オトモの枠にウマ娘があるとしたら[凍結]   作:てっちゃーんッ

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もっと上手く設定を話に練り込めたらと力不足に溺れる俺氏。
ここまでしんどかった…




第21話

 

 

 

穏やかで…

 

 

大らかで…

 

 

平和な風景と世界が広がっている。

 

 

良くある人々の営み。

 

 

そこにはなんて事ない村がそこにある。

 

 

 

しかし、少しだけ特殊だった。

 

 

 

人間が住まう村に異人が歩いている。

 

 

馬人族。

 

人間よりも遥かに肉体を凌駕した生き物。

 

男性の馬人族も、女性の馬人族も、関係無い。

 

その駆ける足は風のように早く力強かった。

 

しかしやや不器用なところと、人よりも寿命が半分ほど短い事が欠点だ。

 

それは短く太いと言う事だ。

 

全力でターフを駆け行く生き物たち。

 

 

 

_へい!いらっしゃい!

_やはりお目当ては人参ですね?

 

 

_はい、もちろんです。

_10本ほど貰えますか?

 

 

 

二つの種族は友好関係を築き上げていた。

 

人間はとても器用な生き物なので得意とする農作物で新鮮な野菜を沢山育て、特に馬人族が好物とする人参を沢山売っていた。

 

馬人族はその人間達から好物である人参を買って生活を補っていました。 時にはその肉体を活かして人間達の生活を助けていました。 だが馬人族の本命はその対価として支払う"舞"を披露することです。

 

舞を踊るのは絶世の美女達であり、それは多くて人々を魅了するほどに美しい姿をしていた。

 

しかし競争力が互い種族であり、中央で舞を披露したい彼女達は身内でよく揉める事が多く、勝負事を行ってはその中央を勝ち取ろうと日々奮闘している女性の馬人族で栄えていました。

 

 

このように二つの種族は共存していました。

 

 

 

 

 

だが、人間と言うのは愚かで欲深い生き物。

 

愚かな人間が現れました。

 

 

とある人間は馬人族の女子(おなご)を1人騙して連れ去りました。

 

ある逸話に人魚の肉を食べると不老不死になる話がありました。 舞を踊る馬人族の女子達は逸話に出てくるような人魚の如く美しかったので、それを試したい愚か者達がいたのだった。

 

人間や馬人族に限らず女性と言うのは栄養が豊富な生き物なので、愚かな人間はその女子の肉を求めて引き裂きました。 その肉を食べる事で力を得ると勘違いした人間がいたからです。

 

 

そして、人間はそれを食しました。

 

禁忌を犯した。

 

愚か者達は大層気にいる味だったのか馬人族の女子の乱獲を始めた。

 

 

 

 

そして当然なら馬人族は怒りを持ち、人間達に抵抗しました。

 

有り余る力で愚か者達を返り討ちにして、またその愚か者が住まう村は一夜にして葬られてしまった。 人間の何倍も力がある馬人族だからそれは容易かった。 馬人族の子供でさえ人間の大人の腑を引きずり出せるほどに容易く、人々はその力に蹂躙されてしまい、生き残った村の人間は馬人族を恐れて降伏しました。

 

だがその怒りは収まらず馬人族はその人間達を捻り潰すと、愚かなこの種族に絶望して次へと動き出しました。

 

馬人族は舞を捨てると、血肉を抉るための鉄を脚と手に嵌め、武術に長けたものは薙刀を振るい、獣を掌る仮面をつけてはその拳で胴体を貫き、杖や槌で凡ゆる物を粉々にする。

 

馬人族は有りと凡ゆる村々を駆けては人間達を虐殺の限りを尽くした。

 

 

_誰か!ハンターはいないのか!?

_ええい!ガルクに乗って向かい打て!!

 

 

_同胞の怒り!!人間は皆殺しだ!!

_裏切り者の同族もやってしまえ!!

 

 

 

手を取り合っていた二つの種族はいつしか握っていたその手を血に染めて争っていた。

 

馬人族の怒りは収まらず膨れ上がる一方。

 

 

それから馬人族は進撃を続けた。

 

馬人族は大社跡を制圧すると製鉄が盛んなその里に目をつけてそこを目指しましたが、馬人族の中には人間が好きな者達がいた。

 

人間を恨む馬人族を宥めましたが、尽きる事ない怒りに染まり、ひどく掛かっていたのかそれを聞き入れる事は一切ありませんでした。

 

 

そうして二つの陣営に分かれた。

 

 

反人派の馬人族は、人間を攻撃した。

 

親人派の馬人族は、人間を守った。

 

 

それから睨み合いのように続き、不毛な戦いが始まった。

馬人族同士の力量は五分五分で消耗するのみ。

しかも人間側にはハンターの存在もあり反人派の馬人族は()をこまねいていた。

肉体的に及ばない人間達だがハンターは別物で有り、化け物に対して強い存在だったので馬人族は手出しが難しかった。

 

 

しかし、馬人族とある手段を思いつきました。

 

 

 

化け物には、化け物で対抗する。

 

 

モンスターを使って里を襲う考えを思いつくと、とある人間を捕まえて拷問を施し、翔蟲の存在を知った馬人族はそれを実行しました。

 

得意の脚でモンスターから"逃げ"て誘い、指定の場所まで"先行"すると、捕まえた翔蟲を"差し"て囲い、全員で"追い込み"ました。

 

 

それでもハンターの存在は強大なので、馬人族はもう一押しを考えた。

 

すると大社跡の寺院から逸話を拾ました。

 

 

_対よ! 対よ!

_愚か者に自然の裁きを!

 

 

 

その逸話を辿り【古龍】を目覚めさせた。

 

 

嵐が起き、雷が落ち、厄災の二つが動き出す。

 

人間の住まう里にモンスター達を差し向けて地獄の宴が始まった。

 

 

 

 

だが…

 

 

 

 

 

反人派の馬人族は"風神"と"雷神"の怒りに触れてしまう。

 

 

馬人族は 馬 としての本質を忘れていた。

 

(うま)は手綱を握られる側であり、手綱を握ることはできない。

 

大人しかったモンスター達は風神雷神の力に怯えると理性を忘れたように激しく暴れた。

 

手綱(翔蟲)をうまく扱えない馬人族はモンスター達に跡形もなく食われてしまいました。

 

 

そして皮肉な事か、馬人族を食したモンスター達はその味を占めたのか列を作って動き出しました。

 

狂った様に動き出すモンスター達の進む先は一つの里。

 

味を占めたモンスター達は馬人族を求めて里へ進む。

 

地獄の宴 が始まった。

 

 

 

__キュェェェエエエ!!

__グォォォォオオオ!!

 

 

 

風神は風を放ってモンスター達を進ませる。

 

雷神は雷を放ってモンスター達を狂わせる。

 

 

 

_有りったけの火薬をはなて!

_気炎万丈ォォ!! ッ、 が、はっ…

_嫌だぁ!死にたくない!ああああ?!!!

 

 

 

地獄の宴は日夜を繰り広げた。

 

この厄災から、馬人族と人間は共に戦った。

 

女性は里で窯を炊いた。

 

男性は武器を手に取った。

 

激闘は限りなく続いた。

 

凡ゆるものを失い、凡ゆるものを削る。

 

里が壊滅する、その一歩手前まで来ていた。

 

それでも人間と馬人族は力を合わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

百竜夜行の勢いはいつしか収まった。

 

地獄の宴を乗り越えた。

 

しかし、多くの人間が失った。

 

同じく、多くの馬人族が失った。

 

戦場に出た男児は__皆が死んだ。

 

人間も馬人族も関係なく血肉が戦場に残る。

 

馬人族の『女子だけ』が里に残ってしまった。

 

それが幸運か不運かはわからない。

 

ただ、同族の交わりが無くなったことで馬人族は女子だけしか産めなくなってしまった。

 

 

故に同族での繁栄は__望まれなくなった。

 

 

 

それから人間と馬人族は互いに関わりを持つことを禁じた。

 

怒りと復讐の始まりは人間である。

 

しかし厄災の始まりは馬人族である。

 

だが人間はこの厄災を受け止めて生きていくことを決めた。

 

この先が絶望だとしても、それが贖罪なんだと思って。

 

女子のみしか残らない馬人族はそれをどうにかすることは出来ないと思った。

 

この人間達は、未来に残酷を託すのだと。

 

 

 

_私たちは、未来であなた達を助けます。

 

_このわたくし【トキノミノル】が……いえ。

 

_人の名である【たづな】の名を刻んで約束する。

 

_この厄災と戦う人間に寄り添い続けます。

 

 

 

1人の馬人族は違った。

 

この厄災を忘れてならないと皆に言った。

 

まだ子供ながらも、百竜夜行を引き起こした馬人族の失態と悪行に対して、その責任を持とうと考えていた。

 

 

_ダメだ、お主らは手を引けい!

_これは愚かな人間の誤ちから始まった!

_あなた達は悪くない! ここから逃げるんだ!

 

 

だが人間達はその申し出をことわる。

 

人間社会から手を引くように、強く言った。

 

 

 

_いやです。

_絶対に、私たちは戻ってきます。

_次は、隣人になれるように…

 

 

 

彼女は聞き届けることはなかった。

 

そして約束した。

 

 

もし再び百竜夜行が始まる時にまた現れる。

 

それを告げると生き残った彼女達は姿を消した。

 

 

 

 

そこには 馬人族 がいた…

 

それが、噂として落ち着いた。

 

しかしその里だけが、彼女達の存在を知る。

 

 

だからこそ人間は歴史を書き換えた。

 

罪も、誤ちも、責任も、事実も、真実も、先人達が墓場に持ち込み、隠した。

 

馬人族がいたことも歴史から消して噂だけにした。

 

 

それが正解なのか?

 

または不正解なのか?

 

そんなのはわからない。

 

 

ただ、その里は地獄の宴に苦しむだけ。

 

分からずして、苦しむだけ。

 

ありと凡ゆる【 業 】を背負って栄える。

 

それが人間の贖罪…

 

ただ、それだけだ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「身勝手もいい所だな」

 

 

 

まだ夜だ。

 

いや、薄らとだが、朝焼け柄見える。

 

 

 

「はぁ…嫌な目覚めだ…」

 

 

 

夢を見た。

 

ひどい夢だ。

 

そしてこの夢は間違いなく、見せられた。

 

 

その見せた正体は分かりきっている。

 

この秘境に来てから随分勝手に割り込んで来た。

 

まるで訴えるように見せてくるのだ。

 

 

 

「んん……むにゃ……すぅ…すぅ…」

 

 

 

一緒に寝て…いた訳じゃないが、おそらく勝手に潜り込んできた彼女を抱きしめていなかったから本当に最悪目覚めだったと思う。

 

その寝息と何も知らないで幸せに眠る彼女を見て俺は落ち着く。

 

その頭を撫でてあげると耳がピクピクと動いて身を捩らせて、頬を緩ませると幸せそうな寝顔がより豊かになる。 相変わらず可愛い俺の愛バだ。 こちらの名を口ずさむ彼女の寝言を受け止めながら俺は布団を出て静かに外を出る。

 

まだ静かで寒い時間帯だがとある場所まで脚を進めて…

 

 

そして、立ち止まる。

 

 

 

「俺に何を求める、お前らは」

 

 

 

三女神の像は何も語らない。

 

幻獣の武器や血を埋めただけの石像だ。

 

中に女神がいたとしても語ることはない。

 

精神的な世界で訴えるだけ。

 

だから…

 

 

 

「俺が業を背負わされた一族の子だとしたら、言伝くらい受けれるよな、三女神」

 

 

 

三女神の像は何も言わない。

 

 

むしろ、もう伝えることは伝えた。

 

そう訴えるように何も応えなかった気がする。

 

 

「…」

 

 

ああ、本当に御し難い。

 

馬人族の…いや、ウマ娘の業を拭うだけにあるからそれ以外はどうでも良いんだ。

 

時が来たら、その時に必要無いモノだって構わず消して、ソレを成すだけを考えれば小を切り捨てて大を救う。 雑に扱われた俺だって一族だろうが関係無く三女神からしたらその程度で、50年前の業を拭えるのならそこに躊躇いも、道徳も、価値観も、なんの意味もなさない。

 

 

ああ、まるで…

 

 

 

「人間のように愚かだ」

 

 

 

 

怒りはある。

 

理不尽に頭も悩ます。

 

知ったことで悲しみもある。

 

不効率だって思うこともあった。

 

真意も問いただしたいくらいに苛立つ。

 

けど三女神の像はそんなことに取り合わない。

 

 

だって、ウマ娘さえ良ければ絶対にそれで良いのだから。

 

そのくらい身勝手で…

 

でも馬人族を救いたいだけだから。

 

 

 

 

「俺はお前らのためには思わない。 一族のつもりであるつもりもない。 追放された時から歯車になってやる気はさらさらない。 けど…」

 

 

 

秘境に朝日が見える。

 

綺麗な色が1日の始まりを知らせる。

 

 

だから表情は少しは穏やかになれたと思う。

 

でも抱えるこの心は、(たぎ)る。

 

 

 

「百竜夜行は終わらせてやる。 ウマ娘が戦わなくていいように奮ってやるよ。 アマグモの名を持つ俺は…」

 

 

 

 

 

モンスターハンター だからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アマグモ…」

 

 

 

やよいは見ていた。

 

 

そして映していた。

 

 

持っていた(トキノミノル)名を捨て、人間(たづな)の名を騙ってまで果たそうとするその姿は、秘境に現れる朝日によってその幻覚が映し出された。

 

 

アマグモ と トキノミノル の姿が重なった気がした。

 

 

 

 

「マルゼンスキー…見ておるか? お主が産んだ子供は…」

 

 

 

やよいは朝日が眩しくて目を閉ざす。

 

その時に……薄らと、雫が落ちた気がした。

 

 

 

 

「私達の、馬人族の業を晴らしてくれるかもしれぬ…」

 

 

 

馬人族の夜行に____朝が来た…

 

そんな気がした。

 

 

 

 

つづく

 





本当に、あらゆることがどうしようもないね。

ウマ娘の業を晴らすために道徳など捨て働く三女神も。
業を加速させてまで約束してしまったトキノミノルも。
最後の世代にしようと三女神に否定的に奮うやよいも。
妻を亡くして怒り狂って息子を残したアマグモの父も。

そしてこれも全て愚かな【人間共】から始まった悲劇。
それが百竜夜行として始まった夜明けのない大罪の群。

人間は何度だって過去の誤ちを繰り返す。
竜大戦時代の如く、引き金を人は竜達に蹂躙される。


本当に、本当に、どうしようも、ないね。



ではまた

ところで【モンハンストーリーズ2】はどうですか?

  • 購入した(逃げ)
  • 購入予定(先行)
  • 買わない(差し)
  • お金ない(追い)

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