩洞とはどう違うの?」
「火山だから文字通り山として登る感じだ。 溶岩洞は洞窟だからやや降る感じかな。 あとは大体同じ…と、言いたいがハンター業界でこの火山は非常にホットなスポットがある。 深部はマジでホットすぎるけど」
「燃え尽きるって意味かな?」
「うん、めちゃくちゃ暑いぞ。 鉄の素材を使った鎧とかとんでもないことになるから熱が籠らない装備じゃないと大火傷を負うハメになる。 今回な俺はレザー装備だからその心配は無いが、ピッケルとかでも火傷するから気をつけような?」
「了解だよ〜」
さて、俺とセイウンスカイは"火山"までやってきた。 ちなみに溶岩洞では無い。 あと火山にも種類があるので「どこの火山?」って話にもなる。 なのでここがどこの火山かと言えばユクモ村でハンターやってる頃によく来たことある火山だと説明するしかない。 一応それぞれの火山にも名前はある。 さて、この火山の特徴としてはウラガンキンやティガレックスに亜種系が盛んに生息していることだろう。
そしてゴールドシップがティガレックスを落石で倒してしまった場所でもある。 前に砂漠のサブキャンプ場で出会ったニャン三郎が話した例の件である。 ティガレックスに関しては元々弱り始めていたにしろ、ゴルシが何かの手違いで落石を起こして倒してしまった。 漁夫の利な形だったがゴルシのハンターも討伐に漕ぎ着けたのでゴルシと大変盛り上がったらしい。 これがホットスポットか!と、なんか勘違いしてたらしい。 なんでもありだなあのウマ娘。
「火山の蜂蜜ってかなり癖になるぞ。 少し食べてみろ」
「ほほう〜、これはこれは。 ではお言葉に頂きます。……うぇ!? 甘い!! でも、美味しいねこれ。 お代わり貰っていい?」
「食べすぎると喉乾くぞ」
「ええー」
「安心しろ。 クーラードリンクに混ぜて美味しくするから。 それで火山に入ったタイミングで味わいつつしっかり飲み干してくれ」
「それなら火山に早く行こうアマグモ」
火山は基本的に栄養素が高い地域でもある。
そこで育つ植物は栄養が豊富であり、蜂達も火山で育った花達から蜜を回収して美味しいハチミツを作り上げてくれる。
しかしココは暑い場所だから寄り道でハチミツを食して喉を渇かせることはまず考えないだろう。 しかし持参したクーラードリンクと火山で回収したハチミツを混ぜれば"にが虫"の独特な苦味を相殺してくれる上に、ハチミツの甘さがそれを勝るのでクーラードリンクが美味しくなる。 回復薬にも混ぜて苦味を消して飲みやすくするからハチミツは偉大だ。 それが火山で採取できる栄養満点のハチミツとなると最高である。 これにはハチミツ好きのトウカイテイオーもテイオーステップが止まらないだろう。 気が向いたら持って帰ってやる。
「…待ってアマグモ、なんか来るよ。 ゴロゴロって音がするけど…いや、これはグラグラ? 軽い感じゃ無い」
「ラングロトラ、じゃ無いな? そうなるともしや…セイウンスカイ、身を潜めよう」
エリア5の中央にある岩陰を利用して隠れる。
そこら辺を徘徊してたメラルー達もこのエリアにやってくる大型モンスターに威嚇しつつ後ろに下がっている。
「え、あれもモンスターなの?」
「ああ。 名前はウラガンキンだな。 しかも青色と言うことは"亜種"だな。 早速お出ましか…」
ウラガンキンはそこまで目は良くないモンスターだ。 あと耳もあまり良くない。 そのかわり自身を守るその鎧の様な鱗は強固であり生半可なハンマーなんかでは太刀打ちできない。 ティガレックスですら噛みちぎることを諦めるだろう。 水属性の弾が放てるヘビィボウガンで戦えば多少はマシだが、あのローリングに巻き込まれればどんな装備でも一撃で死ぬだろう。 間違えてもランスの盾で防げると思うな。 容易く轢き殺される。
「ウラガンキンがメラルーに注目してるうちに行こうか」
「う、うん。 あんなモンスターがいるんだ…」
「出来れば二度と戦いたくないモンスターだな」
「倒したことあるの?」
「まだプリンセスレイピアがあった頃に毒殺した。 ウラガンキンは鎧が硬い代わりに免疫力がそこまで高くない。 だからユタカとウラガンキンの顎を爆弾で破壊して、それで顎に毒のナイフを何本も奥深くまで突き刺して、顎の肉質を毒でグジョグジョにした後にユタカがスラッシュアックスで属性解放ぶち込んで、最後はウラガンキンが眠ったところに爆弾で攻撃して、なんとか倒した」
あんなの斬撃で倒せるわけない。
ユタカもスラッシュアックス一筋だから打撃系の武器なんか持ち込まなかった。
なのでジワジワと毒で殺すことにした。
3日連続で火山の中で活動なんか出来るわけないので何度もベースキャンプに戻ってはウラガンキンを探しに向かった。
まあベースキャンプで立て直してる間にウラガンキンは毒に蝕まれて苦しむからあえて長期戦で挑むことにしたけど、できればガンキン系とはあまり戦いたくない。
まだ危険度が同じレウス系と戦う方がマシだと言える。
「でも今持ち込んでるオデッセイブレイドならあの鎧はもしかしたら切れるかもだけど、体力が多くて大変なので倒そうとは思わない。 やるなら毒殺だ」
「毒、好きだねぇ」
「一番安全且つ、殆どのモンスターに有効だからな。 そもそもモンスターは毒を分解する能力は無いに等しい。 人間の様に解毒薬を飲むわけでもあるまいし。 だから絶やさず毒を盛り込んでやれば永遠と苦しみ続けてくれる。 そうすればあとは煮るなり焼くなり、好きにするさ」
ウラガンキン亜種から気付かれぬ様にエリア5を後にしてエリア8までやってきた。 クーラードリンクを半分ほど飲みながらモンスターを警戒する。 一応ウロコトル対策として音爆弾を片手に用意するができればセイウンスカイがいるところでコレは使いたく無い。 ウマ娘も耳が良いから音爆弾に耳を痛めてしまう。 なので俺より先行するセイウンスカイの感知力を信じて奥に進むことにした。
ゴボゴボ…
「!」
セイウンスカイは地面から何かを感知すると飛ぶように後ろに下がる。
「グォォォ!_ガァ!!?」
「やかましい」
ウロコトルが地面から飛び出てきたがオデッセイブレイドの盾で殴って
「やはりウマ娘は耳がいいな」
「う、うん、そうだね。 それとありがとうアマグモ」
「倒すのは任せろ。 だから先行は任せた」
「了解だよ、トレーナー」
その後もコトルの奇襲が何度かあったがセイウンスカイのお陰で事故はなかった。
大型モンスターとの接触は無いままエリア8を超えて……とうとうやってきたエリア9の山頂付近まで。
めちゃくちゃ暑いぜ!!
「うぁぁ、これは…暑い……アマグモ、暑いよ…」
「ほら、クーラードリンク飲めって、ハチミツ混ぜて甘くしてるからしっかり飲め」
「ぅぅ…ぬるい…」
「ここまで来たらそれは仕方ないだろ。 流石にクーラードリンクも緩くなってしまう。 むしろ熱湯にならないからすごいんだけど」
さて、セイウンスカイがクーラードリンクを飲んでる間にピッケルを組み立てしっかりと固定する。
マカライト鉱石を使った丈夫なピッケルだからそう簡単に壊れないだろう。
手袋を付けてから、めぼしい部分を探す。
「この辺りはまだ手をつけられて無いな。 溶岩も引いてるし今なら掘るチャンスだろ」
「ええと、なんだっけ? 確か"お守り"を探すんだよね? "護石"って言わないんだ…」
「お守りはあくまで鑑定する前の名称であり、鑑定してから護石って名前に分類される。 だから別に護石と言っても間違いでは無い。 だが掘り当てる時点ではまだ『お守り』ってハンターは言っている。 そしてそれには理由がある」
「理由?」
「掘り当てるお守りはそもそも人の手で作られていた代物なんだよ」
「!?」
「例えば俺たちがいるこの火山の場所は、そりゃ気が遠くなるほど大昔に人間が住んでいたらしく、いつしか大陸となるくらいに火山が盛り上がった。 それから生きていくには厳しくなり、この大地を捨てた先人達の遺産がお守りとして形に残ってるらしい。 今もたまに見つかる」
カン、カン、カン
「こ、この辺りに人が生きてたの?」
「みたいだぞ。 最初は面白い形の鉱石だと思ってたが、それが人の手で作られていたお守りと気付いてからこの大陸には気が遠くなるほど昔に人間が住んでいたのだとギルドは知ったらしい。 もちろんそんな事はあり得ないと言う学者も現れたが、綺麗に文字が刻まれているお守りが見つかってからそれが証明された。 そして力も秘められていることがわかった」
「それはまた不思議だね…」
「まぁな。 それにお守りにも"レア度"ってのがあるんだ。 例えば当時よりも原型が残っているもの。 または文字が刻まれているもの。 あとは使われている鉱石の質にもよるもの。 主にこの三つでレア度を測っている」
「ふむふむ」
カン、カン、カン
「ちなみに俺は金策として全て売った」
「えー、もったいない!」
「全部レア度が低い奴しか出なかったからな。 それを持ってても効果は無いに等しかった…と、いうか本当に効果が発揮されてるかも怪しかったからな」
「えぇ…」
「何度も言うけどそりゃ気が遠くなるほど大昔の産物なんだよ? 形が良さそうなものでも実はその当時に比べたら大したことないお守りの可能性もある。 むしろ形が悪くて汚い字が刻まれているお守りの方がすごい効果を発揮してる可能性すらあり得る話も出ている。 そのくらいに今の世代なんかでは測れない産物な訳で、ピッケルを持ってお守りを掘り当てようとするなんて今では龍暦院ハンターくらいな訳だ。 それに…」
「?」
「今はマカ錬金で護石を作れるからな。 わざわざ危険なところまで掘り当てに行かなくても護石が手に入る訳だ」
「あ……うん、そうだね…」
カン、カン、カン……
カ…キンッッ!!!
「でも、ロマンは負けないさ」
「!」
「塊を採掘したけど表面見てみな? 化石の様にそれっぽいのが一つ埋もれてるだろ? これがお守りだよ」
「おおー! 本当だ! それになんか文字が刻まれている。 うん、たしかにロマンだね」
「だろ? マカ錬金から手に入る護石よりも歴史が刻まれた代物だ。 そりゃコレクターが高値を出してまで欲しがる訳だよ。 マチカネフクキタルもコレクションしてるくらいだし」
「ふむふむ。 あ、ちなみにどのくらいで売れるのかな?」
「文字さえ刻まれていれば2000は出る」
「すごっ!?」
思わず尻尾ピーンのセイウンスカイに笑いながらしばらく採掘を進めた。
ある程度収穫できた。
そのタイミングでクーラードリンクが残り一本になった。
アイテムを切らしてまで粘る必要もないのでほどほどに切り上げてエリア8に戻り、セイウンスカイは千里眼の薬を飲んで視覚と聴覚を強化する。
ウラガンキン亜種のいるルートを回避しながらエリア5に進む。
するとお宝を持って帰る俺たちを見たメラルー達が目を光らせて襲ってきた。
俺はセイウンスカイに「先に行け」とお宝を渡してからオデッセイブレイドを構えてメラルーと警戒する。
「そこから一歩動いてみろメラルーども。 その首を捻ってティガレックスの撒き餌にするぞ」
「「シャー!?」」
「こ、怖い! ど、どうするにゃ…?」
「ユ、ユニオン鉱石を持ってるにゃ…」
「けどあのハンター只者じゃないにゃ」
しばらく睨み合いを続ける。
セイウンスカイがエリア5を抜けたあたりで音爆弾を投げ込んでメラルー達を怯ませた。
猫だけあって耳が良いから唐突な高周波に頭を押さえて苦しんでいる。
俺はその隙に翔蟲を使って一気にエリア3まで離脱した。
「お帰り。 あとアマグモ。 猫相手に物騒だよ…?」
「セイウンスカイが猫好きなのは知ってるけど、メラルーは猫の見た目をしてる獣人族だから厳密には猫じゃないぞ?」
「ええー、でも……可愛いし」
「だとしてもその前に奴らは蛮族だ。 気を許さないでね? 俺とセイウンスカイが苦労して手に入れたお宝なんだから横取りなんか許せない」
エリア1を通ってベースキャンプまで進む。
ハチミツを回収しながら安全なところまでたどり着いて一息つけた。
あー、何処かで水浴びしたい。
そんなことを考えてると…
「あれ?? お前…」
「なっ! アマグモ先輩!?」
なんと火山のベースキャンプからケシキが現れた。
彼は今サイレンススズカの治療に付き合うためにユクモ村に滞在していてはずだ。
もちろんケシキ自身も怪我をしていて、ユクモ村の秘湯で傷を癒しているところ。
しかし彼の装備を見る限りもう既に万全であることがよく分かる。
「久しぶりだなケシキ、クエストか?」
「あ、はい。 リハビリとして燃石炭の採掘依頼を受けてここまでやってきました」
「そうか。 ところでサイレンススズカの調子はどうだ?」
「順調ですよ。 それにしてもユクモ村の秘湯はすごいですね! マガイマガド戦の傷が綺麗に治ったんですよ! あとリハビリに関してはメジロ家にもお世話になっています。 スズカも頑張っています。 そういや、また何人かウマ娘がユクモ村に来ました。 やはり…百竜夜行ですか?」
「ああ、前回のは相当やばかった…の、手前まで来ている。 だが百竜夜行は回数を重ねるごとにその脅威は深まるばかりだ。 次はどうなるかわからない。 そのためカムラの里は設備兵器の改善に急いでるところ」
「そうですか…」
「ケシキ、サイレンススズカとしっかりと治してからカムラの里に戻ってこい。 それまでは任せろ」
「っ、わかりました。 絶対に戻って来ますから」
そう言うとケシキは双剣を背負って奥に消えていった。
そういや太刀じゃ無いんだな。
まぁ採取クエストだから重たい装備である必要は無いだろう。
「帰るぞ、セイウンスカイ」
「おえぇ…やはり甘すぎる…」
「喉乾くからやめとけって」
癖になるハチミツの甘さだが、乾きを潤す飲み物が足りなくてセイウンスカイが少し大変になった事は言うまでも無い。
つづく
百竜夜行の離脱者が続出してます。
化け物だらけの群れに対して無傷は流石に厳しい。
今回アマグモ達が向かった先はMHP3の火山です。
RISEには登場しない、ユクモ村から行ける場所です。
お守りを探しにピッケルを持ち込んだツアーでした。
炭鉱夫してたのが懐かしいですね…楽しかった。
ケシキがユクモ村に向かってから3週間が経過してます。
ウマ娘は治療に時間が掛かりますので…
それと誤字と脱字の報告感謝します!
そそっかしい作者故に大変助かっております!
ではまた