オトモの枠にウマ娘があるとしたら[凍結] 作:つヴぁるnet
カムラの里は歴史がある。
大きな傷跡共に負った歴史がある。
50年前の百竜夜行にて里壊滅寸前まで追い込まれた話は有名であり、この里に住む者にとって忘れてはならない傷跡だろう。 まだこの里に来て一年程度の俺なんかがこの里で生まれ育って、そして戦ってきた者達の痛みも思いを全て理解してる訳でもない。 ただモンスターは人の住まう場所を荒らし、喰い殺し、脅かし、それが大群となって悪夢になる。 そのくらいの認識でしかない。 もちろんハンターになった以上はその名が人々にとって救いとなるように奔走する。 ユクモ村でもその覚悟と使命を持って奮ってきた。
だから今日もそうなった責務を果たそうと…
「気炎万丈ォォッ!!」
するために、逃げる。
後ろへ! 全力で! 逃げるんだよ!
「てか、慣れない片手剣だから体重移動が難しい!」
俺が愛用していた片手剣は前日のラージャンとリオレウスの縄張り争いに巻き込まれて紛失した。 クエストをリタイアした時のハンターが紛失した武器やアイテムを回収するハンターの俺もが、武器を失ったのだ。 それでカムラの里で作られる"カムラノ鉄片刃"って名前の片手剣で代用している。 いつもよりも少し重たい。
「そう言えば、なかなか見ないと思ったけど久しぶりに出会ったなお前には!」
「クエ、クエ、クエ、スト、リタイ、アァァァ!!クエエエエ!!」
「それ前日の俺に対する当て付けかクルペッコ!!」
野生の翔蟲を回収しながら悪態を浮くが、そのお相手が彩鳥のクルペッコだ。
しかも珍しいことにその“亜種"と出会ってしまった。
久しぶりと言ったがこれは本当である。 クルペッコとはユクモ村から出てからピタリと合わなくなった。 しかし今日一年振りに出会った。 一応今いる水没林はクルペッコの生息域なのでいる事は別に珍しくもない。 しかし、クルペッコは急に姿を減らした。
原因は言わずもがな、百竜夜行が原因らしい。
まず鳥類種クルペッコの説明だが、喉の機関が発達しているモンスターであり、他のモンスターの声真似が得意だ。 例えば他のモンスターのメスの声や、縄張りを脅かしに来たモンスターの声などを上手く使い分けて、そのモンスターを誘き寄せる能力を持っている。 あと羽には火打ち石を持ち合わせている武器は厄介だが戦闘能力はそこまで高くない。 しかし他のモンスターを声で誘き寄せる能力はこの上なく面倒だ。 しかもいま俺を追いかけてきている亜種に関してはあのイビルジョーですら呼び寄せてしまう始末である。 ちなみにクルペッコがそのままイビルジョーに食べられてしまった話は有名だが、亜種ならそんな暴食竜すらも呼び寄せれる能力はこの上なく厄介極まりない。 まだ空腹のアオアシラが2頭同時に追ってくる方がマシだ。
「しかしお前もこの水没林で独り身で寂しい奴だな! 他の仲間と渡らなかったのか! ええ?」
「グェ! グェェェエ!」
クルペッコがあまり姿を見せなくなったのは百竜夜行が原因だと言ったが、ユクモ村から近い渓谷では普通に見かける。 しかし孤島や砂漠、それに今俺がいる水没林と言った場所では滅多に見なくなってしまったらしい。
それで何度も言うがこれも百竜夜行が原因だ。
クルペッコは声真似でモンスターを誘き寄せるが、その数が多くなり過ぎたことでコントロールが聞かなくなり、クルペッコの同胞が集まり過ぎたモンスターに襲われる事態が起きたらしい。 そのため百竜夜行の影響があまりないユクモ村から近い渓谷にしかクルペッコが現れなくなったらしく、一時期ユクモ村近辺で急激に増えたりもした。 しかもそれが合わさったように繁殖期に入ったジンオウガも活発になり、アマツマガツチの出現にて生態系は混乱し始めたりと、ユクモ村もクルペッコも大変だ。
その分、亜種は頭が良いから生存競争に強いが、でも本当に久しぶりに見たな。
「逃げるだけなら簡単だけど…互いに独り身だ。 寂しさをぶつけるために闘争でも描くか亜種ペッコ? あいにく様、今日は俺の相棒はお休みでな」
「グェェェエ」
今日はセイウンスカイがお休みである…と、言うかお休みにさせた。 何せ前日のクエストが響いたのか元気がない。 もう気にするなと言ったけどそこから先は本人の問題だ。 しかし彼女は無理して付いてこようとしたが不調気味なウマ娘は危ないので却下した。 しかも今日は水没林であり
「…」
俺はセイウンスカイが大事だ。
アイツとは長く付き合っていきたい。
雨雲を青雲にしてくれる彼女が必要だ。
だから、死ねないし、死なせない。
「グェェェエ!」
わざと攻撃が当たるギリギリの距離を調整しながらジリジリと後ろに下がる。 すると亜種ペッコは火打ち石をカチカチと打ち合わせて温め始めた。 俺は投げナイフで牽制すると亜種ペッコはそれを引き金に飛びついてきたが、こちらも翔蟲を暖めていたのでそれを真後ろに投げ飛ばして亜種ペッコの攻撃を回避する。 その時に俺はマキムシを撒いていた。 硬くて尖った背中を持つマキムシなので踏んづけてしまうならば痛くてたまらないだろう。 亜種ペッコは火打ち石攻撃のために力強く踏み込んだその足でマキムシを足裏に引っ掛けて悲鳴を上げる。
「グェェェエ!!!? グェ、グェ! グェェェエ!」
大口を開けて怯む亜種ペッコだが、即座に持ち直すとそのまま天に向けて声を放つ。 モンスターでも呼ぶのかと思ったが綺麗な音色なので狩猟笛と同じ自己強化に入るつもりだ。 やらせない! あと今日の俺は運が良いらしく着地したすぐそばにドクガスカエルが隠れていた。 それを拾い上げてドクガスカエルの尻を叩いて刺激すると亜種ペッコに投げつける。 すると亜種ペッコの口に入った。
「うお、まじか」
入るとは思わなかった。 すると亜種ペッコはひどくむせ始めると、鼻や口から毒ガスが漏れ始める。 なかなかにシュールだ。 それを急いで吐き出した亜種ペッコだが毒が回り始めてフラフラしている。 更に言えばクルペッコは自己強化のための演奏が強引に解除されて、音色が周りに爆発する。 すると狩猟笛と同じ仕組みなのか音色を聞いていた俺が強化状態に入った。 力がみなぎる。
「はぁぁぁぁあ!」
先程回収した野生の翔蟲が痺れを切らして逃げる前に俺は亜種ペッコにその翔蟲を飛ばす。 グイッと引っ張る翔蟲の勢いに乗ると俺は亜種ペッコに片手剣を抜刀して飛びついた。 飛影と言われる翔蟲を使った片手剣の技で亜種ペッコの喉を斬りつけて、落下しながら盾で頭を殴って脳にダメージを与える。
ドクガスカエルノの影響で力が緩んでいるのか肉質が少しだけ柔らかい。 そのため切れ味がそこまで良くないカムラノ鉄片刃でも切り込む事ができた。 毒でふらつきながらも暴れだす亜種ペッコだが、マキムシを撒いた時に使った翔蟲が手元に戻ってきたので野生の翔蟲とカムラの里から連れてきた翔蟲を使い、その場でグルグルと回す。
鉄蟲糸技と言われる"糸車"と言われる技で敵の攻撃をいなしながらこちらが一方的に攻撃する技。 その過程で片手剣の刃を糸車の中に乗せて連続で斬り刻み…
「気炎万丈ォォ!!」
亜種ペッコの演奏が効いてるのか気持ち良いくらいに力が乗る。
最後はその脚を斬り払って亜種ペッコを怯ませる。
だが、これではまだ終わらない。
翔蟲が元気なうちに亜種ペッコに翔蟲を引っ掛けると俺はその背中に乗って自由を奪う。
硬い壁に向けると強引に亜種ペッコを走らせて俺は飛び降りた。 勢いを殺さないその巨大がズシズシと進む。 そして亜種ペッコはものすごい勢いで壁にぶつかり、ふらつきながら最後は地面に倒れた。
「グェ、グェ…グェ…」
死んではいないがしばらく立てないだろう。
俺は亜種ペッコに近づいて片手剣を振り下ろした。
♢
亜種ペッコは倒せなかった。
いや、倒すつもりは無かったし、そもそもこんな武器で倒せるわけがない。
原種ならともかく能力が高い亜種を相手にするのは苦しい。
もし超が付くほどのベテランハンターならカムラノ鉄片刃でも時間をかければ倒せるだろうがあいにく俺の腕前では無理… てか水没林で3日以上の狩はやりたくない。 こんな湿地帯で身も心もボロボロになる。 そして水没林にいると半年前を思い出す。 大嵐で救助が見込めなかったあの5日間、下位ハンターながらも死に物狂いでナルガクルガの亜種を討伐した経験があるが、あんな長い地獄の時間は二度とごめんだ。 鬼人薬とか秘薬を飲みまくってしばらく中毒になったりと大変だったし。
そもそも装備のレベルに見合わないモンスターと戦うなんて命知らずも良いところだ。 モンスターの乱入とか不安故に訪れる被害ならともかく、強いハンターになるなら確実を目指すべきだ。 わざと装備の質を落としてモンスターと命のやり合いを楽しむ狂人もいるがそんな酔狂を抱えているハンターのつもりは俺にない。 だからあの場で亜種ペッコを討とうとは思わなかっただけの話。
ならなぜ逃げに徹しなかったのか?
それは俺が身勝手なバカだから。
そして、一つだけ、彼女のために考えていたから…
「ケ!? アナタはもしかしてアマグモでありますか!」
エリア1へ差し掛かったところで少しイントネーションが特殊な元気な女の子の声が聞こえる
正しくは、とあるウマ娘の声だ。
「あ、確か君は…」
「はい! わたくし"エルコンドルパサー"でーす! 空をかけてこの水没林まで駆けに参りました! …っとと、悠長に長話できません! 早く"差し"に向かいまーす! それでは!」
「ああ、泥濘に気をつけ…いや、その心配無いか」
「イエス! わたしは砂や泥の上も問題ありません! では!」
エルコンドルパサーは元気よく走り去る。 足場が砂や泥と言ったいつもと違う環境だが、彼女はそんなことを気にせず足場の悪い水没林を抜けていく。
そしてハンターよりも少し遅れて向かう彼女は"差し"が得意なウマ娘だから。
差し馬とは、逃げや先行と違ってワンテンポ遅れて加勢に向かうウマ娘であり、主に物資補給のためにその脚を使う。 水を差す…って言葉があるがそれはモンスター側からの言葉であり、ハンターからしたら"差し水"だろうか? それで差し水は"増す"の意味だ。 アイテムが尽き始めるハンターのために回復薬や携帯食料や怪力の種などを渡しに向かうのだ。 減ったところに差し水だね。
さて、そんな差し水がなんなのか? 単純な話、ハンターはアイテムを無限に持てるわけも無いからだ。 クエスト中にアイテムを持ち込み過ぎても戦闘で邪魔になるため多くは持ち歩けない。 片手剣や双剣のように手軽ならともかく、取り回しが広いハンマーやガンランスはアイテムを持ち運ぶ事が邪魔になり、ガンナーなら弾を持ち込むだけで回復薬アイテムなど邪魔になって持ち込めない事が基本だ。
そんな時にリアルタイムで物資補強をしてくれる存在は大きく、水没林のように広い場所で常にモンスターを追わなければならない環境では大変ありがたい限りだ。
元々物資補強をするハンターも少なからず存在するが、そのハンターでさえ生き残る必要がある。 故に物資補強は確実ではない。 ミイラ取りがミイラになる様に、途中でモンスターに追われて物資補強どころじゃなくなり、モンスターに討たれてしまう二の舞が度々起きたりと、物資補強は現実的ではなかった。
ならばアイルーを使えば良いと言う意見も出るが、アイルーで物資補給をするくらいならオトモとして同行してもらい、野草を集めて回復薬を作るなどをした方が効率的だ。 そもそもアイルーが物資補強と言えるくらいに多く持ち込める訳じゃ無いので気休めも良いところだ。
しかし、ウマ娘の身体能力の高さを活かした脚と持久力はモンスターに引けを取らない。 戦闘能力は無くとも走る能力は高く、モンスターに見つかってもその足で追われることはなく、人間と同じ知能を持ち合わせているため常に状況判断を任せる事が可能。 しかもエルコンドルパサーの様に脚をためながらタイミングを測り、隙をついてハンターに物資を補給してくれる"差し"馬はそれに特化している。 これほどの適任はいないだろう。
なので見送ったエルコンドルパサーの肩に担がれた荷物には回復薬や携帯食料、そして腰には水没林で回収した環境生物が入っているのが確認できた。 俺とは別のところでモンスターと戦っているハンターへ届けに向かったのだろう。 あとよく見たらフクズクが上に飛んでいる。 エルコンドルパサーはフクズクのサインを受けてからベースキャンプから取り出したのだろう。
さてここまで説明したけれど、まぁそれでも物資補給はアイルーで間に合うとか、そもそもそんな役割は必要なのか?とか、意見は出るくらいに地味な役割だけど、もう一つだけ差し馬ならではの有用性の高い運用がある。
それは百竜夜行だ。
この時の差し馬ってのは本当に輝く。
差し馬はプレッシャーに強い。
なのでモンスターがうじゃうじゃ集う百竜夜行でもそのメンタルは高く保たれる。
そして届ける能力の高さからバリスタの補給が捗るのだ。
ハンターの様にモンスターを倒すための重たい武器を持てない民兵にとって、バリスタや大砲のように設置された兵器に対しての依存性が高い。 そもそも攻撃手段がこれしかない。 しかしそれを使うには弾が必要であり、弾は無限ではない。 弾を補給してバリスタなどにリロードする事が必要だ。 そのため武器となる弾を即座に運んで届けてくれるウマ娘は、百竜夜行の様に長時間に渡る戦闘にて大きな生命線となっている。
実際にウマ娘も支援に入ってくれた1週間前の百竜夜行では大変助かった。
俺も前線で武器を持って戦っていたが、後方支援となるバリスタの攻撃が絶えることなく、バカでかいリオレイアを集中砲火して倒す事ができた。 これも補給線が安定したからだろう。
だからこのように人手不足を補ってくれる差し馬…
いや、ウマ娘に頭が上がらない限りだ。
そんな訳だから…
「今から帰るぞ、セイウンスカイ」
ウマ娘の彼女に日頃の感謝を込めたいと考え、俺はお土産を作って水没林を後にした。
ちなみに回収したのは壊れたライトボウガンと沢山の鬼人薬グレートである。
武器ならともかく強化物アイテムは何故かと言うと、これを誤ってモンスターがこれを飲んで生態変化とか起きられると困るからだ。
とある地方では獰猛化の原因じゃないかと言われてるくらいだし。 中にモンスターが強走薬グレートを飲んで疲れ知らずで襲ってくる話がある…事を、ユクモ温泉で龍暦院ハンターから聞いたので、可能な限りだこう言った強化アイテムの回収も個人的に頼まれている。 一応ギルドからも"サブクエスト"の形で回収班ターの俺に依頼するのだ。
それだけのはなし。
♢
「ねー、ねー、セイウンスカイのトレーナー、聞いてよ」
「どうした?」
「セイウンスカイからなんか、こう…ドキドキする事聞かなかった?」
「どう言う事?」
「いや、ほら、前にボクが話したよね? 眠っている時に誤って抱きついた話」
「あー、それか。 たしかにセイウンスカイ聞いたけど、それってテイオーが被害にあった云々の話じゃないのか? それともお詫びにハチミツよこせって話?」
「違うよー! はちみーは嬉しいけど違う〜! もう、トレーナー、少しは考えてよ。 セイウンスカイが抱きしめたのはボクじゃないんだよ」
「え? じゃあ、誰…………待て、おれ?」
「にっしし、そこから先は言わないよ〜? まぁ、なんというかあのセイウンスカイが取り乱すくらいだから、いつもの調子を崩せるかな〜、ってね」
「いや、意味が分からん。 てか何がしたいんだよ」
「別に〜? ただ、今日のセイウンスカイ、いつもと元気が無いから、こう…ぎゅっとしてあげたらあの調子も忘れてくれないかなって思ってね……だから、その、セイウンスカイを元気にしてあげるの、トレーナーにしかできないならさ」
「…」
「お団子とハチミツを食べる仲として、少なからずボクもセイウンスカイの事を気にしているんだよ? 今日はその時間が無いみたいだから大人しくするけど、明日からはいつも通りなセイウンスカイをボクは求めるよ。 だからトレーナー、お願い…ね?」
「やれやれ、随分とまどろっこしい事をするなテイオー? でも大丈夫だ。 セイウンスカイは弱く無い。 まだ数ヶ月程度の付き合いだけど俺はセイウンスカイを知ってるつもりだ。 任せてくれ」
「そっか、ならよろしくね? 今度はマヤノも連れてくるから」
「マヤノはマヤノのハンターにゾッコンだろ? 着いてこないと思うけどな」
「あっはは、それはそうかもね。 じゃあボクもそろそろクエストに行くね。 ハチミツを沢山集めないと」
「クエスト中は打って変わって真面目になるのは知ってるけど、ちゃんと先行しろよ?」
「もう心配性だな? しっかりハチミツまでアオアシラを先行するよ」
「一応誘導してる事には変わりないけど、なんかテイオーだと釈然としないなぁ」
「えー! 酷くなーい? ……ああ! ト、トレーナー! もう遅いよー! はやくー! はやく!」
トウカイテイオーは自分の
さて、俺はいつも通りヨモギちゃんの所に寄ると「待ってたよ!」と元気よく出迎えてくれて、そして既に作ってくれていたのかお団子を受け取った。 横を見ればオグリキャップがお腹を出してお団子を頬張っている。 ヨモギちゃんも餅つきのアイルーも大変だろうに「よーし!じゃんじゃん作るぞ!」「「にゃー!」」と意気込んでいる。 本当に元気な子だな。 彼女が手がけるお団子も食べればそりゃ元気になる訳だ。
「ただいま、セイウンスカイ」
「あ……お帰り」
「2日ぶりだが、ちゃんとご飯食べた?」
「うん。 ありがとう、ちゃん食べて、昼寝も沢山したよ」
「そりゃ良かった」
「あ、もうすぐだと思ってお風呂温めていたから、すぐに入れるよ?」
「ああ、昨日は水没林だったから助かる」
セイウンスカイが用意してくれたお風呂に入って体を癒す。 湯は一人分の規模だが借りている家なので贅沢は言わない。 お風呂があるだけましだ。 水没林でのクエストを振り返りながら筋肉をほぐしているが、ちょっと腕が痛い。 おやすみベアーのラージャン件でセイウンスカイを助けた時に片腕を無理したのが響いている。筋肉痛の様なものだが、糸車をした時に力みすぎだ。 まぁ亜種ペッコの強化が入って筋力のコントロールを半分ほど捨てた様なものだからな。 肉体的緊張感が抜けてウデが悲鳴をあげている。
風呂上がったらしっかりケアしないとな。
…
…
入浴を終えて茶の間に向かうとセイウンスカイが待っていた。
「体、ほぐしてあげようか?」
「本当? じゃあ頼もうかな」
「はーい、一名様ご案内。 では寝転がって」
並べられた座布団に身を任せる。
するとセイウンスカイが腰に手を添えてグイッと押し込む。
あったかいお風呂で緩んだ筋肉に程よく染み渡る。
だんだん眠たくなってきた頃に、セイウンスカイは痛む腕の方に手を伸ばした。
すると、施術が止まる。
まるで躊躇う様に。
「やはり、まだ立ち直れない…かな」
「気にしすぎだって」
俺は気にしていないし、振り返ろうとしない。
傷跡は覚えても引きずろうとは思っていない。
でも彼女の空は晴れず…
「でもまだ曇り空かな…」
困ったようにそう言った。
だから、俺は水没林で考えていた。
「なら、俺がその空に虹をかけてやりましょう」
「え?」
俺はセイウンスカイの頭を撫でながらその場から立ち上がると、クエスト中に持ち込んだ道具袋に手を伸ばして、あるものを取り出した。
それは…
「セイウンスカイにお土産を持ってきた」
「!! …すごく綺麗だね? ……でも、これは?」
「クルペッコと言われる亜種の鳥から奪い取ってきた羽根だ。 クルペッコ自体はそうでなくとも原種と違って亜種は強い。 あいにく俺は奴を倒す装備を持ち合わせて無かった。 でも俺は、君を助けた時に痛んだこの腕を持って奴を斬り刻んできた」
「!」
「普通の羽根では無く"極彩色の艶羽根"と言われる超高級品の素材だ。 虹の様に色鮮やかな亜種ならではの羽根なんだよね。 それを君に持ってきた」
「っ、な、なんで?」
「元気になってほしいから。 この羽根のように君に青雲を齎したかった。 雨雲が引いて虹が掛かったら素敵だな…って、思った。 ……格好つけ過ぎかな?」
「ッ…そんな事ない……そんな事ないよ。 あ、あはは、そっか。 そうなんだ。 もう、セコイよ、アマグモ。 そんなこと言われたら、曇り空なんかに出来ないじゃないか」
「なら受け取れ。 君に雨雲は似合わない」
「……うん、わかった。 わかったよ。 ありがとうアマグモ」
そう言ってほんの少しだけ涙を流すセイウンスカイだけど、虹をかけるには少しの雨水が必要だから、俺はそれで良いと思った。
「ねぇ…少しだけ、良いかな?」
「?」
そういうとセイウンスカイは寄り添い。
そして、こちらを抱きしめてくる。
突然な抱擁に少し驚いたが、俺も彼女の頭を撫でる。
くすぐったいように彼女の耳がピクンと揺れるが、だんだんと力が抜けてきたのか耳がゆっくりと降り曲がる。
「雨雲は掴めないけど、トレーナーのアマグモはこんなにも優しくて暖かいんだね」
「…それを言うなら、青雲には何もないと思ったけど、君のセイウンはこんなに彩豊かなんだ。 それはお互い様だろ?」
「えへへ、そうだね、アマグモ」
やっと雨雲は払われて、空は青くなる。
彼女の名前に負けないほど青雲に……
「あと、前に眠りこけて抱きついた云々の話したけど、あれってテイオーじゃなくて…」
「へ…?」
「俺だったんだな?」
「ッ〜!!!??」
今の夕陽に負けない日本晴れの様に彼女は赤かった。
つづく
セイウンスカイを書けば実装されると聞いたので頑張ってるけど、本当にいつ実装されるんだろう? もしかして菊花賞に合わせてかな? 秋まで待つのは長いなぁ。 いや、でも菊花賞による特別衣装のセイウンスカイが実装されると考えると、普通のセイウンスカイはそれより早く実装されるんじゃないかな?…って、ワクワクしながら4話書いてました。
あと素直に評価欲しい。
タグ増やしてもっと見てもらえる様にした方が良いのかな?
《差し》
エルコンドルパサーの登場で説明した様にハンターより一歩後ろにつく形で支援するウマ娘のスタイル。 オトモアイルーと被る立ち位置だがウマ娘にしかないやり方でハンターを支える能力。 中には割り込む様に環境生物を使って後方支援…良い意味で水を差してバックアップするウマ娘もいる。 そのかわり知識がそのための必要であるため、難しいスタイルだろう。
ではまた