オトモの枠にウマ娘があるとしたら[凍結]   作:つヴぁるnet

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ウマ娘を育てるじゃなくて、一緒に命を賭けて生き延びる。

そんな感じの小説だったりする。


第3話

交易と言うものはご存知だろうか?

 

簡単に言えば外洋を超えて物を交換したりする商業だ。

 

そしてこのカムラの里には大河が続いており、そのまま海へと出ることができる。 ここではオトモも交易のためにカムラの外に出たりもしている。 そんなオトモたちを集会所の茶の間から見送ることが可能だったりと、ユクモ村と違ってカムラの里は交易がやや盛んだ。 ユクモ村にはオトモ広場ってのは無いが、大きな畑や立派ない鉱山や炭鉱が備わっており、そして素材となる虫が集いやすい地域なのでハチミツもよく取れる。 死んだ虫を川にばら撒いて網漁も可能だったりと、有名な温泉も含めて自然の恵みを受けやすいのがユクモ村である。

 

だからカムラの里に来た俺からしたら交易は何かと新鮮な気分だ。 それでも交易自体あまり活用したことはない…と、言うよりかは数ヶ月前に商業もどきな事をしてる太刀使いのロンディーネが現れた感じ。 最初は警戒したけど全然良い人でややロマンチックな部分があったりと親しみやすい。 そんなロンディーネさんからは珍しいものを交換してもらった事がある。 ドスキレアジの素材を使った砥石を貰ったが、加工の仕方がカムラの里とは違って本来ある砥石とは握り方が違ったりと外洋とはまた違う砥石に感心した。 あと貰ったのは太刀専用のドスキレアジを使った砥石で、一応片手剣にも使えるので前のクエストで試したが切れ味の回復速度が半端なくやばい。

 

ちなみにハンマー専用の砥石も存在するらしい。 元々キレアジ系は砥石としての需要が高く、上手く加工すればカムラの里の秘伝の砥石よりも強力なアイテムとなる。 それが"ドス"キレアジになるとひと撫でするだけで新品の様に刃を元通りにしてしまう。 切れ味の回復がこれだけ早く見込めるのなら戦闘中の合間に使えたりとキレアジの需要はますます高まるだろう。

 

商業もどきな事をしてるロンディーネだったが良いものを見せてもらえて良かった。

 

 

 

「あら、どうもこんにちは」

 

 

「こんにちはグラスワンダー、その着物似合ってるぞ」

 

 

「あらあら、うふふ、ありがとうございます」

 

 

 

グラスワンダーの名前を持つ彼女もウマ娘の一人であり、どこかしら外洋から来たロンディーネと似たような雰囲気を持つ。 しかし彼女もセイウンスカイと同じように現れたのはこの地域からであり、遠くからやって来た訳では無い。 そして共に百竜夜行を凌いだ心強い仲間である。

 

 

「しかしグラスワンダーはオトモ広場が好きだね」

 

 

「ええ、ここは癒されます。 訓練に勤しむアイルー達を眺め、遠吠えをガルクの声を聞き、ロンディーネさんと会話に花を咲かせるのは楽しいございます。 アマグモさんもこれからご一緒にどうですか?」

 

 

「そうだな、ご一緒……っと?」

 

 

 

グラスワンダーの誘いでも受けようと思ったらフクズクが俺の方に飛んでいた。 すぐに布を取り出して腕に巻き、爪の食い込み防止を作るとフクズクは腕の上に乗っかる。 フクズクが口に咥えている巻物を取り出して開封しようと思ったがかなり強くひもが結ばれていたので片手でうまく解けない。 するとグラスワンダーが「失礼します」と言って巻物を取って紐を解く目の前に紙を伸ばしてくれた。

 

 

 

「ありがとう、悪いな」

 

「いえ、むしろ出過ぎた真似をしました…」

 

「気にしないで。 それでええと? ふむふむ。 ああ…グラスワンダー、残念ながらお誘いは断るよ。 今からクエストだ」

 

「あら」

 

 

巻物を丸めて特殊な結び方をした。

 

依頼に対して『受注』と答える結び方や『保留』や『却下』など実は色々ある。

 

まぁ断ることはあまりないので基本的に受注のサインを出す結び方しかしないが、まぁそこは良い。 巻物を咥えさせると腕を空に向ければフクズクはバサバサと飛んでいった。 さて、俺も二度寝中のセイウンスカイを起こしてクエストに向かわないとな。

 

 

「いってらっしゃい」

 

「ああ、行ってくる」

 

 

グラスワンダーに見送られながら今日の依頼をこなしにオトモ広場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最近、武器の回収依頼多くない?」

 

 

「百竜夜行の影響にてあちこちでモンスターがうじゃうじゃしてるからな。 残党処理などで色々とクエストに駆り出される事が多い。 こう言う時に頑張るのが回収班ターだよ、セイウンスカイ」

 

 

「大変だね」

 

 

「前線で戦うハンター達に比べたらまだマシさ。 そのためには可能な限り武器を回収して、まだ闘志が揺らいで無いハンターがいるのなら前線で頑張ってもらわう。 そうして繋がないとカムラの里は滅んでしまう」

 

 

「うん…そうだね。 あの里でお昼寝するの気持ちいいからさ、百竜夜行を退いてみんなで心置きなくお昼寝できるように平和を作らないとね」

 

 

「ああ、だから今日も気炎万丈…! って感じでな」

 

 

 

 

現在エリア5のところにいる。 大社跡の中央に高い丘があるが、明らかに人の手が入っているような場所であり、所々に祠や家らしき建物が立っている。 カムラの里中では神聖なところであり、過去に住職が住んでいた歴史がある。 今は至る所が倒壊して住めなくなっている。 モンスターがこの一帯を破壊したと聞くが、一説では怒り狂った嵐龍アマツマガツチが通り過ぎた事でこの一帯を薙ぎ払われたと言われている。

 

ちなみにジンオウガ2頭を相手にした先輩ハンターはこの嵐龍が原因だと言っていた。 縄張りを追われたとかそんな感じだろう。 やはり古龍は厄災そのものだろう。 そしてここ大社跡のエリア5もその厄災にて壊されたのだと仮説が建てられている。 それ故に人の手が無くなったこの場所だからこそ…

 

 

 

「グォォォ、グゴゴゴォ…ブゴゥ…」

 

 

 

「え? 何アレ…」

 

「ラージャンだよ。 めちゃくちゃ危険なモンスターだ」

 

「そ、それは知ってるよ。 か、かなり恐ろしいよね? 今は寝てるからそれほどじゃ無いけど…」

 

「…君だけでも退いても全然良いんだぞ?」

 

「だ、大丈夫だよ。 ええと、それで武器らしきものは見えないけど…いや、待って。 もしかして、あのラージャンの腕に抱いてアレがそうなの?」

 

「ああ。 "おやすみベアー"ってハンマーだよ」

 

「え……あれ、武器なの?」

 

「みたいだぞ。 あの一撃に叩かれると睡眠に誘われる」

 

「永眠の違いでは…?」

 

「どの道永眠となるから変わりない。 それで、アレを回収と言われてるが、どうしようかな」

 

 

 

大社跡にはラージャンも現れる。

 

リオレウスとかならわかるけどあんな大猿まで現れるとか百竜夜行の影響を受けている地域は無法地帯で本当に笑えない。 生存競争のランクが一気に跳ね上がって最近ではオサイズチがあっちこっち移動しては村の畑とかに被害をもたらそうとする。 百竜夜行が起こるまではこの辺りも非常に穏やかだったのに今ではこんなヤベーヤツも彷徨いたりと厄介極まりない。 そりゃネコタクで運ばれてくるハンターもあとが絶えないわけだ。 しかももちろんネコタクで運ばれずクエスト中の死亡者も百竜夜行が始まってからは1.5倍近くまで増えてきた。

 

未来ある若い芽が摘まれてしまう現状にフゲンさんは心痛めてたよ。

 

 

「あのおやすみベアーはどうするの? 諦める…?」

 

 

「俺個人としてはそうしたいところだけど、ここまで登ってきたんだからすぐに帰るのも嫌だな。 カブラスに注意しながら様子を見よう。 もしかしたら動きがあるかも」

 

 

「わかった。 いやー、しかし、あのラージャンしっかり抱きしめているね。 あの剛腕から引っ張り出すのは無理そうだ。 正直、そんなにぬいぐるみは良い物なんだろうって錯覚するほどにギュとしているね」

 

 

「あ、そういや前にテイオーからセイウンスカイが昼寝してる時にギュと抱きしめていたって聞いたけど」

 

 

「!!?……え、ええと、それって?」

 

 

「え? いや、テイオーが愚痴るように言ってたから、セイウンスカイがテイオーを抱きしめてビックリさせたとかそう言う事じゃ無いのか? どこか不機嫌そうだってし」

 

 

「ッ〜!! あ、ええと、それは、その…いや、別に大した事じゃ無いよ?? うん、気にする事じゃ無い!」

 

 

「?? …まぁいいや、とりあえず二度寝した分頑張って起きて粘るぞ。 もしかしたらチャンスがあるだろうから。 そんじゃ俺は屋根の上から様子みるから、下は任せた。 …暇になって寝るなよ?」

 

 

「う、うん! いってらっしゃい!」

 

 

 

俺は翔蟲を使って屋根の上に飛ぶ。

 

セイウンスカイは岩陰に隠れて様子を伺うことにした。

 

 

 

「……心配しなくても、しばらく眠れなさそうだよ、君のせいで…さ」

 

 

 

ほんのりと頬が赤い彼女だが夕日のせいだと言い訳しながらラージャンを眺めて待機した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気持ちよくイビキをかいた大猿を観察して1時間が経過した。

 

ラージャンはぐっすりだ。

 

あのおやすみベアーは相当寝心地良くするだろう。

 

 

 

 

 

だが、次の瞬間。

 

事態は急激に変化した。

 

 

 

「グォォォオオ!!!」

 

 

 

 

「「!?」」

 

 

 

空からリオレウスが奇襲してきた。

 

しかし狙いは俺では無く、ラージャンに対して襲いかかる。 リオレウスの咆哮を聞き、殺意を感じたのかラージャンは目を見開くとリオレウスの空中ブレスを回避する。 ラージャンはおやすみベアーを握りながらもしたから電撃の球体を放ち、リオレウスはそれを回避するとその脚でラージャンを引っ掻き殺そうと襲いかかる。

 

戦いの規模は縄張り争いへと進む。

 

 

 

「っ」

 

 

俺はセイウンスカイに指示を出す。

 

急いでそこから離れろと。

 

しかし…

 

 

 

「ッ、ッ、ッ!」

 

 

あれはまずい!

 

セイウンスカイの足が震えて動けていない!

 

ウマ娘は人の姿をしているがそれでも"馬"である。 馬人族と言われてるがその前にまず意識は動物に近しくもある。 故に、目を覚ました絶対強者を前にした事で自慢の足からいつもの力が発揮しない。 そしてウマ娘は人間でもある。 感情豊か故に大きく蝕む恐怖心が彼女の判断を鈍らせる。 更に述べるならセイウンスカイは逃げ馬である。 差し馬のようにモンスターと対面する能力は無く、そのプレッシャーに巻き込まれず背中だけに感じながら逃げる力でしか無い。 その時の逃げ馬は誰よりも速くて生存力が高いのだ。 しかし、大型モンスター2体の重圧を浴びてしまった逃げ馬は恐怖で動けて無くなる。

 

速いけど、脆いのだ。

 

 

 

「セイウンスカイ! 目を閉じろ!」

 

 

「!!」

 

 

 

縄張り争いに割り込むように閃光玉を投げつけてラージャンとリオレウスの視界を奪い取る。 さらに着地と同時に煙玉を踏み潰して一気に煙を広げた。 ラージャンとリオレウスは暴れながらも近くに敵がいるならがむしゃらに攻撃している。 巻き込まれたらただでは終わらないだろう。

 

 

「セイウンスカイ、しっかり」

 

 

「ぁ、わた、し、その…」

 

 

「大丈夫だ、逃げよう。 動けるな?」

 

 

「ッ、うん…っ!」

 

 

 

手を強く握って彼女を先導する。

 

震える足を頑張って動かした。

 

しかしモンスターは無慈悲である。

 

リオレウスの火球がセイウンスカイを狙った。

 

 

 

「ッッ!!?」

 

 

俺はセイウンスカイの体を引っ張って火球から逃れる。たまたま飛んで来たにせよあんなの直撃したらまともでは済まない。 しかし一難さってまた一難とはこの事を言う。 ラージャンはおやすみベアーでリオレウスを叩き殴り、もう一度フルスイングで殴る。 怯んだリオレウスの尻尾がおやすみベアーに直撃するとラージャンの握力から解放された。 しかし勢いよく飛んで来た先に俺とセイウンスカイがいた。

 

 

 

「がぁぁっ!」

 

「!?」

 

 

なんとか盾で防いだが勢いが強すぎる。

 

抑えきれなかったノックバックはセイウンスカイを巻き込み、そしてセイウンスカイは崖から押し出された。

 

 

「ぁ___」

 

 

「!!??」

 

 

崖外に突き飛ばされたセイウンスカイ。

 

崖の上から落ちる重力下を悟ったセイウンスカイは死を覚悟した。

 

 

 

 

 

___ア、アマグモ…

 

 

 

 

 

 

 

届く事が叶わない手を伸ばし、震えるように吐き出されたその言葉が彼女の最後になってしまうだろう。

 

 

 

 

いや、そんなことは絶対にさせない。

 

 

 

 

 

俺は盾を捨てるとセイウンスカイに飛び込む。

 

可憐なその体を掴み取り、腰をグッと引き寄せて抱きしめながら翔蟲を壁に向けて放つ。

 

 

腕が引きちぎれるような痛みが走るが食いしばった。

 

 

とりあえず落下は防げた。 しかし翔蟲は大剣やハンマーのように一度エネルギーを込める必要が。 それは僅かな時間だけで良いが、照準を合わせる程度の時間を設けてから翔蟲を放たないと中途半端にしか効力が保たれない。 翔蟲も生き物なのだから準備と言うものはある。 故に翔蟲を使ってぶら下がる時間は作れなかったのだ。

 

 

 

「このっ!」

 

 

 

だから俺は片手剣を抜刀して壁に突き刺す。

 

 

強引にねじ込む事ができた。

 

 

二人分の重さに耐えるように片手剣は壁を抉りながらガリガリと下に削れてゆく。

 

 

両足でも壁に擦り付けてブレーキをかけて…

 

 

 

 

なんとか止まった。

 

 

 

 

「はぁ…! はぁ…! はぁ…ッッ!」

 

 

「ァ、ァ、アマグモ…」

 

 

「無事だなセイウンスカイ。 かなり強く絞めてるけど痛く無いか?」

 

 

「だ、大丈夫、だけ…ど、その…わたし…」

 

 

「何も言うな。 何が悪いとか、何が良いとか、そうじゃ無くてな、この世界は残酷だから、これで普通の事なんだ。 いずれ、何処かで、突拍子もなく死ぬ。 それが普通なんだよ、セイウンスカイ」

 

 

「ぅ、ぅぅ、アマグモ、ごめんね……ごめんなさい……」

 

 

「気にすんなって」

 

 

 

両手が塞がってるから頭を撫でてあげれないのが悔やまれる。

 

そして崖の上ではまだラージャンとリオレウスが争っている音がする。

 

振動がここまで来て壁に突き刺している片手剣が揺れで抜けてしまうのはいただけない。

 

 

 

「セイウンスカイ、腰のポーチから怪力の種を取り出せないか? それを俺に食べさせてくれ」

 

 

「ぇ? ぁ、うん、まってて…」

 

 

言われた通りポーチから怪力の種を取り出した。

 

 

「皮付きのままでいいから食べさせて」

 

 

「でも喉に引っ付いてしまうよ? むせると危ないから…待って、ほんの少しでいい」

 

 

セイウンスカイは手で剥こうとするが体制が危なくてうまく向けない。 それを考えるとセイウンスカイは自分の口に持っていき、歯を突き立てて皮にヒビを入れる。 ひまわりの種のように皮が割れて剥ける。 それを次に俺の口に放り込むと、俺はそれをかじった。

 

 

「すぅぅ……ッッ!!」

 

 

怪力の種は即効性がある。

 

既に力がみなぎっていた。

 

俺は大きく呼吸すると足腰に力を入れて、武器を手放した。

 

 

「!!?」

 

 

重力に従って落ちる中、俺はセイウンスカイをもっと上に引っ張り上げ、腰と太ももの裏に腕を通して抱き寄せる。 お姫様だっこと言える状態だ。 無防備な状態になったためこれで動きやすい。 カムラの里に来て訓練した壁翔(かべかけり)を実行する。 即座に足の引っ掛けれる凹凸や窪みを見つけてはそこに足を滑り込ませて次の窪みなどを探す。 壁を走るようにゆっくりと下へ降りてゆく。 伸び切った竹を交わしながら地面がよく見える。 罰当たりながらも地蔵を踏みつけて、そのまま地面に着地した。

 

「キー!?」

「キーィィ!!」

 

突然現れた俺にジャグラスは驚いて散り散りに去ってゆく。

 

イズチがいたら面倒だったが運良くいないようだ。

 

 

 

「はぁ……恐ろしかった」

 

「…」

 

 

セイウンスカイを下ろす。

 

互いに無事である事を確認した。

 

 

 

「っ…アマグモ!」

 

 

「うおっと!?」

 

 

 

突然抱きしめて来たセイウンスカイ。

 

しかし耳は垂れ落ちて体はガクガクと震えている。

 

 

「怖かった…怖かった……ぅぅ、ぁぁぁ…」

 

 

「……ああ、そうだな。 俺も…」

 

 

 

_お前を失うと怖かった。

 

それを言葉に出すことは出来なかったが、震える彼女を抱きしめて頭を撫でる。

 

だがここはまだモンスターの生存区域。

 

このままでいる訳にもいかない。

 

 

「一度ベースキャンプに戻ろう。 それから考え__」

 

 

 

ドスーン!!

 

 

 

「「!!??」」

 

 

 

リオレウスが落ちて来た。

 

ラージャンに叩き落とされたのだろうか。

 

しかし外傷はそこまで見当たらない。

 

だがその足取りはかなり重そうだ。

 

 

 

「もしや、睡眠属性のおやすみベアーで殴られて意識が飛びそうになってるのか??」

 

 

 

まぁいい、逃げるなら今だ。

 

ラージャンが降りてこない内にエリア4から急いで去った。

 

 

 

 

 

 

 

あと久しぶりに クエストリタイア で終えた。

 

 

その上…俺すらも武器を紛失した始末だ。

 

 

盾はエリア5で、剣は壁に刺さったまま。

 

 

しかし今回は仕方ない。

 

 

俺の判断ミスもあり、俺の弱さも原因だ。

 

 

クエストリタイアはハンターとして恥ずかしい事この上ないが、でも生きてるだけ儲けものだろう。

 

 

失った分は今回の授業料として考え、俺はギルドマスターにその報告を済ませてると終始無言だったセイウンスカイを連れて帰宅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アマグモ、わたしって恥ずかしいウマ娘だよね」

 

 

「え? なんで?」

 

 

「ウマ娘は人を助けるために来たのに、私が助けられたんだもん。 これでは意味がないよ。 あなたの側にいる意味が、無いよ…」

 

 

「……随分とまぁ、君の名前にそぐわない顔色をしている」

 

 

「ご、誤魔化さないで! わたしは!」

 

 

「いや、待て。 それを言うならラージャン相手に撤退まで考えた筈なのに俺が個人的な理由で残ろうと言ったのも原因だ。 それが危機に繋がってしまったのなら事の発展は間違いなく俺にある。 セイウンスカイが恥じる理由にはならない」

 

 

「違う! ウマ娘は人間からオーダーがあるから力を尽くせるんだ! ならばアマグモが『残る』は応える理由になる。 それを最終的に震えてしまった私が全うできなかった弱いウマ娘だからだ…! だからアマグモが悪いんじゃない。 あなたのその腕も、使っていた武器も、全部、全部……私がダメだったから…」

 

 

「セイウンスカイ!それはちがう!!」

 

 

「!!」

 

 

「この始末に誰が責任を負う負わないの話じゃ無い! お前はウマ娘で! 人間を助けようと、応えようと、それを全うすることに存在意義があるだろうがな、俺にはそんなの"どうでもいい"んだよ!!」

 

 

「ッ…!?」

 

 

「俺と!お前が!無事だった! これじゃダメなのかよ…?」

 

 

「ぁ…」

 

 

「たしかに色んな事が起きて、忘れられない怖い思いをして、それで失った分も多くて、依頼を失敗したハンターの恥で、けど今はこうしていつもの我が家に帰って来れて、二人の命はまだこの場所にある。 俺はそれだけですごく報われた。 お前が生きていてすごく嬉しい。 良しも悪しも関係ない。 セイウンスカイが無事ったことに俺はいっぱいなんだよ…」

 

 

「ぁ、ぁぁ…」

 

 

「もう、気にするな。 もう、悔やみすぎるな。 忘れるなとは言わない。 でも、俺の気持ちを分かってくれ。 セイウンスカイ、共に生きて帰って来れて、それだけで俺は報酬を得ている。 だから本当によく頑張った。 ありがとう、セイウンスカイ」

 

 

「ぅぅ……わたしは…青雲(せいうん)なんだよ……だから、泣くなんて、あまり、したくないのに…」

 

 

「たまに雨雲(あまぐも)に委ねろ。 気持ちを抑えて渇いてしまう必要なんてない。 天気はいつだって動いてる。 だから今日は天気が悪いんだ。 それだけのはなしだよ」

 

 

「ぅぅ…ぐ…ぅ、ぅ……うああああ!!!」

 

 

 

 

 

モンスターをハンターする生き物は毎日死を覚悟する。

 

どれだけ飄々としても死と隣り合わせでいる事を忘れない。

 

忘れてしまった時、それは死んでしまうから。

 

だから大地を枯らしながらも、血でその渇きを少しでも癒し、命をかけて過酷な世界を踏み込む。

 

耐えれなくなった時、涙を流して大地を潤す。

 

そうしてまた踏み締めれるように人は繰り返す。

 

いずれ涙を流さずとも踏み締め慣れた足が出来たのなら、それはそれで良い。

 

俺だって時々泣いてしまう。

 

でも今は抱きしめている彼女に任せる。

 

俺の分も、どうか潤して欲しい。

 

 

雨雲 に 青雲 が必要なように…

 

青雲 にも 雨雲 が 必要なのだから。

 

 

 

 

 

 

つづく






セイウンスカイの一人称「わたし」なんですね。
「ボク」って言いそうな感じがしているけど。
トウカイテイオーと被るからかな?


あとおやすみベアーを抱きしめて寝るラージャンは少しだけクスリときた。


《 アマグモ 》その1
約1年前にユクモ村からカムラの里にやってきた狩人であり、ユクモ村専属の先輩ハンターと共にジエン・モーランの討伐後は上級ハンターへ昇給したがそのタイミングで異動を言い渡される。
フィールドワークが得意であり、主にクエストで紛失した武器や遺品の回収を務める珍しいハンターである。 それ故に環境生物の扱いに長けており、ユクモ村でもそれらしい事をしていたためカムラの里の適正能力の高さから派遣された。
これでもソロでジンオウガを討伐する腕前はあり、当時は下位ながらも水没林に乱入してきたナルガクルガの亜種を相手に5日かけて討伐した偉業を持っている。
使用武器は動きやすさから片手剣を選んでいるが、太刀を除いて両手持ちが苦手であり、ユクモ村開発のスラッシュアックスの扱いのセンスの無さにユクモ村のハンターとして落胆した事がある。
過去にオトモアイルーが1匹いたが、ジエン・モーラン戦の怪我にて戦線を降りてしまい、今ではユクモ温泉のドリンク屋2台目として楽しく切り盛りしている。
年齢は二十歳前半で、ここ最近急激に強くなったカムラの里のハンター(主人公)と同い年らしく、団子の早食い競争に勝てない。

ではまた
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